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<24> さて言い訳のお時間です

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††

 ケィニッヒの元で修行し属性耐性を高めていたにも関わらず、俺は凄まじい雷撃に意識をブラックアウトさせてしまった。
 
 やはり心臓近くを刺されたからだろうか、直接心臓を通して、全身に雷撃が浸透したためか、いくら属性耐性を高めていても、やられちまったらしい。

「がぁぁぁぁぁぁあっっ!!」

 だが俺は歯を噛み締めて堪えた。脳が麻痺し思考停止しているにも構わず、およそ根性だけで動いていたのだろうか、それとも復讐心か。
 
 無意識に身体が動いた。
 
 オーガウォリアーの首に刺した剣、俺は意識を失いながら渾身の力で更に奥深くまで突き刺し、抉った。

 途端に俺の身体は力尽き、雷撃で弾け飛びんだ。宙をくるくると錐揉みしながら、地面に叩きつけられ、二転三転して止まった。
 
「クウックウッ」

 ダッシュで走り寄ってくるコッペル。
 
 その背後では
 
「GABOGABOAAHHHH」
 
 オーガウォリアーが口から血を溢れさせ、雷神剣《ライトニングブレード》を放り投げ、血塗れの首を引っ掻き藻掻いている。
 
 奴の首には俺の剣が深々と突き刺さったままだ。
 
 雷神剣《ライトニングブレード》さえなければ、こっちのものとばかりに、ニトロが奔りグルームが跳びかかる。
 
「死ねやあぁ!!」
「うぉぉぉぉっ!!」

 ニトロの大剣が鎧の上から殴りつけ、鎧をメキメキと破壊するとオーガウォリアーの胴体を切り裂いた。グルームはオーガウォリアーの頭まで跳躍するや、首を斬り裂いた。
 
 そして止めとばかりに、レヴィの水撃魔法が炸裂する。無数の水のドリルが襲いかかり、奴の身体を鎧もろとも貫通していった。
 
 オーガはついに力尽きて倒れていき、リリスが慌てて俺に駆け寄ってきた。

 コッペルが俺の頬をぺろぺろと舐めている。リリスはその隣に座り込むと、俺の胸に手を当てた。

「ジュンヤっ!生きてるよねっ!」

 直ぐに治癒呪文が発動する。

「てめぇ生きてるかっ!!」

 ニトロもまた走っていた。いや全員が駆け寄ってきてたわ。
 
「お、おぉ……」
 
 意識が戻り俺の目の前に、エルフの美しい顔が、それも心配そうに俺を見つめている。目覚め直ぐにリリスの顔は、ちょっとどきりとするな、と思ったらコッペルもいた。

 わかった、わかった、舐めるな、大丈夫だから。

 しかしまぁみんな心配そうな顔をしている。ニトロもグルームも、レヴィも可愛らしい顔でオロオロとしている。
 
 雷神剣《ライトニングブレード》に胸を貫かれて、そのうえ雷撃をもろに喰らったんだからな。普通なら良くて重篤、悪けりゃ死亡だ。
 だが僅か数日だけのパーティなんだ、何故そんなに心配する。俺なんて傭兵みたいなものだろうに、使い捨ててもいいものを……
 





