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13歳になり、学園に入学する年になった
入学式の日、王家の所有する馬車で侯爵家に迎えに行くと、エヴァリーナと共に登校した
毎朝一緒に登校し、帰りも毎日一緒に王宮に帰るつもりである
馬車を降りるとエヴァリーナの手を取ってエスコートする
『前』は学園の中でエヴァリーナの手を取って歩くような事はなかった
王族として、侯爵令嬢として、適切な距離を置いて模範と成るべく行動していた。エヴァリーナを疎んじていたとかではなく、互いに相手の立場を考えての距離感であったのだが、恐らくその二人の距離感を勘違いされ、上手く利用されて付け入られたのだろうと思う
だから今回は、お互いの立場とか、適切な距離感とか、そういった事は一切考えない事にしたのだ
常に手を取って、時には腰に腕を回してエヴァリーナと行動を共にする
エヴァリーナは恥ずかしがったが
「折角学園に入って、一緒にいられる時間が増えたんだ。イブといられる時間は、触れていたいんだよ。嫌、かな?」
「嫌、じゃない、です」
僕がそう言うと、エヴァリーナは顔を真っ赤にしながらも了承してくれた
学園にいる間はなるべくエヴァリーナの側から離れないようにする。離れなければならない時も常に僕とエヴァリーナには王家の影をつけている
それは側近達にも話していない
そして『前』と同じく、僕やエヴァリーナ、側近達の周りをちょろちょろする者が現れた
あの令嬢、フローラ・ルメイン男爵令嬢である
『前』と全く同じだった
背後から駆けてきたルメイン男爵令嬢は、僕を追い越した瞬間、僕の目の前で転んだ
「きゃあっ!」
悲鳴を上げてすっ転ぶと、上半身を起こして座り込んだまま 痛ァいと呟きながら足を摩っている
『前』の時は、いきなり転んだ令嬢に驚いて、慌てて手を差し伸べて足が痛いと言う令嬢をエスコートしたのだった。それが、まず第一の間違いだった
その次の日、改めてお礼にきたという男爵令嬢は『王子様なんて知らなくてぇ。ありがとうございましたぁ。お礼にランチを作ってきましたぁ』と上目遣いに目をウルウルさせながら言ってきた。僕は王族だから、人から貰った物は口に出来ない、と断ると『そうなんですか·····知らなくて·····ごめんなさい』と泣きそうな顔をして言われ、あまりにしょげた様子に申し訳なくなって、作って貰った物は食べられないがお詫びにカフェでランチをしようと言ったのだった。特別な意味もなく、ただお礼として作った物を食べられないお詫びでしかなかったのだが、それが二つ目の大きな間違いだった
だから先ず、その二つの間違いを犯さないように、すっ転んだ男爵令嬢には手を差し伸べずに、玄関ホールにいる警備隊を呼んで男爵令嬢を起き上がらせて医務室に連れて行かせた
転んだ令嬢を隣りにいたエヴァリーナが心配しているが、
「医務室に行ってもらったから、大丈夫だろう」
と僕が言うと、そうですわね、と納得したエヴァリーナを連れて入学式が執り行われるホールへと向かったのだった
入学式の日、王家の所有する馬車で侯爵家に迎えに行くと、エヴァリーナと共に登校した
毎朝一緒に登校し、帰りも毎日一緒に王宮に帰るつもりである
馬車を降りるとエヴァリーナの手を取ってエスコートする
『前』は学園の中でエヴァリーナの手を取って歩くような事はなかった
王族として、侯爵令嬢として、適切な距離を置いて模範と成るべく行動していた。エヴァリーナを疎んじていたとかではなく、互いに相手の立場を考えての距離感であったのだが、恐らくその二人の距離感を勘違いされ、上手く利用されて付け入られたのだろうと思う
だから今回は、お互いの立場とか、適切な距離感とか、そういった事は一切考えない事にしたのだ
常に手を取って、時には腰に腕を回してエヴァリーナと行動を共にする
エヴァリーナは恥ずかしがったが
「折角学園に入って、一緒にいられる時間が増えたんだ。イブといられる時間は、触れていたいんだよ。嫌、かな?」
「嫌、じゃない、です」
僕がそう言うと、エヴァリーナは顔を真っ赤にしながらも了承してくれた
学園にいる間はなるべくエヴァリーナの側から離れないようにする。離れなければならない時も常に僕とエヴァリーナには王家の影をつけている
それは側近達にも話していない
そして『前』と同じく、僕やエヴァリーナ、側近達の周りをちょろちょろする者が現れた
あの令嬢、フローラ・ルメイン男爵令嬢である
『前』と全く同じだった
背後から駆けてきたルメイン男爵令嬢は、僕を追い越した瞬間、僕の目の前で転んだ
「きゃあっ!」
悲鳴を上げてすっ転ぶと、上半身を起こして座り込んだまま 痛ァいと呟きながら足を摩っている
『前』の時は、いきなり転んだ令嬢に驚いて、慌てて手を差し伸べて足が痛いと言う令嬢をエスコートしたのだった。それが、まず第一の間違いだった
その次の日、改めてお礼にきたという男爵令嬢は『王子様なんて知らなくてぇ。ありがとうございましたぁ。お礼にランチを作ってきましたぁ』と上目遣いに目をウルウルさせながら言ってきた。僕は王族だから、人から貰った物は口に出来ない、と断ると『そうなんですか·····知らなくて·····ごめんなさい』と泣きそうな顔をして言われ、あまりにしょげた様子に申し訳なくなって、作って貰った物は食べられないがお詫びにカフェでランチをしようと言ったのだった。特別な意味もなく、ただお礼として作った物を食べられないお詫びでしかなかったのだが、それが二つ目の大きな間違いだった
だから先ず、その二つの間違いを犯さないように、すっ転んだ男爵令嬢には手を差し伸べずに、玄関ホールにいる警備隊を呼んで男爵令嬢を起き上がらせて医務室に連れて行かせた
転んだ令嬢を隣りにいたエヴァリーナが心配しているが、
「医務室に行ってもらったから、大丈夫だろう」
と僕が言うと、そうですわね、と納得したエヴァリーナを連れて入学式が執り行われるホールへと向かったのだった
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