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本編
第4話 想定外の口づけ
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マリオンとの交渉を成立させたその夜、ベッドの上で二人は対峙していた。
「いいですか。ここからこっちは私、そっちはマリオン様のプライベートスペースです。決してこのスペースを侵さないでくださいね。不可侵条約締結ですよ」
正座をして、そう宣言するエルメの前には、ベッドの真ん中にぬいぐるみが鎮座している。どうやら、そのぬいぐるみの左右でお互いのスペースを分けるようだ。エルメの訴えに背を向けベッドに腰掛けるマリオンは、片手をヒラヒラと振り「分かった分かった」と面倒くさそうに言う。それにエルメは「よろしい」と満足そうに頷くと、テラスへ出た。
空を見上げると、落ちてきそうなほど瞬く星たちが柔らかい光を放っていた。心地よい風がエルメの長い髪を揺らし、頬をかすめる。そしてエルメは目を閉じ、順調に進む兆しの離婚計画に思いを馳せる。
(とりあえず賭けなんてのっちゃったけど、大丈夫!だって、マリオンがアリスを好きになるのは絶対だもん。どうせなら、アリスに転生してもよかったよね。まあ、仕方ないか。エルメでも庶民になれば、お気楽ハッピーライフが待ってるし・・フフッ)
そんなエルメの思考は、前触れ無く腰に巻かれた腕に強引に引き寄せられた身体と耳元で囁かれた言葉によって遮られる。
「何を考えている?」
「きゃっ!何をするんですか!」
エルメの抗議にも腰に巻かれた腕はびくともしない。
「君を抱かないが、触れないとは言ってない。それに君の口から離婚したくないと言わせるのも一興だろう?」
面白そうにそう口にするマリオンに、苛立つエルメは「そういうのはいりません!」と言い、睨みつける。しかし、全く効く様子はない。
「結婚前は淑やかな姫だと思っていたが、いざ結婚してベッドに押し倒してみれば、とんだじゃじゃ馬。どうして別人のように変わったのかと思えば、自分には前世があると言う。全く面白い姫だ」
そう言うと、マリオンの腕は一層狭まり、エルメはマリオンの胸に鼻をぶつけそうになる。
「ところでその癒やしの乙女は、いつ私たちの前に現れるのだ?」
頭の上から降ってきた質問にエルメは「それは今から一年ほど後です。離婚するのは、それから更に一年後です」と答えた。すると余裕をかましていたマリオンの口から「なっ、そんなに待つのか!?」と驚く声が聞かれる。それに気を良くしたエルメは、ドヤ顔で「仕方ありません。そう書いてしまったのですから」と返した。
「書いてしまったって・・・そんなにお預けを食らうのか!?・・・決めた!健康な男がそんなに待てるかっ」
マリオンはそう言うと、腰に回す腕はエルメの肩をガッチリ抱き、顎を強引に持ち上げる。そして、彼女の唇を塞いだ。感情をぶつけるような強引な口づけに、エルメは自分の身体を羽交い締めにするマリオンの身体に拳をぶつけ、精一杯の抵抗をみせる。
ロマンチックな雰囲気など欠片もない一方的なキスは、エルメの怒りを沸点まで一瞬で上げた。唇という拘束から解かれた口で「なっ、何をするの!」と怒りをあらわにし、そしてテラスにパンッと鈍い音が響く。マリオンの腕から逃れたエルメが、不敵な笑みを浮かべる彼の頬を叩いたのだ。マリオンは顔を背けるが、その表情は変わらない。
「まさかキスで子供が出来るとか言わないよな?」
そう言ってマリオンは、挑戦的な瞳をエルメへ向ける。エルメはそれを真っ直ぐに受け止めると「そんな子供ではありません!」と言い放つ。
「好みの女・・しかも結婚もしてる女を前に二年も手を出すなとは、拷問だ。おかしいぞ。子を授かるようなことはしないが、スキンシップやキスくらいは大目に見ろ」
「好みの女って!女なら誰でもいいのですか!?」
「大人しい女はゴメンだが、前世とやらを思い出した君はタイプだ。言ったろう?暴れ馬を乗りこなすのが、好きだって・・そういうことだ」
