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<M04> 出たとこ勝負!
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††
俺の隣でぴょんぴょん跳んで、にこやかに「ひーげ、ひーげ」と笑うルミ。
おま、やめろって相手は将軍なんだから。
俺はルミを抑えようと抱きかかえるが、なんかよっぽど気になるのかジタバタと暴れている。
「失礼ながら、皇女様。この者…達は?」
訝しげに俺とルミをじろりと睨みつけ、次いで俺の頭を見て言葉を一瞬詰まらせた。なんなのかな~、その間は。
「私の友人とその連れにございます。」
アリスも今にも笑いそうなんだが。
「ご友人……ですか。」
将軍、俺の頭の上をじっと見たまま口元がムズムズしてるぞ、おいぃ!
コッペルの威力は絶大だな。
「あ~えっと、ジュンヤって言います。こっちはルミ、俺の頭の奴はコッペルって言います。」
俺がルミを抱きかかえて挨拶するわけだが、将軍は俺に目もくれない。
「あの……」
「っおお、すまんな。ジュンヤ殿と申したか、貴殿はどちらかの騎士なのかな?」
騎士って、えーと。
「将軍、ジュンヤは狩人です。」
アリスが言うと将軍は驚いたような顔をする。そりゃそうだろな。お姫様のお供が大公閣下の子息に辺境伯の嫡男と続いて、いきなり平民なのだ。
名のある貴族に付いている騎士であればともかく、平民がお姫様のお供をするなど、この階級社会じゃ信じられないことだろう。
「………アリス様、この最前線《フロントライン》を守護する師団を預かる師団長を紹介させていただこう。」
あ、無視された。
◇◇
ここファルコンには10の師団があり、1つの師団には数千の騎士が配属されている。全部あわせると数万の数となる。
この師団はそれぞれグランダム王国、エグゾス帝国、神聖アリストラ法国の三大大国からの騎士と、数多の小さな諸国から集まった騎士や傭兵から構成されている。
だいたい出自の同じ騎士や傭兵は同じ師団に配属されるらしい。魔族を殲滅するという目的は同じだが、やはり大昔はそれぞれいがみ合っていた物たちの集まりだから、諍いが起こる事を防止しているとか。
なにしろみんな気が立っているのだから、仕方がない。
紹介された10人の師団長は、第一から第三がグランダム王国出身の師団長で、第四から第六がエグゾス帝国、第七がアリスと法国、第八、第九が小国の連合体。最後の第十師団は、唯一の混成部隊だそうだ。
諍いはないのかと思うのだが、この部隊は基本的に戦場には出ないらしい。戦術兵器の開発を主体とした部隊だそうで、最近では火薬と遠距離砲撃筒を開発し、火薬を詰めた鉄球で魔法防御で覆われた要塞バールに直接攻撃を与えたらしい。
円卓の会議室でそれを聞き、俺とアリスは眼を合わせた。この世界の文明は魔法に依存しているためか、火薬などといった発明はかなり遅れている。
なにしろ火が欲しければ、生活魔法程度を使える人は少なくはない。近くに居なくても火魔法を封じた魔道具がある。それらを使えば十分なのだから、無理にそうした物理的な破壊のための発明をする必要はないはずなのだ。
だからこそこの世界は剣と魔法で血塗られた世界だが、それでも地球よりは大分マシなのだ。
地球では火薬が発明され、ダイナマイトとなり、大量破壊、殺戮がほんの幼女にも出来るようになった。
だがこの世界で大量破壊、大量殺戮を可能とするのは、ほんの一握りの実力者だけなのだから。
それなのに、この戦場では火薬が発明されそれを武器として、破壊のための兵器として使用されている。それは何れ市井に流れていくだろう。
便利な文明の火は、瞬く間に広がっていく。火を起し燃やし、そして破壊する身近な道具は、人を喰らい尽くす業火でもあるのだから。
その結果がどうなるかは、地球で起きている悪夢が実証している。
科学文明の発達による破壊の力は、今は魔族へと向けられているが、何れこの戦乱が終わった時にどうなるのか。
魔族が出現する前は、人同士が争っていたと歴史は語っている。人はまた人同士で殺し合い、そして何れは……
◇◇
さてあれこれと案内された俺達だが、ここからどうやってぬけ出すか、だ。
