ドジな女神に不死にされました ~今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった~

無職の狸

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<M03> ひげーーーっ!

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††

 翌朝、俺達の泊まっている部屋のドアが、いきなり開いた。

「お早うございます、ジュンヤ様。お迎えに上がりました。」

 勝手にドアを開けて、ずけずけと入ってきた若い女、グランダム王国とは違う、僧侶のような法衣にも似た制服を着た女性だ。

「ぃてぇぇぇ~~。」

 やたらと元気なハキハキした声が頭に響き、たまらず上半身を起き上げた。

 昨夜はちと飲み過ぎたか、結構酒が残っているようで、まだ頭がくらくらする。完全に二日酔いだな。

 前世では金なんて無かったから、キャバクラとかに行くことはなかったから、初めての体験につい燥いでしまったのも悪かった。
 
 あの2人も普段とは違って、随分とはっちゃけてたし、貴族ってのはあんなもんなのか、それぞれお持ち帰りするとか言ってたな。アリスが居るのに、そういうのは構わないんか?

 俺も女を数人を進められたが、謹んで遠慮した。俺は身持ちが固いんだよ。一途な童貞で結構だ!

「失礼致します。私は連合軍神聖アリストラ法国ファルコン駐留部隊アスカ=ローゼンハイム少尉、ジュンヤ様を統括司令部にご案内に参りました。」
「え、あ、はい。」

 アスカ=ローゼンハイム少尉と名乗る女性は、びしっと敬礼していた。てかなんかここまでで、一番軍隊っぽい挨拶された気がする。

 そういえば聖アリストラ法国って云ってたな。確か魔術に特化した国だとか聞いた。少尉の法衣のような制服、なるほど魔導士《マジックユーザー》か。

 少尉ってことは結構階位が高いんだっけ。よく覚えてないけど、割と偉い人でいいのかな。その偉い人が、なんで侍女みたいに起こしに来たんだ。

「はよ~~~」

 隣で寝ていたルミが、眠そうに目をこしこしして起き上がった。

 アスカ=ローゼンハイム少尉はルミを見ると、驚いたような顔をして頬を赤らめた。

 なんでだ?

 じっと自分を見ると…………。昨夜帰ってきて防具脱いで、えっと……裸やね。

 まぁ確かに上半身は裸だが、下半身は下着を着てるしシーツも被ってるから見えてないはずなんだが。

 隣をみると、うん、なんでだろう~、ルミ、なんでお前まで裸なのかな~。

 ルミネスと違ってツルペタの胸が見えてます。

「し、失礼しました。」

 慌てて後ろを向く少尉。

 完全に勘違いされたな~あははは、じゃねぇぇぇぇっ!

 なんで俺がそんな誤解されなきゃ、いけないんだぁ!

「おはよ~、ジュンヤぁ」

 ペタッとくっつくルミ、ちょっとまてぇ、お前~裸なんだからや~~め~~ろ~~。

「ルミ!お前なんで裸なんだぁ!」
「み、皆様がロビーでお待ちです、私《わたくし》は外で御待ちしております。着替えが終わりましたら、お知らせください。」

 少尉が慌てて外に出ていった。

 完全に誤解された……

「ルミッ、離れなさい!!」
「はぁぁぁぁい」

 なんか不服そうな顔をして、ようやく俺から剥がれた。

 ったく、てかなんで裸、まさか記憶を戻して色気づいたとかいうなよ。

 それともまさか酔って手を出したとかか!
 
 うわあぁぁぁぁ!!
 
 あれ、なんか冷たい。

 ベッドが湿ってる。

 ばさっとシーツをめくるとなんかベッドに地図みたいなシミがあった。うん、北米大陸かな?



 ────おねしょかぁぁぁぁ!!

 あのガキおねしょして、服を濡らしやがったのかぁぁっ!

「ルミィ!」

 俺がルミをみると、あれいない。

 ソファに避難していたコッペルが「くうっ」と眠そうに唸って、振り向いた。

 その方向を見ると、ルミがすっぽんぽんのまま洗面所に小走りに逃げていった。

 可愛らしいプリケツ揺らして、はぁぁぁぁ……

「……もういいや」

 怒る気も失せて、ルミの着替えを保存袋から出して、ソファの上に置いておく。

「新しい肌着と服を置いたぞっ。」
「あふがふぉ」

 ちゃんと歯も磨いてるらしいな。

 俺も昨日みたいな失態はしたくないからな、統括司令部に行くってんなら、少しはまともな服を着ていくか。

 万が一のために、マントだけは忘れずにね。最悪マントがあれば、魔族が襲ってきても何とかなる。多分……






「お待たせしました。」

 ドアを開けて外にでると、アスカ=ローゼンハイム少尉……なげぇな、アスカ少尉が待っていた。うーん、びしっとしてるなぁ。

「皆様がロビーでおま……プッ!!!」

 そんなビシっとしてる少尉が、ちらと視線を動かし、俺の傍に立っているルミと、頭の上を見て吹き出しそうになって視線をそらして必死に耐えている。

 肩が揺れてんぞ、おいっ!

