53 / 58
第46話 対策に抜かりなし
しおりを挟む
翌日の学園、朝アーサーの教室を訪れたリリスを彼は眩しいくらいの笑顔で迎える。彼は魅了された生徒たちに囲まれており、どうやらサリーの素晴らしさを朝から説かれているようだった。
「殿下、ご相談の件、対策グッズをお持しましたわ」
朝の挨拶もそこそこにリリスは切り出す。すると、アーサーは「助かったよ。朝から勘弁してほしいよなぁ。皆を無下にもできないし」と笑った。
なかなかのウザい状況のばすが、それを笑い飛ばせるアーサーをリリスは見直した。
「いいですか。これを早めに彼女にプレゼントしてください。くれぐれも自分が彼女のために選んだことを強調してくださいね」
リリスはこう言って鞄からラッピングされたペンダントを渡す。
「これは、何だい?」
「中にはペンダントが入っております。それには魅了の効果をなくす魔石が仕込んであります。ですので、彼女に片時も離さぬよう身につけさせなければなりません」
「なるほどね。僕からのプレゼントなら、彼女は絶対に身につけると」
「はい、それはもう喜んで、見せびらかすと思いますよ」
「そうか、さっそく昼休みにでも渡して来よう。今日で最後にしたいからね。好きでもない女の子の魅力を延々と聞かされるのは・・ところで、これはどこで手に入れたの?効果が確かなら、なかなかの一品だ。非常に興味があるね」
アーサーの言葉にリリスは「それは秘密ですわ」と言い、楽しげに人差し指を唇にに当てる。
「まあ、予想通りの答えだな。聞いて簡単に答える君じゃないもんな。ところで、昨日アルバート領の面白い話を聞いたんだが・・」
「あら、何でしょうか」
「何でもあそこの教会の子供たちに、珍しい絵本が贈られたそうだよ。それは動くらしい」
「あら、殿下のお耳にもう入りましたか」とリリスはあっけらかんと答えた。それにアーサーは笑みをこぼし「フッ・・やはり君か。以前の僕の提案は、必要なかったってわけだ」と言った。
「あの時は、確か“お気持ちだけ受け取る”とちゃんと申し上げたはずです。それにヘンリー様が不快に思うような行動は、婚約者として避けなければなりませんからね」
「ヘンリーか。会うたびに氷の眼差しを向けるの止めさせられないか?毎回では、僕の心臓がもたないぞ」
「フフッ・・殿下、それもまた彼の演技ですよ。婚約者を王子に取られた設定ですもの」
「演技・・君も一度受けてみるといい」
リリスは「あら、それは無理な話ですわね」と肩をすくめた。それにアーサーは「そうだな」と返し、朝のミーティングはお開きとなる。
「では、殿下よろしくお願いしますね」
リリスはそう言葉を残して、自分の教室へと戻って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の放課後、登城したリリスは、アーサーからペンダントの効果を聞き出す。すると彼の口からまっ先に出てきたのは、感嘆の声だった。
「すごいよ、リリス嬢!彼女がペンダントを身に着けた途端、周りの生徒たちが一斉に逃げ出したんだ。いやぁ、爽快だったな。君にも見せたかったよ」
そう興奮気味に話すアーサーの後ろには、リベイラ、ダグラム、フェクターが控えている。その表情は、皆申し訳無さそうにしている。彼らの気持ちも当然だった。何しろ仕えるべき主を残し、女にうつつを抜かしていたのだから。側近の中でも一人無事だったアーウィンは、アーサーの言葉に大きく頷いていた。
「殿下、皆の前で渡したのですか?」
「そうだよ。その方があのペンダントの効果を確かめられると思ってね。案の定だったよ」
「早々に終息出来て、本当に良かったですわ。学園中が彼女に魅了されたら、それこそカオスですよ。ところで殿下、ちゃんと外さないように彼女に念押ししましたよね?」
「あぁ、もちろんだ。“僕だと思って、肌見離さないでね”って、言って渡したからね」
「合格ですわ。そこ大事ですからね」
リリスは満足そうに頷いた。
「殿下、ご相談の件、対策グッズをお持しましたわ」
朝の挨拶もそこそこにリリスは切り出す。すると、アーサーは「助かったよ。朝から勘弁してほしいよなぁ。皆を無下にもできないし」と笑った。
なかなかのウザい状況のばすが、それを笑い飛ばせるアーサーをリリスは見直した。
「いいですか。これを早めに彼女にプレゼントしてください。くれぐれも自分が彼女のために選んだことを強調してくださいね」
リリスはこう言って鞄からラッピングされたペンダントを渡す。
「これは、何だい?」
「中にはペンダントが入っております。それには魅了の効果をなくす魔石が仕込んであります。ですので、彼女に片時も離さぬよう身につけさせなければなりません」
「なるほどね。僕からのプレゼントなら、彼女は絶対に身につけると」
「はい、それはもう喜んで、見せびらかすと思いますよ」
「そうか、さっそく昼休みにでも渡して来よう。今日で最後にしたいからね。好きでもない女の子の魅力を延々と聞かされるのは・・ところで、これはどこで手に入れたの?効果が確かなら、なかなかの一品だ。非常に興味があるね」
アーサーの言葉にリリスは「それは秘密ですわ」と言い、楽しげに人差し指を唇にに当てる。
「まあ、予想通りの答えだな。聞いて簡単に答える君じゃないもんな。ところで、昨日アルバート領の面白い話を聞いたんだが・・」
「あら、何でしょうか」
「何でもあそこの教会の子供たちに、珍しい絵本が贈られたそうだよ。それは動くらしい」
「あら、殿下のお耳にもう入りましたか」とリリスはあっけらかんと答えた。それにアーサーは笑みをこぼし「フッ・・やはり君か。以前の僕の提案は、必要なかったってわけだ」と言った。
「あの時は、確か“お気持ちだけ受け取る”とちゃんと申し上げたはずです。それにヘンリー様が不快に思うような行動は、婚約者として避けなければなりませんからね」
「ヘンリーか。会うたびに氷の眼差しを向けるの止めさせられないか?毎回では、僕の心臓がもたないぞ」
「フフッ・・殿下、それもまた彼の演技ですよ。婚約者を王子に取られた設定ですもの」
「演技・・君も一度受けてみるといい」
リリスは「あら、それは無理な話ですわね」と肩をすくめた。それにアーサーは「そうだな」と返し、朝のミーティングはお開きとなる。
「では、殿下よろしくお願いしますね」
リリスはそう言葉を残して、自分の教室へと戻って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その日の放課後、登城したリリスは、アーサーからペンダントの効果を聞き出す。すると彼の口からまっ先に出てきたのは、感嘆の声だった。
「すごいよ、リリス嬢!彼女がペンダントを身に着けた途端、周りの生徒たちが一斉に逃げ出したんだ。いやぁ、爽快だったな。君にも見せたかったよ」
そう興奮気味に話すアーサーの後ろには、リベイラ、ダグラム、フェクターが控えている。その表情は、皆申し訳無さそうにしている。彼らの気持ちも当然だった。何しろ仕えるべき主を残し、女にうつつを抜かしていたのだから。側近の中でも一人無事だったアーウィンは、アーサーの言葉に大きく頷いていた。
「殿下、皆の前で渡したのですか?」
「そうだよ。その方があのペンダントの効果を確かめられると思ってね。案の定だったよ」
「早々に終息出来て、本当に良かったですわ。学園中が彼女に魅了されたら、それこそカオスですよ。ところで殿下、ちゃんと外さないように彼女に念押ししましたよね?」
「あぁ、もちろんだ。“僕だと思って、肌見離さないでね”って、言って渡したからね」
「合格ですわ。そこ大事ですからね」
リリスは満足そうに頷いた。
0
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
貴族としては欠陥品悪役令嬢はその世界が乙女ゲームの世界だと気づいていない
白雲八鈴
恋愛
(ショートショートから一話目も含め、加筆しております)
「ヴィネーラエリス・ザッフィーロ公爵令嬢!貴様との婚約は破棄とする!」
私の名前が呼ばれ婚約破棄を言い渡されました。
····あの?そもそもキラキラ王子の婚約者は私ではありませんわ。
しかし、キラキラ王子の後ろに隠れてるピンクの髪の少女は、目が痛くなるほどショッキングピンクですわね。
もしかして、なんたら男爵令嬢と言うのはその少女の事を言っています?私、会ったこともない人のことを言われても困りますわ。
*n番煎じの悪役令嬢モノです?
*誤字脱字はいつもどおりです。見直してはいるものの、すみません。
*不快感を感じられた読者様はそのまま閉じていただくことをお勧めします。
加筆によりR15指定をさせていただきます。
*2022/06/07.大幅に加筆しました。
一話目も加筆をしております。
ですので、一話の文字数がまばらにになっております。
*小説家になろう様で
2022/06/01日間総合13位、日間恋愛異世界転生1位の評価をいただきました。色々あり、その経緯で大幅加筆になっております。
めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。
hoo
恋愛
ほぅ……(溜息)
前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。
ですのに、どういうことでございましょう。
現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。
皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。
ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。
ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。
そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。
さあ始めますわよ。
婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ヒロインサイドストーリー始めました
『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』
↑ 統合しました
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます
水無瀬流那
恋愛
転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。
このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?
使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います!
※小説家になろうでも掲載しています
【完結】悪役令嬢になるはずだった令嬢の観察日記
かのん
恋愛
こちらの小説は、皇女は当て馬令息に恋をする、の、とある令嬢が記す、観察日記となります。
作者が書きたくなってしまった物語なので、お時間があれば読んでいただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる