婚約者を奪われた令嬢は、冷酷非道の暴君と呼ばれる大国の皇帝のハーレムに送られる

りりん

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変わりはじめた運命

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  翌日からサフィーラはシャーロットの部屋には訪れず、ハーレムの令嬢達の部屋を順に訪れた
  実は、サフィーラがシャーロットのもとに連日通い詰めていた事は他の令嬢達は歓迎すべき事であった
  ハーレムを出た時には騎士団の騎士や貴族の子息との縁談を望む令嬢達にとっては、なるべくサフィーラが訪れない方がいいのだ、それに、他の令嬢達はシャーロットと違い、サフィーラとの行為は痛みに耐えなければならない苦痛を伴う
  サフィーラの欲の捌け口になるという役目が今の生きる拠り所であるシャーロットとは意識が違う、他の令嬢達にはサフィーラとの行為はなければない方がいい
  シャーロットはその事に気づいていないのだ
  サフィーラはそれがわかっている

  「俺が来ない方が良かっただろう」

  「いえっ·····そのような事は··········」

  「いや良い、正直に言え」

  苦笑を浮かべたサフィーラに尋ねられた令嬢は慌てて否定しようとしたが途中で遮られ、おずおずと頷いた

  「そうだろうな。また暫くは来なくなる、少しだけ我慢しろ」

  言われた令嬢は不思議そうな表情を浮かべているが、サフィーラはそれ以上は何も言わない
  前皇帝の頃はハーレム内での謀や諍いが絶えなかったが、今のハーレムではそれはない
  送られて来た令嬢達が比較的大人しく野心の強い者がいないからだろう
  よってサフィーラも前皇帝のように非道だと言われるような行いもなかった
  シャーロットにした仕打ちは非道であっただろうが
  なので、必要以上にサフィーラを恐れる令嬢もいない、ただ、サフィーラとの行為に苦痛を感じているだけである
  だからサフィーラがシャーロットのもとに連日訪れていたとしても、誰も不満を抱いていない、寧ろのびのびと過ごしていたのだ
  十日間掛けて10人の令嬢の部屋を回ると、シャーロットの部屋を訪れた
  
  いつものようにベッドの脇で膝まづいて待つシャーロットを抱き上げるとベッドに下ろした
  唇が触れる程の距離でシャーロットを見つめると、毎日身体を慰めていたか?と囁きかける
  真っ赤になったシャーロットが頷き肯定すると、満足気な笑みを浮かべたサフィーラがシャーロットに口付け、ゆっくりと押し倒す
  十日間触れていなかったシャーロットの身体は、サフィーラが与える快楽に乱れた
  そしてサフィーラの猛りを待っていたかのように受け入れる
  蜜壷の中でサフィーラのモノを包み込むように絡みつく、この身体しかないと思った
  苦痛に耐えているわけではなく、娼婦のように喜ばせようと過剰に演技しているわけでもない、ただ快楽に身を委ねサフィーラを受け入れるこの身体がほしいと思った
  非道な仕打ちを受け、ここで自分の身体をサフィーラに差し出す事を自分の役目だと、誰を恨むでもなく純粋に身を捧げるシャーロットが、いつしか愛おしいと思うようになっていた

  大臣や次官には既に話を通してある
  あの愚かな国の者ではあるが、本人には非はなく、人物としても問題はない
  家族は爵位を返上して国を出奔している為、あの国との関わりもない
  貴族籍がないためにシャーロットの今の正式な身分は平民という事になるが、帝国での婚姻においては問題ない
  身分や出生にこだわって政略のような婚姻を結ぶ事の方が、ヴァルドーラの血を引く者には危険だからである
  故にシャーロットを正妃として迎える事に反対する者はいないのだ

  こちら側には何の問題もない、ただ性急に進めてシャーロットがまた心を壊すような事になってはならない
  シャーロットは婚約者に裏切られてここに来ている
  慎重に事を進めていく必要がある
  
  などと考えながらも、シャーロットとの行為に夢中になってしまい、サフィーラの欲を受け続けたシャーロットは意識を飛ばした

  意識をなくしぐったりとサフィーラの胸に寄りかかったシャーロットと浴槽に浸かりながら物思いに耽る

  今、シャーロットを正妃に迎えると告げれば、シャーロットは何も言わずに従うだろう、それが自分の役目なのだと。だが、それでは駄目なのだ
  確かに皇妃としての公務は皇妃の役目ではあるが、自分の正妃となる事を役目だとは受け取られたくはない

  それに、シーリンス王国では王妃教育の一環で自己を持たないようにと躾られてきているようであるが、サフィーラはそんな事は望まない
  自己を持ち意思を持ってそれを口にする事は、決して悪い事ではないのだと、シャーロットにわかってもらいたい、簡単にはいかないだろうが

  シャーロットの真っ白な肌が薄く色づく程に身体が温まると浴槽から上がり部屋に戻った
  ベッドに横たえたシャーロットの隣りで同じように横たわりながらシャーロットの肌を手の平でなぞりながら眠りについた

  翌日からはまた連日シャーロットのもとにサフィーラは訪れた
  会話を交わす時間を長く取るようにしてシャーロットから言葉を多く引き出すようにした
  その中で、いつもシャーロットが申し訳なさそうにしている事に違和感を覚えたサフィーラは、その違和感を引き出す為に質問を繰り出す

  「シャーロット、お前がいつも申し訳ないと口にするのは何故だ、お前の国がした事に対しての謝罪か?」

  「はい」

  「それはお前の意思ではなかっただろう」

  そう言ったサフィーラの言葉にもシャーロットは俯いてしまった
  サフィーラは根気強くシャーロットが言葉を紡ぐのを待つ

  「わたくしが、キャロライン様ではありませんでしたから」

  やっと発したシャーロットの言葉にサフィーラは首を傾げる、何故そこでキャロラインなる者の名前が出るのか

  「ああ、お前はキャロラインではない」

  「それが、申し訳なく。わたくしは、望まれていたキャロライン様ではありません。国の為なればと思い、こちらに来ました。ですが、キャロライン様でなければ何の意味もないのだと·····サフィーラ皇帝陛下の為にも、国の為にも、わたくしはなれないのでございます」

  シャーロットが切々と、初めて訴えた事柄にサフィーラはハァァと大きな溜息を零した

  「シャーロット、一つ誤解がある。俺は、キャロラインなる女子(おなご)を、望んだ事はない」

  俯くシャーロットの肩を抱いて言葉を続ける

  「シーリンス王国側からキャロラインなる者をこちらに寄越すと、和解案の交渉の場で言ったのだ。俺が初めに、お前はキャロラインではないなと確認した時に、お前は、俺が望んだキャロラインでない事を咎めたと思ったのであろうな」

  シャーロットの肩が僅かに震えている

  「諜報員からの報告に上がっていたキャロラインなる者の特徴とは違っていたので確認しただけだったのだが」

  サフィーラが感じていた違和感の正体が見えた、自分がキャロラインではない為に価値のない人間だと思っていたのだ
  物心がつく前から、主(王太子)に尽くし仕える事だけが自分の価値だと刷り込まれ厳しい教育に耐え、その王太子によって裏切られ送られてきたハーレムで、キャロラインでない事で自分の価値を完全に失ってしまっていたのだ

  サフィーラはシャーロットを抱き寄せた
  
  「もう一度言う。俺は一度も、キャロラインなる者を望んではいない。お前が、キャロラインである必要はないんだ」

  時間を掛けて、シャーロットを正妃に望んでいる事を伝えようと思っていたが、このままでは自己評価の低い·····というよりはないに等しいシャーロットには伝わらないだろうと考えたサフィーラは、震えるシャーロットの背中を撫でると

  「俺は、シャーロットを正妃に迎えたい」

  サフィーラはシャーロットの顔を覗き込み、口付ける

  「俺の正妃になれ、シャーロット」

  言わないだろうが、有無を言わせる隙を与えずに断言した
  驚きに言葉を失ったシャーロットに畳み掛けるように

  「俺の欲は、お前でないと満たせられない。お前だけだ、シャーロット」

  目を瞬かせて固まっているシャーロットを抱き締めると

  「俺が、たった一人選んだ女だ。誰かの代わりなんかであるわけがないだろう」

  シャーロットの瞳から涙が零れ落ちた
  サフィーラが言葉を尽くして慰めてくれている、卑屈になっていてはただの悲劇のヒロインぶった傲慢な女ではないか、と思った

  「シャーロット、慰めているのではないからな。口説いているんだ」

  心を読んだかのようなサフィーラの言葉に、シャーロットはポカンとなる
  口説いている?自分を?思いがけないサフィーラの言葉に混乱する
  混乱して固まったシャーロットにサフィーラは微笑み掛けると、抱き上げてベッドに運んだ
  
