上 下
94 / 101

アルバライザーとリライザ

しおりを挟む
 「あれがあの二人の本性……」

 ぼくに対して、優しい親のふりをしてはいたけれど、どこか冷たく感じたのは間違いじゃなかった。
 ぼろぼろになって泣いてる男の子を見て、汚い物を見る目で笑う二人を見てぼくはもう、我慢の限界だった。

 「我が声に応え現れいでよ!!神聖獣アルバライザー!!」

 ぼくの声に応えアルバがその姿を現す。

 「ノルン。行くのか」
 「もう我慢出来ない!!あいつら全員ぶっとばしてやるんだから!!」
 「そうか。ノルン、まずはどうする?」
 「決まってるよ!!まずは罪のない人達に暴力を振るってる兵士達全員ぶっ飛ばす!!」
 「ならまずはリライザを召喚せよ。ノルンが力ある言葉で呼べばリライザはどこからでもノルンの元にやってくる」

 リライザにそんな機能があるなんて知らなかった……。
 でもリライザが手元にある方が絶対に都合が良いはず!!

 「わかったよアルバ。ーー我が手に来たれ!!聖杖リライザ!!」

 ぼくの力ある言葉に応え、聖杖モードのリライザがぼくの目の前に瞬間移動してきて、その姿を現した。

 「ノルン!!良かった!!無事だったので……どうしたんですか!?その姿は!?」

 幼い姿になったぼくを見てリライザが驚きの声を上げる。

 「リライザ!!話は後回しだよ!!」

 ぼくはリライザを手に取ると、魔力を集中させる。
 拉致されてからずっと身に着けさせられていた、神聖魔法封じのペンダントが粉々に砕け散り、地面の上に落ちていく。
 異次元ポケットから祝福のローブを取り出して羽織ると、祝福のローブは今のぼくの幼い体に合わせて、サイズが幼児サイズへと変化した。

 「行くよ、アルバライザー!!」

 ぼくが伏せてくれたアルバの背中にぴょんと飛び乗ってそう告げたその時だった。

 「……聖女様!!聖女様への数々のご無礼の罰は必ずやお受けします!!ですがどうか、どうか、この国の力なき者達をお救い下さい!!」

 背後から現れたロマリアが、その場に土下座をして額を地面に擦りつけながら、ぼくに懇願してきた。
 ロマリアもまた、被害者なのかもしれない。
 でも、今はゆっくり話している時間はない。

 「顔を上げて下さい。ロマリア。女神ミリシャルの名において、私が必ず虐げられてる人々を救ってみせます」
 「聖女様……」
 「短い間でしたがお世話になりました。貴女に女神ミリシャルの御加護があらん事を」

 ぼくはロマリアにそう告げると、アルバに声をかける。

 「行くよ。アルバ」
 「うむ。心得た」

 ぼくを乗せたアルバが天を駆ける。
 ロマリアに見送られながら、こうしてぼく達はアスモデール邸を後にするのだった。

 「ノルン。空を飛んでいるが怖くないか?」
 「大丈夫。アルバに乗ってるからか、全然怖くないよ!!」

 かなりの高さを飛んでるのに、不思議と全然怖くなかった。
 アルバが一緒なら、絶対に落ちたりしないって安心出来るからかな?

 「ノルン!!聞きたい事が沢山あります!!何故小さくなってるんですか!?それにこの生き物はいったい!?」

 何がどうなってるのか知らないリライザが、ぼくの手の中から矢継ぎ早に質問してくる。

 「その質問には我が答えよう。だが口で説明するのも面倒だ。我の見てきた物を見せてやるからそれで理解せよ」
 「な……っ!?」

 アルバの額が一瞬光を放ち、続けてリライザが一瞬光った。

 「ーー貴方は……。本当にアルバライザー!?貴方、私と同じ疑似人格じゃなかったのですか!?」
 「そんな事を言った覚えはない」
 「……ええ。そうでしたね。貴方はいつだって素っ気なかったですからね」
 「ねえ、もしかしてアルバとリライザって仲悪いの?」
 「別にそんな事はない。昔のリライザは今のように人間のような受け応えが出来なかったから、そんなに話す機会がなかっただけだ」
 「そう言われてしまうと返す言葉もありませんが……。とにかくノルンが無事で良かったです」

 どこかバツの悪そうなリライザに向かってぼくは苦笑いしながら答える。

 「こんな姿にされちゃったけどね」
 「リライザよ。反省せよ。一時とはいえ、そなたがノルンから離れなければこんな事にはならなかった」
 「それを言われると返す言葉もありません……。ですが、ノルンが四六時中一緒なのを嫌がるので……」
 「流石にトイレにまでリライザを連れてくのはやだ……」

 ぼくが助け舟を出すと、アルバは呆れたような様子で言った。

 「……何の為に休眠状態スリープモードがあるのだ」
 「「あっ」」

 リライザに見られたくない事をする時はリライザを休眠状態スリープモードにすればよかったんだ……。
 全然思いつかなかった……。

 「無駄話は終わりだ。着いたぞ」

 ガルフ国の郊外にあるグリアモール領から、市街地の上空にあっという間に到着した。

 「ーーアルバ。リライザ。行くよ!!」
 「うむ」
 「はい」

 リライザが光り、ぼくに着地の衝撃が伝わらないように防壁を張ると、アルバが急降下する。

 ズウウウウンッと重い衝撃と共に舗装された地面が砕け散り陥没した。

 グリアモール公爵の命令で、男の子を暴行していた騎士を見つけてぼくは叫んだ。

 「防御陣プロテクション!!」

 光輝く防御陣プロテクションの壁が倒れている男の子の眼前に展開し、クズ騎士の振り下ろした拳を跳ね返す。
 鋼鉄の何十倍も硬い防御陣プロテクションの壁を思い切り殴りつけたクズ騎士の拳が砕け、クズ騎士の悲鳴が周囲に鳴り響くのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

【完結】魅了が解けたあと。

恋愛
国を魔物から救った英雄。 元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。 その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。 あれから何十年___。 仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、 とうとう聖女が病で倒れてしまう。 そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。 彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。 それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・ ※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。 ______________________ 少し回りくどいかも。 でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

忌むべき番

藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」 メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。 彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。 ※ 8/4 誤字修正しました。 ※ なろうにも投稿しています。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...