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  エルバルトがゲストルームを出た頃、別のゲストルームにはルイがリドウィンを伴って訪れていた
  辺境伯夫人と令嬢がいる部屋である
  
  ルイ達が辺境伯領に訪れた時には、既に令嬢はマーノからの婚約破棄の書状を受け取っていた
  リンドル公爵令嬢と一緒になってルルアを虐めた者との婚約は続けられない。というような内容だったらしい
  ルルアが学園に編入してきてすぐに、辺境伯領に戻った令嬢は、ルルアの事も殆ど知らないのに、と令嬢は笑っていた
  辺境伯領がリンドル公爵領と共に独立を表明した事を聞いていた令嬢は、これからは領を守る為に力を尽くすのだと言った
  新たな縁談を望まないのか、と問い掛けたルイに、婚約破棄された娘ですよ、もうこりごり、だという令嬢にルイは何も言えなかったが、何だろう、何とも言えない感情がルイの中に渦巻いていた
  
  「侍女が控えておりますので、何でも申し付けてください。護衛がフロアを回っておりますから、安心してご滞在くださりますよう」

  「お気遣い有難うございます」

  リドウィンがにこやかに告げると夫人と令嬢が礼を述べる、その様子をルイはジッと見つめている
  部屋に来てからルイの目はずっと令嬢を追っていた
  令嬢と目が合うと、顔を逸らして赤くなる、そんなルイをリドウィンが観察していた
  この様子だと声は掛けられそうにないな、と判断したリドウィンは内心苦笑してルイを引っ張って退室する

  廊下を二人で歩きながら

  「仕立て屋が来てる、王太子殿下とエルバルトとドレスの打ち合わせをするんだ」

  「ああ、舞踏会用のドレス、まだ決まってなかったのか」

  「まあ色々調整がな」

  「三人色が被るもんなぁ」

  「まあ、それはいいんだけど。お前も一緒に来いよ」

  「いや、俺はドレス着ないし」

  大真面目に言ったルイにリドウィンが吹き出した

  「誰もお前に着ろって言ってないから。黒のドレスは流石に無理だからなぁ。赤なんていいんじゃない?」

  先程まで見ていた黒髪で赤い瞳の令嬢を思い浮かべながらリドウィンが言った

  「赤っ·····っう、ゴホッ·····」

  ルイが思わず噎せて咳き込むとリドウィンは笑いながらルイの肩を抱いて仕立て屋の待つ部屋に引っ張っていった

    
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