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第3章
第175話 リリス14歳 反撃2
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やって来たリリスにアルミーダは、指示を出す。
「いいかい。この木を中心に地面に魔法陣が現れたら、その粉を全体に撒いとくれ」
「はいっ、分かりました」
「それじゃあ、始めようかね」
リリスは邪魔にならないよう端に寄った。アルミーダはサラマンデルの封印されてる木を見上げると、何か言った。それは声にならないほど小さくリリスの耳に届かなかった。そして彼女は両膝をつき、右の手のひらを地面に当てると、ブツブツと詠唱し始めた。しばらくすると辺り一面の地面が白い光に覆われ、魔法陣が現れ始めた。それはゆっくりと、そしてはっきりと円の中に七芒星を描いていた。アルミーダからチラリと視線を送られたリリスが手に持つ小瓶の蓋を開け、中の粉を撒き始める。素早く、しかし丁寧に撒いた。すると全て撒き終えた魔法陣に文字が浮かび上がった。その文字に気を取られたリリスに詠唱を終えたアルミーダが声をかけた。
「終わったよ。結界張ってあるから、この魔法陣から出るんじゃないよ」
結界を張り終えたアルミーダが立ち上がるのを、支えながらリリスは「分かりました」と返事をした。次にアルミーダは石を持ってくるよう言う。それに従いリリスは石を手に取った。見た目はなんの変哲もないただの石だった。このただの石をどのように使うのか興味津々で質問しそうになったが、アルミーダからお小言をもらうことが容易に想像できたためリリスは我慢した。石を差し出すと、アルミーダは次の指示を出した。
「いいかい。次はあたしが合図を出したら、そこの枝をこの炎に投げ入れな」
そう言ったアルミーダは、顎でサラマンデルの木があげる炎を指した。そしてリリスを人差し指で指し、言葉を続けた。
「ただし、ただ投げりゃいいってもんじゃないよ。相手は闇魔法だからね。あんたの気持ちを込めるんだよ。いいね」
(アルミーダさん、人を指で指してはダメです・・・でも気持ちを込めるって、そんなふんわりしたアドバイス・・大丈夫かな・・・・)
リリスの表情に表れた戸惑いに気付いたアルミーダが付け足した。
「”サラマンデルを助けたい”って、精一杯念じな。それだけだよ」
その言葉にリリスは「はいっ」と返事すると、枝を取りに行った。枝を手にのばし取ろうとするが、それはやけに重かった。
「重っ・・何これ」
先程、鞄から取り出した時はこんなに重くなかった。しかし、たった30センチほどの長さの細い枝とは思えないほど今は重い。
「ほらっ、早くしなっ」
アルミーダの声に急かされ、両手で枝に触れたその時、結界の外が一層騒がしくなった。見ると、アルバスとディファナの戦闘が激しさを増していた。そしてアルバスの放った魔法をディファナが避けた結果、それがリリス目掛けて飛んできた。突然出来事にリリスは身体が動かず、目を瞑るしかなかった。そして直後、魔法が結界に衝突した音がリリスを襲う。しかし結界のおかけで耳に轟音が届いただけで済んだ。
「何してるんだいっ!外のことは気にすんじゃないよ!」
「はいぃっ!」
リリスは大きな声で応えると、両手で枝を取り立ち上がる。それを「いい返事だ」っと珍しく褒めたアルミーダは、ローブのフードを深々と被った。
「さて・・それじゃあ、あいつのケツでも拭いてやるかね」
そう言ったアルミーダは燃える木の前に立つと、左手に持った石を前に出し、右手を石にかざし、次に念じ始めた。すると突然、手の上の石が真っ二つに割れた。目の前の光景にリリスは釘付けになる。割れた石の断面は、七色に輝いていた。すると、その断面から七色の光が木に降り注ぐ。それは夜の闇に浮かぶ虹のようでもあり、降り注ぐ色とりどりの流れ星のようでもあった。
(すごい、すごい!なんてキレイなの・・・あっ!見惚れてちゃダメだ。集中集中・・・)
七色の光に照らされた木は変わらず青白い炎をあげていたが、しばらくすると、その炎が揺らぎ始めた。今まではゴウッと勢いよく燃えていたが、所々その勢いに弱さがみられる。
アルミーダは、念じることを一瞬も止めなかった。深く被ったフードから覗く顎から汗と覚しき雫が垂れる。リリスはいつの間にか枝を持つ手にギュッと力を込め、祈るようなポーズで見守っていた。
そして炎がユラユラと今までになく揺れ、所々中から得体のしれない黒い蛇のようなものが覗くようになる。やがてその黒い蛇が炎のまわりをのたうち回るように激しくうごめき始めたその時、アルミーダが石にかざしていた手を挙げた。
「今だっ!」
