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第2夜 冒険者達と僕
《02-1》
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††
母さん、僕に命を与えてくれて、感謝します。
ただ死を待つだけだった僕に、貴女は貴女が持つ全てを与えてくれました。そのお陰で僕は今を生きています。こんな訳の解らない世界だけど、感謝しています。
僕は如月零。
中1の夏頃に遺伝子異常──突発性DNA異常症候群とかで、現代医学では治せない、死を待つだけの病気に掛かった。世界的にも初症例とかで医師も匙を投げたわけだけど、母さんの僕を生かそうとする執念は、医師団を動かした。未来に全てを賭けて、僕の身体は冷凍睡眠装置に入り眠りについたんだ。
でも目覚めたら、僕はなんか色々魔改造──主に母さんの好みで──された上に、地球だけど地球っぽくない不思議な世界で暮らすことになったんだ。
小鳥の姿をした精霊族のメトゥ・シと巨大な白トラのビャクの世話になって、モンスターが跳梁跋扈する危険な山で暮らしている。
都会っ子の僕にサバイバル生活なんてできるわけもないんだけど、そこは僕の体内に埋め込まれた、ネクスが教えてくれた。ネクスは宇宙空間に浮かぶ静止衛星に搭載された、量子電脳ルシファーのユニットの1つだ。なんでも知ってる頼もしい奴だ。
メトゥ・シからはこの山の知識や魔法とかを。
ビャクからは獲物の取り方や闘い方を。
その他サバイバルの方法とか、色々細かいことはネクスが助けてくれる。
だけど、ここって何処なんだろね。
僕はまさに厨二病発症で異世界キタコレ!とか思うんだけど、ネクスは地球だと断言する。ポールシフトが起きたのか地殻変動が起きたのか、ネクスもいまいち要因が解らず、現在地点の位置も正確に割り出せていない。量子電脳のクセに情けない、とか言わない。
やっぱここは異世界なんだよ。精霊とモンスター、まさに異世界キタコレ!そのうち女神かなんかが出てきてチートカモーン!
《否定》
ああもう、この点については当面意見が割れるなぁ。
《多次元宇宙論は22世紀に於いても、根強く科学者達の間で囁かれていました。仮定として存在したとしても、その世界は平行宇宙となり──》「わかったわかった」
ああもう、ネクスの説明長い!
《・・・》
ネクスが此処を地球だと推定している理由は、天体の位置情報からの判断だ。静止衛星から月と太陽の位置を判定し、さらに太陽系の各惑星の位置を判定、その結果この惑星が地球である可能性は99.99%だって断言している。ここまで天文学っていうか科学的に畳み込まれると反論ができない、凄すぎるよネクス。
でもさ、この世界って生態系は地球と酷似する点もあるけど、ネクスの持つデータベースには存在しない生態系がかなり存在するんだ。植物から動物から昆虫から、地球に存在しない、全くの新種とも云うべき種類が多すぎるそうだ。
それを言うと《・・・解析中》とか言って黙りこむんだ。ま、この辺は今後の解析結果を待つしか無いかな。ここは異世界で決まりなんだから無駄だろうけど、へへ。
だいたいここが地球だって云うなら、"精霊族"なんていう存在、本来架空の存在だし、お伽話の中の世界だよね。そもそもネクスはメトゥ・シを擬似生命体というし、エネルギーの塊とか言うし、そんなもの地球に存在するわけがないんだから。
モンスターだっておかしいだろ、と思うんだけどこれについては《8割ほど解析が終わっています》なんて云ってる。もうすぐ結論が出るようだから、無駄を承知で待っていましょ。
メトゥ・シの説明だと、この世界の大気には"魔素"という物が含まれている。これに付いてはネクスも認めている。大気成分に本来有るはずのない成分が含まれているとそうだ。少なくとも22世紀には計測されなかった分子成分であると。
この未知の分子成分、これをメトゥ・シは魔素という。そしてこの魔素は生物に様々な影響を与えているようだ。
魔素は呼吸によって体内に取り込まれ、魔力として魔法を使用する際のエネルギーとなる。てかこの世界は魔法が使えるのか~、なんてぼや~と聞いてた。きっとメトゥ・シが兎を焼いたのも、魔法なんだろうな。
しかし魔素は生物にとって、魔法という恩恵だけを与えなかったみたいだ。
魔素に充てられた生物は、体内に魔晶石が構築される。これに魔素を蓄積して魔力に変換する。魔晶石を持った生物はこれを動力炉──魔導炉心──として魔法を使う事ができる、そうだ。
だけどヒト族はともかく、知能が低く理性を持たない動物や昆虫種は、通常は魔法を行使することは無いけど、徐々に魔晶石の侵食に支配され突然変異を起こし、モンスター化する事が往々に起きる。特に魔素の濃い地域では、モンスター化が顕著らしい。
モンスター種に変化した突然変異体の共通点は、魔素が集中したせいで眼球が赤くなり、草食種でも肉食に変化する。肉食であるということは、他者の肉を喰らい魔晶石を喰らい、自らに取り込みより強化する事を意味している。
単純にモンスター種は他の生物を食らって魔力を取り込み生きている、ということになる。
ネクスはそんなメトゥ・シの話を興味深そうに聞いているようだった、僕の耳を使ってね。
ネクスは僕に質問させて、新しい情報を取り込み、やたら保存された、ってメッセージが繰り返してたから、多分ちゃんと蓄積してるようだ。
††
母さん、僕に命を与えてくれて、感謝します。
ただ死を待つだけだった僕に、貴女は貴女が持つ全てを与えてくれました。そのお陰で僕は今を生きています。こんな訳の解らない世界だけど、感謝しています。
僕は如月零。
中1の夏頃に遺伝子異常──突発性DNA異常症候群とかで、現代医学では治せない、死を待つだけの病気に掛かった。世界的にも初症例とかで医師も匙を投げたわけだけど、母さんの僕を生かそうとする執念は、医師団を動かした。未来に全てを賭けて、僕の身体は冷凍睡眠装置に入り眠りについたんだ。
でも目覚めたら、僕はなんか色々魔改造──主に母さんの好みで──された上に、地球だけど地球っぽくない不思議な世界で暮らすことになったんだ。
小鳥の姿をした精霊族のメトゥ・シと巨大な白トラのビャクの世話になって、モンスターが跳梁跋扈する危険な山で暮らしている。
都会っ子の僕にサバイバル生活なんてできるわけもないんだけど、そこは僕の体内に埋め込まれた、ネクスが教えてくれた。ネクスは宇宙空間に浮かぶ静止衛星に搭載された、量子電脳ルシファーのユニットの1つだ。なんでも知ってる頼もしい奴だ。
メトゥ・シからはこの山の知識や魔法とかを。
ビャクからは獲物の取り方や闘い方を。
その他サバイバルの方法とか、色々細かいことはネクスが助けてくれる。
だけど、ここって何処なんだろね。
僕はまさに厨二病発症で異世界キタコレ!とか思うんだけど、ネクスは地球だと断言する。ポールシフトが起きたのか地殻変動が起きたのか、ネクスもいまいち要因が解らず、現在地点の位置も正確に割り出せていない。量子電脳のクセに情けない、とか言わない。
やっぱここは異世界なんだよ。精霊とモンスター、まさに異世界キタコレ!そのうち女神かなんかが出てきてチートカモーン!
《否定》
ああもう、この点については当面意見が割れるなぁ。
《多次元宇宙論は22世紀に於いても、根強く科学者達の間で囁かれていました。仮定として存在したとしても、その世界は平行宇宙となり──》「わかったわかった」
ああもう、ネクスの説明長い!
《・・・》
ネクスが此処を地球だと推定している理由は、天体の位置情報からの判断だ。静止衛星から月と太陽の位置を判定し、さらに太陽系の各惑星の位置を判定、その結果この惑星が地球である可能性は99.99%だって断言している。ここまで天文学っていうか科学的に畳み込まれると反論ができない、凄すぎるよネクス。
でもさ、この世界って生態系は地球と酷似する点もあるけど、ネクスの持つデータベースには存在しない生態系がかなり存在するんだ。植物から動物から昆虫から、地球に存在しない、全くの新種とも云うべき種類が多すぎるそうだ。
それを言うと《・・・解析中》とか言って黙りこむんだ。ま、この辺は今後の解析結果を待つしか無いかな。ここは異世界で決まりなんだから無駄だろうけど、へへ。
だいたいここが地球だって云うなら、"精霊族"なんていう存在、本来架空の存在だし、お伽話の中の世界だよね。そもそもネクスはメトゥ・シを擬似生命体というし、エネルギーの塊とか言うし、そんなもの地球に存在するわけがないんだから。
モンスターだっておかしいだろ、と思うんだけどこれについては《8割ほど解析が終わっています》なんて云ってる。もうすぐ結論が出るようだから、無駄を承知で待っていましょ。
メトゥ・シの説明だと、この世界の大気には"魔素"という物が含まれている。これに付いてはネクスも認めている。大気成分に本来有るはずのない成分が含まれているとそうだ。少なくとも22世紀には計測されなかった分子成分であると。
この未知の分子成分、これをメトゥ・シは魔素という。そしてこの魔素は生物に様々な影響を与えているようだ。
魔素は呼吸によって体内に取り込まれ、魔力として魔法を使用する際のエネルギーとなる。てかこの世界は魔法が使えるのか~、なんてぼや~と聞いてた。きっとメトゥ・シが兎を焼いたのも、魔法なんだろうな。
しかし魔素は生物にとって、魔法という恩恵だけを与えなかったみたいだ。
魔素に充てられた生物は、体内に魔晶石が構築される。これに魔素を蓄積して魔力に変換する。魔晶石を持った生物はこれを動力炉──魔導炉心──として魔法を使う事ができる、そうだ。
だけどヒト族はともかく、知能が低く理性を持たない動物や昆虫種は、通常は魔法を行使することは無いけど、徐々に魔晶石の侵食に支配され突然変異を起こし、モンスター化する事が往々に起きる。特に魔素の濃い地域では、モンスター化が顕著らしい。
モンスター種に変化した突然変異体の共通点は、魔素が集中したせいで眼球が赤くなり、草食種でも肉食に変化する。肉食であるということは、他者の肉を喰らい魔晶石を喰らい、自らに取り込みより強化する事を意味している。
単純にモンスター種は他の生物を食らって魔力を取り込み生きている、ということになる。
ネクスはそんなメトゥ・シの話を興味深そうに聞いているようだった、僕の耳を使ってね。
ネクスは僕に質問させて、新しい情報を取り込み、やたら保存された、ってメッセージが繰り返してたから、多分ちゃんと蓄積してるようだ。
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