マリオンは色気のない妻への想いを言葉にすると、再び食らいつくような口づけをした。
「いいですか。ここからこっちは私、そっちはマリオン様のプライベートスペースです。決してこのスペースを侵さないでくださいね。不可侵条約締結ですよ」
正座をして、そう宣言するエルメの前には、ベッドの真ん中にぬいぐるみが鎮座している。どうやら、そのぬいぐるみの左右でお互いのスペースを分けるようだ。エルメの訴えに背を向けベッドに腰掛けるマリオンは、片手をヒラヒラと振り「分かった分かった」と面倒くさそうに言う。それにエルメは「よろしい」と満足そうに頷くと、テラスへ出た。
空を見上げると、落ちてきそうなほど瞬く星たちが柔らかい光を放っていた。心地よい風がエルメの長い髪を揺らし、頬をかすめる。そしてエルメは目を閉じ、順調に進む兆しの離婚計画に思いを馳せる。
(とりあえず賭けなんてのっちゃったけど、大丈夫!だって、マリオンがアリスを好きになるのは絶対だもん。どうせなら、アリスに転生してもよかったよね。まあ、仕方ないか。エルメでも庶民になれば、お気楽ハッピーライフが待ってるし・・フフッ)
そんなエルメの思考は、前触れ無く腰に巻かれた腕に強引に引き寄せられた身体と耳元で囁かれた言葉によって遮られる。
「何を考えている?」
「きゃっ!何をするんですか!」
エルメの抗議にも腰に巻かれた腕はびくともしない。
「君を抱かないが、触れないとは言ってない。それに君の口から離婚したくないと言わせるのも一興だろう?」
面白そうにそう口にするマリオンに、苛立つエルメは「そういうのはいりません!」と言い、睨みつける。しかし、全く効く様子はない。
「結婚前は淑やかな姫だと思っていたが、いざ結婚してベッドに押し倒してみれば、とんだじゃじゃ馬。どうして別人のように変わったのかと思えば、自分には前世があると言う。全く面白い姫だ」
そう言うと、マリオンの腕は一層狭まり、エルメはマリオンの胸に鼻をぶつけそうになる。
「ところでその癒やしの乙女は、いつ私たちの前に現れるのだ?」
頭の上から降ってきた質問にエルメは「それは今から一年ほど後です。離婚するのは、それから更に一年後です」と答えた。すると余裕をかましていたマリオンの口から「なっ、そんなに待つのか!?」と驚く声が聞かれる。それに気を良くしたエルメは、ドヤ顔で「仕方ありません。そう書いてしまったのですから」と返した。
「書いてしまったって・・・そんなにお預けを食らうのか!?・・・決めた!健康な男がそんなに待てるかっ」
マリオンはそう言うと、腰に回す腕はエルメの肩をガッチリ抱き、顎を強引に持ち上げる。そして、彼女の唇を塞いだ。感情をぶつけるような強引な口づけに、エルメは自分の身体を羽交い締めにするマリオンの身体に拳をぶつけ、精一杯の抵抗をみせる。
ロマンチックな雰囲気など欠片もない一方的なキスは、エルメの怒りを沸点まで一瞬で上げた。唇という拘束から解かれた口で「なっ、何をするの!」と怒りをあらわにし、そしてテラスにパンッと鈍い音が響く。マリオンの腕から逃れたエルメが、不敵な笑みを浮かべる彼の頬を叩いたのだ。マリオンは顔を背けるが、その表情は変わらない。
「まさかキスで子供が出来るとか言わないよな?」
そう言ってマリオンは、挑戦的な瞳をエルメへ向ける。エルメはそれを真っ直ぐに受け止めると「そんな子供ではありません!」と言い放つ。
「好みの女・・しかも結婚もしてる女を前に二年も手を出すなとは、拷問だ。おかしいぞ。子を授かるようなことはしないが、スキンシップやキスくらいは大目に見ろ」
「好みの女って!女なら誰でもいいのですか!?」
「大人しい女はゴメンだが、前世とやらを思い出した君はタイプだ。言ったろう?暴れ馬を乗りこなすのが、好きだって・・そういうことだ」
マリオンは色気のない妻への想いを言葉にすると、再び食らいつくような口づけをした。
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