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第16話 何でいつも突然なんですか?
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「これは何だ?」
疑問を口にするセドリックに、リーナがどう答えるべきか言い淀んでいると、神様がそのまま答える。
『神です』
この答えにセドリックは、真意を問う瞳をリーナに向けると、彼女は一度だけ頷き肯定する。てっきりセドリックは否定するかと思っていたが、「そうか」と返すだけだった。
『それでは改めまして、貴女の願いは何ですか?』
(きたぁ~!!思ったより早かったけど、今日は鐘鳴りっぱなしだったものね)
リーナは好感度達成の興奮も冷めやらぬまま、願いを口にしようとする。しかし、ここで王子の余計な邪魔が入る。
「神とやらは、願いを叶えるのか?」
『はい。リーナさんがそのノルマを先程達成されましたので、約束どおり願いを叶えにきました』
「私の願いでもいいのか?私の願いは、すなわち彼女の願いだぞ」
「えっ!!チョット待って!!!ダメ!絶対にダメ!!その願い事、私が予約済みなんですから!!」
「何を願うのだ。それによっては、邪魔するぞ」
『何を言ってるの!この王子は!ポッと出の王子は、引っ込んでなさい!』
という言葉をグッと飲み込んで笑顔で「殿下、それはお止めください。私の願いには、数万人の運命がかかっております」とリーナは言った。すると、彼女を包んでいた彼の腕に力が入る。
(忘れてた。まだ抱きしめられてた~)
そう気付いた瞬間、耳元で声がした。
「では、私も共に祈ろう。その代わりこれが済んだら、私の願いは君に叶えてもらうぞ」
囁かれた言葉の意味を理解する前に、身体は自由になった。そして、リーナが断るセリフを言う前に神様が口を開く。
『話は、ついたようですね。さあ!リーナさん、願いをどうぞ』
絶妙なタイミングで神様に邪魔をされたリーナは、全て片付いた後で神を恨むことになる。
「冬馬の魂を元に戻してください」
リーナの願いを聞いた神が『相分かりました。その願い叶えましょう』と言い終わるのと同時に、突然オルガの姿が部屋に現れる。突然、瞬間移動したオルガは「はっ!!?何だ!ここどこだ?」と混乱している。そしてリーナの姿を見ると、説明を求めてきた。
苦笑するリーナが口を開く前に、またしても神が話し始める。
『貴方はリーナさんのお陰で元の世界に戻ることができます。さあ、準備はいいですか?』
この言葉に、当の冬馬はもちろんリーナも慌てることになる。まだ事情を説明していないのだ。
「はっ!?どういう!?準備!?」
「ちょっと待って!何でそんなに急なのっ!?最後に話をさせて!話さなきゃならないことが、あるのよ!」
二人の慌てっぷりに神は、ため息をつく。それを見たリーナは、思わず文句を言いそうになったが、何とか堪えた。
『分かりました。一時間だけ猶予をあげましょう。それを過ぎると、願いが叶えられなくなりますので、ご注意をお願いします』
神の言葉を聞いたリーナは、オルガを連れて部屋を出て行こうとしたが、扉に鍵が掛けられていたことを思い出し、部屋をキョロキョロする。しかし二人になれるスペースなど見当たらないため、仕方なく部屋の隅へと移動し、そこで話すことにした。セドリックが終始リーナの行動を見守っていたが、口を挟むことはない。
リーナは、オルガと向き合うと「ごめんなさい」と頭を下げる。突然、この部屋へ呼ばれてから何の説明もなく、リーナからは頭を下げられたオルガは、「ちゃんと説明してくれよな」と苦笑した。
リーナは、昨日話そうとしてできなかった話を語りだす。彼が転移した原因、彼が魔法を使える原因、突然現れた神様がある条件を満たせば願いを一つ叶えてくれること、そしてその条件を達成したので、冬馬として元に戻れることを・・
全て聞き終えたオルガは、「そっか・・・戻れるのか・・」と呟くと、俯いた。顔は見えないが、肩を震わせているのを見ると、リーナの涙腺も緩む。
「ごめんね。私が勝手に共鳴してしまったから、貴方をこんなことに巻き込んでしまった。でも、これで戻れるよ。生まれてくる子どもに名前つけて、奥さんたちを幸せにして、親孝行いっぱいしてらっしゃいね」
リーナの言葉にオルガは、黙って何度も頷いた。しばらく声をかけずに、オルガが落ち着くのを待っていると、ようやく顔を上げたその顔は晴れ晴れとしていた。
「リーナ、大丈夫なのか?俺が帰ったら、一人になっちまうんじゃないのか?」
「そうねぇ。まあ、今でもたった一人の友達は大して役に立たない大学生だったし、そう変わらないわよ」
「あっ、ひっでえなぁ」
笑顔のオルガにリーナは「そうよ、私は酷いのよ。酷いついでに頼みたいことがあるの!」と言い、ポケットから折りたたんだ紙を取り出した。
「中に手紙と届けてほしい人の名前と住所が書いてあるの。落ち着いたら、届けてくれる?」
「彼氏か?」
オルガの問いにリーナは恥ずかしそうに頷くと、言葉を続ける。
「これでも一応、結婚目前だったのよ。教会もドレスも決まってたの・・・向こうは、どれ位時間が経ってるか分からないし、彼に忘れられてるかもしれない。でもこれは私のケジメなの。これで、もう本当に梨奈とはサヨナラ・・」
オルガが大事そうに受け取るそれは、ずっとリーナが肌身離さずに持っていた為、くたびれていた。
