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聖女(覚醒前)は怖いもの知らず
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ーーあれは2年前、まだ私がアルバライザーの作り出した女神像の中で休眠状態のまま、ノルンを見守っていた頃の出来事でした。
『パパ。さっき帰ってきたばかりなのに、またお仕事に行くの?』
『ああ。昨日女の子が1人誘拐される事件が起きたんだ。まだ犯人が捕まってないからパパ達も捜索に行くんだよ。何日かかるかわからないから、着替えを取りに帰ってきただけなんだ』
『そうなんだ。お仕事がんばってね』
『うん。犯人が見つかるまでは例え昼間でも、人通りの少ない場所に近付いたら駄目だぞ。ノルン』
『はーい』
ラギアン王国聖騎士団長の父親がそう言い聞かせて出かけていくのを見送ると、ノルンは名案を思いついたとばかりにぽんと手を叩きました。
『そうだ!!ぼくが誘拐犯にわざと拐われて、誘拐犯をやっつけたら神剣がぼくを認めてくれるかもしれない!!』
怖いもの知らずとはこの事です。
自分が誘拐されかけた時の事を忘れたのでしょうか。
あれはノルンが9才の頃でした。
ある日、ほうきを振り回して剣の修行の真似事をしていたノルンは、お祖母様の大切にしていた花瓶を割ってしまいました。
怒られるのが怖くて外に飛び出し、そのまま家に帰れなくなったノルンが遅くまで外を一人でうろうろしていた時です。
ノルンは流れ者の集団に誘拐されそうになりました。
その時は運良くミリシャル神殿に良く出入りしていた女性が、口元を布で押さえつけられて流れ者達に抱きかかえられたノルンを見て、大声を上げた事で近隣住民の皆さんが家から飛び出してきて全員で流れ者達を叩きのめし、騎士団に突き出した事で事なきを得ました。
近隣住民の皆さんが50人以上で8人いた流れ者達を一方的に叩きのめすその光景は恐ろしい物でした。
彼等にとってアイドル的存在のかわいくて小さな女の子を拐おうとしたのですから、皆さんの怒りは凄まじく流れ者達を殺してしまいそうな勢いでした。
ノルンは誘拐されそうになったのが怖かったようで、最初に見つけてくれた女性に抱かれてわんわん泣いてました。
その後、ノルンは護身用に防御陣をお祖母様に習ったのです。
ノルンはその時の事をすっかり忘れているようでした。
自分に都合の悪い事はすぐに忘れてしまうのはこの頃からです。
『まだ犯人捕まってないなら、犯人が隠れてそうな場所をうろついてればぼくに何かしてくるに違いないよ!!おばーちゃんがお風呂に入ってる今のうちにレッツゴー!!』
13才になり防御陣を自由自在に操れるようになったノルンは、以前にも増して無鉄砲にも程がある子になっていました。
どうしてこんな子に育ってしまったんでしょうね?
私とアルバライザーが保管されている部屋の窓からこっそりと神殿を抜け出し、ご近所の家の間をすり抜けながら新たに開発が開始される為、一時的に住民がいなくなった地域にノルンはわくわくしながら向かいます。
そして廃棄された教会の周りをうろうろしていた所で、ノルンは突然麻袋を被せられて教会の中に連れ込まれました。
両手と両足を縛り上げられ、ノルンは教会の中にある倉庫部屋に放り込まれました。
『たまたま外の様子を伺ってみたら、騎士団に嗅ぎつけられる前に良いもんが手に入ったぜ。へっへっへ』
『それにしてもこいつは上玉じゃねえか。まだガキなのが惜しいぜ。そういう趣味の変態貴族に高く売れそうだ』
『そうだな。せめてもうあと数年後なら、売り飛ばす前に俺達でかわいがってやるのによお。それにしてもクライアントの寄越す手筈の魔導士はまだかよ』
『姿を消す魔術だか転移魔術だかよくわからんが、その魔道士が合流してくれねえとこの国からおさらば出来ねえ……』
『おい、ガキども。静かにしてろよ。痛い思いはしたくねえだろ?』
3人の誘拐犯達はそんなやりとりの後、ノルンともう一人の女の子を残して部屋を出ていきました。
『ぐすっ、ぐすっ……。おかあさん……。こわいよぅ……』
『……防御陣ないふ』
防御陣でナイフを作り出し、手足を拘束する縄を切断すると、ノルンは泣いている女の子に優しく語りかけました。
『もう泣かなくても大丈夫。私があなたを逃してあげますから』
ノルンは優しい声で女の子の手足を拘束していた縄を切断しました。
『ケガはありませんか?』
ノルンが優しく尋ねると、女の子は泣きながらこくんと、頷きました。
『それなら良かった。今から私が誘拐犯達を引き付けておきますから、外に逃げて。お城が見える方に全力で走るんですよ』
そう言ってノルンは防御陣ぱんちで壁を破壊しました。
『さあ、早く』
外への穴を指差してから、今度は男達が出ていった扉を防御陣ぱんちで破り、ノルンは扉の向こうへと飛び出すのでした。
『なんだ今の音はぁっ!?』
壁と扉の破壊された音に気付いた誘拐犯達が武器を手にノルンの方へと向かってきます。
ノルンは近くに置かれていた木の箱の上に乗り、やってきた誘拐犯達にビシッと人差し指を向けてドヤ顔で言い放ちました。
『か弱い女の子ばかり狙う卑怯者の誘拐犯!!このぼくが成敗してあげる!!』
ノルンが私を手にして聖女になる一週間前の出来事でした……。
『パパ。さっき帰ってきたばかりなのに、またお仕事に行くの?』
『ああ。昨日女の子が1人誘拐される事件が起きたんだ。まだ犯人が捕まってないからパパ達も捜索に行くんだよ。何日かかるかわからないから、着替えを取りに帰ってきただけなんだ』
『そうなんだ。お仕事がんばってね』
『うん。犯人が見つかるまでは例え昼間でも、人通りの少ない場所に近付いたら駄目だぞ。ノルン』
『はーい』
ラギアン王国聖騎士団長の父親がそう言い聞かせて出かけていくのを見送ると、ノルンは名案を思いついたとばかりにぽんと手を叩きました。
『そうだ!!ぼくが誘拐犯にわざと拐われて、誘拐犯をやっつけたら神剣がぼくを認めてくれるかもしれない!!』
怖いもの知らずとはこの事です。
自分が誘拐されかけた時の事を忘れたのでしょうか。
あれはノルンが9才の頃でした。
ある日、ほうきを振り回して剣の修行の真似事をしていたノルンは、お祖母様の大切にしていた花瓶を割ってしまいました。
怒られるのが怖くて外に飛び出し、そのまま家に帰れなくなったノルンが遅くまで外を一人でうろうろしていた時です。
ノルンは流れ者の集団に誘拐されそうになりました。
その時は運良くミリシャル神殿に良く出入りしていた女性が、口元を布で押さえつけられて流れ者達に抱きかかえられたノルンを見て、大声を上げた事で近隣住民の皆さんが家から飛び出してきて全員で流れ者達を叩きのめし、騎士団に突き出した事で事なきを得ました。
近隣住民の皆さんが50人以上で8人いた流れ者達を一方的に叩きのめすその光景は恐ろしい物でした。
彼等にとってアイドル的存在のかわいくて小さな女の子を拐おうとしたのですから、皆さんの怒りは凄まじく流れ者達を殺してしまいそうな勢いでした。
ノルンは誘拐されそうになったのが怖かったようで、最初に見つけてくれた女性に抱かれてわんわん泣いてました。
その後、ノルンは護身用に防御陣をお祖母様に習ったのです。
ノルンはその時の事をすっかり忘れているようでした。
自分に都合の悪い事はすぐに忘れてしまうのはこの頃からです。
『まだ犯人捕まってないなら、犯人が隠れてそうな場所をうろついてればぼくに何かしてくるに違いないよ!!おばーちゃんがお風呂に入ってる今のうちにレッツゴー!!』
13才になり防御陣を自由自在に操れるようになったノルンは、以前にも増して無鉄砲にも程がある子になっていました。
どうしてこんな子に育ってしまったんでしょうね?
私とアルバライザーが保管されている部屋の窓からこっそりと神殿を抜け出し、ご近所の家の間をすり抜けながら新たに開発が開始される為、一時的に住民がいなくなった地域にノルンはわくわくしながら向かいます。
そして廃棄された教会の周りをうろうろしていた所で、ノルンは突然麻袋を被せられて教会の中に連れ込まれました。
両手と両足を縛り上げられ、ノルンは教会の中にある倉庫部屋に放り込まれました。
『たまたま外の様子を伺ってみたら、騎士団に嗅ぎつけられる前に良いもんが手に入ったぜ。へっへっへ』
『それにしてもこいつは上玉じゃねえか。まだガキなのが惜しいぜ。そういう趣味の変態貴族に高く売れそうだ』
『そうだな。せめてもうあと数年後なら、売り飛ばす前に俺達でかわいがってやるのによお。それにしてもクライアントの寄越す手筈の魔導士はまだかよ』
『姿を消す魔術だか転移魔術だかよくわからんが、その魔道士が合流してくれねえとこの国からおさらば出来ねえ……』
『おい、ガキども。静かにしてろよ。痛い思いはしたくねえだろ?』
3人の誘拐犯達はそんなやりとりの後、ノルンともう一人の女の子を残して部屋を出ていきました。
『ぐすっ、ぐすっ……。おかあさん……。こわいよぅ……』
『……防御陣ないふ』
防御陣でナイフを作り出し、手足を拘束する縄を切断すると、ノルンは泣いている女の子に優しく語りかけました。
『もう泣かなくても大丈夫。私があなたを逃してあげますから』
ノルンは優しい声で女の子の手足を拘束していた縄を切断しました。
『ケガはありませんか?』
ノルンが優しく尋ねると、女の子は泣きながらこくんと、頷きました。
『それなら良かった。今から私が誘拐犯達を引き付けておきますから、外に逃げて。お城が見える方に全力で走るんですよ』
そう言ってノルンは防御陣ぱんちで壁を破壊しました。
『さあ、早く』
外への穴を指差してから、今度は男達が出ていった扉を防御陣ぱんちで破り、ノルンは扉の向こうへと飛び出すのでした。
『なんだ今の音はぁっ!?』
壁と扉の破壊された音に気付いた誘拐犯達が武器を手にノルンの方へと向かってきます。
ノルンは近くに置かれていた木の箱の上に乗り、やってきた誘拐犯達にビシッと人差し指を向けてドヤ顔で言い放ちました。
『か弱い女の子ばかり狙う卑怯者の誘拐犯!!このぼくが成敗してあげる!!』
ノルンが私を手にして聖女になる一週間前の出来事でした……。
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