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<M11> エキジビションマッチ
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††
武器戦闘では、アリスがとんでもない実力を魅せつけたし、魔法での戦闘では俺が実力差?を魅せつけたわけだから、俺たち以上の戦士は事実上居ないということになるわけだ。
つまり俺たちはこの要塞で最強という事になる。
しかしどうにも疑問だ。アリスは確かに強い。身体能力、剣技、どれをとっても人間の枠を超えている。だからといってこの要塞の最強戦士たちが、ああも簡単に倒されるのだろうか。
寧ろ俺と戦った魔道士たちのほうが強くなかろうか。
俺が訝しげに考え込んでいると、アリスが近づいてきた。
「油断していた、いや手を抜いていたのだろう。」
アリスの言葉に、俺はそのまま納得した。相手が女、しかもグランダム王国の皇女だ。
いくら第三とは言え、また武勇に誉れ高いと噂があるとはいえ、下手に本気で相手をして傷つけたリしたとあれば、後々問題になる。
故に脳筋で考えなしの第一師団千人隊長アレックス=エンポリオを除き、他の3人は適度な素振りで相手をした。そういうことだろう。アリスもそれをわかっていたのか、それなりに手加減をしたという。
手加減であれかよ。結構重症な奴も居たぞ。
「問題ない、治癒薬ですぐに治る程度の傷だ。」
ああ、そですか。
マリアの相手をした第六師団特戦隊長ロンサムといったか、あの人もかなりの腕前だった。アリスを見てそれに続くマリアもかなりできると予想したのか、油断なくマリアの力量に見合った闘いをしていた。
単純に言えば彼等実力者達は、この勝負は俺たちの力量を測っていた、それだけだ。もっとも俺の場合だけ完全に本気だったと思うけど。
最初の中級魔法で俺に魔法が有効じゃないと判断して、上級に切り替えても全く通じない、そこでゴーレムを出してみた。ここまでで魔道士としては勝負がつくと思っていたのだろう。
魔法無効のような能力《スキル》を持つ敵ならば、物理攻撃には弱い、と考えたのだろう。だがそれすらも通じず、ブチ切れてあのバケモノを呼び出したわけだ。
実際ゴーレムを倒した時に使った爆裂拳《インパクトスマッシュ》は、骸竜には衝撃を与える程度しか通じなかったし、もし俺の実力がそこまでだったら、やられていただろう。
対炎龍用骸竜《スケルトンドラゴン》は、かなりヤバイ相手だった。一匹だからなんとかなったが、2匹、いや3匹来たら、俺もやばかったな。
そしてそれはアリスも同意だった。
「そ、結局本気で戦えたのは貴方だけ。なんだか物足りないわ。」
アリスも呆れたように言った。そしてジロリと俺を見た。
「あたしとやらない?」
ニッコリと最高の笑顔を俺に向けるアリス。言葉はとってもエロいんだけど、笑顔の中に恐ろしい闘気が満ち溢れている。
まて、冗談じゃねぇぞ。
「貴方の際限ないほどの魔力、そして強固な肉体。いい勝負になると思うけど。」
ちろりと舌を出して唇を舐める。ああ、こいつやっぱ戦闘狂だ。
「ジュンヤがんばーっ!」
まてルミ。俺はその気は無いから。無いったら無いからな、このバケモノと戦う気なんて!
「おお、ぜひ見てみたいものですな!」
おい、将軍!
エキジビションマッチ。
まじかぁぁぁぁ!
なんで俺がアリスと対峙してるんだよぉぉぉ!
なんだか騎士達が異様に湧き上がっているし、さっきやられた奴らも見てるし、クリフとツェザーリもなんか興味津々。ルミとコッペルなんてきゃーきゃーくーくー大騒ぎしてる。
んで対峙するアリスはというと、満面の笑みを浮かべて闘気を放ってやがる。
勘弁してくれよ、あれマジだろ。マジモードだろ。
互いに模擬剣で、雷神剣を持出して来なかっただけ、まだいいか。雷神剣は流石にクリフに止められていたからな。
多分クリフは俺の為に止めたんじゃなくて、周囲の騎士や自分に被害が来ないためだろう。
「ジュンヤ~~。私の本気、受け止められるの、貴方だけだから~、えへっ。」
ぶりっこするなぁ!てめぇ目が怖いんだよ!!
