上 下
3 / 50

第3話 えっ!?ヒロイン?

しおりを挟む
休み明けに学園でヒロインのオルガを探し始めたリーナは、すぐにその存在を見つけられると思っていた。何故なら、漫画の中でオルガは、中庭で取り巻きと一緒に談笑していることが多かったからだ。ビクトリアとは違い、取り巻きの存在はオルガが望むのもではなかったが、彼女を慕って自然と集まるのだ。

しかし中庭を探すもそんな集団、影も形もない。リーナは、レオナを頼ることにする。

「ねえ、オルガ様って、学園をお休みか何かされてるのかしら?」

するとリーナの問いにレオナは「えっ!?」と意外な反応を示す。

(えっ!って、それはこっちの反応よ。なに?私、何か変なこと聞いたかしら?)

リーナの心配をよそにレオナは声を潜めて言った。

「リーナ、貴女まさかオルガ様に話があるの?」

「えっと・・話はないけれど、ちょっとお姿を拝見しようかと・・・」

リーナの答えにレオナは、さらに声を落として「やめておきなさいよ。“触らぬ神に祟りなし”よ」と忠告した。思いがけない親友の言葉にリーナは「へっ?それどういうこと?何よそれ」と言った。

リーナの反応にレオナは親友の肩に手を置くと、憂いの眼差しを向ける。

「リーナ、貴女本当にどうしちゃったのよ。この間から変よ・・やっぱりお医者様にちゃんと診てもらいなさいよ」

「お医者様なんて、とんでもない!ごめんね、心配かけて・・・でも本当に覚えてないみたいなの。どういうことか教えてくれる?」

レオナは何か言いかけたが、口を閉じるとリーナをジッと見つめた。

「私が言うより、自分の目で見てきなさい。その方が納得できるでしょう」

レオナはそう言うと、オルガがいるであろう場所を教えた。

レオナに言われたのは、放課後の校舎裏だった。何でこんな所に?と思ったが、レオナの情報を信じて恐る恐る行ってみると、そこには確かにヒロイン役であるオルガの姿があった。

チョコレートブラウンのフワフワの巻き髪にオレンジ色の瞳、漫画で見ていたオルガそのものだった。

(嗚呼!オルガ居たわ!やっぱり美しいわね。あの凛としたオーラが、周囲と王子を虜にするのよね。もうレオナったら、どこが“近付かないほうがいい”よ。ヒロインそのものじゃない)

建物の陰から見守るリーナの瞳は、恋する乙女のそれだった。しかし、次の瞬間リーナの目に信じられない光景が映る。

手から黒い炎のようなものを出現させたオルガがそれを軽く投げると、少し離れたところにあった花に飛んでいき、花を覆った。そしてあっという間に黒い炎が消えると、後に残ったのは形は花のままの灰色の置物のようなものだった。

(えっ?なに?魔法?ベタ恋の世界に魔法なんてなかったわよ)

リーナは自分の目が信じられず、もう少しよく見ようと身を乗り出す。しかし、足元にあった小石を蹴ってしまい、気配に気付いたオルガと目がバッチリ合ってしまった。

(あーれー・・これはヤバい雰囲気かしら・・・)

リーナの存在を見つけたオルガは目を見開くと、一瞬戸惑いを見せる。しかしすぐに居住まいを正すと、ツカツカと真っ直ぐにリーナへと近付いてきた。

リーナは逃げても無駄だというのに、キョロキョロと視線を彷徨わせ、逃げる手立てを考える。しかしそんなリーナの足掻きも虚しく、オルガは目の前までやって来ると、立ち止まる。

「今の見た?」

美しく透き通るようなオルガのその声は、リーナの心をどこまでも凍えさせた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那
恋愛
 転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。  このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?  使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います! ※小説家になろうでも掲載しています

