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<K24> バカ女神のアホウ!
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††
治癒師が必死に治癒魔法を掛けたが、ザックの傷の重さは酷いものだった。
ザックは一生片手片腕で生きていくことになるだろう。もし奴が女神から称号を受けて、私の様に再生の能力をもっているなら別だが、今はどうでもいい。
学園側から私へのお咎めは無かった。
ザックはやり過ぎた。
身分の高い貴族へあれだけの暴言を吐き、剰え皇女を奴隷にしようとしたのだから、王室への不敬、いや下手すれば反逆にすらとられることだ。
子爵家全員が投獄され斬首となっても、不思議ではないのだから。逆に嫡男の腕と脚が不自由になって済んだと思えば、儲けものというものだ。
この日以降、私は『血塗れの皇女』なんて、陰口というか通名が……
私は可愛い女の子だぞ?
一応……
武器術の試合が全て終わり、見苦しいモノを見せてしまったことをお父様とお母様に謝罪した。その後私はマリアを伴って治癒室へと向かった。
部屋の中にはザックが寝ていた。手と脚を包帯で巻かれ、横になっている。
傍には彼の奴隷だろうか、平民クラスの少女が2人いる。こんな奴でも心配する少女が居ることが不思議だが、どうやって手なづけたのか想像すると、無性にイライラとしてくる。
「皇女様っ」
少女達が立ち上がり礼をした。
「悪いけど、出て行ってくれる。」
少女達の挨拶を無視して、私は毅然とした言葉を投げつける。少なくともこいつの前では、お気楽な言葉は出したくない。
少女達は多少戸惑ったが、一礼して出て行った。
「マリア、何か有ったら呼びます。部屋の外で待ちなさい。」
私が静かに言うと、マリアは一瞬戸惑ったが、一礼して部屋の外に出て行った。
「さ、ザック、これで2人きりです。約束を果たしなさい。女神について話すのです。なにもかも。」
「へ、命令すんじゃねぇ……」
「云わぬなら、殺します。ここで貴方の首を断ち切っても構いませんよ。いえ、寧ろそうしたいのだけど。」
ベッド脇からザックを見下ろす。本当にそう思っていた。私が投げかける冷たく覚めた視線がザックにも解ったのか、視線を反らし口を開いた。
「俺は……信じねえかも知れねえが、俺はこの世界とは違うところから来た。」
やはり。
「違うところ、とは?」
「日本って国だ。」
「……日本」
こうして他人から云われると、なんとも懐かしい。もしこれがコイツ以外なら、同族意識に抱きついていたかもしれない。
「ふ……俄に信じられんが、言ってみろ、それが本当なら何故貴様はこの世界に来た。」
「……俺はよ、トラックに潰されて死んだんだ。」
やはり……
「河川敷でよ、ちっと浮浪者を誂ってたらよ、クソうるせー女が来やがってよ。」
河川敷、浮浪者。
疑う余地はない。
やはりこいつだ、こいつが全ての元凶だ。こいつの目、忘れてない。そうだ私を襲った中学生だ。
「女を誂ってたら、なんでだかトラックに潰されちまった。」
省略してんじゃねーよっ!
テメエらが浮浪者を殴ってたから、浮浪者が逃げ出して、トラックに跳ねられたんだろ。そのうえハンドル操作をミスったトラックが突っ込んできたんだろうが!
お前らが逃げられなかったのは、私を襲ってたからだろう。
「あ~死んじまったとおもったらよぉ、したらよ~、女神とか言う奴が出てきて、は、はは、俺を虫だか獣として生まれ変わらせるとかいうんだぜ、たくふざけやがって。」
へぇ、あの人も良い判断するじゃない、でもなんで子爵家?
「……貴様の様な性根の奴らな、虫か獣で十分だろう。だが貴様見た目は人であるが、何故じゃ。」
「けけけ、ちょろいちょろい、あのバカ女神、俺が涙流して土下座して、懺悔します~とかいったら、人に生まれ変わらせるから、今度は弱きを助け強きを挫くような、良い人生を送りなさいだってさ。」
あの馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!
私は堪らず女神に殺意を覚えた。お涙頂戴の猿芝居に騙されやがって。
ったくガキだとかいって反省促したって、こいつみたいに心底腐ってる奴は、何処行っても腐った事しか考えないんだよ。少年法がいい例だろうがぁ!と言いたいところを我慢した。
「なるほど……その女神もまた、お粗末な人ですね。」
煮え滾る怒りを抑え、顔に出さぬように、静かに冷静に言った。
「だろー、ほんと笑っちまうよ。女神なんざちょろいちょろい、オマケに称号なんてのをくれてよぉ、これが大笑いだぜ。」
称号まで貰ったのか。なんていうバカ。
「称号……だと?」
「ああ、【勇者】だってよ、ぎゃははははは。さいこーっ」
「は?」
私は愕然とした。
なんでこいつがそんな称号を。あのバカ女神、心底馬鹿だ。こんな腐れ外道にそんな称号渡したら、不幸になる人が沢山出るじゃないか。いやもう沢山出てる。出過ぎてる。
ダメ、ダメ、絶対ダメ。こんな奴生かしておいちゃいけない。
まして勇者?ふざけるな。
こいつには魔王の方が似合ってる。
「ほんと……あのバカ女神、碌なもんじゃない……」
「え?」
私の発した一言に、ザックは驚き私を見た。
「あんたに勇者なんて似合わない。」
「あ、まあ、だが貰ったもんはしょうがねぇよな。お陰で無敵だったのによぉ。テメエには勝てなかったな。奴隷にして犯して──」
なにかの気配を察したのか。ザックは口を空いたまま顔が引き攣り始めた。
そりゃそうだ、私は怒り任せに闘気を噴出していたのだから。
「て、てめぇ、まさか俺を殺すき……か。皇女だからって、そんな勝手ができるわけが………」
汗をダラダラと垂らし、声が上ずっている。手も脚も出ない状態で、ただ殺さえるのを待つだけの哀れなやつだ。
「何をほざく。妾をどうすると言った?」
汗を垂らし目を見開き、口がパクパクしている。
「さっきの女の子たちのように、奴隷にでもするつもりだったのではないか?」
瞬間ザックは察したのだろう、私がもう止まらないということを。これが日本であれば生ぬるい少年法なんかで裁かれ、下手すれば無罪放免だ。
だがここは違う。そして私は皇女だ。貴様は皇女に、それも国王陛下の前で不敬を働いたんだ。その罪、万死に値する。
ザックの顔が引き攣りながら歪み、口を開き笑った。
「は、はははは、そうだよ、奴隷だ、奴らは俺の奴隷だよ、さんざんねちっこく嬲ってやったからな。いつでも股ぐら開──」「黙れ外道!!」
貴様の言葉はうんざりだ。もう一瞬でも聞いていたくない。ザックの言葉を遮り、魔力を迸らせた。
「振動共鳴破砕《ソニックブレイク》っ」
呪文を詠唱し、掌から魔力を放つと、途端に私が造った振動波の直撃を受けて、奴の傷ついていない脚は細胞レベルで粉砕される。
「ぎゃぁぁぁぁぁ………」
悲痛な叫び声が部屋に響き渡り、凄まじい激痛のなかでザックは意識を手放した。
奴の腰から下がバラバラに飛び散り、骨も粉砕されている。股間ももう使い物にはならないだろう。貴様には必要が無いモノだ。
いっそ命を奪っても良かった、しかし流石にできなかった。どんな悪でも殺すことは、私には無理だった。
だが1つ懸念は有る。称号【勇者】には再生のスキルが有るのだろうか。有るとすれば、これだけの重症でも、2~3ヶ月もすれば完全に再生されるだろう。
それならそれでいい、何度でも貴様を破壊し続けてやる。自分から殺してくれと言うまで。
永遠に。
「終わりました。」
ドアを開けると、マリアが室内を覗き込む。途端に「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
真っ赤に染まったベッドの上で、ザックは恐怖で顔を引き攣らせて気絶していた。
「アリス様……」
「治癒師を呼んできなさい。まだ助かるはずですから……」
私は感情を一切表に出さずに命じた。
マリアが走り、治癒師を呼びに行くのとは反対方向へと私は向かった。
††
治癒師が必死に治癒魔法を掛けたが、ザックの傷の重さは酷いものだった。
ザックは一生片手片腕で生きていくことになるだろう。もし奴が女神から称号を受けて、私の様に再生の能力をもっているなら別だが、今はどうでもいい。
学園側から私へのお咎めは無かった。
ザックはやり過ぎた。
身分の高い貴族へあれだけの暴言を吐き、剰え皇女を奴隷にしようとしたのだから、王室への不敬、いや下手すれば反逆にすらとられることだ。
子爵家全員が投獄され斬首となっても、不思議ではないのだから。逆に嫡男の腕と脚が不自由になって済んだと思えば、儲けものというものだ。
この日以降、私は『血塗れの皇女』なんて、陰口というか通名が……
私は可愛い女の子だぞ?
一応……
武器術の試合が全て終わり、見苦しいモノを見せてしまったことをお父様とお母様に謝罪した。その後私はマリアを伴って治癒室へと向かった。
部屋の中にはザックが寝ていた。手と脚を包帯で巻かれ、横になっている。
傍には彼の奴隷だろうか、平民クラスの少女が2人いる。こんな奴でも心配する少女が居ることが不思議だが、どうやって手なづけたのか想像すると、無性にイライラとしてくる。
「皇女様っ」
少女達が立ち上がり礼をした。
「悪いけど、出て行ってくれる。」
少女達の挨拶を無視して、私は毅然とした言葉を投げつける。少なくともこいつの前では、お気楽な言葉は出したくない。
少女達は多少戸惑ったが、一礼して出て行った。
「マリア、何か有ったら呼びます。部屋の外で待ちなさい。」
私が静かに言うと、マリアは一瞬戸惑ったが、一礼して部屋の外に出て行った。
「さ、ザック、これで2人きりです。約束を果たしなさい。女神について話すのです。なにもかも。」
「へ、命令すんじゃねぇ……」
「云わぬなら、殺します。ここで貴方の首を断ち切っても構いませんよ。いえ、寧ろそうしたいのだけど。」
ベッド脇からザックを見下ろす。本当にそう思っていた。私が投げかける冷たく覚めた視線がザックにも解ったのか、視線を反らし口を開いた。
「俺は……信じねえかも知れねえが、俺はこの世界とは違うところから来た。」
やはり。
「違うところ、とは?」
「日本って国だ。」
「……日本」
こうして他人から云われると、なんとも懐かしい。もしこれがコイツ以外なら、同族意識に抱きついていたかもしれない。
「ふ……俄に信じられんが、言ってみろ、それが本当なら何故貴様はこの世界に来た。」
「……俺はよ、トラックに潰されて死んだんだ。」
やはり……
「河川敷でよ、ちっと浮浪者を誂ってたらよ、クソうるせー女が来やがってよ。」
河川敷、浮浪者。
疑う余地はない。
やはりこいつだ、こいつが全ての元凶だ。こいつの目、忘れてない。そうだ私を襲った中学生だ。
「女を誂ってたら、なんでだかトラックに潰されちまった。」
省略してんじゃねーよっ!
テメエらが浮浪者を殴ってたから、浮浪者が逃げ出して、トラックに跳ねられたんだろ。そのうえハンドル操作をミスったトラックが突っ込んできたんだろうが!
お前らが逃げられなかったのは、私を襲ってたからだろう。
「あ~死んじまったとおもったらよぉ、したらよ~、女神とか言う奴が出てきて、は、はは、俺を虫だか獣として生まれ変わらせるとかいうんだぜ、たくふざけやがって。」
へぇ、あの人も良い判断するじゃない、でもなんで子爵家?
「……貴様の様な性根の奴らな、虫か獣で十分だろう。だが貴様見た目は人であるが、何故じゃ。」
「けけけ、ちょろいちょろい、あのバカ女神、俺が涙流して土下座して、懺悔します~とかいったら、人に生まれ変わらせるから、今度は弱きを助け強きを挫くような、良い人生を送りなさいだってさ。」
あの馬鹿ぁぁぁぁぁぁっ!
私は堪らず女神に殺意を覚えた。お涙頂戴の猿芝居に騙されやがって。
ったくガキだとかいって反省促したって、こいつみたいに心底腐ってる奴は、何処行っても腐った事しか考えないんだよ。少年法がいい例だろうがぁ!と言いたいところを我慢した。
「なるほど……その女神もまた、お粗末な人ですね。」
煮え滾る怒りを抑え、顔に出さぬように、静かに冷静に言った。
「だろー、ほんと笑っちまうよ。女神なんざちょろいちょろい、オマケに称号なんてのをくれてよぉ、これが大笑いだぜ。」
称号まで貰ったのか。なんていうバカ。
「称号……だと?」
「ああ、【勇者】だってよ、ぎゃははははは。さいこーっ」
「は?」
私は愕然とした。
なんでこいつがそんな称号を。あのバカ女神、心底馬鹿だ。こんな腐れ外道にそんな称号渡したら、不幸になる人が沢山出るじゃないか。いやもう沢山出てる。出過ぎてる。
ダメ、ダメ、絶対ダメ。こんな奴生かしておいちゃいけない。
まして勇者?ふざけるな。
こいつには魔王の方が似合ってる。
「ほんと……あのバカ女神、碌なもんじゃない……」
「え?」
私の発した一言に、ザックは驚き私を見た。
「あんたに勇者なんて似合わない。」
「あ、まあ、だが貰ったもんはしょうがねぇよな。お陰で無敵だったのによぉ。テメエには勝てなかったな。奴隷にして犯して──」
なにかの気配を察したのか。ザックは口を空いたまま顔が引き攣り始めた。
そりゃそうだ、私は怒り任せに闘気を噴出していたのだから。
「て、てめぇ、まさか俺を殺すき……か。皇女だからって、そんな勝手ができるわけが………」
汗をダラダラと垂らし、声が上ずっている。手も脚も出ない状態で、ただ殺さえるのを待つだけの哀れなやつだ。
「何をほざく。妾をどうすると言った?」
汗を垂らし目を見開き、口がパクパクしている。
「さっきの女の子たちのように、奴隷にでもするつもりだったのではないか?」
瞬間ザックは察したのだろう、私がもう止まらないということを。これが日本であれば生ぬるい少年法なんかで裁かれ、下手すれば無罪放免だ。
だがここは違う。そして私は皇女だ。貴様は皇女に、それも国王陛下の前で不敬を働いたんだ。その罪、万死に値する。
ザックの顔が引き攣りながら歪み、口を開き笑った。
「は、はははは、そうだよ、奴隷だ、奴らは俺の奴隷だよ、さんざんねちっこく嬲ってやったからな。いつでも股ぐら開──」「黙れ外道!!」
貴様の言葉はうんざりだ。もう一瞬でも聞いていたくない。ザックの言葉を遮り、魔力を迸らせた。
「振動共鳴破砕《ソニックブレイク》っ」
呪文を詠唱し、掌から魔力を放つと、途端に私が造った振動波の直撃を受けて、奴の傷ついていない脚は細胞レベルで粉砕される。
「ぎゃぁぁぁぁぁ………」
悲痛な叫び声が部屋に響き渡り、凄まじい激痛のなかでザックは意識を手放した。
奴の腰から下がバラバラに飛び散り、骨も粉砕されている。股間ももう使い物にはならないだろう。貴様には必要が無いモノだ。
いっそ命を奪っても良かった、しかし流石にできなかった。どんな悪でも殺すことは、私には無理だった。
だが1つ懸念は有る。称号【勇者】には再生のスキルが有るのだろうか。有るとすれば、これだけの重症でも、2~3ヶ月もすれば完全に再生されるだろう。
それならそれでいい、何度でも貴様を破壊し続けてやる。自分から殺してくれと言うまで。
永遠に。
「終わりました。」
ドアを開けると、マリアが室内を覗き込む。途端に「ひっ」と小さく悲鳴を上げた。
真っ赤に染まったベッドの上で、ザックは恐怖で顔を引き攣らせて気絶していた。
「アリス様……」
「治癒師を呼んできなさい。まだ助かるはずですから……」
私は感情を一切表に出さずに命じた。
マリアが走り、治癒師を呼びに行くのとは反対方向へと私は向かった。
††
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