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Scene14 子猫の秘めた力

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ミーリエルたちは、再び当初遠征を決めたあの部屋に集まっていた。

探すべき宝石も残り2つ。大きな机の上には、4つの宝石が並べられていた。どれも赤や紫などの不思議な輝きを放ち、集められた人たちを驚かせている。

「もう4つも集めたのか」

「まだ、たった数日だぞ」

そんな声が聞こえる中、ミーリエルは心の中で謝っていた。

(ごめんなさい。マーカスと2人で・・いや、ちょっとだけ彼の助力・・・ほとんど彼がいたから見つけられたんです・・インチキかな・・・何か騙してるみたいで申し訳ない)

ミーリエルがそう申し訳無さを感じていると、バンッと乱暴に開けられた扉からオーウェンと国王が現れた。ズカズカと入ってきた2人は宝石に目を輝かせる。

「おお!俺様の宝石!」と感嘆の声を上げたオーウェンは、宝石に手を伸ばしたが、ケインズによって遮られる。「まだ全て揃っておりません!」と言って、ケインズは宝石を箱にしまいミーリエルの手に渡した。

「では、陛下も参られましたので、始めます」

このケインズの言葉で、会議は始まった。議題は、もちろん残る2つの宝石だ。最初にここで行われた時と違うことが一つだけ・・それはアリアナがいないことだった。マーカスによると、アリアナは相変わらず別の用があるそうだ。あの遠征中止の朝以降、ずっと会っていないミーリエルは、アリアナ欠乏症になっていた。

(アリアナ~。何をしてるの?会いたいよぉ。あの凛々しい姿をもう一度拝みたいよぉ・・ああ、想像するだけで、ヨダレが~)

こうして始まった会議。話はスムーズに進み、遠征隊の派遣も決まった。前回の隊よりも人数を絞った形だ。目的地がはっきりしており、案内もいるとなれば大人数を派遣する必要もない。もちろんミーリエルとマーカスも含まれている。

そして、オーウェンが口を挟んだ。

「よし!俺様自ら締めくくってやろう!」

これを聞いたミーリエルをはじめ、この場の誰もが思っただろう。

(えっ!?行くの?あ~、やっぱり出しゃばってきたよ)

「いいか、お前たち!今度の遠征の目的は2つだ。1つ目は、残りの宝石を見つけ出すこと。2つ目は、魔女の討伐だ」

オーウェンのその言葉に、ミーリエルたちは驚きを隠せなかった。何故なら、魔女を倒そうなど誰も考えていなかったからだ。

「お待ちください!殿下!魔女ははるか昔、王国を救ってくれた方です!そんな方を倒そうなど・・」

「うるさい!黙れ!その魔女が歴代の王族に呪いなんぞかけたんだろうが!俺様に意見するとは、偉くなったものだな、ケインズ!これは俺様と父上の総意だ!」

(いやいやぁ、偉くなったって、お父様は宰相だからね。そりゃあ、王太子のアンタに比べたら立場は下だけど、人望はアンタの何百倍もあんのよ!?本当にアホすぎて、面白すぎ。それにしてもこの宝石で本当にこのバカがまともになるのかねぇ。まさにバカにつける薬はないを表現したような男だと思うけど)

ミーリエルはオーウェンを冷めた目で見ていた。

その時、そんなミーリエルをマーカスが肘で突つくと、「大丈夫だよ。邪魔はさせないから」と呟いた。そしてこの場に全く似合わない笑顔をミーリエルへ向けた。

(えっ?どういうこと?何でこんなに余裕なの?)

ミーリエルは戸惑いつつも、マーカスを信じることにし、頷いた。

「殿下、もしお許しいただけるのでしたら、私とリンドン嬢は先に向かおうと考えております。危険がないか偵察する先遣隊だとお考えください。
魔女のいる場所は、現時点でまだ地域にしか絞り込めておりません。そこで私たちが探し出し、殿下がいらっしゃいる頃には、すぐに合流できるよう手配させていただきます」

オーウェンは、ミーリエルとマーカスを見てニヤリとした。

「ふんっ、悪くないな。いいだろう」

こうしてミーリエルは、マーカスと共に一足先に魔女の元へ向かうことになったのだが、その方法に驚くのだった。


◇◇◇◇◇


会議の翌日、旅の準備を整えたミーリエルは、マーカスを待っていた。腕の中にはノワールもいる。空は太陽が薄い雲に隠れ、旅日和とは言い難かった。

そこへ、公爵家の馬車が現れ、マーカスが颯爽と降り立つ。

「おはよう。お待たせ。早速だけど、行こうか」

「はい!いま荷物を乗せますね」

「ああ、荷物はいらないよ」

マーカスの言葉に「えっ!?」と驚くミーリエル。当然だ。これから向かう場所は、馬車でも数日かかる。いくら何でも着替えすらいらないとは、さすがにおかしい。

戸惑うミーリエルにマーカスは更に言った。

「馬車で向かうわけではないからね。遠征隊が出発する前に、私たちは終わらせて戻ってくるんだ。予定では日帰りだから、安心して」

「えっ!?日帰り?隊が出発する前に戻るって・・・でも殿下は行くってやる気満々でしたよ。マーカス様も見てたでしょう?」

「大丈夫だよ。“邪魔はさせない”って言ったでしょ?」

ミーリエルはコクコクと頷くと、マーカスは笑顔を浮かべて「さあ、行こうか」とミーリエルの手を取った。

そして彼女の抱くノワールを優しく受け取ると、徐ろにその小さな体を空へ放り投げた。

「!!!!ぎゃぁぁ!ノワール!マーカス様、何てことを!!」

慌てふためくミーリエルの前でノワールの白く小さな体は、一瞬で大きくなり屋敷の前にデンッと着地した。
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