上 下
42 / 58

第37話 いつからダンジョンゲームになった?2

しおりを挟む
「こっ、これは・・・転移の扉」

そう言ったのは、フェクターだ。リュシェルも目の前のそれが何か知ってるかのように頷いている。

(転移の扉・・・転移ってことは、これに入ると遠いところに飛ばされるってこと!?しかもどっかで聞いたような名前。まるであのゲームの○の扉みたいじゃない!?ありなの!?これはありなんですか!?)

空間に渦を巻くそれに、皆の視線が集まる。

「どうしますか?入ってみますか?」

「・・・いっ、行き先が分からないから・・・流石にそっ、それは」

若干胸をワクワクさせながら尋ねるリリスにフェクターが至極真っ当なセリフを吐く。しかし、初めて見た転移の扉なるものに俄然興味をひかれたリリスが「一応、行き先を見てくるだけでも・・」と食い下がる。それにリュシェルが「却下。着いた先で危険があったらどうするの!?」と冷めた眼差しを送ってきた。

(おおぅ・・・氷点下対応きたぁ。ですよねぇ。入るなんて選択肢、万が一にもないですよねぇ)

「もっ、戻りましょう」と短い言葉で促すフェクターが洞窟へと再び歩き出す。仕方なく諦めたリリスも来た道へ戻り始めたその時、前を行くリュシェルが足元をぐらつかせた。どうやら小石を踏んだようだ。バランスを崩した彼女の身体がリリスへ向かってくる。不意の出来事にリリスが「えっ・・」と声を上げ、リュシェルを受け止めようと腕を広げる。しかし、タイミングが遅れ、リュシェルを身体で受け止めてしまった。そうして王女の身体に押されたリリスの身体も後ろへ傾く。そして、その先にある渦の中へ一直線に吸い込まれていった。扉にリリスとリュシェル、そしてリュシェルを咄嗟に掴んだフェクターも一緒に吸い込まれ、三人は姿を消した。かわりに、扉の前には女性物の壊れたヒールが転がっていた。

扉に吸い込まれどこかへ飛ばされたリリスは、覆いかぶさるリュシェルを起こす。

「リュシェル様、大丈夫ですか?」

「ええ、それよりごめんなさい。私が転んでしまったから」

「いえ、お怪我がな・・」

ここでリリスの言葉が途切れる。その瞳に一人の少女が映したからだ。金色の髪に茶色の瞳を持つ少女は、目を見開き、明らかに驚いている。年の頃は、リリスより少し年下に見えた。少女は首をフルフルと横に振ると、駆け寄り心配そうに尋ねる。

「あの・・大丈夫ですか?一体、どこからいらっしゃったのですか?突然、現れたので、驚きました」

(あらっ、可愛らしい子・・・よかった。とりあえず危険はなさそうね)

「ええ・・・驚かせてしまって、申し訳ありませんでした。セルジュ領に滞在していたのですが、転移の扉に入ってしまって、飛ばされましたの」

リリスがそう答えると、少女は首を傾げ「セルジュ領?・・それはどこですか?」と問う。少女の様子にリリスの心に一抹の不安がよぎる。

「えっと・・ガイアールとの国境地帯にある領地ですわ」

「・・ガイアール・・・まさか」

リリスは嫌な予感を胸に抱き、しかし聞かなくてはならない質問を口にした。

「・・あのぉ・・・・もしかして、ここはプロメアではないのですか?」

すると、少女の口から信じられないセリフが告げられた。

「プロメアって、プロメア王国ですか!?とんでもない!ここはミレドールですよ」

「「ミレドール!?」」

初めて三人の声が揃った。

「ええ、ミレドールです・・・私は、サスティナ侯爵家のマリアと申します」

嵐のように次々と知らされる事実にリリスは目眩がした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、第四王子と結婚します!

水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします! 小説家になろう様にも、書き起こしております。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜

晴行
恋愛
 乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。  見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。  これは主人公であるアリシアの物語。  わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。  窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。 「つまらないわ」  わたしはいつも不機嫌。  どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。  あーあ、もうやめた。  なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。  このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。  仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。  __それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。  頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。  の、はずだったのだけれど。  アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。  ストーリーがなかなか始まらない。  これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。  カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?  それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?  わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?  毎日つくれ? ふざけるな。  ……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?

