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<33> 幼女の次は仮面の少女!!

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††


 夜になると、ルミの瞳が少し赤く輝くのはやっぱ吸血鬼だからだろうか。

 それにお腹が空いたと俺に迫ってくる。物欲し気に俺の首筋を見て、赤い目をキラキラとさせやがる。

 あ~そですか、血が欲しいのね。やっぱこいつ吸血鬼だわ。

 俺は仕方なくルミを抱いてやると、嬉し気に俺の首に、柔らかな唇が当たった。

 はたから見るとずいぶんやばい光景だけど、まあここには青少年保護条例なんていう無粋な条例はないし、そもそも俺の形なりだって少年だからな。問題なし、としてくれ。

 柔らかい唇の次に、ちょっとだけチクッとする。牙が頸動脈に突き立てられ、そして血がすすられる感触。

 最初は何が何だかわからなかったが、こんな状態だと血が吸われているのがよくわかるし、それになんていうか、背中がゾクゾクする。陶酔感とでもいうのか、う~ん……癖になる?

 あほかぁぁぁ!幼女に血を吸われて何言ってんだ、俺わぁ!

 そして血を吸い終わると、ルミは急激に眠くなるようだ。まだ幼いからだろうか。すぐに俺の胸に顔をうずめて眠ってしまう。

 可愛すぎる……


 一応ルミには約束させておかないといけない。

「いいか、血は飲ませてやる。だけど俺からだけだ。いいな?約束だぞ。」
「ヤクソクー、守る~」

 ルミがコクリと頷き、抱きついてきて、すりすりしてくる。

 うん、かわいい。

 俺には超速再生があるから、牙を立てられても傷はすぐ無くなるし、血が少なくなっても再生される。便利と言えば便利だ。

 それに今のところ、眷属化もされないようだ。



 数日が過ぎて、馬車の中でルミは俺の膝の上に座り、頭の上で寛いでいるコッペルと遊んでいる。

 こうして見ていると、ほんとうに吸血鬼バンパイアなのかと疑いたくなるのだが。

「コッペ、コッペ!」

 俺の頭にしがみついてるコッペルを、無理に引き剥がそうとして、ぎゃーぎゃーやることもある。

 今がまさにそうなのだが、コッペルが全力でしがみつき、仕方なくおれは金剛体を発動させないと爪が痛くて仕方ない。

 まあなんだかんだ言って、コッペルとも懐いているから良いんじゃないかな……ははは……。

 すまんがレヴィ、そんな睨まないでくれ。


◇◇


 ノスフェラトゥへと渡る船着場までは、馬車ならば20日程の道のりで、途中には幾つかの街がある。できるだけ街で宿泊し、残りは野営だ。

 野営も問題はない。

 全員それなりの強者なのだし、野営での見張りも慣れたものだ。途中で魔獣と出会っても、馬車を壊される前にさくさくと倒した。

 旅は順調すぎるほど順調だった。

 6日目、1つ目の街が近づいてくる。

 今夜は街でのんびり風呂でも入ろうと、皆で話しをしていた。

 自前の食事も悪くはないが、酒も飲みたいし見張り無しでのんびり寝たいというのも有る。

「たまには御者を代われ~。」

 と文句をいうのはニトロだけだ。

 馬車を操れるのって、ニトロしか居ないのだから諦めてくれ。

 そんな順調な旅に水を差す奴が居た。

「ありゃ何だ?」

 ニトロが何かを見つけたらしい。

 馬車の前方になにか、争いごとが起きているようだった。

 俺は幌馬車から出て御者台に座った。ルミがついてきて、俺の膝の上にチョコンと腰掛ける。

「人が襲われてるのか?」
「みたいだね。」

 レヴィもやってくる。レヴィがルミを拾って以来、なんでだか張り合うように俺に近づくんだが、何故なんだ?

 年上だし結構厳しい物言いなのに、なぜ俺にくっつく。

「アジンーッ」

 ルミが指差して叫び、俺はぎょっとした。

 まさか記憶が戻ったのか、と。だがそれ以上の様子はない。記憶の片鱗というやつか。

「確かにありゃ亜人だな。ホブゴブリンやオーク、オーガか。」
「襲われてるのは、女の子2人に騎士が1人かな。」
「襲われてるって言えるのか?すげえぞあの子。貴族みたいなドレス着てるのに、すごい剣捌きだ。片っ端から亜人を倒しまくってるぞ。」

 確かにその光景は異様だった。

 多勢に無勢とはいえ、どちらかといえば、亜人たちが襲われているようにも見える。

 黒基調に銀糸と白地で装飾された、かなり高級そうなドレスを着た金髪の少女が、長剣を振り回している。それも艶やかに踊るかのように、恐ろしく早い剣戟を披露している。

 返り血がドレスを汚すことすらかなわない、流れるような剣捌きに俺達は目を見張った。

 何よりその少女を目立たせているのは、大きなアイマスクの様な、黒ベースに銀をあしらった仮面だ。

 軽やかに剣を振り、次々と亜人を倒してく仮面の少女……

 まるでアニメや漫画の中に出てきそうなその少女から、俺は目を離せなかった。少女の軽やかで美しい、踊るような剣捌きは、俺を魅せつけた。

 そして彼女だけではない。

 仮面の少女の傍らにはメイド服の少女が、いつも寄り添っている。仮面の少女を守るようにぴったりと寄り添い、ショートソードに似た剣、日本刀の小太刀のような刀で、的確に亜人共を斬り伏せていた。

 1人だけマトモそうな、というとおかしな物言いだが、まともな武具を装備した騎士が1人。白銀の高級そうな装飾付き軽量鎧ライトプレートに身を包んだ、長剣とショートソードの、二刀流の騎士が戦っている。

 遠目に見れば貴族のお嬢様を守る騎士と侍女、といったところか。全員が戦っているのはちょっと異彩だし、中でも仮面の少女が最も戦闘力が高そうだ。

 それに共通するのは全員がやたらと若い。

 恐らく14-15歳といったところだろうか。下手すれば俺と同い年くらいかもしれない。

 そしてこれが俺と仮面の少女──アリスとの出会いだった。

††
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