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後日談 冬馬ストーリー - Ⅰ
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「ねぇ、冬馬。一体どうしちゃったの?」
アパート一室に見覚えのある顔が・・冬馬だ。お腹の大きな女性とくつろいでいる。
「えっ?何が?」
冬馬の反応に女性は大きなお腹をさすり「何がって・・ねえ・・パパが変でちゅよね~」と話しかける。
「うわぁ、香織もそんなこと言っちゃうわけ!?うっわぁ、すっげ~ショック~」
大袈裟に頭を抱える冬馬。そんな冬馬に香織と呼ばれた女性は「だってさぁ・・」と少し戸惑いを見せている。そんな香織に冬馬はニカッと人懐っこく笑った。
「も~、いいじゃん!家でも散々、親父たちに泣かれて大変だったんだぞ。香織は俺のこと癒やしてくれよ~」
「そんなにお義父さんたち泣いたの?」
「ああ、“突然すげ~ワガママになって子育て間違ったのかって悲観してたのに、突然戻ってきた~”って、大騒ぎして泣かれた」
「そっか・・お義母さんなんて、反抗期がなかったから、遅すぎる反抗期が来たのかしらなんて、めちゃくちゃ悩んでたよ。私、相談されちゃったもん」
香織の暴露に冬馬はまたしても大袈裟にに天を仰ぎ、目を押さえた。
「マジか~、あ~、全く覚えてないわ。そんなにヒドかったわけ?俺」
「そりゃあ、もう!聞きたい?」
「いや!やめとく!終わったことなんて、どうでもいい!これからよ、これから!香織とこの子と親父たちにいっぱい笑ってもらうんだからな!あっ、それよりひとつ相談があんだけど・・」
どうやら冬馬と入れ替わっていたオルガがワガママし放題で、周囲を振り回していたらしい。香織に至ってはオルガに「はっ!?誰よ、この女」と暴言を吐かれたそうだ。
しかし無事に本当の冬馬が戻ってきて元通りになると、いま香織が話していたような展開になった。香織に対する暴言を聞いた冬馬は、彼女に土下座までした。しかし、大好きな彼が戻ってきた安堵で香織が怒ることはなかった。
冬馬は入れ替わっていた時の自分は、覚えてない設定で押し通すことにし、転移のことは胸に仕舞い込むことに決めた。
そして冬馬は、香織にある提案をする。子供の名前に“梨”の字を入れたいと・・・
「ねえ、それって誰の“梨”?過去カノとか?」
「違うよ。俺の恩人」
「恩人?そんな人いたの?」
「うん、すっげー恩人。忘れたくても忘れられない人」
冬馬の返しに香織は口を尖らせ「何それ。なんか悔しい。イヤだ」と拗ねた。そんな香織に冬馬は、彼女の肩を掴み目線を合わせる。
「怒るなよ。もう絶対に会えない人だからさ。その人がいなかったら、俺は、こうして香織と話すこともできなかったし、これから生まれてくるこの子にも会えなかったんだ」
そう言って香織の大きなお腹をさする冬馬に、彼女は小さくため息をついた。そして苦笑する。
「それって、すごく気になる言い方。でも、どうせどんな恩人か教えてくれないんでしょ?いいよ、わかってる。冬馬がそう言うなら、私にとってもこの子にとっても恩人だもんね」
「そうだよ。だからいいよな。子供の名前に俺の名前じゃなくて“梨”入れても・・・」
冬馬の提案に香織は「仕方ないよねぇ。パパがそう言うならねぇ」とお腹に話しかけた。どうやら彼の願いを、聞き入れたようだ。
「ねえ、この子どっちだと思う?」
香織の問いに冬馬は、う~んと思案する。そして彼の答えは、香織の想いと重なった。
「そりゃあ・・双子だろ!」
「あ~、やっぱり!冬馬なら、そう言うと思った!そうしたら、二つ名前考えないといけないね」
香織の言葉に冬馬が、腕を組んで考え始める。しかし、すぐに閃いたようだ。
「二つかぁ。俺たちの親としての初仕事ってことか・・・梨に香織の織をつけて“りお”って、どお?これならどっちでもイケんじゃん!」
「もぉ!“双子だぁ!”って、いま言ったばっかりじゃない。二つ考えるんだよ!本当に双子だったら、どうするのよ」
呆れ顔で香織が言うと、すぐに彼の頭に何か浮かんだらしい。ニカッと笑い、香織に言った。
「あーそっかっ!・・・よし!じゃぁ“りか”だ!梨に香織の香をつけて、梨香!男なら梨織!女なら梨香!」
「冬馬にしては、マトモ・・でも男の子同士とかだったら、どうするの?それに本当に冬馬の字入ってないよ。いいの?」
「いいんだって!急に俺が言い出したんだし、俺の恩人と香織の名前が入ってれば、最強じゃん!それにもし同性だったら、その時はまた考えよう!」
「冬馬がそれでいいなら私はいいけど・・ねえ、お義父さんたち大丈夫かな。“名前は画数が・・”とか気にしてたっぽいけど・・・」
「大丈夫だって!ちゃんと話せば、分かってくれる人達だって、香織も知ってるだろ?」
冬馬は、そう言って笑った。その眩しい笑顔は、部屋中を幸せで溢れさせる。
「うん・・あと一ヶ月でこの子と会えるんだね。すっごく楽しみ」
「俺も!お~い、聞こえてるか~?パパとママが待ってるぞ~。安心して出てこいよ~」