ツェザーリの連れて来た軍隊はこのまま駐留軍として連合軍に合流する。しかしアリスとクリス、そして俺はあくまでも第三皇女の戦場視察という名目でここに居る。
滞在期間も限られているし、ましてここから抜け出て要塞に向かいなど許されるわけもない。皇女が戦場に行くことなど許されるわけもないのだから。
万が一にも傷ついたり死んだりしたら、それこそ此処を統括管理しているマーク将軍の進退にも関わってくるだろう。
つまり、俺達は非合法に此処を抜けだして要塞に向かう必要があるわけだ。
俺たちはアリスの部屋にて、今後の作戦会議となった。
「考えてみると、結構むちゃくちゃだよな。」
「そんなことわかりきってることでしょ。」
ソファに座ったアリスが、紅茶を飲みつつ、また辛辣な物言いで俺を攻める。なんか溜まってるのか?
「ぬけ出すこと事態は難しくはなかろう。」
クリフが軽く言うが、ほんとにそうか?ファルコンは巨大な城塞都市だ。その各所に兵士が配備されている。そこをこんな人目を引く一行が走り抜けるとでも言うのか。
「先日入ってきた門を抜けて、ぐるりと大回りしていけばよかろう?」
「あんたも馬鹿。」
「ええええっ!」
アリスの一言にクリフが涙目になった。
「バールへと向かう道はすべて封鎖されているのよ。」
「そ、そうなのか。」
「決まってるでしょ。できる限り魔族を大陸へ行かせない。その目的で作られたんだから。猫の子一匹通さない様に、広範囲に結界が張られているのよ。」
なるほどね。あれ、でもそれでも結構魔族が居たよな。
「転移魔法。あの首なし鎧は転移魔法を使っていたから、多分その手の魔法を使える者がいる。それと奴らは翼を持っているわ。如何に強力な結界でも、天空高くを飛ばれたら、無理ね。」
「それじゃ元々意味は無くないか?」
「知らないわよそんなもの。なんか方策をとっているんじゃないの?だからファルコンができる前よりも魔族の出没は減っているらしいし。」
「そ、そうか。」
「少しは勉強してきなさい。」
アリスの叱責に俺もクリフもがっくりとうなだれた。
「アリス様。」
「なに?」
ツェザーリがアリスに声を掛ける。何か妙案でもあるのだろうか。
「駐在する兵士の訓練が四日後にあります。」
「訓練?」
「はい、特にロレッツオ軍については、到着したばかりですので、ここでの戦闘になれるために四日後に連合軍との合同訓練を行います。」
「合同訓練……」
ツェザーリによると、訓練ポイントは10キロ地点にあるらしい。合同訓練は定期的に行われているらしく、それが四日後だ。この時ならアリスが見学と称して見に行くことも可能ではないかという。
もちろん目的はその軍事訓練に紛れてバール要塞へと向かうわけだ。
もちろん可能かどうかは、マーク将軍との交渉次第となるのだが、アリスならなんとか出来るのでは、とツェザーリがぶっこんだ。
「私が将軍と交渉するの?」
「はい。」
渋るアリスにツェザーリがとてもいい笑顔で返事をした。
「もう、解ったわよ。」
それ以外にファルコンから抜け出す方法が無いならば、それが一番良策かも知れない。
しかし俺たち数人でバール要塞へと向かったところで、どうやって要塞に入り込むかなのだが。数千の魔獣や亜人が取り囲む、鉄壁の要塞だ。簡単には入り込めないだろう。
「そんなもん決まってるでしょ。」
アリスがなんか頼もしい事をいうが、どーせ碌でもないことじゃないのかな。
「出たとこ勝負!」
あ、やっぱり。
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俺の隣でぴょんぴょん跳んで、にこやかに「ひーげ、ひーげ」と笑うルミ。
おま、やめろって相手は将軍なんだから。
俺はルミを抑えようと抱きかかえるが、なんかよっぽど気になるのかジタバタと暴れている。
「失礼ながら、皇女様。この者…達は?」
訝しげに俺とルミをじろりと睨みつけ、次いで俺の頭を見て言葉を一瞬詰まらせた。なんなのかな~、その間は。
「私の友人とその連れにございます。」
アリスも今にも笑いそうなんだが。
「ご友人……ですか。」
将軍、俺の頭の上をじっと見たまま口元がムズムズしてるぞ、おいぃ!
