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<2> ドジ女神の開き直り
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††
俺は転生者だ。
日本で35年生きて、死んで、そして新しい世界で4歳で死んだ。
最初に死んだのは20x6年の日本での事だ。
当時俺は35歳になってもまともに仕事もせず、部屋に引き篭ってゲームに呆けてたんだ。
所謂引き籠りの無職、ヒキニートってやつだ。
そうなると親との確執がすげーすげー。お袋は下手に出まくって、俺の我儘を聞いてくれるのだが、親父には毎日怒鳴られてた。
時には殴られもしたけど、なんだろな、結局親の思い通りになりたくない、なんてくだらねえこと言って、俺は搾取される側にはならないとか、糞みたいな屁理屈で武装してた。
糞は自分だってのは解ってた。
どんな理論武装したって、結局俺は生きた産業廃棄物だったんだよな。
偶に外にでては俺と同質の奴に絡まれ、喧嘩してフクロにされたり、警察に捕まったり。何度も親父やお袋に頭を下げさせた。
ヒキニートやって食わしてもらってて、迷惑掛けて、挙句に……今思うと自分を殺したくなる。そうだよな、とっとと自分で自分を殺せばよかった。でも怖かった。ただそれだけだ。
ある日、親父に髪を引っ掴まれて、外にほっぽり出された。親父は涙を流しながら俺に、出て行けと言った。
お袋が居間で冷たくなってたそうだ。
そういえばサイレンやら何やらで、やけに煩かったなと思ったが、そういうことか。
クモ膜下出血だったらしい。
親父が仕事から帰ってきて、見つけたときには既に冷たくなっていた。
ははは……知ら無かった。やけに飯が遅いと思いながら、ゲームしてたわ。
もしかしたら俺が気づいていれば、お袋は死なずに済んだのかもしれない。俺が殺したのかもしれない、いや俺が……
俺がお袋を殺したんだ。
幾ばくかの金を叩きつけられ、俺は家を追い出された。
「お前を育てるのは諦めた。勝手に生きろ、どこで野垂れ死んでも構わん。」
俺は住む場所を失った。
そのあとはまあ、いろいろあって、数日もしたら金も無くなって、腹をすかせて河川敷で寝ていたんだ。
そしたら金髪の糞ガキどもに襲われて、フクロにされた。浮浪者狩りってやつかね。俺、浮浪者じゃねーし、と反論したいけど、もともと腕力ないし、腹減って力がでねー。
ボコボコにされて痛くて辛くてこのまま死ぬのかと思った。
死んでもいいかと思ってた。
どこで野たれ死んでも良いんだし、死んでいいかと思った。
「なにやってんだ、あんたらーっ」
やけに威勢のよい、女の子の声がした。みたらまだ女子高生なのに、糞ガキどもに辞めろって怒鳴りつけてる。
よく見れば少し震えてるみたいだ。
こんな女の子でも勇気を出せるのに、なにやってんだ、俺。
俺は余計に惨めになった。
全てが全て、俺は糞だと思った。俺は居た堪れなくなり、ガキ共の手を振り切り逃げ出したんだ。
この場に居たくない。もう何処にも居たくない、ただそれだけだった。
でもさ、その後が笑える。土手上まで疾走ったら、トラックに突っ込んで跳ねられちまった。
ほんと馬鹿だ。俺は宙を飛んで、地面に叩きつけられた。そこで俺の意識は消えた。
思い出すと嫌になってくる。我ながら碌なもんじゃない。クソみたいな自分に嫌気がさす。
だから初めて女神にあった時、女神に叱りつけられ、チートもギフトもなにも貰えず、前世の記憶を持ったまま転生すると言われた時、俺はやり直すことを決意した。
折角貰った新しい人生、記憶が残っているのは、前世への贖罪と思うことにした。
今度こそ、何事にも真面目で、親思いの人間になるんだ。
だからわずか4年間だけど、親を喜ばせようと頑張った。親を悲しませることはしないと、一生懸命にしてたつもりだ。
だけどなんでだよ。
まだ親孝行なんて殆どしてないのに、なんで死ぬんだよっ。
という沸々とした自身への怒りと、自然の不合理さはあったけど、そもそも自然現象じゃ仕方がない。俺はそういう運のない運命《さだめ》だったんだ。
そう思うしか無かった。
だけどさ。
「ご、ごめん、間違えた。」
それはどういう意味です、女神様。
「えと、意味がわからないんですが。」
天使のような姿をした女神様に尋ねた。ぶっちゃけ意味が不明、イミフなんですけど。
俺の転生が間違ってた?前世の記憶もってたのが間違い?
「えっとね……」
白い玉座の前で、女神様は頬を赤らめて、なんかもじもじしている。
「えーと、なんかぼそぼそ云われても解らないんすけど。」
「えっとね……」
まだもじもじして、モゴモゴと小声で云ってる。
「すいません、はっきり言って下さい。俺の転生は間違いだったんですか?」
「いやいやいやいや、ごめ~ん、雷落とす相手をね………間違えちゃった?てへっ。」
──え?
雷落とされたよりも固まりました。
意味解らないっす。どういうこと、相手を間違えた?
え?
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
「えとね~、あの雷はあたしが落としたんだけどぉ~」
は?
それ、どういう事っすか?
「有る女の子とに~起こしてね?って頼まれたから、お目覚めの雷のつもりだったんだ~、でもね~、ちょっとばかり相手をミスして設定しちゃったかな~。あはは、許してね?」
小首を傾げて舌をだして、女子高生ライクに可愛く見せてんじゃない。
あの雷は自然のものじゃないのか!
女神、てめえの仕業か!
しかも落とす相手を間違えたぁ?
お目覚めの雷~~、
なんじゃそらぁぁ!
ふざけんじゃねぇぞーーっ!
許せるわけねーだろが、この人殺しぃ!!
最悪じゃねーか、この人殺し女神!!
一度死んだときに、初めてお前に会った時だ、おぼえてるかぁ!
俺は転生とか聞いてよ、ぶっちゃけ喜んだ。
ああ、確かに喜んだ。
まだヒキニートの屑な精神構造引きずってたよ。
死んで女神様に会うとか、これぞまさに転生って奴だと。
引き篭ってニートして、嫌ってほど読んだネット小説やらラノベやらに書かれていたからな。それがホントにあるってことだし、こういう時はチートな能力とかスキルとか与えられて、転生人生でヒャッハーできるってのがパターンだよな。
俺にも運が向いてきたって、死んだことを感謝したよ。
スキルサイコー、チートサイコー、とかいって勇者になってハーレム造ってってね。
だけど女神ぃ、お前あんとき言ったよな。
『前世で碌な事してないのに、な~に甘えてんの、ちっとはマトモな事してから言え』
と。
テメエあん時は、俺が碌なことしてない、屑みたいな人生だったから、なんのチートも持たせずに生まれ変わらせたんだよな。
ああ、俺はあんとき、あんたの言葉でハンマーで殴打されたように、全てを悟ったよ。
生まれ変わっても屑は屑だってな。糞ニートで親不孝で、とんでもない馬鹿だと。
だからこそ、今度はちゃんとやろう、そう思った。
赤ん坊として生まれて、親がどれだけ喜んでいるか、どれだけ俺のことを愛してくれているか。
学んだよ。
きっと前世の俺のオヤジもお袋も、こんなふうに、こんなにも喜んで、愛してくれてたんだって。
俺は親からの愛を受け取り、本当に生まれ変わったんだ。
それに頑張れば、チートやギフトなんて無くても、きっとまともな人生を送れる、そう思った。
だからそれはもういい。
俺はお袋や親父に喜んでもらおうと、受けた愛情のぶんだけ、一生懸命やったぞ。前世での不出来を取り返すつもりで、前世の親を不幸にしちまった分だけ、幼いながらに頑張ったぞ。
なのにお前、なんでこんな事になるんだよ。
雷落とす相手を間違えただぁぁぁっ!
ボケァァァァァァっ!
ふざけろふざけろ。このドジ女神ィィ!!!
俺は女神にありとあらゆる暴言を吐きつづけた。
「だからぁ今回は無かったことにするから~♪ノーカン、ノーカンねっ!」
は?
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俺は転生者だ。
日本で35年生きて、死んで、そして新しい世界で4歳で死んだ。
最初に死んだのは20x6年の日本での事だ。
当時俺は35歳になってもまともに仕事もせず、部屋に引き篭ってゲームに呆けてたんだ。
所謂引き籠りの無職、ヒキニートってやつだ。
そうなると親との確執がすげーすげー。お袋は下手に出まくって、俺の我儘を聞いてくれるのだが、親父には毎日怒鳴られてた。
時には殴られもしたけど、なんだろな、結局親の思い通りになりたくない、なんてくだらねえこと言って、俺は搾取される側にはならないとか、糞みたいな屁理屈で武装してた。
糞は自分だってのは解ってた。
どんな理論武装したって、結局俺は生きた産業廃棄物だったんだよな。
偶に外にでては俺と同質の奴に絡まれ、喧嘩してフクロにされたり、警察に捕まったり。何度も親父やお袋に頭を下げさせた。
ヒキニートやって食わしてもらってて、迷惑掛けて、挙句に……今思うと自分を殺したくなる。そうだよな、とっとと自分で自分を殺せばよかった。でも怖かった。ただそれだけだ。
ある日、親父に髪を引っ掴まれて、外にほっぽり出された。親父は涙を流しながら俺に、出て行けと言った。
お袋が居間で冷たくなってたそうだ。
そういえばサイレンやら何やらで、やけに煩かったなと思ったが、そういうことか。
クモ膜下出血だったらしい。
親父が仕事から帰ってきて、見つけたときには既に冷たくなっていた。
ははは……知ら無かった。やけに飯が遅いと思いながら、ゲームしてたわ。
もしかしたら俺が気づいていれば、お袋は死なずに済んだのかもしれない。俺が殺したのかもしれない、いや俺が……
俺がお袋を殺したんだ。
幾ばくかの金を叩きつけられ、俺は家を追い出された。
「お前を育てるのは諦めた。勝手に生きろ、どこで野垂れ死んでも構わん。」
俺は住む場所を失った。
そのあとはまあ、いろいろあって、数日もしたら金も無くなって、腹をすかせて河川敷で寝ていたんだ。
そしたら金髪の糞ガキどもに襲われて、フクロにされた。浮浪者狩りってやつかね。俺、浮浪者じゃねーし、と反論したいけど、もともと腕力ないし、腹減って力がでねー。
ボコボコにされて痛くて辛くてこのまま死ぬのかと思った。
死んでもいいかと思ってた。
どこで野たれ死んでも良いんだし、死んでいいかと思った。
「なにやってんだ、あんたらーっ」
やけに威勢のよい、女の子の声がした。みたらまだ女子高生なのに、糞ガキどもに辞めろって怒鳴りつけてる。
よく見れば少し震えてるみたいだ。
こんな女の子でも勇気を出せるのに、なにやってんだ、俺。
俺は余計に惨めになった。
全てが全て、俺は糞だと思った。俺は居た堪れなくなり、ガキ共の手を振り切り逃げ出したんだ。
この場に居たくない。もう何処にも居たくない、ただそれだけだった。
でもさ、その後が笑える。土手上まで疾走ったら、トラックに突っ込んで跳ねられちまった。
ほんと馬鹿だ。俺は宙を飛んで、地面に叩きつけられた。そこで俺の意識は消えた。
思い出すと嫌になってくる。我ながら碌なもんじゃない。クソみたいな自分に嫌気がさす。
だから初めて女神にあった時、女神に叱りつけられ、チートもギフトもなにも貰えず、前世の記憶を持ったまま転生すると言われた時、俺はやり直すことを決意した。
折角貰った新しい人生、記憶が残っているのは、前世への贖罪と思うことにした。
今度こそ、何事にも真面目で、親思いの人間になるんだ。
だからわずか4年間だけど、親を喜ばせようと頑張った。親を悲しませることはしないと、一生懸命にしてたつもりだ。
だけどなんでだよ。
まだ親孝行なんて殆どしてないのに、なんで死ぬんだよっ。
という沸々とした自身への怒りと、自然の不合理さはあったけど、そもそも自然現象じゃ仕方がない。俺はそういう運のない運命《さだめ》だったんだ。
そう思うしか無かった。
だけどさ。
「ご、ごめん、間違えた。」
それはどういう意味です、女神様。
「えと、意味がわからないんですが。」
天使のような姿をした女神様に尋ねた。ぶっちゃけ意味が不明、イミフなんですけど。
俺の転生が間違ってた?前世の記憶もってたのが間違い?