  甘い、もの凄く甘い、いつになく甘く熱烈なサフィーラの言葉と態度に、扉の前に控えている侍従は、口を開けたら砂糖が滝のように流れ落ちるのではないかと思いながら、そっと部屋を後にした


  「·····っん·····ぅ·····んんぅ·····はぁ·····っ」
  
  ベッドに下ろしたシャーロットにサフィーラが口付ける、何度も啄み唇を重ねシャーロットの力が抜けると、深く、呼吸を奪うように深く激しく口付ける

  「俺に全てを奪われろ、シャーロット」

  乱れた荒い息を吐きながら涙目で見上げるシャーロットに覆いかぶさり激しく抱いた  
  

  翌朝シャーロットが目覚めると、隣りで片肘をついて、鋭く怜悧な瞳を細めて見つめているサフィーラがいた
  眠っている顔を見つめられていたのだと思うと、恥ずかしさが込み上げてくる。真っ赤に染まった顔を背けて隠そうとするシャーロットに、それを許すまいとサフィーラの手が頬に触れる
  そのままサフィーラはシャーロットに口付け、準備された朝食の席にシャーロットを抱き上げて移動した
  いつものように手ずから食事をシャーロットの口に運ぶ

  「部屋を用意させている、夕方には移動ができるだろうから、それまではゆっくりと休んでいろ」

  そう言ってシャーロットを見つめる。急な話しに驚き戸惑いながらも頷いたシャーロットを見届けると、食事を再開した

  
  ミーナ達が着替えを手伝い身支度が済んでも、シャーロットは呆然と信じられない気持ちで動けなかった

  「シャーロット様、ゆっくりと休んでいるようにと言いつかっておりますので、横になっていてくださいませ」

  ミーナの顔をシャーロットは見つめ

  「わたくし、昨夜から、何か聞き間違いをしているのかしら·····」

  戸惑い首を傾げるシャーロットにミーナは首を振って

  「聞き間違いなどしておりませんよ。陛下はシャーロット様を正妃にと望んでいらっしゃいます」

  「どなたかとお間違えになっていらっしゃるのでは·····」

  「ないですよ。少し前から、陛下の態度がシャーロット様には特別でございました。連夜訪れたり食事を手ずから取らせたりと」

  「あれは、皆様にしていらっしゃるのでは?そういう方なのだと」

  「そういう方··········」

  愕然としたミーナは勢いよく首を振る

  「あの!あの皇帝陛下が、そのような事をしているわけないではございませんか。見た事も聞いた事すらありません。初めてでございますわ。シャーロット様だけにでございます」

  若干自国の皇帝に失礼な発言をしながらサフィーラの援護をするミーナの言葉を、じわじわと理解すると、今更ながらに恥ずかしくなり真っ赤になってオロオロとしている

  「わたくしなどが·····」

  自己評価の低いシャーロットが真っ赤になって狼狽えている姿に、残念なものを見るようにゆるゆると首を振って『本当にご自分を知らない方ですわ』と呟いた

  「兎も角、休んでおかなければ陛下に叱られてしまいます」

  ベッドに寝かされて掛布を掛けられたシャーロットは

  「こちらの国に来てから、わたくし寝てばかりですわ·····」

  そう言うシャーロットにミーナは力強く

  「それでよろしいのです。皇帝陛下のお相手をなさっていらっしゃるのですから、しっかり食事して寝て体力を回復されないと、お身体を壊してしまわれます」

  言い切られてしまえばシャーロットは大人しく目を閉じる
  シャーロットが思っている以上に身体が疲れているのだろう、ウトウトと微睡みはじめた

  

  
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