コッペルの威力は絶大だな。
「あ~えっと、ジュンヤって言います。こっちはルミ、俺の頭の奴はコッペルって言います。」
俺がルミを抱きかかえて挨拶するわけだが、将軍は俺に目もくれない。
「あの……」
「っおお、すまんな。ジュンヤ殿と申したか、貴殿はどちらかの騎士なのかな?」
騎士って、えーと。
「将軍、ジュンヤは狩人です。」
アリスが言うと将軍は驚いたような顔をする。そりゃそうだろな。お姫様のお供が大公閣下の子息に辺境伯の嫡男と続いて、いきなり平民なのだ。
名のある貴族に付いている騎士であればともかく、平民がお姫様のお供をするなど、この階級社会じゃ信じられないことだろう。
「………アリス様、この最前線《フロントライン》を守護する師団を預かる師団長を紹介させていただこう。」
あ、無視された。
◇◇
ここファルコンには10の師団があり、1つの師団には数千の騎士が配属されている。全部あわせると数万の数となる。
この師団はそれぞれグランダム王国、エグゾス帝国、神聖アリストラ法国の三大大国からの騎士と、数多の小さな諸国から集まった騎士や傭兵から構成されている。
だいたい出自の同じ騎士や傭兵は同じ師団に配属されるらしい。魔族を殲滅するという目的は同じだが、やはり大昔はそれぞれいがみ合っていた物たちの集まりだから、諍いが起こる事を防止しているとか。
なにしろみんな気が立っているのだから、仕方がない。
紹介された10人の師団長は、第一から第三がグランダム王国出身の師団長で、第四から第六がエグゾス帝国、第七がアリスと法国、第八、第九が小国の連合体。最後の第十師団は、唯一の混成部隊だそうだ。
諍いはないのかと思うのだが、この部隊は基本的に戦場には出ないらしい。戦術兵器の開発を主体とした部隊だそうで、最近では火薬と遠距離砲撃筒を開発し、火薬を詰めた鉄球で魔法防御で覆われた要塞バールに直接攻撃を与えたらしい。
円卓の会議室でそれを聞き、俺とアリスは眼を合わせた。この世界の文明は魔法に依存しているためか、火薬などといった発明はかなり遅れている。
なにしろ火が欲しければ、生活魔法程度を使える人は少なくはない。近くに居なくても火魔法を封じた魔道具がある。それらを使えば十分なのだから、無理にそうした物理的な破壊のための発明をする必要はないはずなのだ。
だからこそこの世界は剣と魔法で血塗られた世界だが、それでも地球よりは大分マシなのだ。
地球では火薬が発明され、ダイナマイトとなり、大量破壊、殺戮がほんの幼女にも出来るようになった。
だがこの世界で大量破壊、大量殺戮を可能とするのは、ほんの一握りの実力者だけなのだから。
それなのに、この戦場では火薬が発明されそれを武器として、破壊のための兵器として使用されている。それは何れ市井に流れていくだろう。
便利な文明の火は、瞬く間に広がっていく。火を起し燃やし、そして破壊する身近な道具は、人を喰らい尽くす業火でもあるのだから。
その結果がどうなるかは、地球で起きている悪夢が実証している。
科学文明の発達による破壊の力は、今は魔族へと向けられているが、何れこの戦乱が終わった時にどうなるのか。
魔族が出現する前は、人同士が争っていたと歴史は語っている。人はまた人同士で殺し合い、そして何れは……
◇◇
さてあれこれと案内された俺達だが、ここからどうやってぬけ出すか、だ。
ツェザーリの連れて来た軍隊はこのまま駐留軍として連合軍に合流する。しかしアリスとクリス、そして俺はあくまでも第三皇女の戦場視察という名目でここに居る。
