〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

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本編

第7話 出された宿題

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(くぅ・・悔しいけど、カッコいい。見た目だけはイケメンなのよ。中身は超・・超・・超絶っ!俺様で最悪だけど・・・)

エルメがそう思うのも無理はない。艷やかな金色の髪に透き通るグリーンの瞳を持つ端正な顔立ちのマリオンは、いま陽の光を浴びて金色の髪をキラキラ輝かせている。自然の光をも味方につけ、イケメンオーラを増幅させていた。そして、片肘をつき長い足を交差させ立つ姿は、まるで絵画のようだ。

エルメは思わず見惚れてしまいそうな胸の高鳴りを必死に押さえ込む。そして、そんな彼女にマリオンは「こっちへ来い」と言った。それにエルメが素直に従うはずもなく「なぜ?」と返す。

「理由などない。私が呼んでいるのだから、黙って来ればいい。それに君からキスをするぐらい、私のことを気に入っているのだろう?」

マリオンの言葉にエルメは小さなため息をつくと「またそんなことを・・話にならないわ!」と言い、踵を返した。そしてそのまま歩き出そうとするが、身体を押さえられ動きが取れない。マリオンが彼女の身体を後ろから抱きしめていたのだ。そしてエルメが口を開きかけた時、マリオンが先に口を開く。

「夫の休息を邪魔した罰だ」

マリオンはそう耳元で囁くと、腕の中に閉じ込めた華奢な身体の鎖骨から肩、首筋と順にいやらしく撫でる。彼の静かな吐息が耳にかかり、エルメの背中がゾワゾワする。

「フッ・・どうした。力が入っているぞ」

彼女の反応を楽しむかのようなマリオンに、またも怒りで興奮したエルメは「こういう事は、乙女とやってください」と努めて冷静を装い言った。しかし、マリオンは「だから二年も待てんと言ってるだろう」と昨日聞いたセリフを繰り返す。そして、この状況から逃れる手立てに“足を踏む”を思いついたエルメがそうしようとした瞬間、彼女の身体がフワッと浮いた。あっという間にマリオンに横抱きにされたのだ。

「このまま寝室へ連れて行ってもいいんだぞ」

不敵な笑みを浮かべる彼と目線が同じになったエルメは、潤んだ瞳で「悔しい・・・」と呟いた。

「夫に抱かれて口をついて出るのは、そんなセリフか?」

お互いに視線を交差させたまま言った彼のセリフに、エルメは意図せず頬が染まる。

「だっ、抱かれてって、言い方!」

「こうして抱かれてるだろうが・・・何を想像した?」

・・・・・

マリオンに強気な言葉を返すことができないエルメは、視線を外したら負けだと彼の預かり知らないところで勝負を挑む。しかし、エルメの心の内を分かっているのか、マリオンは目を細めてフッと笑みをこぼすと、そのまま四阿へ戻る。急に動き出したマリオンにエルメは慌てて首にしがみついた。そして、四阿に戻ったマリオンはエルメを膝の上に乗せた。相変わらず腕はガッチリ彼女の身体を捕まえている。

首にしがみついたままエルメがこの状況から逃げる手立てを考えていると、かすかな声が聞こえた。

「・・し・・しい」

逃げることで頭がいっぱいのエルメは聞き取れず、首に回した腕を解くと肩に手をかけ「えっ?何とおっしゃいましたか?」と聞き返した。それにマリオンは「・・どうしてほしい?」ともう一度繰り返す。彼の問いにエルメは「逃して」と即答するが、マリオンの答えは明白だった。

「却下」

「触らないで」

「却下・・・あー、君はどうしてこうも思い通りにならん」

「それは私とマリオン様の運命の糸が交わった先に私のバッドエンドが待っているからです。そう申し上げた筈です」

「私は、君の口から離婚したくないと言わせたい。だが君は甘い言葉を聞かせるだけで、手に入る簡単な女ではない。どうしたら君が、手に入るんだ?」
 
「手に入りません・・ていうか私は物ではないので、手に入る入らないという前提が間違いです」

エルメがはっきりと持論を告げると、マリオンは小さくため息をつき「君という女は、ああ言えばこう言う・・全く面倒な女だ」と言った。そして彼女の頬をそっと包む。

「キスは嫌・・」

自然とエルメの口から出た言葉に、クックッと笑いをこぼすマリオン。そんな彼にエルメはからかわれていることに気付いた。

「何を笑って・・あっ、からかったのですね!?」

「さっき君から手荒いキスをもらったからな・・・・それより、私にどうしてほしい?・・あー、待て・・さっきのような答えはいらん。それ以外で君の願いを聞かせろ」

「またそんな勝手なことを・・」

そこで四阿の外から声がかかる。マリオンの従者が「陛下がお呼びです」と彼を呼びに来たのだ。突然入った邪魔にマリオンはエルメの肩に顔を埋めると「あー、くそっ・・」と呟いた。一方のエルメは内心安堵している。

そしてマリオンはエルメの身体を下ろすと、彼女の手を引き戻り始めた。しかし、前を行く従者の背中を見ながら無言で歩くエルメは、急に横に手を引っ張られた。背中を木の陰に充てがわれ、マリオンの腕に逃げ場を塞がれたエルメは、唇も彼に塞がれた。

「んん・・」

唐突な口づけに息が漏れる。
そして一度だけ・・それでも濃厚なキスから名残惜しそうに解放したマリオンは、真っ直ぐにエルメと向き合うと言った。

「すぐに答えを出さなかった罰だ」

「あれは、従者が呼びに来たからっ・・」

「とにかく答えを考えておけ。分かったな?」

マリオンはそうエルメに言うと、彼女の頭を軽くポンと撫でるように叩いた。

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