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青と赤➆

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「兄さん、また忘れたのかよ」

魔法陣の宙を浮く青白いキューブを眺めていると何処からともなく聞き覚えのある声が聞こえてえてくるではありませんか。

「しょうがねえだろ。久々の変換詠唱でパーツが上手く揃ってないかもしんねぇんだ」

そう愚痴るように、青白いキューブの中からバンブール殿の声が聞こえて来たのです。

「ハウラ、お前だって具現化出来てねえみたいじゃないか?」

「兄さんと一緒にしないでくれないかな?こっちはさっきので魔力放出しきっちゃったうえに、あのバケモンの咆哮の魔力せいでなかなか精霊体の魔力が集まらないんだから」

そう、その声はカーサ・ハウラ殿の声ではありませんか。

「ということで、兄さん。魔力を少し分けてもらうよ?」

「ちょっと待てよ。もう少し出いけそうな気がするんだから。あせんじゃねえぇよ」

「そうも言ってられないんだよ。あのバケモノがそろそろ動き出しそうなんだよ」

カーサ・ハウラ殿の声がそう告げ、お坊ちゃまたちが化け物の方に目を移したのです。

バンブール殿の魔法陣に気を取られ、すっかり存在を忘れていた黒い化け物は、巨大な魔翼を大きく羽ばたかせ、巨大な本体と地に根付いた花びらのような触手のような脚が湖の表面からすでに離れようとしておりました。

その黒き天使のような悪魔の表情は、先程の邪悪な笑みを浮かべていた時とは違い、凍りついたような無表情であり、全く先程とは違う畏怖をいだかせるほどの神々しさの邪悪な魔力をわたくしすら感じとることができたのです・・・。
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