 さて言い訳のお時間です。

「心配かけたか、すまんな。」

 リリスの治癒魔法の効果と、俺の再生スキルの効果で、胸の傷は見る見る閉じられ、血も停まった。
 
 リリスが治癒の速さに目を見張っている。

 俺はムクリと起き上がり、添えられていたリリスの手をどけた。
 
「な、え?」

 リリスは眼を丸くして俺を見ている。どっからどう見ても大ダメージを受けたはずで、とてもすぐに起き上がれるなどありあえないことだ。
 
 そんなのがむっくりと起き上がったんだから、驚きますね。
 
 実際俺の胸当てブレストプレートにはでかい穴が空いて、周囲は血塗れだし、雷撃の影響で焦げ付いてる。
 
「治癒魔法のお陰だ。ありがとうな。」

 狼狽えているリリスに礼を言うと、壊された防具を見る。
 
 穴がでか過ぎだ。斬られた部分を中心に、防具が破壊されている。あの雷神剣《ライトニングブレード》は、余程攻撃力があるんだろうか。
 
 雷撃以外にもなにかの付与《エンチャント》が掛かっているかもしれない。
 
 しかしこれじゃ修理は無理だろう。新しい防具を買わないと……ちょっと凹む。
 
「え、ちょええええ?」

 胸の状態を見ている俺を見て、リリスがわたわたしている。それにその後ろではみんなが固まって棒立ちになってる。驚かせたか、なんかすまんな。
 
「お、おまえ、もう平気なのか?」

 ニトロがようやく声に出した。

「リリスの治癒魔法のお陰かな。それに俺のマントには金属の繊維が織り込んであるんだ、こいつが雷撃をあちこちに散らしてくれたんだろう。」
「「「「はぁ?」」」」

 なんか驚きの声があがる。リリスからも上がってる。
 
 やっぱ信じない?
 
 信じられないか、今はそういうことにしといてくれ。めんどくさいから。

「……鎧とマントが防いだのか……運が相当いいのか何なのか。」
「まぁ、そういうこと……だ。」

 ニトロは目を細めて言う。完全に疑ってるよな。うん確実だ。

 こいつらだってそこそこの手練だ、一瞬のこととは言え、あの状況であれを喰らって無事で有るわけがない、と解っているはずだ。
 
 俺がなにか特別なスキルでも持っていて、それを隠している。そのくらいは想像がつくだろう。そして俺はそのスキルを知られたく無い、ということも理解してくれるとありがたい。
 
『そもそも再生なんちゅうスキル、初めて見たぞ。』

 とはケィニッヒの言葉だ。そんなスキルは神の恩恵か、魔族ぐらいしか持ってないと言われちまった。
 
 それに金剛体なんかも、剛体術をレベル50まで上げる必要があるスキルだ。
 
 属性耐性同様に、剛体術は身体を傷つける事に寄って上がる。普通なら金剛体となる前に死ぬようだ。
 
 つまり、一般的には俺の年で手に入る様な、そんな容易いスキルではないらしい。
 
『おめえのことだ、直ぐに金剛体を取るだろう。鑑定眼で見られたときの言い訳を考えておけよ、はははは。』

 人のことだと思って……
 
 
 リリスはとにかくもう一度見せてみろ、と強引に俺の胸当てブレストプレートを外しやがった。
 
 俺を上半身ハダカにして、念入りに傷跡を見るリリス。なんか恥ずかしいだろ。
 
「ほんとに……治り始めている。」

 そう言って呆れるのだが
 
「……早や過ぎる。」

 と追加した。
 
 突き刺された辺りは、肌が黒ずんで、皮膚が盛り上がり治癒仕掛けていた。
 
「まさか……【再生】……」

 レヴィが怪訝な顔をして呟いた。
 俺はドキッとして顔を引き攣らせる。まさか【再生】スキルの事を知っているのか。
 
「リリス、大した事ないならいいんじゃない。」
「え、うん……そうね。」

 まだ何か云われるかと心臓がバクついたが、レヴィはリリスを促した。しかし俺を悪戯っ子のような目がちらりと見ると、ほくそ笑んでいた。
 
 なんかやばいかな……こいつらとはとっとと別れようか。




「ったく期待はずれなんだからぁ。」

 なんか可愛らしい声が聞こえてきた。
 
「え?」

 ニトロが振り向くと、地面に倒れ込んだオーガウォリアーの死体を覗き込む少女がいた。

 小さな少女、レヴィも小さいが、もうちょっと小さい。赤い髪に赤い双眸、何よりも変わった衣装を来ている。
 
 貴族のドレスのようでもあるが、どこか……見たことがある黒いドレス。
 
 あ、ゴスロリだ。


††
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