冬馬がもうすぐ会える我が子に優しく語りかけると、部屋は幸せな空気と笑い声に包まれたのだった。
アパート一室に見覚えのある顔が・・冬馬だ。お腹の大きな女性とくつろいでいる。
「えっ?何が?」
冬馬の反応に女性は大きなお腹をさすり「何がって・・ねえ・・パパが変でちゅよね~」と話しかける。
「うわぁ、香織もそんなこと言っちゃうわけ!?うっわぁ、すっげ~ショック~」
大袈裟に頭を抱える冬馬。そんな冬馬に香織と呼ばれた女性は「だってさぁ・・」と少し戸惑いを見せている。そんな香織に冬馬はニカッと人懐っこく笑った。
「も~、いいじゃん!家でも散々、親父たちに泣かれて大変だったんだぞ。香織は俺のこと癒やしてくれよ~」
「そんなにお義父さんたち泣いたの?」
「ああ、“突然すげ~ワガママになって子育て間違ったのかって悲観してたのに、突然戻ってきた~”って、大騒ぎして泣かれた」
「そっか・・お義母さんなんて、反抗期がなかったから、遅すぎる反抗期が来たのかしらなんて、めちゃくちゃ悩んでたよ。私、相談されちゃったもん」
香織の暴露に冬馬はまたしても大袈裟にに天を仰ぎ、目を押さえた。
「マジか~、あ~、全く覚えてないわ。そんなにヒドかったわけ?俺」
「そりゃあ、もう!聞きたい?」
「いや!やめとく!終わったことなんて、どうでもいい!これからよ、これから!香織とこの子と親父たちにいっぱい笑ってもらうんだからな!あっ、それよりひとつ相談があんだけど・・」
どうやら冬馬と入れ替わっていたオルガがワガママし放題で、周囲を振り回していたらしい。香織に至ってはオルガに「はっ!?誰よ、この女」と暴言を吐かれたそうだ。
しかし無事に本当の冬馬が戻ってきて元通りになると、いま香織が話していたような展開になった。香織に対する暴言を聞いた冬馬は、彼女に土下座までした。しかし、大好きな彼が戻ってきた安堵で香織が怒ることはなかった。
冬馬は入れ替わっていた時の自分は、覚えてない設定で押し通すことにし、転移のことは胸に仕舞い込むことに決めた。
そして冬馬は、香織にある提案をする。子供の名前に“梨”の字を入れたいと・・・
「ねえ、それって誰の“梨”?過去カノとか?」
「違うよ。俺の恩人」
「恩人?そんな人いたの?」
「うん、すっげー恩人。忘れたくても忘れられない人」
冬馬の返しに香織は口を尖らせ「何それ。なんか悔しい。イヤだ」と拗ねた。そんな香織に冬馬は、彼女の肩を掴み目線を合わせる。
「怒るなよ。もう絶対に会えない人だからさ。その人がいなかったら、俺は、こうして香織と話すこともできなかったし、これから生まれてくるこの子にも会えなかったんだ」
そう言って香織の大きなお腹をさする冬馬に、彼女は小さくため息をついた。そして苦笑する。
「それって、すごく気になる言い方。でも、どうせどんな恩人か教えてくれないんでしょ?いいよ、わかってる。冬馬がそう言うなら、私にとってもこの子にとっても恩人だもんね」
「そうだよ。だからいいよな。子供の名前に俺の名前じゃなくて“梨”入れても・・・」
冬馬の提案に香織は「仕方ないよねぇ。パパがそう言うならねぇ」とお腹に話しかけた。どうやら彼の願いを、聞き入れたようだ。
「ねえ、この子どっちだと思う?」
香織の問いに冬馬は、う~んと思案する。そして彼の答えは、香織の想いと重なった。
「そりゃあ・・双子だろ!」
「あ~、やっぱり!冬馬なら、そう言うと思った!そうしたら、二つ名前考えないといけないね」
香織の言葉に冬馬が、腕を組んで考え始める。しかし、すぐに閃いたようだ。
「二つかぁ。俺たちの親としての初仕事ってことか・・・梨に香織の織をつけて“りお”って、どお?これならどっちでもイケんじゃん!」
「もぉ!“双子だぁ!”って、いま言ったばっかりじゃない。二つ考えるんだよ!本当に双子だったら、どうするのよ」
呆れ顔で香織が言うと、すぐに彼の頭に何か浮かんだらしい。ニカッと笑い、香織に言った。
「あーそっかっ!・・・よし!じゃぁ“りか”だ!梨に香織の香をつけて、梨香!男なら梨織!女なら梨香!」
「冬馬にしては、マトモ・・でも男の子同士とかだったら、どうするの?それに本当に冬馬の字入ってないよ。いいの?」
「いいんだって!急に俺が言い出したんだし、俺の恩人と香織の名前が入ってれば、最強じゃん!それにもし同性だったら、その時はまた考えよう!」
「冬馬がそれでいいなら私はいいけど・・ねえ、お義父さんたち大丈夫かな。“名前は画数が・・”とか気にしてたっぽいけど・・・」
「大丈夫だって!ちゃんと話せば、分かってくれる人達だって、香織も知ってるだろ?」
冬馬は、そう言って笑った。その眩しい笑顔は、部屋中を幸せで溢れさせる。
「うん・・あと一ヶ月でこの子と会えるんだね。すっごく楽しみ」
「俺も!お~い、聞こえてるか~?パパとママが待ってるぞ~。安心して出てこいよ~」
冬馬がもうすぐ会える我が子に優しく語りかけると、部屋は幸せな空気と笑い声に包まれたのだった。
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