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第1夜 起きたら不思議な世界だった
《01-1》
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††
何処までも広く広がる空、緑の大草原、ううん、そんなもの都会じゃ無理かもしれない。
だからせめて、みんなといっしょに、友達と一緒に……学校へいって、勉強して、遊んで、通学路を歩きたい。
それが僕の、死ぬ前に叶えたい望み。
母さん、僕はせめて死ぬ前に、もう一度、自分の手で、自分の足で、僕の世界を感じたかった。
とある大学病院の隔離室
白いベッドの上で、様々なチューブに繋がれて僕は眠っていた。
ガラスで囲まれた部屋、隔離室の中で、ずっと隔離されている。
僕がこの部屋に入ってからかれこれ三ヶ月になる。
そう、僕は引き籠もり、じゃなくて病気なんだ。
僕の名前は如月零中学1年だ。僕は原因不明の病気らしい。
始まりは夏頃だったか、9月に入ってからだったかよく覚えていない。なんか微妙に身体がだるかった。夏風邪かななんて思って気にもしなかったんだけど、症状は治るどころか、徐々に酷くなっていった。
仕方なく病院にいって見たものの、医者からも夏風邪だろう、若いから直ぐ元気になるよ、なんて言ってビタミン剤渡されて帰された。
でも僕の病気は風邪じゃなかったんだ。体の怠さは日増しにひどくなり、起きることも辛く、次第に歩くこともできなくなって、結局は慌てて入院となったんだ。
ったくせっかく中学生になって二学期が始まったっていうのに、なんで入院なんだと憤慨したけど、身体が自由に動かないのだし、そもそも大人たちはそれを許してくれなかった。
どっちにしたって立つことも出来ないし、鉛筆も持てない状態だったし、食事だってまともに出来ないんだから従うしか無いよ。
医者からの説明ではDNAの塩基配列が徐々に変異しているってことらしい。名前もない未知の病気、DNAの変質が何に起因するのかは、原因がつかめなかった。
ということで僕はまともに身体を動かせない、言わば全身不随とでも云うような状態で、1人では食事もとれず、自立呼吸すらもできなくなってしまった。
幾つもの点滴を繋げられて栄養をとって、鼻に突っ込まれたチューブで強制的に呼吸をしている。
まるで植物人間状態だ。それでも意識はあった。
こんな状態で日に日に弱っていくんだ。まったく僕はどうなってしまったんだろう。
学校に行きたいな。せっかく友達になったクラスのみんなと話したい。勉強したい。外を歩きまわりたい……
僕の身体は全く動かないけど、辛うじて脳だけはまだ動いているんだ。医者が話してることや両親の嘆きも理解できるし、微かに瞳を動かすこともできた。
偶にやってくる学校の友人達の話も理解できた。でもそれもいつかは終わりが来るってお医者は云ってた。
入院から三週間を超えると、僕は隔離室に移されテレビや映画で見たような、全身防護服を着た医師が様子を見るようになった。
顔なじみのお医者さんに云わせると、彼等は遺伝子工学とか細菌学とかよく解らない難しい分野の最高権威の医師らしい。僕の病気を治そうと世界中から集ったとか言ってたけど、多分日々変化する僕のDNAに興味を持っただけだろうな。何度も採血したり骨髄液を取られたり、まぁ色々と実験されたし。
なにしろ痛みを感じるわけでもなく、文句も何も云わない実験動物みたいなもんだから、やりたい放題だよね。
DNAが日々変化する素体が、どんな状況になっているか、見たいだけだ。体のいい人体実験素材の観察ってところかな。
結局彼等が来たところで、DNAの変質を止めて僕を治す事は出来なかった。
そしてある日、医師団が僕の両親に提案した。
『残念ながら現在の医療では治療方法はわかりません。しかしもし可能であれば──』
変化するDNAを僕から採取し、培養したり実験したりするのには、時間が掛かりすぎる。そんな長期間僕の命は持たないだろう。
でも数年後であれば、現在治癒不可能だとしても、新しい技術の発見が有るのではないかという。
気の長い話だが、実際大昔に治癒できなかった病気も、現在では完治させられる技術がある。医学ってのも日々進歩してるからね。
医師団にとっては気まぐれなのか、僕のDNAをまだ研究したいだけなのか、それとも可能性への賭けなのか解らないけど、僕を生かそうとする両親の執念は医師達の「悪魔提案」を飲んだ。
僕は生きたまま、冷凍睡眠装置に入り、未来に、いつか病気を治せる時まで眠りに着くこととなった。
──そして
ズズズッ
地面が動いた。
ズズズズドドドドドドッ
激しく揺れ動き、徐々に揺れが大きくなっていく。
ドォォォォォォォォォーーーン!!!
地面が、大地が踊った。
凄まじい地鳴りとともに、全てが狂気のダンスを舞った。
それは崩壊の序曲ともいうべきものだったのかもしれない。それでも僕は眠っていた。強制的な睡眠により、僕の身体は反応せず、ただ揺れ動いていた。
水槽の中で………
僕はどうやら液体がたっぷりと入った水槽の中に居るようだ。意識は殆ど無かった。多分完全になかったと思う、だけど僕はそれを認識していた。
そしてまた時間が経過していく。
激しい揺れは続いていたけど、僕はずっと水槽の中で揺れ動いていた。
どのくらい経ったのか、また激しい揺れが襲ってきた。
水槽は揺さぶられ、グラグラと今までで一番揺れ動く。恐らく強固に固定されていたのだろうが、何度も襲ってくる次揺れで、基盤が破壊されていったようだ。
揺れはそれほど大きくはなかった。だけどその揺れが基盤の最後の補強部分を破壊したのだろう、僕が入っていた水槽が横倒しになり、分厚い強化ガラスが砕かれた。何度も襲った地揺れで脆くなっていたのだろう。ガラスが割れて粉々に飛び散り、中の液体とともに僕は排出され、床に激しく叩き付けられた。
その衝撃が僕の中の意識を目覚めさせた。
ごほっぐぐぇぇっ、ごほっ、ごぼっ、、
肺の中から胃の中から、大量の液体が逆流して口から溢れだし、びしゃびしゃと床に飛び散っていく。
目覚めた僕は吐しゃ物を撒き散らし、顔を上げて辺りを見回した。まだよく見えない眼に映る景色は、やたらとぼやけていた。なんだかぼやけて見えているけど、辺りが暗いことはわかった。
一体ここはどこなんだろう。
なんだかずっと寝てた様だけど………僕はどうしてこんなところに居るのかな。
ズズズズズッ
地鳴りがした。
地震?などと思うまもなく地面が揺れ動いた。
地響きとともに、闇のなかで色々なものが動いてる音がした。崩れる音、ガラスの割れる音、破壊の音が聞こえてくる。そしてまた向こうで何かが倒れ、ガラスが割れる騒々しい音と、水が跳ねる音がした。
それほど大きな地震ではなかったかもしれない、だけど思考がまだ安定していない僕はパニックに襲われてしまった。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
恐怖が僕を襲う。南海トラフ地震、関東大震災、ここがどこか解らないけど、ずっとニュースで繰り返されてきた地震予想の悪夢が僕の頭のなかを掛けめぐった。
地震による停電、だから真っ暗なのか。このままどこだかわからない暗闇の中で死ぬのか
だが僕の恐怖と死の予感を他所に、地震はゆっくり静まっていく。
「お、終わった?」
地揺れが収まったことに安堵する。そして今の状況の認識しようと、暗い中を見回した。
《WAKEUP!ready system activate, con nexs interface……》
ん、なにかな?
††
何処までも広く広がる空、緑の大草原、ううん、そんなもの都会じゃ無理かもしれない。
だからせめて、みんなといっしょに、友達と一緒に……学校へいって、勉強して、遊んで、通学路を歩きたい。
それが僕の、死ぬ前に叶えたい望み。
母さん、僕はせめて死ぬ前に、もう一度、自分の手で、自分の足で、僕の世界を感じたかった。
とある大学病院の隔離室
白いベッドの上で、様々なチューブに繋がれて僕は眠っていた。
ガラスで囲まれた部屋、隔離室の中で、ずっと隔離されている。
僕がこの部屋に入ってからかれこれ三ヶ月になる。
そう、僕は引き籠もり、じゃなくて病気なんだ。
僕の名前は如月零中学1年だ。僕は原因不明の病気らしい。
始まりは夏頃だったか、9月に入ってからだったかよく覚えていない。なんか微妙に身体がだるかった。夏風邪かななんて思って気にもしなかったんだけど、症状は治るどころか、徐々に酷くなっていった。
仕方なく病院にいって見たものの、医者からも夏風邪だろう、若いから直ぐ元気になるよ、なんて言ってビタミン剤渡されて帰された。
でも僕の病気は風邪じゃなかったんだ。体の怠さは日増しにひどくなり、起きることも辛く、次第に歩くこともできなくなって、結局は慌てて入院となったんだ。
ったくせっかく中学生になって二学期が始まったっていうのに、なんで入院なんだと憤慨したけど、身体が自由に動かないのだし、そもそも大人たちはそれを許してくれなかった。
どっちにしたって立つことも出来ないし、鉛筆も持てない状態だったし、食事だってまともに出来ないんだから従うしか無いよ。
医者からの説明ではDNAの塩基配列が徐々に変異しているってことらしい。名前もない未知の病気、DNAの変質が何に起因するのかは、原因がつかめなかった。
ということで僕はまともに身体を動かせない、言わば全身不随とでも云うような状態で、1人では食事もとれず、自立呼吸すらもできなくなってしまった。
幾つもの点滴を繋げられて栄養をとって、鼻に突っ込まれたチューブで強制的に呼吸をしている。
まるで植物人間状態だ。それでも意識はあった。
こんな状態で日に日に弱っていくんだ。まったく僕はどうなってしまったんだろう。
学校に行きたいな。せっかく友達になったクラスのみんなと話したい。勉強したい。外を歩きまわりたい……
僕の身体は全く動かないけど、辛うじて脳だけはまだ動いているんだ。医者が話してることや両親の嘆きも理解できるし、微かに瞳を動かすこともできた。
偶にやってくる学校の友人達の話も理解できた。でもそれもいつかは終わりが来るってお医者は云ってた。
入院から三週間を超えると、僕は隔離室に移されテレビや映画で見たような、全身防護服を着た医師が様子を見るようになった。
顔なじみのお医者さんに云わせると、彼等は遺伝子工学とか細菌学とかよく解らない難しい分野の最高権威の医師らしい。僕の病気を治そうと世界中から集ったとか言ってたけど、多分日々変化する僕のDNAに興味を持っただけだろうな。何度も採血したり骨髄液を取られたり、まぁ色々と実験されたし。
なにしろ痛みを感じるわけでもなく、文句も何も云わない実験動物みたいなもんだから、やりたい放題だよね。
DNAが日々変化する素体が、どんな状況になっているか、見たいだけだ。体のいい人体実験素材の観察ってところかな。
結局彼等が来たところで、DNAの変質を止めて僕を治す事は出来なかった。
そしてある日、医師団が僕の両親に提案した。
『残念ながら現在の医療では治療方法はわかりません。しかしもし可能であれば──』
変化するDNAを僕から採取し、培養したり実験したりするのには、時間が掛かりすぎる。そんな長期間僕の命は持たないだろう。
でも数年後であれば、現在治癒不可能だとしても、新しい技術の発見が有るのではないかという。
気の長い話だが、実際大昔に治癒できなかった病気も、現在では完治させられる技術がある。医学ってのも日々進歩してるからね。
医師団にとっては気まぐれなのか、僕のDNAをまだ研究したいだけなのか、それとも可能性への賭けなのか解らないけど、僕を生かそうとする両親の執念は医師達の「悪魔提案」を飲んだ。
僕は生きたまま、冷凍睡眠装置に入り、未来に、いつか病気を治せる時まで眠りに着くこととなった。
──そして
ズズズッ
地面が動いた。
ズズズズドドドドドドッ
激しく揺れ動き、徐々に揺れが大きくなっていく。
ドォォォォォォォォォーーーン!!!
地面が、大地が踊った。
凄まじい地鳴りとともに、全てが狂気のダンスを舞った。
それは崩壊の序曲ともいうべきものだったのかもしれない。それでも僕は眠っていた。強制的な睡眠により、僕の身体は反応せず、ただ揺れ動いていた。
水槽の中で………
僕はどうやら液体がたっぷりと入った水槽の中に居るようだ。意識は殆ど無かった。多分完全になかったと思う、だけど僕はそれを認識していた。
そしてまた時間が経過していく。
激しい揺れは続いていたけど、僕はずっと水槽の中で揺れ動いていた。
どのくらい経ったのか、また激しい揺れが襲ってきた。
水槽は揺さぶられ、グラグラと今までで一番揺れ動く。恐らく強固に固定されていたのだろうが、何度も襲ってくる次揺れで、基盤が破壊されていったようだ。
揺れはそれほど大きくはなかった。だけどその揺れが基盤の最後の補強部分を破壊したのだろう、僕が入っていた水槽が横倒しになり、分厚い強化ガラスが砕かれた。何度も襲った地揺れで脆くなっていたのだろう。ガラスが割れて粉々に飛び散り、中の液体とともに僕は排出され、床に激しく叩き付けられた。
その衝撃が僕の中の意識を目覚めさせた。
ごほっぐぐぇぇっ、ごほっ、ごぼっ、、
肺の中から胃の中から、大量の液体が逆流して口から溢れだし、びしゃびしゃと床に飛び散っていく。
目覚めた僕は吐しゃ物を撒き散らし、顔を上げて辺りを見回した。まだよく見えない眼に映る景色は、やたらとぼやけていた。なんだかぼやけて見えているけど、辺りが暗いことはわかった。
一体ここはどこなんだろう。
なんだかずっと寝てた様だけど………僕はどうしてこんなところに居るのかな。
ズズズズズッ
地鳴りがした。
地震?などと思うまもなく地面が揺れ動いた。
地響きとともに、闇のなかで色々なものが動いてる音がした。崩れる音、ガラスの割れる音、破壊の音が聞こえてくる。そしてまた向こうで何かが倒れ、ガラスが割れる騒々しい音と、水が跳ねる音がした。
それほど大きな地震ではなかったかもしれない、だけど思考がまだ安定していない僕はパニックに襲われてしまった。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
恐怖が僕を襲う。南海トラフ地震、関東大震災、ここがどこか解らないけど、ずっとニュースで繰り返されてきた地震予想の悪夢が僕の頭のなかを掛けめぐった。
地震による停電、だから真っ暗なのか。このままどこだかわからない暗闇の中で死ぬのか
だが僕の恐怖と死の予感を他所に、地震はゆっくり静まっていく。
「お、終わった?」
地揺れが収まったことに安堵する。そして今の状況の認識しようと、暗い中を見回した。
《WAKEUP!ready system activate, con nexs interface……》
ん、なにかな?
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