農地スローライフ、始めました~婚約破棄された悪役令嬢は、第二王子から溺愛される~

可児 うさこ
恋愛
前世でプレイしていたゲームの悪役令嬢に転生した。公爵に婚約破棄された悪役令嬢は、実家に戻ったら、第二王子と遭遇した。彼は王位継承より農業に夢中で、農地を所有する実家へ見学に来たらしい。悪役令嬢は彼に一目惚れされて、郊外の城で一緒に暮らすことになった。欲しいものを何でも与えてくれて、溺愛してくれる。そんな彼とまったり農業を楽しみながら、快適なスローライフを送ります。

悪役令嬢に転生したので落ちこぼれ攻略キャラを育てるつもりが逆に攻略されているのかもしれない

亜瑠真白
恋愛
推しキャラを幸せにしたい転生令嬢×裏アリ優等生攻略キャラ  社畜OLが転生した先は乙女ゲームの悪役令嬢エマ・リーステンだった。ゲーム内の推し攻略キャラ・ルイスと対面を果たしたエマは決心した。「他の攻略キャラを出し抜いて、ルイスを主人公とくっつけてやる!」と。優等生キャラのルイスや、エマの許嫁だった俺様系攻略キャラのジキウスは、ゲームのシナリオと少し様子が違うよう。 エマは無事にルイスと主人公をカップルにすることが出来るのか。それとも…… 「エマ、可愛い」 いたずらっぽく笑うルイス。そんな顔、私は知らない。

ゲームの序盤に殺されるモブに転生してしまった

白雲八鈴
恋愛
「お前の様な奴が俺に近づくな!身の程を知れ!」 な····なんて、推しが尊いのでしょう。ぐふっ。わが人生に悔いなし! ここは乙女ゲームの世界。学園の七不思議を興味をもった主人公が7人の男子生徒と共に学園の七不思議を調べていたところに学園内で次々と事件が起こっていくのです。 ある女生徒が何者かに襲われることで、本格的に話が始まるゲーム【ラビリンスは人の夢を喰らう】の世界なのです。 その事件の開始の合図かのように襲われる一番目の犠牲者というのが、なんとこの私なのです。 内容的にはホラーゲームなのですが、それよりも私の推しがいる世界で推しを陰ながら愛でることを堪能したいと思います! *ホラーゲームとありますが、全くホラー要素はありません。 *モブ主人のよくあるお話です。さらりと読んでいただけたらと思っております。 *作者の目は節穴のため、誤字脱字は存在します。 *小説家になろう様にも投稿しております。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした

犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。 思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。 何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

姉に全てを奪われるはずの悪役令嬢ですが、婚約破棄されたら騎士団長の溺愛が始まりました

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したら、婚約者の侯爵と聖女である姉の浮気現場に遭遇した。婚約破棄され、実家で贅沢三昧をしていたら、(強制的に)婚活を始めさせられた。「君が今まで婚約していたから、手が出せなかったんだ!」と、王子達からモテ期が到来する。でも私は全員分のルートを把握済み。悪役令嬢である妹には、必ずバッドエンドになる。婚活を無双しつつ、フラグを折り続けていたら、騎士団長に声を掛けられた。幼なじみのローラン、どのルートにもない男性だった。優しい彼は私を溺愛してくれて、やがて幸せな結婚をつかむことになる。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

転生できる悪役令嬢に転生しました。~執着婚約者から逃げられません!

九重
恋愛
気がつけば、とある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた主人公。 しかし、この悪役令嬢は十五歳で死んでしまう不治の病にかかった薄幸な悪役令嬢だった。 ヒロインをいじめ抜いたあげく婚約者に断罪され、心身ともに苦しみ抜いて死んでしまう悪役令嬢は、転生して再び悪役令嬢――――いや悪役幼女として活躍する。 しかし、主人公はそんなことまっぴらゴメンだった。 どうせ転生できるならと、早々に最初の悪役令嬢の人生から逃げだそうとするのだが…… これは、転生できる悪役令嬢に転生した主人公が、執着婚約者に捕まって幸せになる物語。

処理中です...