 コッペル、なんでお前が頭に乗ってるとみんな笑うんだろうな。お前、俺の頭の上でどんな顔してんだ。

 宿のロビーには既にアリス、クリフ、ツェザーリが揃って待っていた。皆さんビシっと貴族風で、ああ、もう良いや。

 クリフもツェザーリも少々眠そうにしてるのは、何故だ?よもや朝まであの妖艶な女と遊んでたのか。

 俺がガン見してると、さっと視線を避けたのは何故なんだ。

 隣のアリスはそれを知ってか知らずか、なんとも読めない表情だ。珍しく片目だけのマスクをしているけど、何か意味があるのかな。
 
「待たせたな。」
「待ったわよ。」

 腕を組んでじろりと俺を睨みつけたアリス。あ、やっぱなんか不機嫌そうだ。クリフの夜遊びは俺が悪いんじゃないからな。

 でもこうして片目だけが隠されて、顔が殆ど露わになると、生唾を飲み込みそうなほどの美形だな。クリフが何を云われても着いてきてるのが判る気がする。

 あれ……でもなんで隠してるんだ?ここまで普通に隠してたから、それが当たり前だと思ってたけど、此処には貴族や騎士、将軍しか居ないはず。

 だったら顔バレなんて気にしなくてもいいのに……

「それではご案内致します。」

 アスカ少尉の声に思考は断ち切られた。


◇◇


 俺たちはアスカ少尉に案内されて、統括司令部へと足を進めた。

 司令部は城塞都市ファルコンの中央部、六芒星の中心に建つ、3つの円柱から構成される連合軍本部の中心にあった。

 幾つもの通路を通り、ようやくたどり着いただだっ広い部屋には、円形の大きな机が置かれている。
 
 机を囲む様に豪奢な椅子が置かれ、10人の貴族風の衣装を着た男女が座っており、その中心には最も存在感のある、真っ白の髭面の厳しい顔をした男が座っている。かなり高齢のように見えるが、醸し出す貫禄は尋常じゃないぞ。

「失礼致します、アスカ=ローゼンハイム、アリス様ご一行をご案内致しました。」

 アスカ少尉が敬礼をしながら、また気持ちが良いくらいハキハキとした声をだす。見た限り年上なのに、この女性《ひと》好きだわ。

「ご苦労。」

 低く重みの有る声、あの存在感たっぷりの白髭がコクリと頷き立ち上がった。

 でかいな。

 190センチ以上は軽くありそうだな。恰幅もいいし厳つい顔といい、できれば近寄りたくない。

 いや近づいてきたぞ。それに円卓を囲んでいた奴らも次々に立ち上がった。

「お初にお目にかかります、アリス皇女様。」

 アリスの前まで来ると、背の高さは歴然だ。片膝を着いてもアリスの首の近くまで有る、ていうか恰幅良すぎだろう。それになによりアリスはちっこいしな。

 アリスに睨まれた……心を読むスキル持ってるとか言うなよ。

「城塞都市ファルコンを預かる、連合軍司令官マーク=フォン=ブラウンともうします。」

 あれ……

「初めまして、マーク=フォン=ブラウン将軍、貴方のことは父より聞いております。このファルコンを30年もの長きに渡り守ってこられた、エグゾス帝国でも屈指の強者であるとか。」
「いえ、それは違います。守ったのではありません。魔族を攻め落とせていない、腑抜けにございます。」

 マーク将軍の言葉にアリスはくすっと笑みを浮かべた。

「腑抜けが将軍であるなら、とっくに魔族に落されております。ここが未だに最前線《フロントライン》として、大陸の人々を魔族の手から守っているのは、誰もが知るところです。将軍、お顔をお上げ下さい。堅苦しいことは抜きに致しましょう。」
「もったいないお言葉にございます。」

 マーク将軍は苦みばしった笑みを浮かべて顔を上げ、立ち上がった。うん、アリスと将軍だと身長差ありすぎだろ。

「将軍、こちらは大公閣下のご子息の──」「クリフ=ラザロにございます。」
「そしてこちらはロレッツオ辺境伯の嫡男──」「ツェザーリ=ロレッツオにございます。」

 二人がビシっと礼をした。さすが貴族だな。

「これはこれは大公閣下に、武勇に誉れ高いロレッツオ卿のご子息か。」

 白ひげ将軍がふさふさの髭を撫でながら笑みを浮かべた。笑っても迫力あるな~。

「ひげーーっ!」

 あ、こら。

「む?」

 ルミがおもしろそうに笑顔で指差すものだから、白ひげ将軍がジロリと威嚇するように睨みつけてきた。

††
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