「えっとね……」
白い玉座の前で、女神様は頬を赤らめて、なんかもじもじしている。
「えーと、なんかぼそぼそ云われても解らないんすけど。」
「えっとね……」
まだもじもじして、モゴモゴと小声で云ってる。
「すいません、はっきり言って下さい。俺の転生は間違いだったんですか?」
「いやいやいやいや、ごめ~ん、雷落とす相手をね………間違えちゃった?てへっ。」
──え?
雷落とされたよりも固まりました。
意味解らないっす。どういうこと、相手を間違えた?
え?
えええええええええええええええ
えええええええええええええええ
「えとね~、あの雷はあたしが落としたんだけどぉ~」
は?
それ、どういう事っすか?
「有る女の子とに~起こしてね?って頼まれたから、お目覚めの雷のつもりだったんだ~、でもね~、ちょっとばかり相手をミスして設定しちゃったかな~。あはは、許してね?」
小首を傾げて舌をだして、女子高生ライクに可愛く見せてんじゃない。
あの雷は自然のものじゃないのか!
女神、てめえの仕業か!
しかも落とす相手を間違えたぁ?
お目覚めの雷~~、
なんじゃそらぁぁ!
ふざけんじゃねぇぞーーっ!
許せるわけねーだろが、この人殺しぃ!!
最悪じゃねーか、この人殺し女神!!
一度死んだときに、初めてお前に会った時だ、おぼえてるかぁ!
俺は転生とか聞いてよ、ぶっちゃけ喜んだ。
ああ、確かに喜んだ。
まだヒキニートの屑な精神構造引きずってたよ。
死んで女神様に会うとか、これぞまさに転生って奴だと。
引き篭ってニートして、嫌ってほど読んだネット小説やらラノベやらに書かれていたからな。それがホントにあるってことだし、こういう時はチートな能力とかスキルとか与えられて、転生人生でヒャッハーできるってのがパターンだよな。
俺にも運が向いてきたって、死んだことを感謝したよ。
スキルサイコー、チートサイコー、とかいって勇者になってハーレム造ってってね。
だけど女神ぃ、お前あんとき言ったよな。
『前世で碌な事してないのに、な~に甘えてんの、ちっとはマトモな事してから言え』
と。
テメエあん時は、俺が碌なことしてない、屑みたいな人生だったから、なんのチートも持たせずに生まれ変わらせたんだよな。
ああ、俺はあんとき、あんたの言葉でハンマーで殴打されたように、全てを悟ったよ。
生まれ変わっても屑は屑だってな。糞ニートで親不孝で、とんでもない馬鹿だと。
だからこそ、今度はちゃんとやろう、そう思った。
赤ん坊として生まれて、親がどれだけ喜んでいるか、どれだけ俺のことを愛してくれているか。
学んだよ。
きっと前世の俺のオヤジもお袋も、こんなふうに、こんなにも喜んで、愛してくれてたんだって。
俺は親からの愛を受け取り、本当に生まれ変わったんだ。
それに頑張れば、チートやギフトなんて無くても、きっとまともな人生を送れる、そう思った。
だからそれはもういい。
俺はお袋や親父に喜んでもらおうと、受けた愛情のぶんだけ、一生懸命やったぞ。前世での不出来を取り返すつもりで、前世の親を不幸にしちまった分だけ、幼いながらに頑張ったぞ。
なのにお前、なんでこんな事になるんだよ。
雷落とす相手を間違えただぁぁぁっ!
ボケァァァァァァっ!
ふざけろふざけろ。このドジ女神ィィ!!!
俺は女神にありとあらゆる暴言を吐きつづけた。
「だからぁ今回は無かったことにするから~♪ノーカン、ノーカンねっ!」
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