12 / 13
12
しおりを挟む
「随分、盛り上がってたね。ジュリエッタゆっくり聞かせてほしいなぁ」
物凄くいい笑顔をしている。
怖い··········このまま逃げてしまいたい。
絶対に聞いてたよね、この王子様。ミーフィアも同じ事を思ったのだろう、さっきと同じ体勢のまま固まってしまっている。
「サンタナ男爵令嬢、ジュリエッタは君と気が合うみたいだね。これからもジュリエッタをよろしく頼むよ」
「は、はい。勿論ですっ!こちらこそよろしくお願いします!!」
勢いよく返事したミーフィアは、ガバリと頭を下げて、失礼しますと言うと走って逃げて行った。
私も一緒に走っていきたかった··········
「さあジュリエッタ、教室に戻ろうか」
がっしりとアイザックに腰を抱かれた私は、連行される罪人のような気分で教室に戻る廊下を歩いた。
授業が終わった後、校舎から寮に連行された私は今、部屋に入ったところで壁に背をつけて両手を壁に付いたアイザックに囲い込まれている。所謂壁ドンというやつだ。
流れるような動作でナチュラルに壁ドンするアイザックは、流石王子様と言える程に絵になっている。
「ジュリエッタ?」
不自然なくらいの優しげな声で名前を呼ばれて余計に背中にゾクリとした震えが走る。
「えーと·····あの、どの辺りから·····聞いてました?」
「何か記憶があるとかなんとか、っていうところかな」
「初めから聞いてるんじゃないですか!」
「君達の会話で、理解出来ない所が多々あってね」
しれっと言うアイザック。
初めから聞いていたアイザックに誤魔化しは効かないと思った私は、正直に全部話した。変に隠して端折ったりすれば、余計な誤解を産む事になってしまうので洗いざらい全部。
聞き終わったアイザックは、ふぅっと息を漏らすと、私の手を引いてソファーに座る。
「ジュリエッタは、生まれる前世の記憶があって、その世界には、この国の事をなぞらえたようなゲーム?というものがあったっていう事でいいんだな?」
私はコクリと頷く。
「それには、俺やジュリエッタも出ていたと」
コクリ
「サンタナ男爵令嬢も出ていて、彼女が主役のゲームって事だね」
「そうです」
「で、俺とサンタナ男爵令嬢が恋に落ちて、邪魔になったジュリエッタとの婚約を破棄すると。んで、ジュリエッタを陵辱させて娼館に売り払うって」
はぁぁ、と大きく溜め息を吐いて、ソファーの背もたれに腕を乗せ、深く沈み込んで天井を見上げると、たっぷりと間をおいて
「その俺って、クズじゃねえ?」
「ええっと、まあ·····そうですね」
思わず正直に答えてしまうと、苦虫を噛み潰したような顔になるアイザック。
「でも、まあ、そういうのは結末としては定番というか、悪役令嬢が娼館行きとか、幽閉とか処刑とか国外追放とか修道院とか」
慌ててフォローするように早口で口走ると
「いや、それ全部クズだからな」
すぐさま突っ込んだアイザックに、しまったと私は口を閉じた。
「そんだけのバリエーションの定番があるって事は、そういう似たようなゲーム?があるって事?」
「そうです。王子様や高位貴族の令息達と恋愛を楽しむゲームなんですよ」
「ゲームの数だけクズな王子がいるって事だな」
「まあ、そういう事になりますね。·····随分クズっていうところに拘りますね」
「それはそうだろう!そのゲームの中でとはいえ、婚約者を陵辱させて売り払う王子って事にされてるんだぞ!」
「まあ·····そこはスパイス的なものですよ」
「スパイスで片付けるような事か?」
「それはほら、ヒロインと王子様達の甘いイチャイチャと、そのヒロインの為に悪役令嬢を婚約破棄してズバッと断罪しちゃう王子様が素敵っていうのがゲームの醍醐味なんですよ」
「ふーん、随分とヒロインってのが優遇されてるんだな」
「ヒロインが善で婚約者が悪っていうのがセオリーなので」
「善と悪ねえ·····」
呟きながらジッと見つめていたアイザックは、私の腕を掴んで引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
「ま、そのゲームとやらの俺とは違う。お前も悪役令嬢とやらじゃない。だろ?」
「そうね。確かに違うわ」
「それに、そのゲームの俺は馬鹿だなぁ、ジュリエッタをそんな所に売り払うなんて、こんな身体知っててよく手放そうと思ったな」
「あ··········いや、あの、ゲームの王子様は悪役令嬢令嬢とは何もしていないから」
「····················はぁ?」
「王子様は悪役令嬢を蛇蝎のごとく嫌っていたので、指一本触れてなくて。陵辱されるまでジュリエッタは純潔だったと·····」
アイザックは信じられないというような顔をして、頭を乱暴に掻き回す。
「馬鹿だろ、馬鹿なんだろその俺は」
私は苦笑いをするしかなかった。
「ゲームの中の話ですから」
「そうだな。そうだな、その俺と俺は違うって、じっくり覚えてもらわないとな」
今度こそアイザックは私に覆い被さり、いつも以上の時間を掛けて愛し合った。
物凄くいい笑顔をしている。
怖い··········このまま逃げてしまいたい。
絶対に聞いてたよね、この王子様。ミーフィアも同じ事を思ったのだろう、さっきと同じ体勢のまま固まってしまっている。
「サンタナ男爵令嬢、ジュリエッタは君と気が合うみたいだね。これからもジュリエッタをよろしく頼むよ」
「は、はい。勿論ですっ!こちらこそよろしくお願いします!!」
勢いよく返事したミーフィアは、ガバリと頭を下げて、失礼しますと言うと走って逃げて行った。
