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第3章

第169話 リリス14歳 覚醒1

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「ヘンリー・・」

正気に戻ったリリスは、ヘンリーに駆け寄り抱きついた。その身体をしっかりと受け止めるヘンリー。彼女の背中へまわした腕に力を込める。

「リリィ・・・」

そう愛しい婚約者の名を呼ぶ彼の顔は、安堵と愛おしさが溢れていた。

「何よ!何なのよ!」

目の前の光景にディファナはソファーから立ち上がり、地団駄を踏んだ。

「何で私の魔法が解けるのよ!私は魔女よ!それなのに私の魔法を解くなんて・・・何なのよ、あなた達!許さない!ぜーったいに許さないんだからっ!」

「何が”許さない”よ!それはこっちのセリフだわっ!」

ヘンリーの腕から抜け出たリリスが言い返す。リリスはディファナの独りよがりな言い分に頭にきていた。肩を震わせ拳を握りしめ、さらに言葉を続ける。

「人を好きになるのも結構。アルミーダさんに執着するのも結構。ただ・・関係のない聖獣や私たちを巻き込むなんて、最低だわ!」

「なっ!お前に何が分かる!?私の気持ちが分かってたまるかっ!」

「分かるわよ!同じ女性だもの!今の貴女が何百年生きてるのか知らないけど、一人で寂しかったんでしょうよ!ただ、いまの貴女はただの子供よ!」

「なにを偉そうに!私は子供じゃない!」

「いいえ!子供だわ!だって今の貴女は、寂しくて仕方ないアルミーダさんに構ってほしいだけの”構ってちゃん”だもの!いい加減大人になりなさいっ!」

リリスの説教にディファナは悔しそうに唇を噛み締めている。その美しい顔は怒りで歪んでいた。

「黙って聞いていれば、何よ。そっちこそ子供じゃない!・・・子供で悪い!?そうよ!寂しいわよ!648年間生きてきて結局一人ぼっち・・”ぼっち”舐めるなっ!」

そう叫んだディファナは怒りのオーラを身に纏い、魔法を放ってきた。あっという間の行動にヘンリーたちは逃げることができない。思わず目を瞑ったヘンリーが目を開けると、目の前に赤いオーラを身に纏ったリリスが立っていた。彼女からは普段は感じることのない何とも言いようのない魔力を感じる。再びディファナが魔法を放ち、それは黒い渦のなってリリスたちを襲う。しかしリリスの纏うオーラによって、それは呆気なくかき消された。ディファナはさらに何度も攻撃を繰り返す。徐々に放つ魔法の威力は増し、リリスのオーラで消される時の衝撃は少し離れたところにいるスタイラスたちが倒されてしまいそうなほどだった。

「はっ!なに?貴女何なのよ!・・・・もうこうなったら、手加減は終わりよ!」

そこでディファナの雰囲気が一瞬で変わった。その威圧するような雰囲気に圧倒されたヘンリーたちは、ディファナの前では、蛇に睨まれた蛙だった。しかしそんな男たちをよそにリリスだけは、違った。彼女の赤いオーラは青白く変わり、それは天を目掛けて一段と大きくなる。ふとリリスの足元を見ると、いつの間にかメイルとネージュが寄り添っていた。二匹は、彼女の傍らで魔女への敵意を隠さなかった。

「雑魚が揃ったところで、何ができる!?思い上がりも甚だしい!」

ディファナが詠唱を始めると、彼女から禍々しい空気を感じた。そして、それは徐々に強くなる。

「ネージュ、メイル・・力を貸して」

リリスは足元の二匹にそうお願いすると、微笑んだ。そして大きく息を吸うと、炎の竜巻を起こした。それはみるみる大きくなる。そして周りの木々を超えそうなほどになると、リリスは手を前へ振った。すると竜巻は勢いよくディファナ目掛けて飛んでいった。すぐに竜巻はディファナを飲み込む。

「すごい・・リリス嬢はあれほどの魔法の使い手だったのか・・・・」

「・・・授業では、あそこまで・・きっと二匹の助けもあってだよ」

アシュリーの独り言にスタイラスがそう返すと、ネージュとメイルに優しい眼差しを向けた。アシュリーの言葉通りリリスの起こした竜巻の勢いは、すごかった。ディファナを飲み込んだ後も回転速度は上がり、炎も青白く変化した。これなら魔女に傷の一つでも負わせることができるかもしれないと皆が思ったその時、中から黒い炎が溢れ出してきた。それはあっという間に青白い炎を飲み込み、黒い竜巻に取って変わった。そして竜巻からゆっくりと姿を現したディファナ。彼女は「フフフッ」と笑みをこぼす。

「なかなか面白かったわ。ただ・・・この程度じゃ私には敵わないって言ったわよね!」

そう言い放つと、横で渦を巻く竜巻をリリスへと放ってきた。
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