ドジな女神に不死にされました ~今度の人生はスローライフで行こうと思ってたのに、どうしてこうなった~

無職の狸

文字の大きさ
上 下
94 / 106

<M02> 城塞都市ファルコンへ

しおりを挟む
††

 ましょ~ぐん、いや魔将軍か。人が言うところの幹部だな。

 ルミの知る限り魔将軍は4人居る。そのうちの独りは、俺の膝の上でスヤスヤと寝息を立てているルミがそうらしい。

 本人は意識していないのか、自分を魔族と認識しているのか、なんかよく解らない。

 コッペルも反応がないし、ルミがまた敵に戻った、ということはなさそうだ。

 てか「ましょ~ぐん」なんて言う幼児が、ぜくすふぇす、じゃないゼクスフェス相手にあんた立ち回りするんだから、ほんとコイツは魔将軍だったんだな。

 確かにあんときは強かった。

 それに、ゼクスフェスと戦った時の事をみれば、俺たちとは本気で戦ってなかったのかもしれない。
 
 壊さないように、エサにするために、そっと優しくしてくれていたのかも。
 
 もしコイツが完全に記憶を戻して、俺の前に立ちふさがったら、やはり今のうちに殺すか。

 だがレヴィに云わせれば真祖は殺せないとか。

 いや、そもそも俺には無理だ。アマンダの面影をもつルミを、例え違うとわかっていても、手を出せない。

 膝の上で眠るルミを見つめ、俺はじっとりと汗をかいていた。

「考えるのはやめなさい。」

 アリスの言葉が突き刺さる。

「その子が魔族でも、今は味方、少なくともジュンヤを守ろうとしている。いまはそれでいいわ。」
「しかし……」

 俺の反応にアリスは首を左右に振る。

「敵になったらなったで、あんたに出来ないなら、私が殺す。殺せないなら封印する。」

 封印……その方法があったか。

「ジュンヤ、あんたもそうよ。この子が敵になっても庇うのなら、あんたも封印してやるからね。」

 はぁぁぁぁ、まてぇぇぇ!
 
 死なないなら封印って、俺はやっぱアンデッド扱いか?
 実際似たようなもんだがなぁ……はぁ。

「て、てか、おま──」

 クリフとマリアがジロって……怖い。

「アリスは、封印とかできるの……ですか?」
「出来るよ。私は天才だから♪」

 あそですか、天才じゃなくて天災と違うんかぁ。つまりは【天臨王】のせいだな。

 ほんと俺なんぞ寄り、全然チートじゃねぇか。


◇◇


 ガタゴトと揺られながら、やがて隊列の進む先に荘厳な城塞都市が見えてくる。

 白き城塞、そんなイメージの背の高い城壁が一直線に左右に何処までも並んでいる。

 城壁の一部が開き、巨大な門が開いており騎士の隊列が吸い込まれる様に入っていく。

「あれがファルコン。」

 俺は呆気に取られていた。何しろでかい。ロレッツオ辺境伯の城塞都市も大きかったが、そんなもんじゃない。

「流石に大きいな。」

 クリフも窓からのぞき見て、少々驚いているようだ。

「王都ほどじゃないわね。」

 いやいやいや、アリス、それ言っちゃダメだろ。ここは魔大陸《ノスフェラトゥ》だ。そんな敵の布陣の只中に、何ちゅうものを造ってやがる。

 もっとシンプルで小さなもんだと思ってたのに。

「長年積み重ねて作り上げてきた、人の叡智の結晶って事だな。」

 ふ~ん、それがこれか。ちょっとした都市以上の城塞都市。風の噂では魔族との戦乱の中で、数十年かかって作り上げたとか。

 そんな事が可能なのか。

 まあ数万とか数十万が動くわけだからな。まあいいや、そんなことよりもようやく俺たちの馬車も門をくぐる番となった。



 都市のような町中、異なるのは所々に物見台があり一つ一つに小型の魔弾砲台が設置されている。さらに要所要所に騎士、いや兵士が居る。見慣れぬ鎧の兵士、恐らく隣国の兵士だろうか。よく見れば街中兵士だらけだな。

