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第Ⅰ章
第12 話 夜会
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馬車から降り立ったナタリアとライモンに、注目の眼差しが注がれる。並んで歩く二人は、一目見ただけで見た者の心を魅了し、視線を独占した。
こうして着飾ったナタリアは、更に美しさを増していた。入念に手入れされた外見もさることながら、何より仕草や佇まいが洗練されていた。ライモンにエスコートされて歩く姿は堂々として、微笑みを絶やさない表情は、余裕を見せている。
“絶世の美女”
まさにこの言葉がピッタリの令嬢へと、ナタリアは生まれ変わっていた。ライモンは、皆に守られていただけの雛鳥が大きく成長したことを実感した。
ライモンと共に貴族たちに挨拶しても、ナタリアは相手の情報を会話にさり気なく入れ、自然と褒め言葉を入れる。まさに完璧にライモンの隣をこなしていた。
やがてその様子を見ていた貴族たちは“ナタリア嬢は社交界の華になるだろう”と口々に言った。それを悔しそうに見つめるのは、あのお茶会でライモンの怒りを買った男とナタリアを囲んだ令嬢たちだった。
しかし、彼らの前に立ったナタリアもライモンも笑顔で当たり障りない短い挨拶をすると、さっさと他へ移動した。完全にナタリアたちの勝利だった。
流石にダンスは・・と思っていたライモンの思いをいい意味で裏切ったナタリアは、ダンスも難なくこなした。ライモンと一曲踊り終えると、ナタリアの次の相手にと狙う男たちをライモンが牽制することになった。
いつしか夜会の中心には、ライモンとナタリアが・・
テラスへ外の空気を吸いに来た二人。
「疲れてない?」
ライモンがナタリアを心配して尋ねると、彼女から「はい、大丈夫です。夜会はまだまだこれからでしょう」とこれまた予想を裏切る答えが返ってきた。
「私の姫は、成長著しいようだな・・」
ライモンがそう呟くと、ナタリアは嬉しそうな顔で笑った。そして、ライモンの耳に口を寄せると小声で囁いた。
「驚いたでしょう?」
「ああ、今日は君に驚かされっぱなしだ。何か秘密があるね?」
「はい、実は・・・」
ナタリアはそう話しを始めると、ライモンが出掛けていたい間にサマンサと猫たちの手を借りて、貴族の所作やマナー、そしてダンスまで特訓していたことを打ち明ける。
「ライモン様は、私に尋ねました。これから先、私がどうしたいのか?と・・その答えが、今日のこれです。私はライモン様のお力になりたい。これからも貴方の隣に立ちたい・・・そう私は答えを出しました」
「それじゃあ、私はこれからも君とあの屋敷で一緒に居られるということかい?」
ライモンの問いにナタリアは「はい」と笑顔で返すと、彼の手が頬をそっと包んだ。近付いてくる彼の顔にナタリアが思わず目を瞑ると、額にコツンと当たる。うっすら目を開けると、オッドアイがナタリアの瞳の目の前にあった。
「ありがとう」
息がかかるほど近い距離で言われた言葉に、ナタリアの心臓は途端にうるさくなった。
それから国王への挨拶も無事に終えた二人は、来たときよりもピッタリと寄り添って馬車へ乗り込み、屋敷へと戻って行ったのだった。
こうして着飾ったナタリアは、更に美しさを増していた。入念に手入れされた外見もさることながら、何より仕草や佇まいが洗練されていた。ライモンにエスコートされて歩く姿は堂々として、微笑みを絶やさない表情は、余裕を見せている。
“絶世の美女”
まさにこの言葉がピッタリの令嬢へと、ナタリアは生まれ変わっていた。ライモンは、皆に守られていただけの雛鳥が大きく成長したことを実感した。
ライモンと共に貴族たちに挨拶しても、ナタリアは相手の情報を会話にさり気なく入れ、自然と褒め言葉を入れる。まさに完璧にライモンの隣をこなしていた。
やがてその様子を見ていた貴族たちは“ナタリア嬢は社交界の華になるだろう”と口々に言った。それを悔しそうに見つめるのは、あのお茶会でライモンの怒りを買った男とナタリアを囲んだ令嬢たちだった。
しかし、彼らの前に立ったナタリアもライモンも笑顔で当たり障りない短い挨拶をすると、さっさと他へ移動した。完全にナタリアたちの勝利だった。
流石にダンスは・・と思っていたライモンの思いをいい意味で裏切ったナタリアは、ダンスも難なくこなした。ライモンと一曲踊り終えると、ナタリアの次の相手にと狙う男たちをライモンが牽制することになった。
いつしか夜会の中心には、ライモンとナタリアが・・
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「疲れてない?」
ライモンがナタリアを心配して尋ねると、彼女から「はい、大丈夫です。夜会はまだまだこれからでしょう」とこれまた予想を裏切る答えが返ってきた。
「私の姫は、成長著しいようだな・・」
ライモンがそう呟くと、ナタリアは嬉しそうな顔で笑った。そして、ライモンの耳に口を寄せると小声で囁いた。
「驚いたでしょう?」
「ああ、今日は君に驚かされっぱなしだ。何か秘密があるね?」
「はい、実は・・・」
ナタリアはそう話しを始めると、ライモンが出掛けていたい間にサマンサと猫たちの手を借りて、貴族の所作やマナー、そしてダンスまで特訓していたことを打ち明ける。
「ライモン様は、私に尋ねました。これから先、私がどうしたいのか?と・・その答えが、今日のこれです。私はライモン様のお力になりたい。これからも貴方の隣に立ちたい・・・そう私は答えを出しました」
「それじゃあ、私はこれからも君とあの屋敷で一緒に居られるということかい?」
ライモンの問いにナタリアは「はい」と笑顔で返すと、彼の手が頬をそっと包んだ。近付いてくる彼の顔にナタリアが思わず目を瞑ると、額にコツンと当たる。うっすら目を開けると、オッドアイがナタリアの瞳の目の前にあった。
「ありがとう」
息がかかるほど近い距離で言われた言葉に、ナタリアの心臓は途端にうるさくなった。
それから国王への挨拶も無事に終えた二人は、来たときよりもピッタリと寄り添って馬車へ乗り込み、屋敷へと戻って行ったのだった。
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