あああああああ、怖い、まじ怖い、死なないと解ってても怖い。
でもふと考える。
ここでいい勝負して、剰えぶっ飛ばしたらどうなるのかな。
皇女を平民がぶっ飛ばす。
反逆罪とかいわれないか?いやその前に相手は森羅万象を操る天臨王だぞ。勝てるのかよっ!
開始の合図と共に身体強化を掛けて、一気に魔力を全身に行き渡らせた。スケルトンドラゴンと戦った時と同程度、それでも不安が残るが、とりあえずこれで様子見だ。
アリスが模擬剣を片手に跳躍した。途端に騎士達が騒然となった。なにしろアリスが空中を地面が有るかのように奔るのだ。初めて見たやつはぶったまげるわな。
以前に聞いたがあれは天臨王の持つ能力だそうだ。『天の理地の理を知り森羅万象を知る者』だそうで、森羅万象を知ることで自在に操る事が可能となるとか。
まるで神様だね。無敵なんじゃね?
それでもアリスが云うには、まだ全てを操れるわけではないそうだ。
「このチート野郎!!」
「失礼な、私は可憐な乙女だっ!」
言いながら空を駆けるアリスが、剣を天に掲げた。あ、まずい。
俺は咄嗟に判断して、横っ飛びになる。途端に俺が立っていた場所に雷撃が落ちた。最初は魔法かと思ったが違う、これも天臨王の能力だ。
自然を操り、雷を発生させやがった。なんちゅーデタラメ。自然発生の雷なんてもろに受けたら焦げちまうだろ。
「この卑怯者~~っ」
「はははは、どうした、さっきのように向かってきてみろ。」
この~~。ちょっとムカついた、いやかなりムカついた。魔力の放出方向を制御して、瞬時に爆発させて推進力を得る。後は方向制御するだけだ。
俺の身体が文字通り爆発を起こして空間に舞い上がる。もちろんアリスの方向へ向けてだ。
ついで魔力を流しこんだ模擬剣で斬りかかった。それを予測してアリスも打ち返してくる。
互いの剣が触れた瞬間に凄まじい魔力爆発が起こり、2人の体が弾け飛んだ。俺は爆風で飛ばされくるくると回転するが、うまく魔力で制御して態勢を立て直しアリスの方へと視線を向けるが、その途端にアリスがものすごい勢いで斬りこんできた。
どうやら爆発の瞬間に結界を張ったか、または風を操り爆風を制御したのか、ともかくデタラメな奴だ。
鋭い打ち込みを剣で受け流し、身体を反転させて斬りこむ。途端に蹴りが腹に食い込んだ。
「げふっ」
おま女のクセになんちゅー強烈な、中身が出るって。
またくるくると回転しながら宙を転がる。当然アリスが追ってくるわけだが、今度は襲いかかる剣を受け止めずに逃げた。それを更に空を駆けて追随するアリス。
完全な空中戦。互いにぶつかり、その都度に白い閃光が煌き爆風が辺りを吹き荒れた。
時折稲妻が奔り、時折魔力爆発が起こり、俺とアリスの打ち合いは中々に決着が着かないでいた。
アリスは全力を出してるのかわからないが、何しろ嬉々としている。俺はかなり必死だ。
超級を叩き込んでやろうかと思ったが、何しろスケルトンドラゴンと戦った後だ。魔力だってそれほど残っているわけじゃない。ここで超級を撃ちこめば一気に枯渇してしまうだろう。
それに下手に打ち込んでも、アリスの場合結界を張って逃れそうにも思える。ホントはここで打ちのめして、俺様ツエーッってしたいところだだけどこりゃ無理だ。
凄まじい速度で成される剣戟、やっぱりアリスの腕は相当なものだし、俺なんて遥かに凌駕している。それでもなんとか必死に喰らいつこうとするのだけど、結構ヤバイ。
俺の身体を掠る模擬剣、魔力が込められているから模擬剣とは言え、凄まじい衝撃が走る。流石に痛みというほどじゃないが、俺の身体を護る防具はあっさりと削られ腕や脚には剣戟の後が筋の様に刻まれていく。
おいおいおい、これでもかなり身体強化してるんだぞ、防御力も最高なのに、何こいつ。これが真剣だったら絶対ヤバイっしょ。
いくら再生能力があるとはいえ、心が挫けそうだ。
「ジュンヤ、そろそろ終わりにするよ?」
アリスがやたらと嬉しそうに叫んだ。ちょっとまて、何やらかす気だっ!