貴族としては欠陥品悪役令嬢はその世界が乙女ゲームの世界だと気づいていない

白雲八鈴
恋愛
(ショートショートから一話目も含め、加筆しております) 「ヴィネーラエリス・ザッフィーロ公爵令嬢!貴様との婚約は破棄とする!」  私の名前が呼ばれ婚約破棄を言い渡されました。  ····あの?そもそもキラキラ王子の婚約者は私ではありませんわ。  しかし、キラキラ王子の後ろに隠れてるピンクの髪の少女は、目が痛くなるほどショッキングピンクですわね。  もしかして、なんたら男爵令嬢と言うのはその少女の事を言っています?私、会ったこともない人のことを言われても困りますわ。 *n番煎じの悪役令嬢モノです? *誤字脱字はいつもどおりです。見直してはいるものの、すみません。 *不快感を感じられた読者様はそのまま閉じていただくことをお勧めします。 加筆によりR15指定をさせていただきます。 *2022/06/07.大幅に加筆しました。 一話目も加筆をしております。 ですので、一話の文字数がまばらにになっております。 *小説家になろう様で 2022/06/01日間総合13位、日間恋愛異世界転生1位の評価をいただきました。色々あり、その経緯で大幅加筆になっております。

めんどくさいが口ぐせになった令嬢らしからぬわたくしを、いいかげん婚約破棄してくださいませ。

hoo
恋愛
 ほぅ……(溜息)  前世で夢中になってプレイしておりました乙ゲーの中で、わたくしは男爵の娘に婚約者である皇太子さまを奪われそうになって、あらゆる手を使って彼女を虐め抜く悪役令嬢でございました。     ですのに、どういうことでございましょう。  現実の世…と申していいのかわかりませぬが、この世におきましては、皇太子さまにそのような恋人は未だに全く存在していないのでございます。    皇太子さまも乙ゲーの彼と違って、わたくしに大変にお優しいですし、第一わたくし、皇太子さまに恋人ができましても、その方を虐め抜いたりするような下品な品性など持ち合わせてはおりませんの。潔く身を引かせていただくだけでございますわ。    ですけど、もし本当にあの乙ゲーのようなエンディングがあるのでしたら、わたくしそれを切に望んでしまうのです。婚約破棄されてしまえば、わたくしは晴れて自由の身なのですもの。もうこれまで辿ってきた帝王教育三昧の辛いイバラの道ともおさらばになるのですわ。ああなんて素晴らしき第二の人生となりますことでしょう。    ですから、わたくし決めました。あの乙ゲーをこの世界で実現すると。    そうです。いまヒロインが不在なら、わたくしが用意してしまえばよろしいのですわ。そして皇太子さまと恋仲になっていただいて、わたくしは彼女にお茶などをちょっとひっかけて差し上げたりすればいいのですよね。    さあ始めますわよ。    婚約破棄をめざして、人生最後のイバラの道行きを。       ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆     ヒロインサイドストーリー始めました  『めんどくさいが口ぐせになった公爵令嬢とお友達になりたいんですが。』  ↑ 統合しました

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

悪役令嬢に転生したのですが、フラグが見えるのでとりま折らせていただきます

水無瀬流那
恋愛
 転生先は、未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢だった。それもステータスによれば、死ぬ確率は100%というDEATHエンド確定令嬢らしい。  このままでは死んでしまう、と焦る私に与えられていたスキルは、『フラグ破壊レベル∞』…………?  使い方も詳細も何もわからないのですが、DEATHエンド回避を目指して、とりまフラグを折っていこうと思います! ※小説家になろうでも掲載しています

【完結】悪役令嬢になるはずだった令嬢の観察日記 

かのん
恋愛
 こちらの小説は、皇女は当て馬令息に恋をする、の、とある令嬢が記す、観察日記となります。  作者が書きたくなってしまった物語なので、お時間があれば読んでいただけたら幸いです。

処理中です...