 まさに敵地の中の街だな。
 
 一般人は商人や職人くらいだろうか。いやその家族もいたりするのか。商店もあれば、酒場もあるし娼館もある。兵士相手の職業があれこれと見受けられた。
 
 なるほどね。軍人相手の商売か。こうしてちゃんと成り立つものなんだな。軍人達もただ此処に居て戦うだけじゃ、息が詰まるだろうし、明日は死ぬかも知れないんだからな。

 俺たちは要人専用の宿とかいう場所に案内された。単純に高級宿というわけでもないようだ。広い敷地の前には門番が数名、さらに敷地のあちらこちらに警備兵がいる。

 それに建物だって、どう見ても豪華な貴族風の屋敷だ。これが宿って……確かに高級将校とか要人用だな。
 
「明日の朝、将軍に会いに行くから。」

 アリスはそういって部屋に向かった。

「俺たちはどうすっか。」

 クリフがツェザーリと一緒に俺を見る。

「ルミを寝かさないと……」
「そっか、良かったら宿の別館に酒場がある。」
「男同士、少し話さないか。」

 クリフとツェザーリは手を軽く振って、宿を出て行った。
 
 あいつら同い年だよな。未成年だよな。あ~でもその前にこの世界って成人とかあるのか?

 7歳で洗礼して狩人《ハンター》になったけど、でもその後に成人式があるとか、そんな話し聞いた事無いな。つまりそういうことか。

「さぁルミ、風呂にでも入って寝るか?」
「はーい。」

 かわいいな。でもなんでいつも返事する時手を上げるんだろ。なんでアマンダと同じなんだろ。

 可愛いから、良いや。

 想像通り、やたらと広くて豪華な部屋に、広くて豪華なベッド。これなら2人と1匹で寝ても余裕だな。それにお風呂も凄まじく豪華だ。

 いつも通りルミを洗ってやって、血を飲ませて腹が膨らむと、直ぐにぐっすりと眠ってしまった。コッペルもいつも通り眠りについたルミの傍で丸くなって眠っている。

 さて、どうするか。酒……か。









 宿の別館……はい豪華っす。

 扉もなんかやたらと豪華だし中は、どっかのクラブみたいな気がする。経験て言うか入ったこと無いけど、ネットで見たこと有るなぁ。うん、高級クラブだな。
 
 ちらりと見ると、はははは、女が接待してるぞ。ほんとにクラブじゃないか。客層だってみんな高級な服装だな。
 
 俺……革鎧なんだが。

「いらっしゃいませ。」

 黒服を着た店員がささっと前に来て一礼するんだが、なんか顔が訝しげだ。明らかに服装見てるよな、うん。

「あの……」
「失礼ですが、こちらは……」

 うん、明らかに場違いな服装だよね。はいはい、解ってますって。帰りますよ。
 
「ジュンヤっ!」

 帰ろうとした所で、背後から声がかかった。

「きたな、こっちだ。」

 女数人に囲まれたクリフとツェザーリだ。なんか酒池肉林だな、おい。

「これは、クリフ様のお知り合いの方でしたか。失礼しました。ささどうぞこちらへ。」

 黒服がいきなり手のひら返した。そりゃそうか、相手は太公子息と次期辺境伯だからな。その知り合いとなればこんな形でももしや、というのがあるのだろう。

 やたらと低姿勢となった黒服は、華麗で妖艶な女達に囲まれた二人の方へと、俺を案内してくれた。

 権力って素晴らしいな。

††
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。

真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆ 【あらすじ】 どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。 神様は言った。 「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」 現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。 神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。 それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。 あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。 そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。 そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。 ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。 この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。 さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。 そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。 チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。 しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。 もちろん、攻略スキルを使って。 もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。 下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。 これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。 【他サイトでの掲載状況】 本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

とあるおっさんのVRMMO活動記

椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。 念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。 戦闘は生々しい表現も含みます。 のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。 また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり 一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。 また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や 無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという 事もございません。 また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...