††
武器戦闘では、アリスがとんでもない実力を魅せつけたし、魔法での戦闘では俺が実力差?を魅せつけたわけだから、俺たち以上の戦士は事実上居ないということになるわけだ。
つまり俺たちはこの要塞で最強という事になる。
しかしどうにも疑問だ。アリスは確かに強い。身体能力、剣技、どれをとっても人間の枠を超えている。だからといってこの要塞の最強戦士たちが、ああも簡単に倒されるのだろうか。
寧ろ俺と戦った魔道士たちのほうが強くなかろうか。
俺が訝しげに考え込んでいると、アリスが近づいてきた。
「油断していた、いや手を抜いていたのだろう。」
アリスの言葉に、俺はそのまま納得した。相手が女、しかもグランダム王国の皇女だ。
いくら第三とは言え、また武勇に誉れ高いと噂があるとはいえ、下手に本気で相手をして傷つけたリしたとあれば、後々問題になる。
故に脳筋で考えなしの第一師団千人隊長アレックス=エンポリオを除き、他の3人は適度な素振りで相手をした。そういうことだろう。アリスもそれをわかっていたのか、それなりに手加減をしたという。
手加減であれかよ。結構重症な奴も居たぞ。
「問題ない、治癒薬ですぐに治る程度の傷だ。」
ああ、そですか。
マリアの相手をした第六師団特戦隊長ロンサムといったか、あの人もかなりの腕前だった。アリスを見てそれに続くマリアもかなりできると予想したのか、油断なくマリアの力量に見合った闘いをしていた。
単純に言えば彼等実力者達は、この勝負は俺たちの力量を測っていた、それだけだ。もっとも俺の場合だけ完全に本気だったと思うけど。
最初の中級魔法で俺に魔法が有効じゃないと判断して、上級に切り替えても全く通じない、そこでゴーレムを出してみた。ここまでで魔道士としては勝負がつくと思っていたのだろう。
魔法無効のような能力《スキル》を持つ敵ならば、物理攻撃には弱い、と考えたのだろう。だがそれすらも通じず、ブチ切れてあのバケモノを呼び出したわけだ。
実際ゴーレムを倒した時に使った爆裂拳《インパクトスマッシュ》は、骸竜には衝撃を与える程度しか通じなかったし、もし俺の実力がそこまでだったら、やられていただろう。
対炎龍用骸竜《スケルトンドラゴン》は、かなりヤバイ相手だった。一匹だからなんとかなったが、2匹、いや3匹来たら、俺もやばかったな。
そしてそれはアリスも同意だった。
「そ、結局本気で戦えたのは貴方だけ。なんだか物足りないわ。」
アリスも呆れたように言った。そしてジロリと俺を見た。
「あたしとやらない?」
ニッコリと最高の笑顔を俺に向けるアリス。言葉はとってもエロいんだけど、笑顔の中に恐ろしい闘気が満ち溢れている。
まて、冗談じゃねぇぞ。
「貴方の際限ないほどの魔力、そして強固な肉体。いい勝負になると思うけど。」
ちろりと舌を出して唇を舐める。ああ、こいつやっぱ戦闘狂だ。
「ジュンヤがんばーっ!」
まてルミ。俺はその気は無いから。無いったら無いからな、このバケモノと戦う気なんて!
「おお、ぜひ見てみたいものですな!」
おい、将軍!
エキジビションマッチ。
まじかぁぁぁぁ!
なんで俺がアリスと対峙してるんだよぉぉぉ!
なんだか騎士達が異様に湧き上がっているし、さっきやられた奴らも見てるし、クリフとツェザーリもなんか興味津々。ルミとコッペルなんてきゃーきゃーくーくー大騒ぎしてる。
んで対峙するアリスはというと、満面の笑みを浮かべて闘気を放ってやがる。
勘弁してくれよ、あれマジだろ。マジモードだろ。
互いに模擬剣で、雷神剣を持出して来なかっただけ、まだいいか。雷神剣は流石にクリフに止められていたからな。
多分クリフは俺の為に止めたんじゃなくて、周囲の騎士や自分に被害が来ないためだろう。
「ジュンヤ~~。私の本気、受け止められるの、貴方だけだから~、えへっ。」
ぶりっこするなぁ!てめぇ目が怖いんだよ!!
