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第2章
第31.5話 幕間 ヘンリー視点
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(今日も僕の婚約者がかわいすぎる)
僕は隣を歩く少女に気付かれないようにチラッと見る。
同時に彼女の側を通り過ぎて行く男性の視線が、隣の少女に向くのを感じていた。
(ああ、やっぱり。リリスは自分の魅力を自覚しないとね。相変わらず男たちの視線に気付いてないのか)
そう考えながら、まわりへ牽制の鋭い視線を送る。あくまでもさり気なく。
しばらく歩いていると見知らぬ店があった。彼女が店を覗きこんでいたので、僕は声をかける。
「気になるね。入ってみようか」
中に入るとフルーツの香りがした。たくさんのキャンディーが置かれており甘い匂いが視覚と嗅覚を刺激し、心地の良い店だった。
「屋敷のみんなにお土産を買いたい」
と彼女が言うので「いいよ。待ってるから、ゆっくり選んでね」と僕は言った。
(リリス、かわいいなぁ。目がキラキラしてるよ)
彼女がニコニコしながら、お土産を選んでいる姿に僕も顔が緩む。
選び終わった彼女が店の奥に行くのを後ろから付いて行った。
その先には見事な白い髪の老女がいた。
彼女がお会計を済ませ、店を出ようとすると「ちょっと待ちな」と老女が僕たちを引き止めた。
すると老女は彼女になにやらキレイにラッピングされた包みを渡した。
(???なんだ?)
僕は彼女が受け取った包みを見る。
「開店記念でプレゼントしてるのさ。持ってお行きっ」と老女は言った。
(開店記念?ああ、オープンしたばかりなのか。だから知らなかっんだ)
「まあ、ありがとうございます。中には何が?」
彼女が笑顔で聞く。
すると老女は意味ありげに笑いながら言った。
「夢見のキャンディーだよ」
「「夢見のキャンディー?」」
想像もしなかった中身に思わず彼女と声が揃ってしまった。
「ああ、そうさ。それをなめてから眠りにつくと、楽しい夢が見られるのさ。3つ入ってるから、そこの男前と分けるといい」
隣の彼女は老女の言葉に興味を惹かれ、喜んでるようだ。
(何だそれ。そんなキャンディー初めて聞いたぞ。リリスは素直に喜んでるけど、そんなの食べて大丈夫なのか?)
僕が少し怪しんでいると
「食べたくなけりゃ、捨ててくれて構わないよ。ほら次の客が待ってるから退いとくれ」と老女が言った。
邪魔してはいけないので、僕たちは店を出た。
店を出ると「なんか面白いお婆さんだったね」と僕は言った。
それに彼女は「ええ、しかもお土産ももらってしまって」と言い、嬉しそうに包みを見た。
そんな彼女がたまらなく愛おしくて、1つ頂戴ねとお願いした。
そろそろ帰りましょうとの彼女の言葉を合図に僕たちは帰りの馬車が待つ場所へ向かった。
帰りの馬車の中で彼女は早速、老女からもらった包みを開ける。
そこには老女の言葉通りキャンディーが3つ入っていた。なないろのマーブル模様のキャンディーで、色から味が想像できなかった。
彼女は1つ手に取ると「はい」と言って、眩しい笑顔と一緒にそれを渡してくれた。
「ありがとう。早速、今夜試してみるよ。リリスはどんな夢がみたいの?」
と僕が聞いた。
すると彼女はしばらく考えて
「そうねぇ。お菓子の家に住んで毎日スイーツに囲まれて暮らすとか、すごい魔法を使って大活躍するとか・・あげたらキリがないかも」
(僕との夢じゃないのか。ここはお仕置きが必要だね)
僕の中に子供のようなイタズラ心が顔を出す。
「リリス、そこは僕との夢って言ってくれたら嬉しいのに。これはまだまだ僕の君への想いが伝わってないということだね」
僕はそう言うと、向かいに座る彼女の頬へ手を伸ばし、そっと触れる。
そして「いけない子だ」と甘い笑顔を向け、そのまま彼女の鼻を軽くつまんだ。
「ふがっ・・」僕の突然のイタズラに意表を突かれた彼女がかわいく睨んできたけど、(これぐらい許されるよね)と僕は思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その夜、僕は昼間貰ったキャンディーを食べるか悩んでいた。
(これは気軽に食べていいものなのか?楽しい夢を見るなんてそんな都合のいい話・・・でもリリスのあの様子じゃ、今夜絶対に食べるよなぁ。今頃、もう夢の中かも・・・・・よしっ!)
