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<M12> 勝負の行方
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††
アリスは俺に掌を向けたかと思うと、なにか透明な物が放射された。途端に空間が歪んだ気がした。なんか魚眼レンズとかで景色を見たように。
魔法を使ったのかと思ったが違う。ソレは一気に距離を詰めて俺の身体にぶつかった。途端に俺の身体は錐揉みしながら弾き飛ばされ、地面に叩き付けられてしまった。
「ぐはぁ、なんちゅう……」
あれは風圧だ。風を操り暴風の塊を俺に叩きつけたんだ。解ってはいたけど、こうも自在に自然の力を操るなんて、大したもんだ。こいつもしかして俺の天敵かも。
だがそんなこと構ってられない、アリスが俺に向けて滑空してきた。もちろん剣先を俺に向けて。
「避けないとコレで終わり、生き返るところを私にみせてよっ!」
この馬鹿、マジで俺を殺す気だ!死なないけどな!
俺に止めを刺しに滑空してくるアリス、このままじっとしてれば剣を突き刺されるかな。いやそれどころじゃないな。すげえ魔力が込められている。あんなもんで刺されたら、いくら俺の身体でもただじゃすまない。下手すりゃ吹っ飛んじまうだろう。
「この馬鹿野郎!」
と相手が皇女だってのも構わず怒鳴りつけながら、身体を硬質化し手に魔力を込める。
俺に向けられる剣に向けて、拳を向けた。
ドドドドドーーーーンッ
強烈な魔力爆発が起こり、白い閃光で俺とアリスが包まれる。暴風のような爆風が辺りを襲った。
周囲の騎士達からどよめきが奔った。そりゃそうだ、爆風が収まった中心点、そこにはマジかコレと思うほどでかい穴が空いたんだから凄い。
俺の爆裂拳とアリスの剣がぶつかり、スケルトンドラゴンを倒した時ほどの爆発が起きたんだ。つまりアリスも凄まじい魔力を剣に込めていたってことだ。
互いの魔力はほぼおなじ位って感じか。
「あははははは、やるじゃ無いっ!でもまだだぁぁぁっ」
まるで悪魔が笑っているようだ。目が爛々として、楽しくて仕方ない、そんな感じだろうか。誰か止めてくれ……
アリスの手が横薙ぎにされると、凄まじい暴風が荒れ狂い、稲妻が降り注ぎ、地面が次々に爆散していく。
コレには見ている騎士達も堪らず、スケルトンドラゴンの時の様に、避難を開始した。クリフやツェザーリ達も同様だ。さっきはアリスが結界を張ってくれたが、今は守ってくれるものが居ないのだ。
雷鳴が轟き稲妻が奔り、暴風が吹き荒れる中、嬉々とした笑顔でアリスがこちらに向かってくる。
俺は剣を構え、こうなったら最後の最後、奥の手を使うことにした。あまり使いたくはないのだけど、仕方ない。剣技はあちらが上だし、さらに自然を自在に使役するとなれば、こちらに残る手立てはこれしかない。
「はぁぁぁぁっ!」
体中に魔力を巡らし、迸らせた。
身体強化、もっともオーソドックスな手法、だがコレでいい。
身体強化は、魔法の中でも操作系とも補助系とも分類される魔法だが、一般的に戦士や騎士などの白兵戦を得意とする者達でも使用できる。
使い方が単純というより、少ない魔力で発動できるからだ。もちろん使える魔力が多ければ多いほど強化可能だが、その分反動も酷くなるので、適度な強化というのが必要だ。
強くなりたいばかりにありったけの魔力を注ぎこみ、数十倍の強化を行ったとしても、結果はあまりお薦めできるものではない。
強化中はそれを維持するために、強化の度合いに応じて魔力が消耗するし、そもそも肉体強化を無理に行えば、あとから飛んでもない反動がくる。
強化しすぎれば、肉体の損壊と魔力の枯渇で、最悪再起不能になることも有るからだ。だから普通はそれをしない。
