〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro

文字の大きさ
上 下
3 / 74
本編

第3話 悪役は夫に協力求む

しおりを挟む
最悪な初夜を迎えた翌日、マリオンとエルメは人払いをしたマリオンの部屋で向かい合っていた。

皇太子夫妻のそれぞれの部屋は、寝室を挟んで左右にある。そして、今日マリオンの私室を訪れたエルメは、寝室を通らずにわざわざ廊下からマリオンの元を訪ねた。これも彼女の決意の表れだった。部屋を訪れたエルメをマリオンは優しく招き入れ、人払いをした。昨夜のことには触れずにエルメの話に耳を傾ける。

「それで何を言うかと思えば、君には前世があると?」

「はい。前世で私は小説を書いてました。その世界が今まさにここなんです」

「そのような世迷い言信じろと?」

「いいから黙ってお聞きください。マリオン様と私は結婚しますが、その夫婦生活に愛はありません。そして、いずれ貴方の前に現れる癒やしの乙女だけを貴方は愛するのです。それに嫉妬した私は、癒やしの乙女に色々な嫌がらせを行い、それが貴方の逆鱗にふれ、私たちは離婚。そして私は北の最果てへ追いやられるという話です」

「ほう・・・」

腕と長い足を組み、エルメを真っ直ぐに見るマリオンは、笑みを浮かべている。

「ですので、どうせ離婚されるのでしたら、清い関係のまま過ごし、乙女が現れた暁には円満離婚しましょう。万が一、私との間にお子が産まれたら、新たな火種になります。
マリオン様は乙女と幸せになり、私は市井に下りひっそりと暮らします。なので、できれば生涯暮らせるだけの手切れ金をいただければ、双方にとって利益しかないかと・・
私たちの間に愛など必要なし!利害の一致、共存共栄こそ輝かしい未来を迎えるために必要なんです。いかがでしょうか?」

「まさか結婚してすぐ妻から“愛などいらない”と言われるとは思わなかったよ・・・いいだろう。賭けようか」

「はっ?賭ける?何を?」

「クックッ・・・本当に面白い姫だ。無論、私がその癒やしの乙女なる女に惚れるかどうかだ」

「いいえ、賭けなど無用です。物語補正で必ず惚れるんです!そして、私はバッドエンドまっしぐら!お金さえいただければ、私はマリオン様の人生から静かにフェードアウトいたします!」

「市井に下るなど、王女として育った君ができると思うのか?」

「ああ、そこはお気になさらずに。前世はバリバリの一般庶民だったので、寧ろ皇太子妃なんて罰ゲーム!市井最高!ぐらいの気持ちなんで」

「国中の令嬢が私の妃になりたいと夢見るのに、君はこの暮らしを罰ゲームと・・・アハハハハッ」

突然笑いだしたマリオンに、エルメは呆気にとられる。しかしすぐに姿勢を正すと、皇太子の答えを無言で待つ。そしてマリオンは決意の眼差しを向け、言った。

「分かった。ただ、その癒やしの乙女の出現を待つだけというのも退屈だから、やはり先程の賭けは絶対だ。私がその乙女に惚れたら、君と離婚して遊んで暮らせるだけの金をやる。ただし、そうならなかったら、君は大人しく私のものになる。どうだ?私が乙女に惚れると自信があるのだろう?それならば、君が勝ったも同然だ」

言い切るマリオンは窓から射し込む日差しで金色の髪を輝かせ、不敵な笑みを浮かべている。目に見えぬオーラにエルメは、ゴクリと喉を鳴らした。そして拳を握りしめると言った。

「分かりました。その勝負のりました!」

そして、手を差し出すエルメ。マリオンは肩をすくめて、その手を取る。交渉成立の握手を交わすと、エルメはマリオンに言った。

「交渉成立です。あっ、念の為一筆書いてくださいね」
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【完結】人生で一番幸せになる日 ~『災い』だと虐げられた少女は、嫁ぎ先で冷血公爵様から溺愛されて強くなる~

八重
恋愛
【全32話+番外編】 「過去を、後ろを見るのはやめます。今を、そして私を大切に思ってくださっている皆さんのことを思いたい!」  伯爵家の長女シャルロッテ・ヴェーデルは、「生まれると災いをもたらす」と一族で信じられている『金色の目』を持つ少女。生まれたその日から、屋敷には入れてもらえず、父、母、妹にも虐げられて、一人ボロボロの「離れ」で暮らす。  ある日、シャルロッテに『冷血公爵』として知られるエルヴィン・アイヒベルク公爵から、なぜか婚約の申し込みがくる。家族は「災い」であるシャルロッテを追い出すのにちょうどいい口実ができたと、彼女を18歳の誕生日に嫁がせた。  しかし、『冷血公爵』とは裏腹なエルヴィンの優しく愛情深い素顔と婚約の理由を知り、シャルロッテは彼に恩返しするため努力していく。  そして、一族の中で信じられている『金色の目』の話には、実は続きがあって……。  マナーも愛も知らないシャルロッテが「夫のために役に立ちたい!」と努力を重ねて、幸せを掴むお話。 ※引き下げにより、書籍版1、2巻の内容を一部改稿して投稿しております

悪役令嬢に仕立て上げられたので領地に引きこもります(長編版)

下菊みこと
恋愛
ギフトを駆使して領地経営! 小説家になろう様でも投稿しています。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

家族に裏切られて辺境で幸せを掴む?

しゃーりん
恋愛
婚約者を妹に取られる。 そんな小説みたいなことが本当に起こった。 婚約者が姉から妹に代わるだけ?しかし私はそれを許さず、慰謝料を請求した。 婚約破棄と共に跡継ぎでもなくなったから。 仕事だけをさせようと思っていた父に失望し、伯父のいる辺境に行くことにする。 これからは辺境で仕事に生きよう。そう決めて王都を旅立った。 辺境で新たな出会いがあり、付き合い始めたけど?というお話です。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

処理中です...