それからの僕の行動は早かった。これから見る夢を想像しながら、キャンディーをなめてベッドへ横になる。
(どんな夢を見るのかな。他国へ彼女と一緒に旅行する夢もいいね。見た事もない景色にリリスはきっと目を輝かせるよ。うん、彼女とならどこへ行っても何をしても楽しいな)
そんなことを考えながら、僕は夢の中へ入っていった。
翌朝、目が醒め、いままで見ていた夢を思い出していると自然と僕の顔が綻んだ。
(リリスとの新婚生活とか最高だったな。夢の中でも彼女はかわいかったな)
僕はしばらく幸せな気分で、夢の続きを想像していた。
僕は隣を歩く少女に気付かれないようにチラッと見る。
同時に彼女の側を通り過ぎて行く男性の視線が、隣の少女に向くのを感じていた。
(ああ、やっぱり。リリスは自分の魅力を自覚しないとね。相変わらず男たちの視線に気付いてないのか)
そう考えながら、まわりへ牽制の鋭い視線を送る。あくまでもさり気なく。
しばらく歩いていると見知らぬ店があった。彼女が店を覗きこんでいたので、僕は声をかける。
「気になるね。入ってみようか」
中に入るとフルーツの香りがした。たくさんのキャンディーが置かれており甘い匂いが視覚と嗅覚を刺激し、心地の良い店だった。
「屋敷のみんなにお土産を買いたい」
と彼女が言うので「いいよ。待ってるから、ゆっくり選んでね」と僕は言った。
(リリス、かわいいなぁ。目がキラキラしてるよ)
彼女がニコニコしながら、お土産を選んでいる姿に僕も顔が緩む。
選び終わった彼女が店の奥に行くのを後ろから付いて行った。
その先には見事な白い髪の老女がいた。
彼女がお会計を済ませ、店を出ようとすると「ちょっと待ちな」と老女が僕たちを引き止めた。
すると老女は彼女になにやらキレイにラッピングされた包みを渡した。
(???なんだ?)
僕は彼女が受け取った包みを見る。
「開店記念でプレゼントしてるのさ。持ってお行きっ」と老女は言った。
(開店記念?ああ、オープンしたばかりなのか。だから知らなかっんだ)
「まあ、ありがとうございます。中には何が?」
彼女が笑顔で聞く。
すると老女は意味ありげに笑いながら言った。
「夢見のキャンディーだよ」
「「夢見のキャンディー?」」
想像もしなかった中身に思わず彼女と声が揃ってしまった。
「ああ、そうさ。それをなめてから眠りにつくと、楽しい夢が見られるのさ。3つ入ってるから、そこの男前と分けるといい」
隣の彼女は老女の言葉に興味を惹かれ、喜んでるようだ。
(何だそれ。そんなキャンディー初めて聞いたぞ。リリスは素直に喜んでるけど、そんなの食べて大丈夫なのか?)
僕が少し怪しんでいると
「食べたくなけりゃ、捨ててくれて構わないよ。ほら次の客が待ってるから退いとくれ」と老女が言った。
邪魔してはいけないので、僕たちは店を出た。
店を出ると「なんか面白いお婆さんだったね」と僕は言った。
それに彼女は「ええ、しかもお土産ももらってしまって」と言い、嬉しそうに包みを見た。
そんな彼女がたまらなく愛おしくて、1つ頂戴ねとお願いした。
そろそろ帰りましょうとの彼女の言葉を合図に僕たちは帰りの馬車が待つ場所へ向かった。
帰りの馬車の中で彼女は早速、老女からもらった包みを開ける。
そこには老女の言葉通りキャンディーが3つ入っていた。なないろのマーブル模様のキャンディーで、色から味が想像できなかった。
彼女は1つ手に取ると「はい」と言って、眩しい笑顔と一緒にそれを渡してくれた。
「ありがとう。早速、今夜試してみるよ。リリスはどんな夢がみたいの?」
と僕が聞いた。
すると彼女はしばらく考えて
「そうねぇ。お菓子の家に住んで毎日スイーツに囲まれて暮らすとか、すごい魔法を使って大活躍するとか・・あげたらキリがないかも」
(僕との夢じゃないのか。ここはお仕置きが必要だね)
僕の中に子供のようなイタズラ心が顔を出す。
「リリス、そこは僕との夢って言ってくれたら嬉しいのに。これはまだまだ僕の君への想いが伝わってないということだね」
僕はそう言うと、向かいに座る彼女の頬へ手を伸ばし、そっと触れる。
そして「いけない子だ」と甘い笑顔を向け、そのまま彼女の鼻を軽くつまんだ。
「ふがっ・・」僕の突然のイタズラに意表を突かれた彼女がかわいく睨んできたけど、(これぐらい許されるよね)と僕は思った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その夜、僕は昼間貰ったキャンディーを食べるか悩んでいた。
(これは気軽に食べていいものなのか?楽しい夢を見るなんてそんな都合のいい話・・・でもリリスのあの様子じゃ、今夜絶対に食べるよなぁ。今頃、もう夢の中かも・・・・・よしっ!)
それからの僕の行動は早かった。これから見る夢を想像しながら、キャンディーをなめてベッドへ横になる。
(どんな夢を見るのかな。他国へ彼女と一緒に旅行する夢もいいね。見た事もない景色にリリスはきっと目を輝かせるよ。うん、彼女とならどこへ行っても何をしても楽しいな)
そんなことを考えながら、僕は夢の中へ入っていった。
翌朝、目が醒め、いままで見ていた夢を思い出していると自然と僕の顔が綻んだ。
(リリスとの新婚生活とか最高だったな。夢の中でも彼女はかわいかったな)
僕はしばらく幸せな気分で、夢の続きを想像していた。
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