102 / 202
第2章
第93話 リリス13歳 愛情表現頑張ってみた4
しおりを挟む
カフェでお土産にといくつかケーキを包んで貰い、店を後にしたリリスたちは帰宅の途に着いていた。
「リリィ、今日はとても驚いたし、楽しかったよ。まさか芝居をプランしてくれてるとは思ってなかったからね」
「ホント?ホントにホント?じゃあ、サプライズは成功ね」
リリスは興奮して前のめりに言った。それにヘンリーは微笑むと「あぁ、でも一番驚かされたのはお義父上だね」と言い、リリスもそれに頷いた。
「まさかお父様があんな手配をしてたなんて、知らなかった。今朝もいつも通りなーんにも言わずにお仕事に行ったのよ」
「きっと今日は落ち着かなかっただろうね。ずっとリリィが驚いているかなってソワソワしてそうじゃない?」
ダーウィンの姿を想像したふたりは顔を見合わせ、笑った。
そして、リリスは座席の端に置いていたバッグから小さな包みを取り出し、ヘンリーに渡す。「お誕生日のプレゼント・・気に入ってくれるといいんだけど」と言い、微笑んだ。ヘンリーはパッと笑顔になると「開けていい?」と聞き、彼女が頷くと包みをゆっくり開けた。
「あっ、これ。欲しかったやつだ」
彼の手には一本のペンがあった。
「リリィ、いつから準備してくれたの?このペンって王都で一番の職人が作るペンだよね。注文してから手に入れるまで何ヶ月もかかるって・・しかも名前まで入ってる」
ヘンリーの嬉しそうな様子にリリスは満足そうに何度も頷いた。
「普段使えるものがいいと思って。それにペンなら学園でも使えるし」
「そうだね。このペンで勉強したら、捗りそうだよ。それにリリィとの結婚証書のサインもこのペンでしたら、素敵じゃないかい?」
「そっ、そんなに先の話・・」
「僕としてはリリィが成人したら、すぐにでも結婚したいからね。そうするとあと2年半足らずだよ。その前から結婚式の準備があるから、あっという間だろう?」
王国ではお互いに16歳の誕生日を迎えると結婚できる。平民ではそうする者も多いが、国内のいずれかの学生になることが多い貴族は、卒業してから結婚するのが慣例だった。どこの学び舎を卒業するかによって得られるステータスも違い、社交において重要な役割も担っていた。また婚約者のいない者にとって、より良い結婚相手探しの手助けにもなるからだ。もし学生のうちに結婚の運びとなった場合は、退学するというのが当たり前だった。
「ちょっと、ヘンリー!成人してすぐって、私たちまだ学生よ!そんなの聞いたことがないわ!」
リリスは慌てて言った。ヘンリーなら本当に周りを納得させ、結婚しそうだと思ったからだ。リリスの慌てっぷりにヘンリーはクスクス笑うと穏やかな声で言った。
「リリィ、冗談だよ。いや、成人してすぐ結婚したいというのは冗談じゃなくて僕の本心だよ。でも流石にリリィが卒業するまでは待つから、あと・・4年半か。長いなぁ・・今日ほどリリィと同じ年に生まれなかったことを恨んだことはないね」
ヘンリーはそう口にすると、リリスの漆黒の長い髪を一束手に取ると、それに唇を落とした。その仕草を妙に色っぽく感じたリリスの頬は一瞬で赤く染まり、彼から目を離せなくなった。
「リリィ」
ヘンリーがリリスの瞳を見つめて艶っぽい声で呼ぶ。その声にリリスは思わずあのボックス席での出来事を思い出した。
「だっ、だっ、ダメッ!」
リリスはそう叫ぶと、思わず目をギュッと瞑った。
・・・・・・
(あれっ?なにも・・ない・・)
恐る恐るリリスは目を開けると、そこには必死に笑いを堪えているヘンリーの姿があった。
「クックッ・・もうリリィは何を想像したのかなぁ。クスックッ・・・」
(悔しいぃぃぃ・・かっ、完全にからかわれたぁ)
「あっ、あれはヘンリーが悪いのよ。あっ、あんなことす・・・」
リリスは自分の言葉にさらに顔を真っ赤にし、頭を抱えた。そしてジト目で彼を見た。
(もう人をなんだと思ってるのよ。そんなに笑わなくてもいいじゃない・・ヘンリーのイジワル・・)
「リリィ、今日はとても驚いたし、楽しかったよ。まさか芝居をプランしてくれてるとは思ってなかったからね」
「ホント?ホントにホント?じゃあ、サプライズは成功ね」
リリスは興奮して前のめりに言った。それにヘンリーは微笑むと「あぁ、でも一番驚かされたのはお義父上だね」と言い、リリスもそれに頷いた。
「まさかお父様があんな手配をしてたなんて、知らなかった。今朝もいつも通りなーんにも言わずにお仕事に行ったのよ」
「きっと今日は落ち着かなかっただろうね。ずっとリリィが驚いているかなってソワソワしてそうじゃない?」
ダーウィンの姿を想像したふたりは顔を見合わせ、笑った。
そして、リリスは座席の端に置いていたバッグから小さな包みを取り出し、ヘンリーに渡す。「お誕生日のプレゼント・・気に入ってくれるといいんだけど」と言い、微笑んだ。ヘンリーはパッと笑顔になると「開けていい?」と聞き、彼女が頷くと包みをゆっくり開けた。
「あっ、これ。欲しかったやつだ」
彼の手には一本のペンがあった。
「リリィ、いつから準備してくれたの?このペンって王都で一番の職人が作るペンだよね。注文してから手に入れるまで何ヶ月もかかるって・・しかも名前まで入ってる」
ヘンリーの嬉しそうな様子にリリスは満足そうに何度も頷いた。
「普段使えるものがいいと思って。それにペンなら学園でも使えるし」
「そうだね。このペンで勉強したら、捗りそうだよ。それにリリィとの結婚証書のサインもこのペンでしたら、素敵じゃないかい?」
「そっ、そんなに先の話・・」
「僕としてはリリィが成人したら、すぐにでも結婚したいからね。そうするとあと2年半足らずだよ。その前から結婚式の準備があるから、あっという間だろう?」
王国ではお互いに16歳の誕生日を迎えると結婚できる。平民ではそうする者も多いが、国内のいずれかの学生になることが多い貴族は、卒業してから結婚するのが慣例だった。どこの学び舎を卒業するかによって得られるステータスも違い、社交において重要な役割も担っていた。また婚約者のいない者にとって、より良い結婚相手探しの手助けにもなるからだ。もし学生のうちに結婚の運びとなった場合は、退学するというのが当たり前だった。
「ちょっと、ヘンリー!成人してすぐって、私たちまだ学生よ!そんなの聞いたことがないわ!」
リリスは慌てて言った。ヘンリーなら本当に周りを納得させ、結婚しそうだと思ったからだ。リリスの慌てっぷりにヘンリーはクスクス笑うと穏やかな声で言った。
「リリィ、冗談だよ。いや、成人してすぐ結婚したいというのは冗談じゃなくて僕の本心だよ。でも流石にリリィが卒業するまでは待つから、あと・・4年半か。長いなぁ・・今日ほどリリィと同じ年に生まれなかったことを恨んだことはないね」
ヘンリーはそう口にすると、リリスの漆黒の長い髪を一束手に取ると、それに唇を落とした。その仕草を妙に色っぽく感じたリリスの頬は一瞬で赤く染まり、彼から目を離せなくなった。
「リリィ」
ヘンリーがリリスの瞳を見つめて艶っぽい声で呼ぶ。その声にリリスは思わずあのボックス席での出来事を思い出した。
「だっ、だっ、ダメッ!」
リリスはそう叫ぶと、思わず目をギュッと瞑った。
・・・・・・
(あれっ?なにも・・ない・・)
恐る恐るリリスは目を開けると、そこには必死に笑いを堪えているヘンリーの姿があった。
「クックッ・・もうリリィは何を想像したのかなぁ。クスックッ・・・」
(悔しいぃぃぃ・・かっ、完全にからかわれたぁ)
「あっ、あれはヘンリーが悪いのよ。あっ、あんなことす・・・」
リリスは自分の言葉にさらに顔を真っ赤にし、頭を抱えた。そしてジト目で彼を見た。
(もう人をなんだと思ってるのよ。そんなに笑わなくてもいいじゃない・・ヘンリーのイジワル・・)
0
お気に入りに追加
580
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
「あなたのことはもう忘れることにします。 探さないでください」〜 お飾りの妻だなんてまっぴらごめんです!
友坂 悠
恋愛
あなたのことはもう忘れることにします。
探さないでください。
そう置き手紙を残して妻セリーヌは姿を消した。
政略結婚で結ばれた公爵令嬢セリーヌと、公爵であるパトリック。
しかし婚姻の初夜で語られたのは「私は君を愛することができない」という夫パトリックの言葉。
それでも、いつかは穏やかな夫婦になれるとそう信じてきたのに。
よりにもよって妹マリアンネとの浮気現場を目撃してしまったセリーヌは。
泣き崩れ寝て転生前の記憶を夢に見た拍子に自分が生前日本人であったという意識が蘇り。
もう何もかも捨てて家出をする決意をするのです。
全てを捨てて家を出て、まったり自由に生きようと頑張るセリーヌ。
そんな彼女が新しい恋を見つけて幸せになるまでの物語。
目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。
だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。
そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。
全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。
気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。
そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。
すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる