8 / 22
Scene7 宝探しスタート
しおりを挟む
「エルガド様!?お待たせしました。一体どうなさったのですか?」
ミーリエルがそう尋ねると、マーカスは眩しい笑顔を向けた。
「やあ、突然悪かったね。ただ何か手伝えることがあるかと思ってね・・・ごめん、ガッカリさせてしまったみたいだね。アリアナじゃなくて・・」
マーカスの言葉に驚いたミーリエルは、思わず頬を押さえた。
(やだ・・私、アリアナじゃなくて残念な顔しちゃった?何て失礼なことしてんの!?こんな直球ど真ん中、どストライクのイケメンを前に!)
ミーリエルは、自分の態度に猛省していると、マーカスが優しく微笑んで言った。
「リンドン嬢は、あの会議の時も妹に羨望の眼差しを送っていたからね。兄として、妹がこんなに可愛らしい女性から好かれているというのは、嬉しい反面少し嫉妬していまうかな」
(ヒョォォォ!眩しい。イエメンの笑顔、ナイスです!ご馳走様です!でも、眩しすぎて倒れそう・・・)
イケメンスマイルを前にミーリエルは失神寸前の意識を必死に抱え込む。
「エルガド様、嫉妬だなんて。私はエルガド様のこともお慕い申し上げておりますよ」
ミーリエルの言い訳に「・・・その“慕う”の意味が気になるところだけどね」と呟いたマーカスの言葉は、イケメンスマイルにやられているミーリエルの耳には届かなかった。
それから話は、本題へと入る。マーカスの訪問の目的は、ミーリエルの手伝いを申し出るためだった。
「ありがとうございます。とても嬉しいのですが、殿下には一人でやることが条件だと言われておりますよ」
「確かに殿下は、一人で城を探せと仰っしゃられた。だけど他人の手を借りるなとは、条件を出さなかった。これは城の捜索時は一人だが、他では協力してもいいととれるよね?」
あっけらかんとそう話すマーカスの様子に、ミーリエルはクスッと笑いをもらす。
「まさかエルガド様の口からそんな屁理屈が出てくるとは、思いませんでしたわ。でも、お言葉に甘えさせていただきます」
そう言ったミーリエルにマーカスは、破顔した。
それからミーリエルは、宝石の場所までは分からないので、魔導コンパスで探す計画であると相談すると、マーカスから思いがけない言葉をもらう。
「魔導コンパスなら持ってきた。他にも透明マントに万能鍵、それから・・」
「えっ!?エルガド様!ちょっとお待ちください」
次々と魔導具を鞄から取り出すマーカスに、呆気にとられたミーリエルは待ったをかける。しかしマーカスは、「これでは足りなかったかな?」と返した。
(足りたいどころじゃないよ。その小さな鞄にどうやってこれだけの道具入れてたの!?それにしても想像して文字にした道具が、こうして目の前にあると、感慨深いものがあるなぁ)
「いえ!十分すぎるほどです。ですが、こんなに使いこなせません。それにこんな高価な魔導具をどうなさったのですか?」
「うん?私のコレクションだよ。私は、こういうものに興味があってね。ただ平和な王国では、使う機会がないんだ。いい機会だから、君に使ってもらおうと思って」
魔導具というのは、大変高価な物が多い。これほどの数を集めるとは、さすが公爵家だとミーリエルは感心した。
テーブルに並ぶのは、どれも小説に出てきたものばかりだ。魔導コンパス同様、遠征で使われたものもあったが、名前だけのものもある。ミーリエルはそれらに興味が引かれないわけではなかったが、今は宝石を一刻も早く見つけ、妃の座から、そして拷問から逃げなければならない。
ミーリエルは、「エルガド様、ありがとうございます。でも私に魔力はありませんので、コンパスだけお借りしますね」と言って、手を伸ばした。しかしコンパスに添えたミーリエルの手にマーカスもまた手を重ねる。そして、こう言った。
「マーカスだ・・」
「えっ?はい、存じ上げております」
「だからエルガドではなく、マーカスと呼んでほしい。それがこれを貸す条件だ」
あの会議で初めて会った男性に、しかも公爵家嫡男に恐れ多い気もしたが、小説ではミーリエルは彼と結ばれる。それなら名前で呼ぶくらい問題ないだろうと考えたミーリエルは、自然と頬を染めて言った。
「はい、マーカス様。ありがたくお借りしますね」
(はぁぁ、カッコいい・・・・って、見惚れてる場合か!?マーカスは、もうこの段階でミーリエルに好意を持ってるの?早いな。この好意無駄にはできぬ!!拷問宣言した変態王子よりイケメンとの未来に私の幸せはある!絶対に宝探しコンプリートしてみせる!)
小説から大きく逸れた展開に動揺していたミーリエルだったが、マーカスからの好意は彼女に一筋の光を指していた。
◇◇◇◇◇
翌日から城での捜索を始めたミーリエル。失敗の先にある罰ゲームさえなければ、宝探しゲームのようで楽しそうだと思い、ワクワクしていた。
とりあえず、地図を片手に城の入口でコンパスをかざしてみるが、針に動きはない。仕方がないので、城の中心あたりでコンパスをかざすことにした。
ミーリエルが城を奥へと進んでいると、「よお!」と声がした。振り返ると、オーウェンがこちらへ歩いてくる。ミーリエルは、その姿に内心辟易した。
「俺様が応援に駆けつけてやったんだ。お前は、ひざまずいて感謝するべきだな」
(応援?とんでもない。邪魔しに来たんでしょうが!)
ミーリエルは時間がもったいないので、適当に挨拶だけすると、止めた足を進める。しかしオーウェンは何故かミーリエルの後を追ってきて、ゴチャゴチャと話しかけてきた。
「しかし色気のない格好だな。侯爵家の女ならドレスだろうが」
「これから動き回るのに、ドレスでは動けません。ドレスが見たいのでしたら、パーティーでも開かれたらいかがですか?」
(アンタの主催パーティーじゃ誰も来たがらないけどね)
「パーティーは、女どもがうるさくて好かん。王子なら誰でもいい女ばかりで困ったもんだな」
(なぁに言っちゃってるの。本当にバカ王子。うるさいのは、アンタの愚痴大会になってるからだろうがぁ!)
いい加減、意味もなくついてくるオーウェンにキレそうになっていたミーリエルだったが、その時オーウェンを呼ぶ声がどこかでした。オーウェンはそれに舌打ちすると、「ふんっ・・まあせいぜい励むことだな」と捨てゼリフを忘れずに残していくと、姿を消した。
しかし安堵したのもつかの間。ミーリエルがホッとして息を吐くと、突然手を引っ張られ、大柱の陰に連れ込まれたのだ。
驚いたミーリエルが見上げると、そこにはイタズを仕掛ける男の子のような笑顔を浮かべたマーカスが見下ろしていた。
ミーリエルがそう尋ねると、マーカスは眩しい笑顔を向けた。
「やあ、突然悪かったね。ただ何か手伝えることがあるかと思ってね・・・ごめん、ガッカリさせてしまったみたいだね。アリアナじゃなくて・・」
マーカスの言葉に驚いたミーリエルは、思わず頬を押さえた。
(やだ・・私、アリアナじゃなくて残念な顔しちゃった?何て失礼なことしてんの!?こんな直球ど真ん中、どストライクのイケメンを前に!)
ミーリエルは、自分の態度に猛省していると、マーカスが優しく微笑んで言った。
「リンドン嬢は、あの会議の時も妹に羨望の眼差しを送っていたからね。兄として、妹がこんなに可愛らしい女性から好かれているというのは、嬉しい反面少し嫉妬していまうかな」
(ヒョォォォ!眩しい。イエメンの笑顔、ナイスです!ご馳走様です!でも、眩しすぎて倒れそう・・・)
イケメンスマイルを前にミーリエルは失神寸前の意識を必死に抱え込む。
「エルガド様、嫉妬だなんて。私はエルガド様のこともお慕い申し上げておりますよ」
ミーリエルの言い訳に「・・・その“慕う”の意味が気になるところだけどね」と呟いたマーカスの言葉は、イケメンスマイルにやられているミーリエルの耳には届かなかった。
それから話は、本題へと入る。マーカスの訪問の目的は、ミーリエルの手伝いを申し出るためだった。
「ありがとうございます。とても嬉しいのですが、殿下には一人でやることが条件だと言われておりますよ」
「確かに殿下は、一人で城を探せと仰っしゃられた。だけど他人の手を借りるなとは、条件を出さなかった。これは城の捜索時は一人だが、他では協力してもいいととれるよね?」
あっけらかんとそう話すマーカスの様子に、ミーリエルはクスッと笑いをもらす。
「まさかエルガド様の口からそんな屁理屈が出てくるとは、思いませんでしたわ。でも、お言葉に甘えさせていただきます」
そう言ったミーリエルにマーカスは、破顔した。
それからミーリエルは、宝石の場所までは分からないので、魔導コンパスで探す計画であると相談すると、マーカスから思いがけない言葉をもらう。
「魔導コンパスなら持ってきた。他にも透明マントに万能鍵、それから・・」
「えっ!?エルガド様!ちょっとお待ちください」
次々と魔導具を鞄から取り出すマーカスに、呆気にとられたミーリエルは待ったをかける。しかしマーカスは、「これでは足りなかったかな?」と返した。
(足りたいどころじゃないよ。その小さな鞄にどうやってこれだけの道具入れてたの!?それにしても想像して文字にした道具が、こうして目の前にあると、感慨深いものがあるなぁ)
「いえ!十分すぎるほどです。ですが、こんなに使いこなせません。それにこんな高価な魔導具をどうなさったのですか?」
「うん?私のコレクションだよ。私は、こういうものに興味があってね。ただ平和な王国では、使う機会がないんだ。いい機会だから、君に使ってもらおうと思って」
魔導具というのは、大変高価な物が多い。これほどの数を集めるとは、さすが公爵家だとミーリエルは感心した。
テーブルに並ぶのは、どれも小説に出てきたものばかりだ。魔導コンパス同様、遠征で使われたものもあったが、名前だけのものもある。ミーリエルはそれらに興味が引かれないわけではなかったが、今は宝石を一刻も早く見つけ、妃の座から、そして拷問から逃げなければならない。
ミーリエルは、「エルガド様、ありがとうございます。でも私に魔力はありませんので、コンパスだけお借りしますね」と言って、手を伸ばした。しかしコンパスに添えたミーリエルの手にマーカスもまた手を重ねる。そして、こう言った。
「マーカスだ・・」
「えっ?はい、存じ上げております」
「だからエルガドではなく、マーカスと呼んでほしい。それがこれを貸す条件だ」
あの会議で初めて会った男性に、しかも公爵家嫡男に恐れ多い気もしたが、小説ではミーリエルは彼と結ばれる。それなら名前で呼ぶくらい問題ないだろうと考えたミーリエルは、自然と頬を染めて言った。
「はい、マーカス様。ありがたくお借りしますね」
(はぁぁ、カッコいい・・・・って、見惚れてる場合か!?マーカスは、もうこの段階でミーリエルに好意を持ってるの?早いな。この好意無駄にはできぬ!!拷問宣言した変態王子よりイケメンとの未来に私の幸せはある!絶対に宝探しコンプリートしてみせる!)
小説から大きく逸れた展開に動揺していたミーリエルだったが、マーカスからの好意は彼女に一筋の光を指していた。
◇◇◇◇◇
翌日から城での捜索を始めたミーリエル。失敗の先にある罰ゲームさえなければ、宝探しゲームのようで楽しそうだと思い、ワクワクしていた。
とりあえず、地図を片手に城の入口でコンパスをかざしてみるが、針に動きはない。仕方がないので、城の中心あたりでコンパスをかざすことにした。
ミーリエルが城を奥へと進んでいると、「よお!」と声がした。振り返ると、オーウェンがこちらへ歩いてくる。ミーリエルは、その姿に内心辟易した。
「俺様が応援に駆けつけてやったんだ。お前は、ひざまずいて感謝するべきだな」
(応援?とんでもない。邪魔しに来たんでしょうが!)