しかし俺の場合はどうかというと、有り余る魔力があり、また破壊されても再生する肉体を持っている。それになにしろ最悪の事が起きても、俺は死なないからな。
つまり──
俺の身体が輝き始める。それはまるでどっかの超野菜人みたいではある。だが輝きは金色じゃなくて白銀なんだけどな。
アリスの目が見開いた。
俺が動く、超高速の動きで持って、アリスの横に回りこみ剣を打ち込んだ。咄嗟に剣で受け止めるアリス、その瞬間凄まじい閃光が放たれ、魔力が暴発したように爆発した。
爆発の衝撃波で吹き飛ばされる俺とアリス、俺は衝撃波を受けながらも、地面に踏ん張りアリスを見つめる。アリスは結界を張り防御したようだ。あの一瞬で防御結界を張るとは流石だ。
俺は再びアリスに斬りかかり、アリスもまた俺に向けて斬りかかる。再び互いの剣が交わされ、魔力爆発が起こり衝撃波が拡散する。
離れていてもなお襲い来る衝撃波と爆風に、騎士達は悲鳴を上げながらさらに俺たちから距離を取ろうとしていた。
アリスの表情から笑みが消えた。額に汗が浮かんでいる。俺の動きから察したのだろう、遊びの時間が終わったことを。
「へぇ、やるじゃ無い。」
アリスが剣から片手を離して、プラプラと振った。どうやら流石に爆裂剣《エクスプロージョンブレード》を何度も受けて手が痺れたようだ。
「どういたしまして♪」
俺はどんなもんだと、ドヤ顔でニヤついた。だが俺の余裕もそこまでだ。
「いいわ、本当の本気で、殺してあげる。」
「ちょまて、お前なにそこまで本気になってんだよっ!」
「え~、だって本気で戦える相手なんて居ないし。いい機会だから、天臨王の能力が何処まで使えるか実験。」
まてこら。俺を相手に実験とかいうなっ!
俺の言葉など無視されて、再び二人の剣戟が始まる。
自然を武器にするのは辞めたのか、アリスは剣だけで俺に仕掛けてきた。
こちらも肉体強化してるんだ、負けるわけがない、と思った時期もありました。
アリスは俺に追随してくる。後先考えないほどに強化された俺の身体能力に、あっさりとついてきやがった。目に余裕はなさそうだが、まだ唇が微かに笑っている。
剣の腕はアリスが勝る。それを強引に身体強化された肉体を駆使した高速な動きで、俺とアリスはどうにかイーブンといったところか。
正直俺はかなり焦っている。なんせ通常使う10数倍の魔力で強化したんだ。現時点で安定的に戦えるギリギリの強化だ。それも再生能力を見越しての強化だ。
これ以上強化したら、活動できる時間が大幅に短くなるだろう。だがそれでどうにかイーブンってのはどうよ。
しかもよくよく見て解るけど、アリスにはまだ余裕がある。俺の動きについてきているし、爆裂剣まで受け流され始めた。
なるほどもしかしたら、アリスはまだ伸び代に余裕があるのではないか。今まさに成長の途中なのではないか。俺の方はもう一杯いっぱいだってのに、こいつどれだけバケモノなんだ。
やっぱこんなチートが欲しかったぜ。
だけど結局アリスの本気の本気は見せること無く試合は終わった。途中でマーク将軍が止めに入ったからだ。いやマーク将軍だけじゃなくて、クリフやツェザーリ達も止めに入ってくれた。
ヘタしたら巻き込まれて死んじまうってのに、よくぞまあ一瞬の間隙をついて飛び込んできてくれたもんだ。アリスの剣の前に飛び出たクリフと、やたらでかい怒鳴り声のマーク将軍に感謝だ。
何しろもう1時間近く戦っていたもんだから、飽きたのか。ああ違いますか、地面やら何やら色々偉いことになってるから、これ以上は危険だと判断したのね。
アリスは不服そうだったけど、俺はさっさと辞めちまった。なんせ魔力だって残り少ないしね。5倍●王拳ってわけじゃないが、かなり魔力を消費してたからさ。枯渇ってわけじゃないが、長引けば長引くほど俺には不利だ。しかもお相手は絶賛成長中と来てる。
勝てるわけねーだろ!
「いや~~アリスの本気を見れないのは残念だ~。」
なんて言いながら、「ちょっとまてぇ、ジュンヤぁ、逃げるなぁ!」と怒鳴るアリスの声を背に、俺はそそくさルミとコッペルを連れて逃げていった。
戦闘狂の遊び相手なんて、これ以上はゴメンだよ。
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アリスは俺に掌を向けたかと思うと、なにか透明な物が放射された。途端に空間が歪んだ気がした。なんか魚眼レンズとかで景色を見たように。
魔法を使ったのかと思ったが違う。ソレは一気に距離を詰めて俺の身体にぶつかった。途端に俺の身体は錐揉みしながら弾き飛ばされ、地面に叩き付けられてしまった。
「ぐはぁ、なんちゅう……」
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「この馬鹿野郎!」
と相手が皇女だってのも構わず怒鳴りつけながら、身体を硬質化し手に魔力を込める。
俺に向けられる剣に向けて、拳を向けた。
ドドドドドーーーーンッ
強烈な魔力爆発が起こり、白い閃光で俺とアリスが包まれる。暴風のような爆風が辺りを襲った。
周囲の騎士達からどよめきが奔った。そりゃそうだ、爆風が収まった中心点、そこにはマジかコレと思うほどでかい穴が空いたんだから凄い。
俺の爆裂拳とアリスの剣がぶつかり、スケルトンドラゴンを倒した時ほどの爆発が起きたんだ。つまりアリスも凄まじい魔力を剣に込めていたってことだ。
互いの魔力はほぼおなじ位って感じか。
「あははははは、やるじゃ無いっ!でもまだだぁぁぁっ」
まるで悪魔が笑っているようだ。目が爛々として、楽しくて仕方ない、そんな感じだろうか。誰か止めてくれ……
アリスの手が横薙ぎにされると、凄まじい暴風が荒れ狂い、稲妻が降り注ぎ、地面が次々に爆散していく。
コレには見ている騎士達も堪らず、スケルトンドラゴンの時の様に、避難を開始した。クリフやツェザーリ達も同様だ。さっきはアリスが結界を張ってくれたが、今は守ってくれるものが居ないのだ。
雷鳴が轟き稲妻が奔り、暴風が吹き荒れる中、嬉々とした笑顔でアリスがこちらに向かってくる。
俺は剣を構え、こうなったら最後の最後、奥の手を使うことにした。あまり使いたくはないのだけど、仕方ない。剣技はあちらが上だし、さらに自然を自在に使役するとなれば、こちらに残る手立てはこれしかない。
「はぁぁぁぁっ!」
体中に魔力を巡らし、迸らせた。
身体強化、もっともオーソドックスな手法、だがコレでいい。
身体強化は、魔法の中でも操作系とも補助系とも分類される魔法だが、一般的に戦士や騎士などの白兵戦を得意とする者達でも使用できる。
使い方が単純というより、少ない魔力で発動できるからだ。もちろん使える魔力が多ければ多いほど強化可能だが、その分反動も酷くなるので、適度な強化というのが必要だ。
強くなりたいばかりにありったけの魔力を注ぎこみ、数十倍の強化を行ったとしても、結果はあまりお薦めできるものではない。
強化中はそれを維持するために、強化の度合いに応じて魔力が消耗するし、そもそも肉体強化を無理に行えば、あとから飛んでもない反動がくる。
強化しすぎれば、肉体の損壊と魔力の枯渇で、最悪再起不能になることも有るからだ。だから普通はそれをしない。
しかし俺の場合はどうかというと、有り余る魔力があり、また破壊されても再生する肉体を持っている。それになにしろ最悪の事が起きても、俺は死なないからな。
つまり──
俺の身体が輝き始める。それはまるでどっかの超野菜人みたいではある。だが輝きは金色じゃなくて白銀なんだけどな。
アリスの目が見開いた。
俺が動く、超高速の動きで持って、アリスの横に回りこみ剣を打ち込んだ。咄嗟に剣で受け止めるアリス、その瞬間凄まじい閃光が放たれ、魔力が暴発したように爆発した。
爆発の衝撃波で吹き飛ばされる俺とアリス、俺は衝撃波を受けながらも、地面に踏ん張りアリスを見つめる。アリスは結界を張り防御したようだ。あの一瞬で防御結界を張るとは流石だ。
俺は再びアリスに斬りかかり、アリスもまた俺に向けて斬りかかる。再び互いの剣が交わされ、魔力爆発が起こり衝撃波が拡散する。
離れていてもなお襲い来る衝撃波と爆風に、騎士達は悲鳴を上げながらさらに俺たちから距離を取ろうとしていた。
アリスの表情から笑みが消えた。額に汗が浮かんでいる。俺の動きから察したのだろう、遊びの時間が終わったことを。
「へぇ、やるじゃ無い。」
アリスが剣から片手を離して、プラプラと振った。どうやら流石に爆裂剣《エクスプロージョンブレード》を何度も受けて手が痺れたようだ。
「どういたしまして♪」
俺はどんなもんだと、ドヤ顔でニヤついた。だが俺の余裕もそこまでだ。
「いいわ、本当の本気で、殺してあげる。」
「ちょまて、お前なにそこまで本気になってんだよっ!」
「え~、だって本気で戦える相手なんて居ないし。いい機会だから、天臨王の能力が何処まで使えるか実験。」
まてこら。俺を相手に実験とかいうなっ!
俺の言葉など無視されて、再び二人の剣戟が始まる。
自然を武器にするのは辞めたのか、アリスは剣だけで俺に仕掛けてきた。
こちらも肉体強化してるんだ、負けるわけがない、と思った時期もありました。
アリスは俺に追随してくる。後先考えないほどに強化された俺の身体能力に、あっさりとついてきやがった。目に余裕はなさそうだが、まだ唇が微かに笑っている。
剣の腕はアリスが勝る。それを強引に身体強化された肉体を駆使した高速な動きで、俺とアリスはどうにかイーブンといったところか。
正直俺はかなり焦っている。なんせ通常使う10数倍の魔力で強化したんだ。現時点で安定的に戦えるギリギリの強化だ。それも再生能力を見越しての強化だ。
これ以上強化したら、活動できる時間が大幅に短くなるだろう。だがそれでどうにかイーブンってのはどうよ。
しかもよくよく見て解るけど、アリスにはまだ余裕がある。俺の動きについてきているし、爆裂剣まで受け流され始めた。
なるほどもしかしたら、アリスはまだ伸び代に余裕があるのではないか。今まさに成長の途中なのではないか。俺の方はもう一杯いっぱいだってのに、こいつどれだけバケモノなんだ。
やっぱこんなチートが欲しかったぜ。
だけど結局アリスの本気の本気は見せること無く試合は終わった。途中でマーク将軍が止めに入ったからだ。いやマーク将軍だけじゃなくて、クリフやツェザーリ達も止めに入ってくれた。
ヘタしたら巻き込まれて死んじまうってのに、よくぞまあ一瞬の間隙をついて飛び込んできてくれたもんだ。アリスの剣の前に飛び出たクリフと、やたらでかい怒鳴り声のマーク将軍に感謝だ。
何しろもう1時間近く戦っていたもんだから、飽きたのか。ああ違いますか、地面やら何やら色々偉いことになってるから、これ以上は危険だと判断したのね。
アリスは不服そうだったけど、俺はさっさと辞めちまった。なんせ魔力だって残り少ないしね。5倍●王拳ってわけじゃないが、かなり魔力を消費してたからさ。枯渇ってわけじゃないが、長引けば長引くほど俺には不利だ。しかもお相手は絶賛成長中と来てる。
勝てるわけねーだろ!
「いや~~アリスの本気を見れないのは残念だ~。」
なんて言いながら、「ちょっとまてぇ、ジュンヤぁ、逃げるなぁ!」と怒鳴るアリスの声を背に、俺はそそくさルミとコッペルを連れて逃げていった。
戦闘狂の遊び相手なんて、これ以上はゴメンだよ。
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