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第45話 ヒロインの抵抗
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夏休み明けて早々にリリスは、アーサーに捕まった。
「リリス嬢、少し厄介な事になっていてね」
アーサーの言葉に「厄介ですか?」と返すリリス。それにアーサーは、困った顔で頷いた。
アーサーによると、どうやらサリーが魅了の力を使っているのではないかというのだ。サリーは変わり者として周囲から認知されているので、彼女に近付く者はあまりいなかった。しかし夏休み明けてから、彼女の周囲は人が溢れ、皆がサリーを崇めるようになっていた。アーサーの側近であるリベイラとダグラムが、主であるアーサー放ったらかしでサリーを囲む輪の中にいるのが、証拠だそうだ。無事なのはアーウィンだけだった。
「その状況で、殿下がご無事なのは何よりですわ」
リリスがアーサーにそう伝えると、彼は話を続けた。
「まあな。僕は王子として魅了対策されてるからな。それより話は、これで終わらないんだよ。サリーに心を奪われた者たちが、彼女と僕をくっつけようとするんだ」
「くっつけようとする?」
「ああ、そうだ。自分たちが彼女の横に並びたいとかそういうんじゃないんだよ。事在るごとに僕を彼女の元に連れて行こうとし、延々と彼女がいかに素晴らしい女性かを語るんだ。もう夜、うなされそうだよ」
「フェクター様になにか出して貰えませんか?」
「いや、それがフェクターもサリーにゾッコンなんだよ」
(なーにー!フェクター様、何をやってるのよ。サリーの為に面倒な道具とか出される前に手を打たないとマズいわね)
アーサーの話にリリスは愕然する。
(しっかし、あの子ただのお間抜けさんじゃなかったってことか・・まさか魅了使ってくるとはね。いや、でも肝心のアーサーかかってないからね。でも、なんとかしないと・・・さて、どうしようか・・・・あいにく魅了を防ぐ道具はまだ私には作れない・・・こうなったら、あの人頼るしかないわね)
リリスの頭にアルミーダの顔が浮かぶ。以前、魔石の相談に行った時にリリスたちの茶番劇の話に食いつき、手伝いたそうにウズウズしてたのを思い出したのだ。
リリスは早速、放課後彼女の店に行ってみることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうでしょうか」
「ふん。くだらん物を使ったもんだねぇ。任せときな。明日取りにおいで。用意しといてやるよ。流石に、いまこの場で渡せる物じゃないからねぇ」
リリスは放課後、アルミーダの店を訪れ魅了の件を相談していた。すると、彼女から今のような返答が返ってきたのだ。あまりに話が早いので、リリスが「流石、アルミーダさんですね。でも何か裏があったりしませんよね?」と尋ねる。それには当然、アルミーダは「はぁ?何を言ってるんだい。あたしゃ昔から親切じゃないか」と呆れた顔をした。
「そうですよ。アルミーダさんは昔から親切です。それは否定しませんけど、でももっとこう了承するまで、文句が続くみたいなのがないから・・アルミーダさんも、まるくなったってことですかね?」
リリスのセリフにアルミーダは肩をすくめ、「そういう事にしといてやるよ」と言った。そして早速準備に取り掛かるという彼女に、リリスは店を追い出されたのだった。
そして翌日、アルミーダに言われた通り店を訪れたリリスは彼女からペンダントを渡された。彼女が言うには、このペンダントの中には身に付けた人物の魅力が全くなくなるよう細工した魔石が入っているそうだ。それは意図的な魅了の力をも封じるほど、強力らしい。
「いいかい。間違っても、他のヤツに渡しちゃならんよ。魅了持ちを想定して作った物だ。他のヤツが付けたら・・・」
「どうなるんですか?」
「・・・・・知らん!とにかくそう言う事だ。ほれ、それ持ってもうお帰り」
リリスはまたもアルミーダから早々に店を追い出されたのだった。
「リリス嬢、少し厄介な事になっていてね」
アーサーの言葉に「厄介ですか?」と返すリリス。それにアーサーは、困った顔で頷いた。
アーサーによると、どうやらサリーが魅了の力を使っているのではないかというのだ。サリーは変わり者として周囲から認知されているので、彼女に近付く者はあまりいなかった。しかし夏休み明けてから、彼女の周囲は人が溢れ、皆がサリーを崇めるようになっていた。アーサーの側近であるリベイラとダグラムが、主であるアーサー放ったらかしでサリーを囲む輪の中にいるのが、証拠だそうだ。無事なのはアーウィンだけだった。
「その状況で、殿下がご無事なのは何よりですわ」
リリスがアーサーにそう伝えると、彼は話を続けた。
「まあな。僕は王子として魅了対策されてるからな。それより話は、これで終わらないんだよ。サリーに心を奪われた者たちが、彼女と僕をくっつけようとするんだ」
「くっつけようとする?」
「ああ、そうだ。自分たちが彼女の横に並びたいとかそういうんじゃないんだよ。事在るごとに僕を彼女の元に連れて行こうとし、延々と彼女がいかに素晴らしい女性かを語るんだ。もう夜、うなされそうだよ」
「フェクター様になにか出して貰えませんか?」
「いや、それがフェクターもサリーにゾッコンなんだよ」
(なーにー!フェクター様、何をやってるのよ。サリーの為に面倒な道具とか出される前に手を打たないとマズいわね)
アーサーの話にリリスは愕然する。
(しっかし、あの子ただのお間抜けさんじゃなかったってことか・・まさか魅了使ってくるとはね。いや、でも肝心のアーサーかかってないからね。でも、なんとかしないと・・・さて、どうしようか・・・・あいにく魅了を防ぐ道具はまだ私には作れない・・・こうなったら、あの人頼るしかないわね)
リリスの頭にアルミーダの顔が浮かぶ。以前、魔石の相談に行った時にリリスたちの茶番劇の話に食いつき、手伝いたそうにウズウズしてたのを思い出したのだ。
リリスは早速、放課後彼女の店に行ってみることにした。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「どうでしょうか」
「ふん。くだらん物を使ったもんだねぇ。任せときな。明日取りにおいで。用意しといてやるよ。流石に、いまこの場で渡せる物じゃないからねぇ」
リリスは放課後、アルミーダの店を訪れ魅了の件を相談していた。すると、彼女から今のような返答が返ってきたのだ。あまりに話が早いので、リリスが「流石、アルミーダさんですね。でも何か裏があったりしませんよね?」と尋ねる。それには当然、アルミーダは「はぁ?何を言ってるんだい。あたしゃ昔から親切じゃないか」と呆れた顔をした。
「そうですよ。アルミーダさんは昔から親切です。それは否定しませんけど、でももっとこう了承するまで、文句が続くみたいなのがないから・・アルミーダさんも、まるくなったってことですかね?」
リリスのセリフにアルミーダは肩をすくめ、「そういう事にしといてやるよ」と言った。そして早速準備に取り掛かるという彼女に、リリスは店を追い出されたのだった。
そして翌日、アルミーダに言われた通り店を訪れたリリスは彼女からペンダントを渡された。彼女が言うには、このペンダントの中には身に付けた人物の魅力が全くなくなるよう細工した魔石が入っているそうだ。それは意図的な魅了の力をも封じるほど、強力らしい。
「いいかい。間違っても、他のヤツに渡しちゃならんよ。魅了持ちを想定して作った物だ。他のヤツが付けたら・・・」
「どうなるんですか?」
「・・・・・知らん!とにかくそう言う事だ。ほれ、それ持ってもうお帰り」
リリスはまたもアルミーダから早々に店を追い出されたのだった。
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