婚約者を奪われた令嬢は、冷酷非道の暴君と呼ばれる大国の皇帝のハーレムに送られる

りりん

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毎夜毎夜

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 婚儀が執り行われるまでの間、サフィーラは毎晩のようにシャーロットを抱いた
 片時も離したくないとすら思う程、日に日に増していくシャーロットへの愛情に、これがヴァルドーラの血かと、苦笑いが零れそうになる

 サフィーラが触れるだけで、身体は快楽に震え、今まで誰もが痛みと苦痛に恐れた凶悪な昂りを受け入れ快感に喘ぎ乱れるシャーロットに興奮して、ついつい意識を飛ばすまで毎晩抱き潰してしまうのだ
 
 ある日の夜、シャーロットはシーリンス王国の時の閨教育で教えられていた、口での奉仕をサフィーラに行っていた
 足元に膝まづいてサフィーラの大きなモノを口いっぱいに含んでいる。小さな口には入りきらずに先端だけを含み、拙い舌で刺激する。技術は稚拙だが視覚的には非常に刺激的である

 ただ、普通は妻にこの様な事を求める事はないし、令嬢に対して閨教育で施す事はないだろう
 娼婦か、せいぜいは妾が主の気を引く為にするような事だ。シーリンス王国では、この様な事まで王妃にさせるのかと、サフィーラは呆れていた

 だが、拙いながらも懸命に奉仕する光景は非常に興奮を覚えると共に、加虐心をも煽られる
 それを抑える為に大きな溜め息を漏らしたサフィーラは、シャーロットの口から自身の猛りを引き抜いた

 ハッとしたシャーロットがサフィーラを見上げた

 「お気に召されませんでしたか·····?」

 「いや、そうではないんだ」

 不安気に揺れるシャーロットの瞳を見ると、サフィーラは再度溜め息をついて、シーツでシャーロットの身体を包みこむと、抱き起こして引き寄せた

 「そうではなくて、シャーロット、お前はこんな事はしなくていいんだ」

 抱き寄せたシャーロットがサフィーラを見ている。サフィーラは機嫌が悪いのではないという事を伝えるためにシャーロットの背中を優しく撫でる

 シーリンス王国の事を詳細に調べさせ、受けた報告を何度も見ていれば、シャーロットが受けてきた王妃教育の内容も大方把握した
 ヴァルドーラ帝国は近隣諸国に諜報員を配置し、各国の情報を掴んでいる
 その中には当然王宮関係のものも多く、王妃教育の中身も大まかには掴んだ
 令嬢が自らの意思とは関係なく送られてくる国も多い事から女性の立場が弱い国が多数だが、シーリンス王国に関しては極端で、王太子の婚約者に対しては人権すらも認められていないのではないかとすら思える程だ
 王太子を誑かしてシャーロットを貶めたキャロラインは異質な存在だろう
 兎に角シャーロットが物心がつくかつかないかの頃から受けていた教育は洗脳とも思えるものだった
 他国の言語やマナー、礼儀作法などはしっかり叩き込まれているが、自国内の事や世間的な常識や情報は徹底的に周囲と隔離されていた
 所作などは洗練されているのに、驚く程純粋無垢で世間知らずなのはその所為だと思われる
 そうして王家、王太子の言葉だけに従うように刷り込まれてきていた
 自分の存在価値は、主(王家)に仕え従う事にしかないと躾られて育ったのだ
 長い間に刷り込まれたものを突然変えることは難しいだろうがいい機会だ
 
 「シャーロット、これから話す事はお前を否定するのではないから、聞いてほしい」

 「はい」

 シャーロットがこくりと頷ずくのを待ってサフィーラが話始めた

 「ん、まずは先程の行為だが、シャーロットはする必要はない。誤解のないように言っておくが、決して気に入らなかったという理由ではないんだ。あれは、我が国では夫が妻に求めるような事ではないからだ」

