勘違いって恐ろしい

りりん

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   「盛り上がっている所を申し訳ないが、キンバリー侯子、君がユリアーナ嬢と婚約を結び直す事は、万に一つもないよ」

  階段を降りてくる王国の貴族ではない青年の姿にホール内の者達はざわめいた
  青年はそのまま騒動の中心に向かうと、ユリアーナの隣りに並び立ち腰に手を回した
  ユリアーナは驚きに青年を見詰め、青年はユリアーナに愛おしげに微笑みかける
  ユリアーナのすぐ後ろにいたマリアンナやミランダは顔を真っ赤にして口元を両手で覆っている
  
  呆気に取られていたアイザックが我にかえって

  「な、何だお前は」

  蕩けるような目でユリアーナを見詰めていた青年の目が鋭くなってアイザックに向けられた
  ユリアーナも、ハッと我にかえり

  「帝国のリシャール公爵家の御令息でいらっしゃいます。わたくしの、婚約者でございますわ」

  「レイモンド・リシャールだ、以後お見知り置きを」

  さりげなくユリアーナの腰に回していた手で抱き寄せる
  恥ずかしそうにレイモンドに目をやり甘い空気が2人を包む
  そこに思いもかけない爆弾が落とされた

  「2人と、婚約を掛け持ちしてたんですか?」

  「なに?掛け持ち?なんて奴なんだ」

  また勝手な勘違いをして、それを口に出す2人にユリアーナの眉がピクリと跳ね上がった

  「貴方達は、公爵家を侮辱するつもりか?」

  ユリアーナよりも先にレイモンドが怒気を含んだ声をあげる
  その声に青くなってふるふると体を震わせたアンナが、レイモンドの腕に縋りつこうとしながら

  「違いますっ。侮辱しているのはおねえさ……」

  「気安く触ろうとしないで貰おうか。それに、ユリアーナは君の義姉ではないと、何度も言われているだろう」

  レイモンドがぴしゃりとアンナを制した
  アンナは呆然として硬直した。アイザックや他の令息達はアンナが気安く触れたりするのを喜んだ、無邪気に触れるアンナを可愛くて可憐だと言ってくれていた。アンナが触るのを拒む男がいると思わなかった
  アンナは自分が異性に愛される令嬢だと思っていた
  アイザックも他の令息達も、婚約者よりもアンナの方が可愛いと大事にしてくれた
  だからアンナはユリアーナが自分に嫉妬して意地悪な事を言うのだと思っていたのだ

  呆然としているアンナにユリアーナが

  「アンナ、話しをきちんと聞かずに、思い込みで人を侮辱するのをいい加減にやめなさい。もっと言葉の意味を考えて理解する努力をしてはいかが?」

  アンナに優しい言い回しは理解出来ない、言葉の裏を読めない、曖昧な言葉を使うと自分の都合が良いように勝手に捻じ曲げてしまう、それを現実だと勘違いして思い込む、アイザックもそれに感化されてまともな思考が出来なくなっている、だからユリアーナは、曖昧に言葉を濁さず、はっきりと現実を突きつける事にする

  「貴女とキンバリー様が、学園で大勢の方々の前でわたくしを貶めた次の日に、わたくしとキンバリー様の婚約は解消されました。その後に、事情を話した上で、レイモンド様との婚約が成立しましたの。貴族の婚約は国王陛下の元に結ばれた契約です。キンバリー様はその契約の違反を犯した、だから婚約を解消したのです。その原因はアンナ、貴女です」

  
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