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Scene10 愚かなプライドから生まれた意地

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翌日、3つ目の宝石を捜しに来たミーリエル。まだマーカスには会っていない。

(今日は助けに来てくれないのかな?・・って、なに当たり前みたいに期待しちゃてるの!?小説と違うからって、ダメじゃん!今日こそは自分の力で見つけてやろうじゃない!)

ミーリエルは、頭を振りマーカスの存在を頭から追い払うと、コンパスを握った。

しかし、そんな彼女の想いを裏切り、コンパスに従い訪れた部屋には、すでにマーカスが待っていた。

「おはよう。待ってたよ」

「どうして!?」

ミーリエルは驚き、目を丸くした。しかしマーカスは微笑むだけだ。

(悔しいぃぃ。別に張り合ってるわけじゃないよ。わけじゃないけど・・・なんかマーカスとの勝負に負けてるみたいで悔しい。絶対に魔法使ってる。でなきゃ、先回りできないじゃん。あっ!コンパス覗いてた?それで先回りを・・・なんかそう考えると可笑しい。だって透明人間のまま必死に走るイケメンとか、なかなか滑稽な光景だもん)

「・・おはようございます」

挨拶と共に笑顔を送るミーリエル。想像したばかりの滑稽な光景が、その笑みに含まれているのは気のせいではない。

「早速、始めましょうか」

「そうだね。この部屋だとコンパスは、示したんだよね?」

マーカスの問いにミーリエルが「はい」と答えると、彼は部屋を見回した。しかしミーリエルは、「待ってください!」と止める。今日は自分の力で探したいと言ったのだ。

(昨日はマーカスのペースに巻き込まれたから、ちょっと悔しかったんだよね。まあ、この人がいたからハイペースで2つも見つけられたんだけどさ。でも、宝探しをちょっとだけ純粋に楽しんでみるのも捨てがたいからね~)

マーカスも同意したので、ミーリエルは早速捜索を開始する。それはただ引き出しの中や花瓶の中を見るだけでなく、壁を叩いたり、床で飛んだり仕掛けを探るものだ。マーカスの視線が突き刺さる中、必死に探すが見つからない。

(見られてたら、集中できないんだけどぉ)

「すみませんが、マーカス様。どっか他所を見ててください」

「視線が気になる?君が可愛いいから、気になってしまうんだよ」

「もう!マーカス様は意地悪ですね」

ミーリエルはそう返すと、マーカスは壁により掛かり「心外だなぁ」と肩をすくめる。その姿も絵になっている。

(はぁ、やっぱり自分の理想を詰め込んだビジュアルだから、カッコいい。落ち着いてみたら、昨日はこんなイケメンが側にいて、よく鼻血出なかったな・・うん、鼻の粘膜強い子でよかった。グッジョブ!お母様!)

ミーリエルはそんな事を思いながら、再び宝箱を探し始めた。しかし一向に見つかる気配がなかった。

「ない・・この部屋にあるのは確かなんだけど」

そう言ってコンパスを見ると、針はゆっくりグルグルと回っている。一方向を差さないのは、ここが目的の場所だからだ。

ミーリエルは、もう一度部屋の隅から探そうとした時、マーカスが口を開いた。

「リンドン嬢、まだ、探してない所があるよ」

「そうですね。だからもう一回くまなく探さないと」

「違うよ。探してないと言った方がいいかな?」

マーカスのヒントにミーリエルは、手を止め「一帯?」と思案し始める。

(一帯・・一体どこにあるの?・・あっ、被った。それにしても悔しいなぁ。やっぱ魔力は卑怯だよ。宝石の放つ魔力とやらを感じるんだもん。彼の方が有利・・・)

ぼんやりとマーカスを見つめながら、考えていると、ミーリエルは「あっ」と声を上げた。そして壁により掛かるマーカスに退くように言うが、「え~っ」と文句が返ってくる。

「マーカス様は、助けに来たんですか?邪魔しに来たんですか?」

「そんなの決まってるじゃないか。どう見たって、難問に挑む姫を助けに来たヒーローだろう?」

マーカスが、頬を緩めてそう言う姿に「ええ、ええ、そうですねー」とミーリエルは棒読みで返すと、彼は苦笑して壁から離れる。そして、ミーリエルが壁に手をついた。すると次の瞬間、彼女の目の前の壁の一部がズレて、大きな空洞が現れた。

ゴゴゴッと物々しい音を立て姿を見せた穴に「隠し通路?」と首を傾げるミーリエル。それにマーカスは「さあ、どうだろうね。入ってみる?」と尋ね、ミーリエルは当然だと頷いた。

ぱっくりと口を開ける通路。先は真っ暗で何があるか分からない。ゴクッと喉を鳴らしたミーリエルは、意を決して足を踏み入れるが、明かりがないため壁伝いにゆっくりと進む。

(真っ暗で何も見えない。でも暗所恐怖症じゃなくて良かった。粘膜強めで暗所恐怖症じゃない子に産んでくれて、グッジョブ!お母様!・・・・って冗談言ってる場合か!?“この先に魔物がいま~す”とかだったらどうする?ケッ、ケルベロスとか・・あれは宝の番人って感じだよね。頭が3つもあるんだもん。四方八方目を光らせられる。そういえば小説でミーリエルは剣が使えたキャラだったけど、私も剣を振ったらイケる・・?・・・・うん無理そう。この細い腕じゃ無理・・・うん無理だ。そうなると、万が一魔物がいたら確実に死ぬ・・・でも魔法使えたらいけそう・・・)

しかし、ここで後ろを振り向いたミーリエルのその顔は不安に染まっていた。

「マーカス様、前言撤回します。ごめんなさい。一人で探すなんて言って・・ついてきていただけると、大変有難いのですが・・・」

すると、マーカスからは言葉ではなく、満足そうな笑顔が返ってきたのだった。

(ああ、やっぱり悔しい・・でも張り合って損した。この人には敵わないわぁ)

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