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第六夜 僕と城塞都市スワ
《06-2》
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††
なんか想像していたのと色々違う。色々違いすぎてどこから突っ込んだら良いんだかわけわかんない。
門の中も色々突っ込みたいけど、ていうか、その前になにそれ、"監視システム"って何っ!
《門の前に舎利塔を模した監視システムが配置されておりました。念のために接続して機能を停止させておきました。》
え、うそ、なにそれ、いつの間に。
でも監視システムとか有るなんて、え、まさか、やっぱここ……未来なの?
いんや違うっ!!!!
ネクスやっぱここは未来じゃないぞ!
《・・・》
ネクス見ろこの街をっ!!
どっからどう見ても、未来の都市じゃない。空飛ぶ車も走ってないし、摩天楼のような超高層ビルもないし、どっからどう見ても未来じゃない。
監視システムなんて……たぶん魔法でできる、できるはず、だ。そうだ、絶対できるはずだ!ここは、やっぱここは異世界………なのかな?
う~~む、この点でもどうもわけが解らない。この街みてると自信がなくなってくる……
だって異世界とかの小説やアニメとかだとさ、ほとんどが中世風の建物じゃない?偶に江戸時代っぽいとかあるけど~、でもそれも違うんだよね。
門を潜るとそこには、古き良き時代の町並みが広がっていたんだ。でも僕はそこで首を傾げざるを得ない。
「……なにこれ。」
今でも僅かに残る古き時代の欧州のようなレンガ造りの町並み。でもその隣に瓦屋根の古民家があったり、江戸時代みたいな家があったり、僕の時代風のビルがあったり、あっちにはアラブの建物だったり、どうにも混沌とした古今和洋折衷の雰囲気。
ここまで混沌としてると、なんか痛々しいよっ。
ぶっちゃけ『なんじゃこりゃ』が僕の第一印象だった。いやこれだけ混沌としてると頭痛くなってくる。
街路を進ませて行くと、左右に流れていくカオスな街の景色。レンガ造りがあったり、5階建て位のビルがあったかなと思うと、藁葺き屋根の戸建てがあったり、瓦屋根の家があったり、どこかインド風とか中東風とか、もうわけ解らない。
ほんとなんじゃこりゃ。
なんか素晴らしい未来都市か、異世界風のノスタルジー溢れる町並みを想像してたのに、ちょっと期待が外れた。逆にここまでされると気持ちが悪い。
ネクスもこのような多岐にわたる文化が混在した建築様式は知らん、と言ってるしね。なんかどっかヘソを曲げてるみたいだ。
ねぇ、これって未来都市なの?それともやっぱ異世界なの?
カオスな街を馬車は奔り、そして
「着いたわよ」
アリサの声とともに、馬車が停車した。
幌から出て見上げてみると、その建物は、どっかで見たような記憶があった。記憶を辿った結果、形からしてあるものがマッチする。
「教会?」
それは宗教等の教会に似ている。でも少なくとも日本では見かけたことがない。石造りの2階層で、その奥には背の高い塔があって、天辺は鐘撞堂となっている。
《20世紀頃の中東の教会と酷似しています。》
中東、ねぇ。じゃあここって中東なのかな。
《鐘撞堂の上に十字架がありません、キリスト教とは異なるようです。》
「ここは真創世教《ジェネシズ》の教会だよ。」
「ジェネシズ?」
「ええ、新しき神、救世主に祈ってるんだって。」
アリサが肩を竦めた。
「救世主って……アリサ、信者?」
「まさかぁ、私が信じているのはこれだけよ。」
そういって肩にかかげていた短機関銃を構えた。
「な、なるほど」
できれば冗談でもそれを向けないで欲しい。
「救世主は種族も宗教も関係なく、誰にでも愛と施しを与えてくれるんだってさ。」
あっけらかんと言って御者台を降りるアリサに、僕はなんとも言えない顔をして、ついていった。
《救世主を祀る事は即ち、この世界にも終末思想があることを表しています。》
終末思想、ってなんかおっかないね。
《そもそも宗教とは人の弱い精神を救うことを目的としています。そこにより人の思想を取り込むために、終末思想を組み込み、最終的終末の後に救われることを──》はいはい、わかったわかった。
《・・・》
とりあえず、いまは馬車からガリオンとアルラムを降ろしてと、アリサは教会の扉を開けて中に入っていく。
「すいませーん、治癒をお願いします。」
アリサが教会の中に居た尼僧風の女性に声をかけた。
そして僕はまた驚かされた。
教会の尼僧は、頭は白いフードで隠れていて獣耳があるかどうかは解らないけど、背中に白い翼を持っていたんだ。
翼を持ってる人だって?飾り物?
「翼?」
「彼女は"天空の翼人"よ。有翼人とも呼ばれてるわ。真創世教《ジェネシズ》の神官や神子は、殆どが有翼人なの。」
翼を持つ人の宗教って、なにそれ。まるでまんま天使じゃない。言われたこと、そのまんま信じてしまいそう。なんか信者が多そう。
ここまで来る間に何人かの人とすれ違ったけど、形に多少の違いがあるけど、殆どはアリサと同じように獣の耳と尻尾を持っているか、アルラムのようなドワーフが多かった。
有翼人は見なかったけど、教会にしか居ないのかな。
「真創世教にようこそ。何か御用で──」
尼僧──神子さんがにっこりと笑い近づいてくると、レイが抱えているアルラムをみて言葉を止めた。
「ど、どうぞこちらへ。」
すこし慌てた様子で8つほどベッドが並ぶ部屋に案内された。
病人や怪我人が寝ているせいだろうか、血の匂いやくすんだ匂いが立ち込めている。
その中の開いているベッドに案内され、ガリオンとアルラムを寝かせると、神子はすぐに部屋を出ていき、少しして中々厳つい顔をした太ったオッサン──多分神父かな──を連れてきた。
でっぷりとした身体、身長は190センチほどは有るだろうか。僕からしてみたら、見上げるほどの背の高さだ。やはり神子さんと同様に背中に鳥のような翼をもっている。
………なんかやだ。
女性の翼は天使みたいで似合うけど、肥ってるオッサンの翼は、なんか違う。
その翼の不似合いなオッサンが、僕を見て少し驚いた顔をしてる。可愛いからかな?悪いけど僕は男の子だからね、増して中年のオッサンには興味ないんだから。
「神官殿、お世話になる、済まないがドワーフを先に診てくれるか。」
ガリオンが促すと翼をもった不似合いなオッサン──神官ははっとして直ぐに頷いた。それでも僕をチラチラ見てるけど、まさか惚れたとかいうなよ。中年には興味ないからね。
「む、うむ、解った。」
翼をもった不似合いな中年のオッサン──神官はアルラムを見るなり、厳つい顔を更に険しくさせて、小走りに寄ってくる。
「ふむ、だいぶ生命力が落ちていますね。左手の骨折、右足も裂傷と骨に罅が、あと肋骨も大分……いかん、内臓もかなり傷んでいるようだ。しかし流石にドワーフ族というべきか、これで生きているとは頑丈なものだ。」
翼が似合わない中年オヤジ──神官はアルラムを鎧の上から触るだけで、患者の状態が解るみたい。触るだけで解るって、なんか凄い能力でも持ってるのかな。
「直ぐに治療いたしましょう。彼の鎧を外して貰えますか。」
真面目な顔が似合わない中年太りのオッサン──神官が促すと、アリサがアルラムの鎧を外しにかかった。神子さんにも手伝ってもらってなんとか外していく。
この時、なんか僕は神官からの視線を感じてたんだ。キモいんだよ中年オヤジぃ!
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なんか想像していたのと色々違う。色々違いすぎてどこから突っ込んだら良いんだかわけわかんない。
門の中も色々突っ込みたいけど、ていうか、その前になにそれ、"監視システム"って何っ!
《門の前に舎利塔を模した監視システムが配置されておりました。念のために接続して機能を停止させておきました。》
え、うそ、なにそれ、いつの間に。
でも監視システムとか有るなんて、え、まさか、やっぱここ……未来なの?
いんや違うっ!!!!
ネクスやっぱここは未来じゃないぞ!
《・・・》
ネクス見ろこの街をっ!!
どっからどう見ても、未来の都市じゃない。空飛ぶ車も走ってないし、摩天楼のような超高層ビルもないし、どっからどう見ても未来じゃない。
監視システムなんて……たぶん魔法でできる、できるはず、だ。そうだ、絶対できるはずだ!ここは、やっぱここは異世界………なのかな?
う~~む、この点でもどうもわけが解らない。この街みてると自信がなくなってくる……
だって異世界とかの小説やアニメとかだとさ、ほとんどが中世風の建物じゃない?偶に江戸時代っぽいとかあるけど~、でもそれも違うんだよね。
門を潜るとそこには、古き良き時代の町並みが広がっていたんだ。でも僕はそこで首を傾げざるを得ない。
「……なにこれ。」
今でも僅かに残る古き時代の欧州のようなレンガ造りの町並み。でもその隣に瓦屋根の古民家があったり、江戸時代みたいな家があったり、僕の時代風のビルがあったり、あっちにはアラブの建物だったり、どうにも混沌とした古今和洋折衷の雰囲気。
ここまで混沌としてると、なんか痛々しいよっ。
ぶっちゃけ『なんじゃこりゃ』が僕の第一印象だった。いやこれだけ混沌としてると頭痛くなってくる。
街路を進ませて行くと、左右に流れていくカオスな街の景色。レンガ造りがあったり、5階建て位のビルがあったかなと思うと、藁葺き屋根の戸建てがあったり、瓦屋根の家があったり、どこかインド風とか中東風とか、もうわけ解らない。
ほんとなんじゃこりゃ。
なんか素晴らしい未来都市か、異世界風のノスタルジー溢れる町並みを想像してたのに、ちょっと期待が外れた。逆にここまでされると気持ちが悪い。
ネクスもこのような多岐にわたる文化が混在した建築様式は知らん、と言ってるしね。なんかどっかヘソを曲げてるみたいだ。
ねぇ、これって未来都市なの?それともやっぱ異世界なの?
カオスな街を馬車は奔り、そして
「着いたわよ」
アリサの声とともに、馬車が停車した。
幌から出て見上げてみると、その建物は、どっかで見たような記憶があった。記憶を辿った結果、形からしてあるものがマッチする。
「教会?」
それは宗教等の教会に似ている。でも少なくとも日本では見かけたことがない。石造りの2階層で、その奥には背の高い塔があって、天辺は鐘撞堂となっている。
《20世紀頃の中東の教会と酷似しています。》
中東、ねぇ。じゃあここって中東なのかな。
《鐘撞堂の上に十字架がありません、キリスト教とは異なるようです。》
「ここは真創世教《ジェネシズ》の教会だよ。」
「ジェネシズ?」
「ええ、新しき神、救世主に祈ってるんだって。」
アリサが肩を竦めた。
「救世主って……アリサ、信者?」
「まさかぁ、私が信じているのはこれだけよ。」
そういって肩にかかげていた短機関銃を構えた。
「な、なるほど」
できれば冗談でもそれを向けないで欲しい。
「救世主は種族も宗教も関係なく、誰にでも愛と施しを与えてくれるんだってさ。」
あっけらかんと言って御者台を降りるアリサに、僕はなんとも言えない顔をして、ついていった。
《救世主を祀る事は即ち、この世界にも終末思想があることを表しています。》
終末思想、ってなんかおっかないね。
《そもそも宗教とは人の弱い精神を救うことを目的としています。そこにより人の思想を取り込むために、終末思想を組み込み、最終的終末の後に救われることを──》はいはい、わかったわかった。
《・・・》
とりあえず、いまは馬車からガリオンとアルラムを降ろしてと、アリサは教会の扉を開けて中に入っていく。
「すいませーん、治癒をお願いします。」
アリサが教会の中に居た尼僧風の女性に声をかけた。
そして僕はまた驚かされた。
教会の尼僧は、頭は白いフードで隠れていて獣耳があるかどうかは解らないけど、背中に白い翼を持っていたんだ。
翼を持ってる人だって?飾り物?
「翼?」
「彼女は"天空の翼人"よ。有翼人とも呼ばれてるわ。真創世教《ジェネシズ》の神官や神子は、殆どが有翼人なの。」
翼を持つ人の宗教って、なにそれ。まるでまんま天使じゃない。言われたこと、そのまんま信じてしまいそう。なんか信者が多そう。
ここまで来る間に何人かの人とすれ違ったけど、形に多少の違いがあるけど、殆どはアリサと同じように獣の耳と尻尾を持っているか、アルラムのようなドワーフが多かった。
有翼人は見なかったけど、教会にしか居ないのかな。
「真創世教にようこそ。何か御用で──」
尼僧──神子さんがにっこりと笑い近づいてくると、レイが抱えているアルラムをみて言葉を止めた。
「ど、どうぞこちらへ。」
すこし慌てた様子で8つほどベッドが並ぶ部屋に案内された。
病人や怪我人が寝ているせいだろうか、血の匂いやくすんだ匂いが立ち込めている。
その中の開いているベッドに案内され、ガリオンとアルラムを寝かせると、神子はすぐに部屋を出ていき、少しして中々厳つい顔をした太ったオッサン──多分神父かな──を連れてきた。
でっぷりとした身体、身長は190センチほどは有るだろうか。僕からしてみたら、見上げるほどの背の高さだ。やはり神子さんと同様に背中に鳥のような翼をもっている。
………なんかやだ。
女性の翼は天使みたいで似合うけど、肥ってるオッサンの翼は、なんか違う。
その翼の不似合いなオッサンが、僕を見て少し驚いた顔をしてる。可愛いからかな?悪いけど僕は男の子だからね、増して中年のオッサンには興味ないんだから。
「神官殿、お世話になる、済まないがドワーフを先に診てくれるか。」
ガリオンが促すと翼をもった不似合いなオッサン──神官ははっとして直ぐに頷いた。それでも僕をチラチラ見てるけど、まさか惚れたとかいうなよ。中年には興味ないからね。
「む、うむ、解った。」
翼をもった不似合いな中年のオッサン──神官はアルラムを見るなり、厳つい顔を更に険しくさせて、小走りに寄ってくる。
「ふむ、だいぶ生命力が落ちていますね。左手の骨折、右足も裂傷と骨に罅が、あと肋骨も大分……いかん、内臓もかなり傷んでいるようだ。しかし流石にドワーフ族というべきか、これで生きているとは頑丈なものだ。」
翼が似合わない中年オヤジ──神官はアルラムを鎧の上から触るだけで、患者の状態が解るみたい。触るだけで解るって、なんか凄い能力でも持ってるのかな。
「直ぐに治療いたしましょう。彼の鎧を外して貰えますか。」
真面目な顔が似合わない中年太りのオッサン──神官が促すと、アリサがアルラムの鎧を外しにかかった。神子さんにも手伝ってもらってなんとか外していく。
この時、なんか僕は神官からの視線を感じてたんだ。キモいんだよ中年オヤジぃ!
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