アルミーダの合図を聞いたリリスは、手に持った枝を無我夢中で炎へと投げ入れた。もちろん想いも込めて。
「いいかい。この木を中心に地面に魔法陣が現れたら、その粉を全体に撒いとくれ」
「はいっ、分かりました」
「それじゃあ、始めようかね」
リリスは邪魔にならないよう端に寄った。アルミーダはサラマンデルの封印されてる木を見上げると、何か言った。それは声にならないほど小さくリリスの耳に届かなかった。そして彼女は両膝をつき、右の手のひらを地面に当てると、ブツブツと詠唱し始めた。しばらくすると辺り一面の地面が白い光に覆われ、魔法陣が現れ始めた。それはゆっくりと、そしてはっきりと円の中に七芒星を描いていた。アルミーダからチラリと視線を送られたリリスが手に持つ小瓶の蓋を開け、中の粉を撒き始める。素早く、しかし丁寧に撒いた。すると全て撒き終えた魔法陣に文字が浮かび上がった。その文字に気を取られたリリスに詠唱を終えたアルミーダが声をかけた。
「終わったよ。結界張ってあるから、この魔法陣から出るんじゃないよ」
結界を張り終えたアルミーダが立ち上がるのを、支えながらリリスは「分かりました」と返事をした。次にアルミーダは石を持ってくるよう言う。それに従いリリスは石を手に取った。見た目はなんの変哲もないただの石だった。このただの石をどのように使うのか興味津々で質問しそうになったが、アルミーダからお小言をもらうことが容易に想像できたためリリスは我慢した。石を差し出すと、アルミーダは次の指示を出した。
「いいかい。次はあたしが合図を出したら、そこの枝をこの炎に投げ入れな」
そう言ったアルミーダは、顎でサラマンデルの木があげる炎を指した。そしてリリスを人差し指で指し、言葉を続けた。
「ただし、ただ投げりゃいいってもんじゃないよ。相手は闇魔法だからね。あんたの気持ちを込めるんだよ。いいね」
(アルミーダさん、人を指で指してはダメです・・・でも気持ちを込めるって、そんなふんわりしたアドバイス・・大丈夫かな・・・・)
リリスの表情に表れた戸惑いに気付いたアルミーダが付け足した。
「”サラマンデルを助けたい”って、精一杯念じな。それだけだよ」
その言葉にリリスは「はいっ」と返事すると、枝を取りに行った。枝を手にのばし取ろうとするが、それはやけに重かった。
「重っ・・何これ」
先程、鞄から取り出した時はこんなに重くなかった。しかし、たった30センチほどの長さの細い枝とは思えないほど今は重い。
「ほらっ、早くしなっ」
アルミーダの声に急かされ、両手で枝に触れたその時、結界の外が一層騒がしくなった。見ると、アルバスとディファナの戦闘が激しさを増していた。そしてアルバスの放った魔法をディファナが避けた結果、それがリリス目掛けて飛んできた。突然出来事にリリスは身体が動かず、目を瞑るしかなかった。そして直後、魔法が結界に衝突した音がリリスを襲う。しかし結界のおかけで耳に轟音が届いただけで済んだ。
「何してるんだいっ!外のことは気にすんじゃないよ!」
「はいぃっ!」
リリスは大きな声で応えると、両手で枝を取り立ち上がる。それを「いい返事だ」っと珍しく褒めたアルミーダは、ローブのフードを深々と被った。
「さて・・それじゃあ、あいつのケツでも拭いてやるかね」
そう言ったアルミーダは燃える木の前に立つと、左手に持った石を前に出し、右手を石にかざし、次に念じ始めた。すると突然、手の上の石が真っ二つに割れた。目の前の光景にリリスは釘付けになる。割れた石の断面は、七色に輝いていた。すると、その断面から七色の光が木に降り注ぐ。それは夜の闇に浮かぶ虹のようでもあり、降り注ぐ色とりどりの流れ星のようでもあった。
(すごい、すごい!なんてキレイなの・・・あっ!見惚れてちゃダメだ。集中集中・・・)
七色の光に照らされた木は変わらず青白い炎をあげていたが、しばらくすると、その炎が揺らぎ始めた。今まではゴウッと勢いよく燃えていたが、所々その勢いに弱さがみられる。
アルミーダは、念じることを一瞬も止めなかった。深く被ったフードから覗く顎から汗と覚しき雫が垂れる。リリスはいつの間にか枝を持つ手にギュッと力を込め、祈るようなポーズで見守っていた。
そして炎がユラユラと今までになく揺れ、所々中から得体のしれない黒い蛇のようなものが覗くようになる。やがてその黒い蛇が炎のまわりをのたうち回るように激しくうごめき始めたその時、アルミーダが石にかざしていた手を挙げた。
「今だっ!」
アルミーダの合図を聞いたリリスは、手に持った枝を無我夢中で炎へと投げ入れた。もちろん想いも込めて。
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