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序章
プロローグ
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『ジリリリ……』
けたたましい音が鳴り響く。"耳障りな音"に、私は目を覚ました。眠っていたはずなのに、何故か私は立っていた。
目の前に広がる景色は、少し古い教室みたいだ。私は窓際の後ろの席に座っていた。綺麗に並んでいる机や椅子も、少し触れただけで簡単に揺れてしまう程ガタが来ていた。でもこの景色も、なんだか懐かさを感じていた。
不意に風が髪を揺らす。開いていた窓から優しく穏やかな春風が吹き込んでいた。立ち上がってその窓から外を覗いてみる。この教室は1階らしく、丁度目線の先には楽しそうに話している男子学生や、先生や家族と話しながら泣いている女子学生の姿があった。学生達はそれぞれが手に筒を持ち、またその家族は皆スーツを着ていた。よく見れば私も同じ制服を着ていた。
今日…は?
教室の中へ視線を戻すと、黒板に大きな文字で
『卒業おめでとう!』
と書かれていた。その周りにも色々な文字や絵が様々な色で、踊るように描かれている。
卒業式…?
黒板に近づいてみた。見間違いではなくしっかり書かれている。
私の頭の中には疑問がいっぱい浮かんでいた。
『何故、私は教室にいるのだろうか』
『何故、中学校の時の制服を着ているのだろう』
『そもそも私は中学生だっただろうか』
"中学"という、この響きに違和感があった。
頭が混乱している。胸がざわめいている。
その時突然、教室の後方の扉が開く音がする。
ビクッとして見ると、首元のホックまできっちり止めた、真面目そうな少年が膝に手をつき、荒く息をしていた。
誰だろう。見覚えがあるようなないような・・・。同級生に彼の様な人がいただろうか、良く覚えていない。
そんなことを考えていると、少し落ち着いたのか、少年は私の方へ近づいててくる。
髪に隠れてよくは見えないけど、僅かな隙間から見える目は、ツリ目気味でキリッとしていて、見つめられると少しドキッとしてしまう。
彼は、浅い呼吸を繰り返していた。おそらく疲れているから、だろうけど、それだけが理由ではない気がする。それは曖昧だけれど、彼の呼吸や表情や、この空間に流れる空気で、そんな風に感じたからだ。でも、その理由がどんなものなのかは分からなかった。
私は彼が何かを言ってくるのを待った。こちらから何て声を掛けていいか分からなかったし、それになぜだか上手く言葉を発することが出来なかった。
少しの間流れる沈黙。不意に目と目が合った。私は思わず、目を逸らしてしまった。なんだか気恥ずかしかった。
「あの・・・」
その声に彼を見ると、彼と再び目が合った。また、その目は逸れてしまうが、すぐに三度重なった。
「僕・・・」
彼が何かを言いかけたとき突然視界が歪み、そして―
けたたましい音が鳴り響く。"耳障りな音"に、私は目を覚ました。眠っていたはずなのに、何故か私は立っていた。
目の前に広がる景色は、少し古い教室みたいだ。私は窓際の後ろの席に座っていた。綺麗に並んでいる机や椅子も、少し触れただけで簡単に揺れてしまう程ガタが来ていた。でもこの景色も、なんだか懐かさを感じていた。
不意に風が髪を揺らす。開いていた窓から優しく穏やかな春風が吹き込んでいた。立ち上がってその窓から外を覗いてみる。この教室は1階らしく、丁度目線の先には楽しそうに話している男子学生や、先生や家族と話しながら泣いている女子学生の姿があった。学生達はそれぞれが手に筒を持ち、またその家族は皆スーツを着ていた。よく見れば私も同じ制服を着ていた。
今日…は?
教室の中へ視線を戻すと、黒板に大きな文字で
『卒業おめでとう!』
と書かれていた。その周りにも色々な文字や絵が様々な色で、踊るように描かれている。
卒業式…?
黒板に近づいてみた。見間違いではなくしっかり書かれている。
私の頭の中には疑問がいっぱい浮かんでいた。
『何故、私は教室にいるのだろうか』
『何故、中学校の時の制服を着ているのだろう』
『そもそも私は中学生だっただろうか』
"中学"という、この響きに違和感があった。
頭が混乱している。胸がざわめいている。
その時突然、教室の後方の扉が開く音がする。
ビクッとして見ると、首元のホックまできっちり止めた、真面目そうな少年が膝に手をつき、荒く息をしていた。
誰だろう。見覚えがあるようなないような・・・。同級生に彼の様な人がいただろうか、良く覚えていない。
そんなことを考えていると、少し落ち着いたのか、少年は私の方へ近づいててくる。
髪に隠れてよくは見えないけど、僅かな隙間から見える目は、ツリ目気味でキリッとしていて、見つめられると少しドキッとしてしまう。
彼は、浅い呼吸を繰り返していた。おそらく疲れているから、だろうけど、それだけが理由ではない気がする。それは曖昧だけれど、彼の呼吸や表情や、この空間に流れる空気で、そんな風に感じたからだ。でも、その理由がどんなものなのかは分からなかった。
私は彼が何かを言ってくるのを待った。こちらから何て声を掛けていいか分からなかったし、それになぜだか上手く言葉を発することが出来なかった。
少しの間流れる沈黙。不意に目と目が合った。私は思わず、目を逸らしてしまった。なんだか気恥ずかしかった。
「あの・・・」
その声に彼を見ると、彼と再び目が合った。また、その目は逸れてしまうが、すぐに三度重なった。
「僕・・・」
彼が何かを言いかけたとき突然視界が歪み、そして―
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