上 下
54 / 56
第八夜 ここは異世界、それとも……

《08-3》

しおりを挟む
††

 ネクス、ちょっと見てくれる?
 
《名前: レックス・バナルカンド
 種族: 倭人 年齢: 25 性別: 男
 職業: 特級魔闘拳操士 LV.91
 身長: 179センチ 体重: 85キロ
 生命力: 12,352 魔力: 1,919》

 おお、あのイケメン、ガリオンと同じくらいだ。たしかカイゼルがLV.82とか誰かが言ってたから、イケメンのが強いんだね。なるほど。それに体力がすごいな、魔力がヘタレだけど。魔闘拳操士ってそういうものなのかな。

 RPGゲームとかでいう、武闘家みたいなもんかな。ついでにあの背の高いリーダーっぽいやつ。

《名前: サタラ・バナルカンド
 種族: 倭人 年齢: 32 性別: 男
 職業: 特級魔刀剣操士 LV.96
 身長: 199センチ 体重: 105キロ
 生命力: 11,119 魔力: 6,211》

 この人、ガリオンよりレベルが若干上なんだ。で、名前が同じってことは二人は兄弟かな。

「テメェらはすっこんでろ、で、そこの可愛い嬢ちゃん。」

「ん?」

 イケメンの弟が前に出てきて、ちょっと唇を歪ませてる。男の子ですがなにか?

「驚かせて悪かったな、大丈夫だったか?」

「………うん。」

 僕を気遣ってるのかな。なんか優しい人だな。

「俺たちは轟焔龍狩猟団《ロアードラゴン》っていってな、この街じゃわりと知れてる狩猟団なんだ。」

 笑ってる?苦笑してる?なんで?

「おめえ、アリサの連れって話しだよな?」

「……」

 ここは頷くべきかどうか、ちょっと悩む。下手に頷いてあとでアリサに迷惑かかってもなぁ。

「嬢ちゃんがアリサと一緒にいたのは、皆知ってるんだよ。誤魔化すな。」

 なんか急に声を荒げた。ちょっとびっくりした。

「いいか、アリサの烈風狩猟団と轟焔龍狩猟団はな、ライバルみたいな関係なんだ。団員が烈風狩猟団に伸されたなんていう不始末が広まるとよ、狩猟団の信用にまで関わるっていうかな、まあそういうわけでよ。嬢ちゃん、ホントのところ聞かせてくれねぇか。なんならアリサを呼んできてくれねぇか」

「面倒くさい。」

「おいおいおいっ、そりゃねぇだろ。」

「面倒くさい、だからお前、それに兄貴のほう、お前達が一番強い。」

「え……」

「だから僕と戦え。」

 イケメンが驚いたように背後のサタラへ顔をむけるが、サタラもまた驚き、顔を降っている。

 いきなり戦えって言われたら、誰だって驚くよね。しかもこんな小さな少女にだから、当たり前か。

「おめぇ、なんで俺らが兄弟だって知ってる。」

 あ、そっち?

「関係ない。お前たち、一番強い。ちゃっちゃと終わらせる、僕、御飯食べる。」

「はぁぁぁ、おまえ、何言ってる?おま、意味解って言ってるんだろうな。ガキぃ」

「ガキ、違う、僕、レイ」

「がぁぁぁ、うるせぇんだよぉ、小さな女の子だからって、こっちが下手にでてれば調子こいてんじゃねぇぞっだらぁ!」

 小さなは余計だ。

 なんかレックスががなりたてて、その声に立ち止まり、ぐるりと見物人の輪ができてしまった。どうしよう……早く終わらせてさっさと戻ろうと思ってるのに。

「早く来い。」

「くそがきがあぁぁぁっ!!」

 なんかレックスが喚いた。

 もしかしてかなりキレやすいタイプ?
 
 
 
 僕がメトゥ・シから教わったのは、殺すならちゃんと食べてやれ。意味なく弱い相手を殺すな。食べる必要も無いのに自分から襲うな。

 この3つ。

 ヴェンテゴの件で怒られたのは、食べるつもりもないのに、僕が先に手を出したから。アリサ達を助けるためだけど、そんなのは理由にならない。

 アリサ達はヴェンテゴに喧嘩を売ったんだ。だから喰われても仕方がない。強きものが生き残る、それが自然なのだから。その自然の闘いに、一方が殺し合いに負けそうだからと、全く関係ない奴が横から邪魔をするのは摂理に反している。

 でも今回は違う。

 安心しろ、僕はキミたちを食べるつもりはない。美味しい料理が待っているんだから。









 僕が入り口から姿を現すと、アリサがきょとんとした顔をしている。いけね、トイレって云ってたんだ。

「あんた何処云ってたの?」

「あの、道、間違えた」

「道って、どうやったら店のトイレにいって、外から帰ってこれるのさ。」

「えっと~~」

「も~いいから残ってるの食べちゃいなさいよ。」

 よかった余り怒ってないや。
 
 僕は急いで椅子に座って、テーブルに残っていた料理に手をつけ始める。ちょっと冷めちゃったな、それに腹ごなしの運動とか思ってたんだけど、あまり運動にならなかった。


 レックスってのは格闘が主体らしいみたいで、武器を使わなかった。多分それでも勝てると思ったんだろね。少なくともいい動きはしてたよ。

 ビャクほどじゃないけど、それなりに早かったし、もうちょっと早ければ、もう少しいい感じで遊べたかな。

 結局当てることもできずに、僕が隙を見て腹にパンチ入れたら、そのまま沈んじゃった。そこまで強くしたわけじゃないけど、地べたに落ちてなんか口から液体を吐いて痙攣してた。

 お兄さんのサタラって人は刀剣躁士で、日本等みたいな片刃でソリのある剣を使ってきた。魔力を注ぎこんだら凄いのかもしれないけど、何故かそれをしなかった。僕が刀を軽く交わしていると、自分から刀を引いちゃった。

『貴様の力量を見誤っていたようだ。綺麗なバラには棘があるとはいうが、貴様の棘は毒すら持ってそうだ。』

 なにそれ、僕は毒なんて持ってないぞ。

《物の例えです》

 そなの?

『ここは引かせてもらう。だが次は……』

 なんか奥歯に物が挟まったような言い方だな。次はどうするのかな?

 なんて言って子分たち引き連れて帰っていった。なんだったのかな。
 
 狩猟団にも色々有るんだなぁ。まあいいや、今はご飯ご飯。


††
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

処理中です...