滞在期間も限られているし、ましてここから抜け出て要塞に向かいなど許されるわけもない。皇女が戦場に行くことなど許されるわけもないのだから。
万が一にも傷ついたり死んだりしたら、それこそ此処を統括管理しているマーク将軍の進退にも関わってくるだろう。
つまり、俺達は非合法に此処を抜けだして要塞に向かう必要があるわけだ。
俺たちはアリスの部屋にて、今後の作戦会議となった。
「考えてみると、結構むちゃくちゃだよな。」
「そんなことわかりきってることでしょ。」
ソファに座ったアリスが、紅茶を飲みつつ、また辛辣な物言いで俺を攻める。なんか溜まってるのか?
「ぬけ出すこと事態は難しくはなかろう。」
クリフが軽く言うが、ほんとにそうか?ファルコンは巨大な城塞都市だ。その各所に兵士が配備されている。そこをこんな人目を引く一行が走り抜けるとでも言うのか。
「先日入ってきた門を抜けて、ぐるりと大回りしていけばよかろう?」
「あんたも馬鹿。」
「ええええっ!」
アリスの一言にクリフが涙目になった。
「バールへと向かう道はすべて封鎖されているのよ。」
「そ、そうなのか。」
「決まってるでしょ。できる限り魔族を大陸へ行かせない。その目的で作られたんだから。猫の子一匹通さない様に、広範囲に結界が張られているのよ。」
なるほどね。あれ、でもそれでも結構魔族が居たよな。
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「それじゃ元々意味は無くないか?」
「知らないわよそんなもの。なんか方策をとっているんじゃないの?だからファルコンができる前よりも魔族の出没は減っているらしいし。」
「そ、そうか。」
「少しは勉強してきなさい。」
アリスの叱責に俺もクリフもがっくりとうなだれた。
「アリス様。」
「なに?」
ツェザーリがアリスに声を掛ける。何か妙案でもあるのだろうか。
「駐在する兵士の訓練が四日後にあります。」
「訓練?」
「はい、特にロレッツオ軍については、到着したばかりですので、ここでの戦闘になれるために四日後に連合軍との合同訓練を行います。」
「合同訓練……」
ツェザーリによると、訓練ポイントは10キロ地点にあるらしい。合同訓練は定期的に行われているらしく、それが四日後だ。この時ならアリスが見学と称して見に行くことも可能ではないかという。
もちろん目的はその軍事訓練に紛れてバール要塞へと向かうわけだ。
もちろん可能かどうかは、マーク将軍との交渉次第となるのだが、アリスならなんとか出来るのでは、とツェザーリがぶっこんだ。
「私が将軍と交渉するの?」
「はい。」
渋るアリスにツェザーリがとてもいい笑顔で返事をした。
「もう、解ったわよ。」
それ以外にファルコンから抜け出す方法が無いならば、それが一番良策かも知れない。
しかし俺たち数人でバール要塞へと向かったところで、どうやって要塞に入り込むかなのだが。数千の魔獣や亜人が取り囲む、鉄壁の要塞だ。簡単には入り込めないだろう。
「そんなもん決まってるでしょ。」
アリスがなんか頼もしい事をいうが、どーせ碌でもないことじゃないのかな。
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あ、やっぱり。
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