私も一緒に走っていきたかった··········
「さあジュリエッタ、教室に戻ろうか」
がっしりとアイザックに腰を抱かれた私は、連行される罪人のような気分で教室に戻る廊下を歩いた。
授業が終わった後、校舎から寮に連行された私は今、部屋に入ったところで壁に背をつけて両手を壁に付いたアイザックに囲い込まれている。所謂壁ドンというやつだ。
流れるような動作でナチュラルに壁ドンするアイザックは、流石王子様と言える程に絵になっている。
「ジュリエッタ?」
不自然なくらいの優しげな声で名前を呼ばれて余計に背中にゾクリとした震えが走る。
「えーと·····あの、どの辺りから·····聞いてました?」
「何か記憶があるとかなんとか、っていうところかな」
「初めから聞いてるんじゃないですか!」
「君達の会話で、理解出来ない所が多々あってね」
しれっと言うアイザック。
初めから聞いていたアイザックに誤魔化しは効かないと思った私は、正直に全部話した。変に隠して端折ったりすれば、余計な誤解を産む事になってしまうので洗いざらい全部。
聞き終わったアイザックは、ふぅっと息を漏らすと、私の手を引いてソファーに座る。
「ジュリエッタは、生まれる前世の記憶があって、その世界には、この国の事をなぞらえたようなゲーム?というものがあったっていう事でいいんだな?」
私はコクリと頷く。
「それには、俺やジュリエッタも出ていたと」
コクリ
「サンタナ男爵令嬢も出ていて、彼女が主役のゲームって事だね」
「そうです」
「で、俺とサンタナ男爵令嬢が恋に落ちて、邪魔になったジュリエッタとの婚約を破棄すると。んで、ジュリエッタを陵辱させて娼館に売り払うって」
はぁぁ、と大きく溜め息を吐いて、ソファーの背もたれに腕を乗せ、深く沈み込んで天井を見上げると、たっぷりと間をおいて
「その俺って、クズじゃねえ?」
「ええっと、まあ·····そうですね」
思わず正直に答えてしまうと、苦虫を噛み潰したような顔になるアイザック。
「でも、まあ、そういうのは結末としては定番というか、悪役令嬢が娼館行きとか、幽閉とか処刑とか国外追放とか修道院とか」
慌ててフォローするように早口で口走ると
「いや、それ全部クズだからな」
すぐさま突っ込んだアイザックに、しまったと私は口を閉じた。
「そんだけのバリエーションの定番があるって事は、そういう似たようなゲーム?があるって事?」
「そうです。王子様や高位貴族の令息達と恋愛を楽しむゲームなんですよ」
「ゲームの数だけクズな王子がいるって事だな」
「まあ、そういう事になりますね。·····随分クズっていうところに拘りますね」
「それはそうだろう!そのゲームの中でとはいえ、婚約者を陵辱させて売り払う王子って事にされてるんだぞ!」
「まあ·····そこはスパイス的なものですよ」
「スパイスで片付けるような事か?」
「それはほら、ヒロインと王子様達の甘いイチャイチャと、そのヒロインの為に悪役令嬢を婚約破棄してズバッと断罪しちゃう王子様が素敵っていうのがゲームの醍醐味なんですよ」
「ふーん、随分とヒロインってのが優遇されてるんだな」
「ヒロインが善で婚約者が悪っていうのがセオリーなので」
「善と悪ねえ·····」
呟きながらジッと見つめていたアイザックは、私の腕を掴んで引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。
「ま、そのゲームとやらの俺とは違う。お前も悪役令嬢とやらじゃない。だろ?」
「そうね。確かに違うわ」
「それに、そのゲームの俺は馬鹿だなぁ、ジュリエッタをそんな所に売り払うなんて、こんな身体知っててよく手放そうと思ったな」
「あ··········いや、あの、ゲームの王子様は悪役令嬢令嬢とは何もしていないから」
「····················はぁ?」
「王子様は悪役令嬢を蛇蝎のごとく嫌っていたので、指一本触れてなくて。陵辱されるまでジュリエッタは純潔だったと·····」
アイザックは信じられないというような顔をして、頭を乱暴に掻き回す。
「馬鹿だろ、馬鹿なんだろその俺は」
私は苦笑いをするしかなかった。
「ゲームの中の話ですから」
「そうだな。そうだな、その俺と俺は違うって、じっくり覚えてもらわないとな」
今度こそアイザックは私に覆い被さり、いつも以上の時間を掛けて愛し合った。
23
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
婚約者と妹に毒を盛られて殺されましたが、お忘れですか?精霊の申し子である私の身に何か起これば無事に生き残れるわけないので、ざまぁないですね。
無名 -ムメイ-
恋愛
リハビリがてら書きます。
1話で完結します。
注意:低クオリティです。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
私知らないから!
mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。
いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。
あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。
私、しーらないっ!!!
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる