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プロローグ
王子
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そこはとある王国。
広く仕切られた一室で、青年が剣を交えていた。
「ヤーッ!」
「ッ!」
碧色の髪を縛った"青年"の木でできた剣は、赤髪の青年の木の剣に簡単に弾き飛ばされた。
「マリー、そろそろ休まない?」
フラフラになりながらその剣を取りに行くマリーと呼ばれた青年を、金髪の青年が止める。
稽古を初めてから、既に1時間近く経っていたのだ。
「これ以上は―」
「もう1回…」
そう言って剣を拾いながら、そのままマリーは倒れ込んだ。
「マリー!」
急いで駆け寄った青年は、抱き抱えて室内へと連れ込む。
「ロン、ごめんなさい。大丈夫だから」
部屋のベッドに寝かせられたマリーはまた身体を起こそうとした。
「ダメです、お嬢様」
メイドが慌てて寝かせ直す。
「もし、また起きようなんてしたら、今日のこと女王様に伝えますからね」
眉間にしわを寄せたメイドは、呆れたように笑いながら部屋を後にする。
去り際、ロンにしか聞こえない声で『ごめんなさいね』といって出ていった。
メイドが居なくなったあと、ロンが近寄ると、
「ごめんね、ロン」
と身体を横にしたまま、力投げに言った。
マリーがこれ以上逆らえなかったのは、報告されてしまったら、ロンが自分の傍から話されてしまうことを分かっていたからだ。
ロンはとめてくれていたのに止めなかった。だから、後ろめたさもあったのだ。
「大丈夫です。今日はゆっくり休んでくださいね」
うん、と頷くと、あっという間にマリーは眠りについた。
しばらく、その様子を見守ってから、ロンは部屋を後にした。
部屋を出ると、先程のメイドが部屋の外で待っていた。ロンを見ると、深く頭を下げる。
彼女はそこまでの年長者では無いものの、屋敷では古株に入り、女王からマリーの担当を命ぜられるほどの信頼があった。
「この度は、マリー様の介抱、感謝いたします」
「いえ、私ののせいでもありましたから」
2人はゆっくりと歩き始める。
「やはり、無茶ではないでしょうか」
唐突に話題を始めるメイド、その話はマリーの話だ。
「結婚や、養子も考えるべきでは―」
「それは、私の一存ではどうすることも出来ませんよ」
キッパリと言い切るロン。しかしメイドも、毅然とした態度で言い返す。
「ロン様からお声がけ出来ませんでしょうか」
ロンなら、説得できるのでは、と。
マリーは、この屋敷の主であり、この辺りの街を支配している国王の一人娘であった。
この国では代々王子が家を継いで行っていたのだが、国王には男の子に恵まれなかった。
女王も身体が弱かったため、結婚させてその王子に継がせる、外部から養子をとる、弟の子供に継がせる―それがロンである―等、様々な案を出し合ったが、今現在、マリーを王子として育て、国王にさせよう、という方向で話が進んでいた。その案を出したのは、マリー本人であった。
広く仕切られた一室で、青年が剣を交えていた。
「ヤーッ!」
「ッ!」
碧色の髪を縛った"青年"の木でできた剣は、赤髪の青年の木の剣に簡単に弾き飛ばされた。
「マリー、そろそろ休まない?」
フラフラになりながらその剣を取りに行くマリーと呼ばれた青年を、金髪の青年が止める。
稽古を初めてから、既に1時間近く経っていたのだ。
「これ以上は―」
「もう1回…」
そう言って剣を拾いながら、そのままマリーは倒れ込んだ。
「マリー!」
急いで駆け寄った青年は、抱き抱えて室内へと連れ込む。
「ロン、ごめんなさい。大丈夫だから」
部屋のベッドに寝かせられたマリーはまた身体を起こそうとした。
「ダメです、お嬢様」
メイドが慌てて寝かせ直す。
「もし、また起きようなんてしたら、今日のこと女王様に伝えますからね」
眉間にしわを寄せたメイドは、呆れたように笑いながら部屋を後にする。
去り際、ロンにしか聞こえない声で『ごめんなさいね』といって出ていった。
メイドが居なくなったあと、ロンが近寄ると、
「ごめんね、ロン」
と身体を横にしたまま、力投げに言った。
マリーがこれ以上逆らえなかったのは、報告されてしまったら、ロンが自分の傍から話されてしまうことを分かっていたからだ。
ロンはとめてくれていたのに止めなかった。だから、後ろめたさもあったのだ。
「大丈夫です。今日はゆっくり休んでくださいね」
うん、と頷くと、あっという間にマリーは眠りについた。
しばらく、その様子を見守ってから、ロンは部屋を後にした。
部屋を出ると、先程のメイドが部屋の外で待っていた。ロンを見ると、深く頭を下げる。
彼女はそこまでの年長者では無いものの、屋敷では古株に入り、女王からマリーの担当を命ぜられるほどの信頼があった。
「この度は、マリー様の介抱、感謝いたします」
「いえ、私ののせいでもありましたから」
2人はゆっくりと歩き始める。
「やはり、無茶ではないでしょうか」
唐突に話題を始めるメイド、その話はマリーの話だ。
「結婚や、養子も考えるべきでは―」
「それは、私の一存ではどうすることも出来ませんよ」
キッパリと言い切るロン。しかしメイドも、毅然とした態度で言い返す。
「ロン様からお声がけ出来ませんでしょうか」
ロンなら、説得できるのでは、と。
マリーは、この屋敷の主であり、この辺りの街を支配している国王の一人娘であった。
この国では代々王子が家を継いで行っていたのだが、国王には男の子に恵まれなかった。
女王も身体が弱かったため、結婚させてその王子に継がせる、外部から養子をとる、弟の子供に継がせる―それがロンである―等、様々な案を出し合ったが、今現在、マリーを王子として育て、国王にさせよう、という方向で話が進んでいた。その案を出したのは、マリー本人であった。
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