あああああああ、怖い、まじ怖い、死なないと解ってても怖い。
でもふと考える。
ここでいい勝負して、剰えぶっ飛ばしたらどうなるのかな。
皇女を平民がぶっ飛ばす。
反逆罪とかいわれないか?いやその前に相手は森羅万象を操る天臨王だぞ。勝てるのかよっ!
開始の合図と共に身体強化を掛けて、一気に魔力を全身に行き渡らせた。スケルトンドラゴンと戦った時と同程度、それでも不安が残るが、とりあえずこれで様子見だ。
アリスが模擬剣を片手に跳躍した。途端に騎士達が騒然となった。なにしろアリスが空中を地面が有るかのように奔るのだ。初めて見たやつはぶったまげるわな。
以前に聞いたがあれは天臨王の持つ能力だそうだ。『天の理地の理を知り森羅万象を知る者』だそうで、森羅万象を知ることで自在に操る事が可能となるとか。
まるで神様だね。無敵なんじゃね?
それでもアリスが云うには、まだ全てを操れるわけではないそうだ。
「このチート野郎!!」
「失礼な、私は可憐な乙女だっ!」
言いながら空を駆けるアリスが、剣を天に掲げた。あ、まずい。
俺は咄嗟に判断して、横っ飛びになる。途端に俺が立っていた場所に雷撃が落ちた。最初は魔法かと思ったが違う、これも天臨王の能力だ。
自然を操り、雷を発生させやがった。なんちゅーデタラメ。自然発生の雷なんてもろに受けたら焦げちまうだろ。
「この卑怯者~~っ」
「はははは、どうした、さっきのように向かってきてみろ。」
この~~。ちょっとムカついた、いやかなりムカついた。魔力の放出方向を制御して、瞬時に爆発させて推進力を得る。後は方向制御するだけだ。
俺の身体が文字通り爆発を起こして空間に舞い上がる。もちろんアリスの方向へ向けてだ。
ついで魔力を流しこんだ模擬剣で斬りかかった。それを予測してアリスも打ち返してくる。
互いの剣が触れた瞬間に凄まじい魔力爆発が起こり、2人の体が弾け飛んだ。俺は爆風で飛ばされくるくると回転するが、うまく魔力で制御して態勢を立て直しアリスの方へと視線を向けるが、その途端にアリスがものすごい勢いで斬りこんできた。
どうやら爆発の瞬間に結界を張ったか、または風を操り爆風を制御したのか、ともかくデタラメな奴だ。
鋭い打ち込みを剣で受け流し、身体を反転させて斬りこむ。途端に蹴りが腹に食い込んだ。
「げふっ」
おま女のクセになんちゅー強烈な、中身が出るって。
またくるくると回転しながら宙を転がる。当然アリスが追ってくるわけだが、今度は襲いかかる剣を受け止めずに逃げた。それを更に空を駆けて追随するアリス。
完全な空中戦。互いにぶつかり、その都度に白い閃光が煌き爆風が辺りを吹き荒れた。
時折稲妻が奔り、時折魔力爆発が起こり、俺とアリスの打ち合いは中々に決着が着かないでいた。
アリスは全力を出してるのかわからないが、何しろ嬉々としている。俺はかなり必死だ。
超級を叩き込んでやろうかと思ったが、何しろスケルトンドラゴンと戦った後だ。魔力だってそれほど残っているわけじゃない。ここで超級を撃ちこめば一気に枯渇してしまうだろう。
それに下手に打ち込んでも、アリスの場合結界を張って逃れそうにも思える。ホントはここで打ちのめして、俺様ツエーッってしたいところだだけどこりゃ無理だ。
凄まじい速度で成される剣戟、やっぱりアリスの腕は相当なものだし、俺なんて遥かに凌駕している。それでもなんとか必死に喰らいつこうとするのだけど、結構ヤバイ。
俺の身体を掠る模擬剣、魔力が込められているから模擬剣とは言え、凄まじい衝撃が走る。流石に痛みというほどじゃないが、俺の身体を護る防具はあっさりと削られ腕や脚には剣戟の後が筋の様に刻まれていく。
おいおいおい、これでもかなり身体強化してるんだぞ、防御力も最高なのに、何こいつ。これが真剣だったら絶対ヤバイっしょ。
いくら再生能力があるとはいえ、心が挫けそうだ。
「ジュンヤ、そろそろ終わりにするよ?」
アリスがやたらと嬉しそうに叫んだ。ちょっとまて、何やらかす気だっ!
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