上 下
47 / 101

番外編 聖女は友達がいない

しおりを挟む
 「だーりん、だーりん!!次はあっちのお店見に行こ!!」
 「ああ。ノルンが行きたい所ならどこでもいいよ」

 ガリアス帝国の商店街を仲睦まじく歩くノルンとラインハルト様。
 私は腕輪の形でノルンの左腕に装着され、黙って二人の仲睦まじい様子を見守ります。

 失礼しました。
 申し遅れましたが私、女神の杖こと、聖杖せいじょうリライザです。
 邪神が滅び平和になったこの世界で、主様マスターノルンの相棒パートナー兼話相手として、日々を過ごしています。

 今日はラインハルト様のお仕事が連休に入ったので、ノルンとラインハルト様はガリアス帝国に遊びに来ています。
 連休中ずっと一緒にいられてご機嫌なノルンは、ラインハルト様と腕を組んで嬉しそうに歩きます。

 いつもの聖女としてのローブ姿ではなく、白い清楚なワンピース姿に、白い帽子を被ったノルンは年齢相応にとてもかわいらしく、道行く人々が皆見惚れています。
 見た目だけなら、可憐で儚げな超絶美少女ですから、当然と言えば当然ですね。
 ラフな私服で隣を歩くラインハルト様は、羨望と嫉妬の入り混じった目で男性達に見られています。

 あれからノルンも色々と成長している為か、ラインハルト様はノルンのまだ成長中の胸部が腕に当たる度に、耳を赤くして照れています。
 勇者と言えども、この辺りはやはり男性ですね。
 あ、そうそう。私が先程から主様マスターであるノルンを、名前で呼ぶのは本人からの希望です。

 「リライザ。ぼくとあなたは相棒パートナーなんだから、ぼくの事は名前で呼んで」

 彼女は所詮、神器に宿る疑似人格に過ぎない私をまるで一人の人間のように扱います。
 遠い昔、聖女ノエルだった頃から変わりません。
 喋る道具を人扱いする必要などないのですが、私がそう言うとノルンは言いました。

 「だってリライザには心があるじゃない」

 かつてノエルにも同じ事を言われました。
 それ以来、私は彼女の事を私と言う疑似人格が消えるその日まで見守りたい、とそう思うようになりました。

 お目当てのお店に到着し、新しい靴を探すノルンをラインハルト様と共に見守っていると、ノルンと同年代の女の子達が数人、お店に入ってきました。

 女の子達は仲良く楽しそうにお喋りをしながら、靴を選んでいます。
 ノルンの靴を物色する手が止まっていたので、彼女の顔を観察すると、ノルンは女の子達をどこか羨ましそうな目で見ていました。

 女の子達が買い物を済ませてお店を後にすると、ノルンもお目当ての靴を見つけて購入し、お店を出ました。

 「ノルン。どうかしたのかい?なんだか元気ないけど。もしかして疲れちゃった?」

 ノルンの様子がおかしい事に気付いた、ラインハルト様がそう尋ねると、ノルンはこう答えました。

 「……ぼく、友達が欲しい」

 ーーそう。
 私達の大切な聖女ノルンには、同年代の友達がいなかったのです…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

神様のミスで女に転生したようです

結城はる
ファンタジー
 34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。  いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。  目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。  美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい  死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。  気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。  ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。  え……。  神様、私女になってるんですけどーーーー!!!  小説家になろうでも掲載しています。  URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

処理中です...