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34.大切な物

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 「さて、そろそろ終わりにしてやろう」

 そう言って邪神がその手に力を込める。
 ぼくの周囲に張り巡らせた最高位防御陣エクス・プロテクションが破られる……。

 「ライ様……。後の事はお願いします……」

 ぼくはここで邪神に殺されて、魂も食べられてしまうから。
 パパやおばーちゃん達が……。ぼくに優しくしてくれた大好きなみんなが生きる、この世界を守って。
 それとごめんね、女神の杖。
 こんな情けない聖女で……。ここまで一緒に戦ってくれてありがとう……。
 ぼくは観念して、女神の杖を両手で握りしめながら、両目をぎゅっと瞑った。

 ーーキイイイイン。

 突然、握りしめた女神の杖が光を放ち、澄んだ音色を放つ。
 次の瞬間、ぼくは浮遊感に包まれた。
 目を開くとぼくを掴んでいた邪神の右手が、バラバラに斬り裂かれ、ぼくは空中に投げ出されていた。

 「ノルン!!」

 光を放ちながら、まるで女神の杖と共鳴するかのような音色を放ち続ける神剣を手にしたライ様が、ぼくの体を力強く抱き寄せる。
 神剣の力で身体能力を強化したライ様が、ぼくをお姫様抱っこして地面の上に降り立つ。

 「勇者様……。どうして、ここに……?」
 「女神の杖が、神剣と共鳴してノルンの居場所を教えてくれたんだ」

 ライ様はそう答えて、ぼくを地面に優しく下ろしてくれる。

 「おのれ!!またしても我の前に立ち塞がるか!!」

 右手首を失った邪神が、激昂してぼく達に襲いかかろうとしたその時、巨大な砲弾が邪神に直撃して、その巨体を仰け反らせた。

 「ライ!!こっちは俺達に任せろ!!」
 「私達で時間を稼ぐから、しっかりやりなさい!!」

 邪神に向けて上空から主砲を撃った飛空戦艦から、ガリアードさんとレイリィおねーちゃんが、戦いの神様から授かった武器を手にして、邪神に向かって飛び降りながら叫ぶ。

 「どうして……?みんながここに……」

 わけわかんない……。
 なんでみんなここにいるの……?
 ぼくが呆然とそう呟くと、ライ様がぼくの顔を見つめて口を開く。

 「君を迎えに来たんだ。みんなは、ここまで来る為に俺の手助けをしてくれた」
 「え……?」
 「……間に合って良かった!!まさか邪神が生きていたなんて……。俺は世界で1番大切な物をもう少しで失う所だった……!!」

 そう叫んで、ライ様はぼくを抱きしめた……。
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