ミーリエルは時間がもったいないので、適当に挨拶だけすると、止めた足を進める。しかしオーウェンは何故かミーリエルの後を追ってきて、ゴチャゴチャと話しかけてきた。
「しかし色気のない格好だな。侯爵家の女ならドレスだろうが」
「これから動き回るのに、ドレスでは動けません。ドレスが見たいのでしたら、パーティーでも開かれたらいかがですか?」
(アンタの主催パーティーじゃ誰も来たがらないけどね)
「パーティーは、女どもがうるさくて好かん。王子なら誰でもいい女ばかりで困ったもんだな」
(なぁに言っちゃってるの。本当にバカ王子。うるさいのは、アンタの愚痴大会になってるからだろうがぁ!)
いい加減、意味もなくついてくるオーウェンにキレそうになっていたミーリエルだったが、その時オーウェンを呼ぶ声がどこかでした。オーウェンはそれに舌打ちすると、「ふんっ・・まあせいぜい励むことだな」と捨てゼリフを忘れずに残していくと、姿を消した。
しかし安堵したのもつかの間。ミーリエルがホッとして息を吐くと、突然手を引っ張られ、大柱の陰に連れ込まれたのだ。
驚いたミーリエルが見上げると、そこにはイタズを仕掛ける男の子のような笑顔を浮かべたマーカスが見下ろしていた。
0
お気に入りに追加
138
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になる前に、王子と婚約解消するはずが!
餡子
恋愛
恋愛小説の世界に悪役令嬢として転生してしまい、ヒーローである第五王子の婚約者になってしまった。
なんとかして円満に婚約解消するはずが、解消出来ないまま明日から物語が始まってしまいそう!
このままじゃ悪役令嬢まっしぐら!?
旦那様を救えるのは私だけ!
参
恋愛
【本編完結】十八歳の誕生日を迎えた夜、前世の記憶が甦ったクラシオン。
六歳を迎える事無く亡くなった前世の記憶から、彼女は自身が子供向けアニメ、魔法戦士ラブリィブレッシングシリーズ、スプレンダーのキャラクターの一人だと気づく。
この世界は一期スプレンダー及び二期スプレンダーリミテと同じ。クラシオンは二番目の戦士だ。
そして敵幹部の一人が、自身の夫である事も思い出す。
アニメでは、洗脳された夫であるエスパダは、クラシオンと戦い、その中で自我を取り戻し、救われるという話だった。
夫婦というものの、日々関わりがない夫婦関係、所謂白い結婚状態である事を、敵の洗脳だと思い、クラシオンは戦士としてエスパダと戦い、洗脳を解くことを決意する。
夫婦が白い結婚から、(肉弾戦と言う物理的な)歩み寄りによって、本来の夫婦になる話。
かなりゆるめのコメディ、シリアス色薄めです。
※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。
※R15は保険です。
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
【短編】転生悪役令嬢は、負けヒーローを勝たせたい!
夕立悠理
恋愛
シアノ・メルシャン公爵令嬢には、前世の記憶がある。前世の記憶によると、この世界はロマンス小説の世界で、シアノは悪役令嬢だった。
そんなシアノは、婚約者兼、最推しの負けヒーローであるイグニス殿下を勝ちヒーローにするべく、奮闘するが……。
※心の声がうるさい転生悪役令嬢×彼女に恋した王子様
※小説家になろう様にも掲載しています
乙女ゲームの悪役令嬢は断罪回避したらイケメン半魔騎士に執着されました
白猫ケイ
恋愛
【本編完結】魔法学園を舞台に異世界から召喚された聖女がヒロイン王太子含む7人のイケメンルートを選べる人気のゲーム、ドキ☆ストの悪役令嬢の幼少期に転生したルイーズは、断罪回避のため5歳にして名前を変え家を出る決意をする。小さな孤児院で平和に暮らすある日、行き倒れの子供を拾い懐かれるが、断罪回避のためメインストーリー終了まで他国逃亡を決意。
「会いたかったーー……!」
一瞬何が起きたか理解が遅れる。新聞に載るような噂の騎士に抱きすくめられる様をみた、周囲の人がざわめく。
【イラストは自分で描いたイメージです。サクッと読める短めのお話です!ページ下部のいいね等お気軽にお願いします!執筆の励みになります!】
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
この異世界転生の結末は
冬野月子
恋愛
五歳の時に乙女ゲームの世界に悪役令嬢として転生したと気付いたアンジェリーヌ。
一体、自分に待ち受けているのはどんな結末なのだろう?
※「小説家になろう」にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる