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<28> 首なんて飾りですよ!
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††
我が身を傷つけた対象に向かって、一直線に疾風となり風を切って進む。
其処に
「ウォークライッ!」
盾が打ち鳴らされる音が響き、ルミナスの気が強制的にゴレムの方へと引かれてしまう。
「がぁぁ、たかが人《エサ》の分際でぇぇ」
精神が操られ、レヴィに向かうはずの憎悪が強固な鎧で覆われたゴレムに向かい、斬撃の爪が盾を刻み跳ね返された。
「「もらったぁぁっ」」
「ひぎぁぁぁぁっ」
盾に弾かれバランスを崩したルミナスに、グルームが、そしてニトロが斬りかかった。
グルームの双剣がルミナスの身体を袈裟懸けに斬り、横薙ぎに払った。
分厚く大きな大剣が一振りされ、ルミナスの腕が簡単に身体から離れた。
そして
「縮地、爆裂拳!!」
ルミナスへ瞬時に近づいたジュンヤが、ルミナスの顔へ拳を当て、魔力を解き放った。
ルミナスの頭は、破裂したかのように吹き飛び、首から上が消し飛んだ。
「やった!」
レヴィとリリスが笑顔を見せる。
グルームも、もちろんニトロも勝利を確信した。
だが頭が無くなったはずの身体が動いた。
ルミナスの残った腕が素早く動き、鋭い爪が瞬時に再生されると、ジュンヤの腹を抉った。
「ごふぁぁ、、」
ジュンヤの背中から血塗れの腕が生えていた。
「な、なにぃ!」
ニトロが焦り叫ぶ。
「ま、まだ生きてやがる……」
腹を貫かれたジュンヤが、苦しげに呟き、首のないルミナスを見つめた。
眼下には頭を消失した首があり、血が流れ落ちている。しかし真っ赤な肉片や破壊された白い骨が、ジュクジュクと蠢いている。
「さ、再生……」
僅かに、それでもかなりの速度で肉が盛り上がり骨が再構成されていくのが見えた。
──超速再生……じゃない
ジュンヤの脳裏に自分が持つスキルが思い浮かぶが、この再生速度はそれを超えていると言えた。
そもそも首を取られたのに、何故生きているのだ。
──こいつも不死なのか?
自分とは異なるタイプの不死者。そんな思いが馳せるがすぐに思考は拡散した。
「おおおおっ!!」
雄叫びを上げてゴレムが走りより、ルミナスの身体を盾で跳ね飛ばした。
ズボッと嫌な音を立て、俺の腹を貫いていたルミナスの腕が抜けて、俺は地面に転がった。
ぽっかりと腹に穴を開けられ、内臓がはみ出てくるのを、俺は無理矢理に中に押し込んだ。
すでに超速再生が発動して傷を修復し始めている。それに加えてリリスの治癒魔法が降りかかり、加速度的に傷を癒してくれている。
──痛覚遮断《ペインオフ》
痛みを打ち消し、ルミナスへと視線を向けると、首が無いくせにバク転し、奴は俺達から距離をとっていた。
グルームとニトロが走り追っている。
2人が切りつけようとするが、ルミナスの身体はまるで目があるように2人の剣撃をひらひらと躱して、都度距離を取っていく。
レヴィの攻撃魔法も、弱体魔法も尽くが避けられていった。
「な、なんなんだこいつ……」
剣撃を尽く躱され肩で息をし始めたグルームが、呆れた口調で文句を言いつつ、双剣を振り回し斬りかかっていった。
「ジュンヤぁ、剣を取って!」
レヴィが俺に向かって叫んだ。
振り向くとその指先には雷神剣《ライトニングブレード》が指し示されている。
──両手剣か
俺は一瞬躊躇う。あそこまででかい剣を使いこなせるのか、と。
「しかし……」
「吸血鬼《バンパイア》の弱点には浄化の焔があると聞いた。多分行けるはずだ。」
俺が戸惑うのをレヴィが遮った。雷撃を使えってことか?雷は浄化になるのか?
訳が判らないが、俺は走り雷神剣《ライトニングブレード》を拾い上げた。
ずしりと来る重さ、結構な重量だが、振れないわけじゃない。そしてニトロとグルームが戦う方へと振り向き走った。
ルミナスはニトロとグルームの攻撃を確実に避けているが、それでも時折グルームの素早い剣撃が奴を捉えていた。
視覚や聴覚で避けているわけではない、おそらくは特殊な知覚能力があるのだろう。
それと同様、奴から攻撃を仕掛けることはないが、剣を避けたり受けたりする時、奴の爪がニトロやグルームを引き裂いていた。
だがそれだけではグルームの様に素早い攻撃を繰り出されると、確実に避けることは出来ないのだろう。
ならば。
「ニトロ、グルーム、いくぞぉっ!」
2人が振り向き俺を見て武器をみて、頷く。
「おおおおおおっ!」
渾身の力を込めて縮地から雷神剣《ライトニングブレード》を振り下ろす。そこに攻撃を察したルミナスが腕を振り上げ、爪が剣を受け止めた。
雷撃が剣から迸り、周囲に降り注いだ。剣を受け止めるルミナスもまた、雷撃に身体を包まれ、仰け反った。
首が無いから悲鳴はでないが、奴の身体は雷撃に感電し、体をブルブルと震わせている。俺は剣をふりあげ、さらにもう一撃叩き込んだ。
再生しつつ合ったルミナスの首をめがけ、雷神剣《ライトニングブレード》を叩き込み、体内から雷撃を迸らせる。
ボッ!
電撃がルミナスの体内を駆け巡り、奴の身体が火を吹いた。
「燃やし尽くせ、轟焔滅尽牢《フレイムプリズン》」
「ジュンヤ、離れろっ!」
ニトロが叫ぶ、俺は咄嗟にバックステップを踏んで更に転がるように離れた。
途端に巨大な火球が落ちてきて、ルミナスの体を包み込んだ。
「うおぉつ」
ある程度離れているというのに、肌が焼ける熱量を間近に感じ、俺は這い蹲って後退った。
ルミナスを包み込んだ火球は、破裂することも霧散することもなく、業火の坩堝が回転しながらルミナスを燃やしているように感じた。
轟々と音を立てる火球を見つめ、俺はちょっとビビった。
すげぇ流石本職の魔術師、確かレベルが92とか言ってたな。上級レベルの魔法使いってのは、こんな魔法まで使えるってことか。
果たして俺の魔法防御で、こんな魔法を耐えられるのか。確かにカンストしているのだが、やっぱこの中に突っ込んでいく気にはなれなかった。
地面には黒焦げの塵芥のような死体が横たわっている。まだ内部で火が燻っているのか、ブスブスと音を発て煙が昇っている。
肉の焼ける匂いが辺りに漂っていた。
ルミナスの死体を見下ろし、俺は嫌な思いがフラッシュバックしてくる。でもその中に少しだけ、まだほんの少しだが、皆の仇を返せたかという思いはあった。
この吸血鬼《バンパイア》の女は魔族の種族の1つだ。そもそもが吸血鬼《バンパイア》は人の血を吸い糧とする。古くから人を食事としてきた、災厄の1つだレヴィから聞いた。
「俺らに掛かればこんなもんか。」
「ったく吸血鬼《バンパイア》ってのはしぶてぇな。」
「ああ、首を失っても動けるとか、全く呆れた生命力だよ。」
呆れながら死体から離れるニトロとグルーム、
「ふふん、どんなもんよ。」
レヴィがドヤ顔で無い胸を突き出している。
「ああ、大したもんだ、でもちっぱいは出さないで良いぞ。」
ニトロがぽんと頭を叩いて、オーガウォリアーの方へと歩いて行く。
「ま、まぁ、頑張れ、まだ成長すると思うぞ。」
グルームもぽんと叩くと、慰める様に言う。
「……お疲れ様。」
ゴレムも……
「ち、ち、ちっぱいいうなぁぁぁぁっ!」
レヴィが真っ赤になって3人に向けて怒鳴りつけ、キッと俺を睨みつけた。
あ~、いや、俺は何も言ってないからな。
「えと、ご、ご苦労様……」
「このばかぁぁぁぁっ!」
いや、俺は何も言ってないってば。心で思っても……
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我が身を傷つけた対象に向かって、一直線に疾風となり風を切って進む。
其処に
「ウォークライッ!」
盾が打ち鳴らされる音が響き、ルミナスの気が強制的にゴレムの方へと引かれてしまう。
「がぁぁ、たかが人《エサ》の分際でぇぇ」
精神が操られ、レヴィに向かうはずの憎悪が強固な鎧で覆われたゴレムに向かい、斬撃の爪が盾を刻み跳ね返された。
「「もらったぁぁっ」」
「ひぎぁぁぁぁっ」
盾に弾かれバランスを崩したルミナスに、グルームが、そしてニトロが斬りかかった。
グルームの双剣がルミナスの身体を袈裟懸けに斬り、横薙ぎに払った。
分厚く大きな大剣が一振りされ、ルミナスの腕が簡単に身体から離れた。
そして
「縮地、爆裂拳!!」
ルミナスへ瞬時に近づいたジュンヤが、ルミナスの顔へ拳を当て、魔力を解き放った。
ルミナスの頭は、破裂したかのように吹き飛び、首から上が消し飛んだ。
「やった!」
レヴィとリリスが笑顔を見せる。
グルームも、もちろんニトロも勝利を確信した。
だが頭が無くなったはずの身体が動いた。
ルミナスの残った腕が素早く動き、鋭い爪が瞬時に再生されると、ジュンヤの腹を抉った。
「ごふぁぁ、、」
ジュンヤの背中から血塗れの腕が生えていた。
「な、なにぃ!」
ニトロが焦り叫ぶ。
「ま、まだ生きてやがる……」
腹を貫かれたジュンヤが、苦しげに呟き、首のないルミナスを見つめた。
眼下には頭を消失した首があり、血が流れ落ちている。しかし真っ赤な肉片や破壊された白い骨が、ジュクジュクと蠢いている。
「さ、再生……」
僅かに、それでもかなりの速度で肉が盛り上がり骨が再構成されていくのが見えた。
──超速再生……じゃない
ジュンヤの脳裏に自分が持つスキルが思い浮かぶが、この再生速度はそれを超えていると言えた。
そもそも首を取られたのに、何故生きているのだ。
──こいつも不死なのか?
自分とは異なるタイプの不死者。そんな思いが馳せるがすぐに思考は拡散した。
「おおおおっ!!」
雄叫びを上げてゴレムが走りより、ルミナスの身体を盾で跳ね飛ばした。
ズボッと嫌な音を立て、俺の腹を貫いていたルミナスの腕が抜けて、俺は地面に転がった。
ぽっかりと腹に穴を開けられ、内臓がはみ出てくるのを、俺は無理矢理に中に押し込んだ。
すでに超速再生が発動して傷を修復し始めている。それに加えてリリスの治癒魔法が降りかかり、加速度的に傷を癒してくれている。
──痛覚遮断《ペインオフ》
痛みを打ち消し、ルミナスへと視線を向けると、首が無いくせにバク転し、奴は俺達から距離をとっていた。
グルームとニトロが走り追っている。
2人が切りつけようとするが、ルミナスの身体はまるで目があるように2人の剣撃をひらひらと躱して、都度距離を取っていく。
レヴィの攻撃魔法も、弱体魔法も尽くが避けられていった。
「な、なんなんだこいつ……」
剣撃を尽く躱され肩で息をし始めたグルームが、呆れた口調で文句を言いつつ、双剣を振り回し斬りかかっていった。
「ジュンヤぁ、剣を取って!」
レヴィが俺に向かって叫んだ。
振り向くとその指先には雷神剣《ライトニングブレード》が指し示されている。
──両手剣か
俺は一瞬躊躇う。あそこまででかい剣を使いこなせるのか、と。
「しかし……」
「吸血鬼《バンパイア》の弱点には浄化の焔があると聞いた。多分行けるはずだ。」
俺が戸惑うのをレヴィが遮った。雷撃を使えってことか?雷は浄化になるのか?
訳が判らないが、俺は走り雷神剣《ライトニングブレード》を拾い上げた。
ずしりと来る重さ、結構な重量だが、振れないわけじゃない。そしてニトロとグルームが戦う方へと振り向き走った。
ルミナスはニトロとグルームの攻撃を確実に避けているが、それでも時折グルームの素早い剣撃が奴を捉えていた。
視覚や聴覚で避けているわけではない、おそらくは特殊な知覚能力があるのだろう。
それと同様、奴から攻撃を仕掛けることはないが、剣を避けたり受けたりする時、奴の爪がニトロやグルームを引き裂いていた。
だがそれだけではグルームの様に素早い攻撃を繰り出されると、確実に避けることは出来ないのだろう。
ならば。
「ニトロ、グルーム、いくぞぉっ!」
2人が振り向き俺を見て武器をみて、頷く。
「おおおおおおっ!」
渾身の力を込めて縮地から雷神剣《ライトニングブレード》を振り下ろす。そこに攻撃を察したルミナスが腕を振り上げ、爪が剣を受け止めた。
雷撃が剣から迸り、周囲に降り注いだ。剣を受け止めるルミナスもまた、雷撃に身体を包まれ、仰け反った。
首が無いから悲鳴はでないが、奴の身体は雷撃に感電し、体をブルブルと震わせている。俺は剣をふりあげ、さらにもう一撃叩き込んだ。
再生しつつ合ったルミナスの首をめがけ、雷神剣《ライトニングブレード》を叩き込み、体内から雷撃を迸らせる。
ボッ!
電撃がルミナスの体内を駆け巡り、奴の身体が火を吹いた。
「燃やし尽くせ、轟焔滅尽牢《フレイムプリズン》」
「ジュンヤ、離れろっ!」
ニトロが叫ぶ、俺は咄嗟にバックステップを踏んで更に転がるように離れた。
途端に巨大な火球が落ちてきて、ルミナスの体を包み込んだ。
「うおぉつ」
ある程度離れているというのに、肌が焼ける熱量を間近に感じ、俺は這い蹲って後退った。
ルミナスを包み込んだ火球は、破裂することも霧散することもなく、業火の坩堝が回転しながらルミナスを燃やしているように感じた。
轟々と音を立てる火球を見つめ、俺はちょっとビビった。
すげぇ流石本職の魔術師、確かレベルが92とか言ってたな。上級レベルの魔法使いってのは、こんな魔法まで使えるってことか。
果たして俺の魔法防御で、こんな魔法を耐えられるのか。確かにカンストしているのだが、やっぱこの中に突っ込んでいく気にはなれなかった。
地面には黒焦げの塵芥のような死体が横たわっている。まだ内部で火が燻っているのか、ブスブスと音を発て煙が昇っている。
肉の焼ける匂いが辺りに漂っていた。
ルミナスの死体を見下ろし、俺は嫌な思いがフラッシュバックしてくる。でもその中に少しだけ、まだほんの少しだが、皆の仇を返せたかという思いはあった。
この吸血鬼《バンパイア》の女は魔族の種族の1つだ。そもそもが吸血鬼《バンパイア》は人の血を吸い糧とする。古くから人を食事としてきた、災厄の1つだレヴィから聞いた。
「俺らに掛かればこんなもんか。」
「ったく吸血鬼《バンパイア》ってのはしぶてぇな。」
「ああ、首を失っても動けるとか、全く呆れた生命力だよ。」
呆れながら死体から離れるニトロとグルーム、
「ふふん、どんなもんよ。」
レヴィがドヤ顔で無い胸を突き出している。
「ああ、大したもんだ、でもちっぱいは出さないで良いぞ。」
ニトロがぽんと頭を叩いて、オーガウォリアーの方へと歩いて行く。
「ま、まぁ、頑張れ、まだ成長すると思うぞ。」
グルームもぽんと叩くと、慰める様に言う。
「……お疲れ様。」
ゴレムも……
「ち、ち、ちっぱいいうなぁぁぁぁっ!」
レヴィが真っ赤になって3人に向けて怒鳴りつけ、キッと俺を睨みつけた。
あ~、いや、俺は何も言ってないからな。
「えと、ご、ご苦労様……」
「このばかぁぁぁぁっ!」
いや、俺は何も言ってないってば。心で思っても……
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