 シャーロットが誤解して落ち込むことのないように、ヴァルドーラ帝国ではそういう事をしないのだと言い換えた

 主の言葉が絶対だと刷り込まれているシャーロットは、こくりと頷きすんなり受け入れた

 「それからシャーロット、我が国では、妻が夫に対して従順である必要はない。自分の意思を持って、自分の意見を口にしていい」

 意思を持ってもいい、意見を口にしてもいい、今までサフィーラから何度か言われてきた言葉だが、その度にシャーロットは戸惑った
 その戸惑いを理解しているサフィーラは辛抱強く何度も口にする

 「急には難しいかもしれない。が、シャーロットが自らの意見を言う事を誰も咎める事はないんだ。勿論俺もだ。それは理解してほしい」

 躊躇いながらもシャーロットが小さく頷いた
 サフィーラはシャーロットを抱き締める手に力を込める

 まだサフィーラが皇太子だった頃、母皇妃に振り回される父皇帝をよく見ていた
 他国からは冷酷非道な皇帝と恐れられ、ヴァルドーラ帝国では絶対君主として君臨していた父は、母にだけは弱かった
 少女のようなところのある母の気まぐれに、父は嬉しそうに振り回されていた
 母に対して父が声を荒らげたり怒ったりした事は一度もなかった
 母のどんなところも父は受け止めていたのだ
 『愛する女に振り回されるのは楽しくて仕方がないものだ』
 父はそう言って本当に楽しそうに笑っていた
 たった一人愛し抜いて溺愛する、それがヴァルドーラに流れる血、ああ、やはり俺もヴァルドーラの血を引く父の子だと今強く感じていた
 
 「時には意見の違いで喧嘩になってもいいんだ。話し合ってお互いに歩み寄る、それが夫婦だ」

 とはいえ、意見が食い違っても喧嘩になる事はないと確信する。シャーロットが意見を言えば、それだけで俺は満足してそれを聞くのだろう

 シャーロットはシーリンス王国で教えられていた夫婦のあり方とは違う事に戸惑っているようだが、帝国での夫婦はそうなのだと言うと納得してコクリと頷いた

 「ああ、ただ夜だけはシャーロットが嫌だと言っても聞いてやれない」

 ニヤリと笑って言うとシャーロットは理解したのか真っ赤になった

 「嫌だなんて、いいませんわ」

 「本当に?」

 コクリと頷く
 サフィーラは、意地悪だとは思いながら、どうして?と理由を尋ねる

 「それは·····サフィーラ様に、求められるのが·····とても、嬉しいからです」

 真っ赤な顔で蚊の鳴くような声で答える可愛らしさに、抱きしめるシャーロットにキスをしながら膝からベッドに下ろし押し倒した

 サフィーラは毎夜毎夜、飽きる事無くシャーロットの全身を隅々まで愛し意識が飛ぶまで抱き潰す

 本当なら夜だけでなく、朝も昼もシャーロットを抱きたいと思っているが、そこは我慢しているのだ。だから夜の時間は邪魔されないように、昼間は政務に励んでいる
 前皇帝以前もそうだが、好色に溺れて政務を疎かにするような事は一切ない
 言うならば全てにおいて精力的なのだ

 実はサフィーらには悩ましい憂いが一つある。

 それは、皇帝としての政務を熟す中で視察や問題を解決するために、城を離れなければならない時もあるのだ。数日の時もあれば、一週間以上、時にはひと月以上 に渡る時もある

 流石にシャーロットを連れては行けないのだ
 シャーロットに寂しい思いをさせてしまうのではないか、まあ、シャーロットだけではなくサフィーラ自身も長い間シャーロットに会えなくなるのは耐え難い事ではあるのだが、その時にはどうしようかと頭を悩ませる
 以前したように、シャーロット自身の手をサフィーラの手だと思わせながら毎夜のように自身を慰めさせるのがいいか、それとも、サフィーラが帰るまで、シャーロットにサフィーラを毎夜毎夜思い出させながら我慢をさせるのがいいか。
 毎夜のように自分を思い感じながら乱れるシャーロットも、自分を思いながら悶々と切ない身体を持て余しながら待っているシャーロットも、想像してみればどちらも捨て難い。
 などと、険しい表情を浮かべて政務を熟しながら考えているとは、誰も思っていないだろう。

 
 


 

 

 
 

 
  
 
 
 
 

 
  
 
  
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