「必ず渡すから、安心しろよ」
オルガのこの言葉だけで、リーナの心は救われた。
疑問を口にするセドリックに、リーナがどう答えるべきか言い淀んでいると、神様がそのまま答える。
『神です』
この答えにセドリックは、真意を問う瞳をリーナに向けると、彼女は一度だけ頷き肯定する。てっきりセドリックは否定するかと思っていたが、「そうか」と返すだけだった。
『それでは改めまして、貴女の願いは何ですか?』
(きたぁ~!!思ったより早かったけど、今日は鐘鳴りっぱなしだったものね)
リーナは好感度達成の興奮も冷めやらぬまま、願いを口にしようとする。しかし、ここで王子の余計な邪魔が入る。
「神とやらは、願いを叶えるのか?」
『はい。リーナさんがそのノルマを先程達成されましたので、約束どおり願いを叶えにきました』
「私の願いでもいいのか?私の願いは、すなわち彼女の願いだぞ」
「えっ!!チョット待って!!!ダメ!絶対にダメ!!その願い事、私が予約済みなんですから!!」
「何を願うのだ。それによっては、邪魔するぞ」
『何を言ってるの!この王子は!ポッと出の王子は、引っ込んでなさい!』
という言葉をグッと飲み込んで笑顔で「殿下、それはお止めください。私の願いには、数万人の運命がかかっております」とリーナは言った。すると、彼女を包んでいた彼の腕に力が入る。
(忘れてた。まだ抱きしめられてた~)
そう気付いた瞬間、耳元で声がした。
「では、私も共に祈ろう。その代わりこれが済んだら、私の願いは君に叶えてもらうぞ」
囁かれた言葉の意味を理解する前に、身体は自由になった。そして、リーナが断るセリフを言う前に神様が口を開く。
『話は、ついたようですね。さあ!リーナさん、願いをどうぞ』
絶妙なタイミングで神様に邪魔をされたリーナは、全て片付いた後で神を恨むことになる。
「冬馬の魂を元に戻してください」
リーナの願いを聞いた神が『相分かりました。その願い叶えましょう』と言い終わるのと同時に、突然オルガの姿が部屋に現れる。突然、瞬間移動したオルガは「はっ!!?何だ!ここどこだ?」と混乱している。そしてリーナの姿を見ると、説明を求めてきた。
苦笑するリーナが口を開く前に、またしても神が話し始める。
『貴方はリーナさんのお陰で元の世界に戻ることができます。さあ、準備はいいですか?』
この言葉に、当の冬馬はもちろんリーナも慌てることになる。まだ事情を説明していないのだ。
「はっ!?どういう!?準備!?」
「ちょっと待って!何でそんなに急なのっ!?最後に話をさせて!話さなきゃならないことが、あるのよ!」
二人の慌てっぷりに神は、ため息をつく。それを見たリーナは、思わず文句を言いそうになったが、何とか堪えた。
『分かりました。一時間だけ猶予をあげましょう。それを過ぎると、願いが叶えられなくなりますので、ご注意をお願いします』
神の言葉を聞いたリーナは、オルガを連れて部屋を出て行こうとしたが、扉に鍵が掛けられていたことを思い出し、部屋をキョロキョロする。しかし二人になれるスペースなど見当たらないため、仕方なく部屋の隅へと移動し、そこで話すことにした。セドリックが終始リーナの行動を見守っていたが、口を挟むことはない。
リーナは、オルガと向き合うと「ごめんなさい」と頭を下げる。突然、この部屋へ呼ばれてから何の説明もなく、リーナからは頭を下げられたオルガは、「ちゃんと説明してくれよな」と苦笑した。
リーナは、昨日話そうとしてできなかった話を語りだす。彼が転移した原因、彼が魔法を使える原因、突然現れた神様がある条件を満たせば願いを一つ叶えてくれること、そしてその条件を達成したので、冬馬として元に戻れることを・・
全て聞き終えたオルガは、「そっか・・・戻れるのか・・」と呟くと、俯いた。顔は見えないが、肩を震わせているのを見ると、リーナの涙腺も緩む。
「ごめんね。私が勝手に共鳴してしまったから、貴方をこんなことに巻き込んでしまった。でも、これで戻れるよ。生まれてくる子どもに名前つけて、奥さんたちを幸せにして、親孝行いっぱいしてらっしゃいね」
リーナの言葉にオルガは、黙って何度も頷いた。しばらく声をかけずに、オルガが落ち着くのを待っていると、ようやく顔を上げたその顔は晴れ晴れとしていた。
「リーナ、大丈夫なのか?俺が帰ったら、一人になっちまうんじゃないのか?」
「そうねぇ。まあ、今でもたった一人の友達は大して役に立たない大学生だったし、そう変わらないわよ」
「あっ、ひっでえなぁ」
笑顔のオルガにリーナは「そうよ、私は酷いのよ。酷いついでに頼みたいことがあるの!」と言い、ポケットから折りたたんだ紙を取り出した。
「中に手紙と届けてほしい人の名前と住所が書いてあるの。落ち着いたら、届けてくれる?」
「彼氏か?」
オルガの問いにリーナは恥ずかしそうに頷くと、言葉を続ける。
「これでも一応、結婚目前だったのよ。教会もドレスも決まってたの・・・向こうは、どれ位時間が経ってるか分からないし、彼に忘れられてるかもしれない。でもこれは私のケジメなの。これで、もう本当に梨奈とはサヨナラ・・」
オルガが大事そうに受け取るそれは、ずっとリーナが肌身離さずに持っていた為、くたびれていた。
「必ず渡すから、安心しろよ」
オルガのこの言葉だけで、リーナの心は救われた。
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