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<M02> 城塞都市ファルコンへ

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††

 ましょ~ぐん、いや魔将軍か。人が言うところの幹部だな。

 ルミの知る限り魔将軍は4人居る。そのうちの独りは、俺の膝の上でスヤスヤと寝息を立てているルミがそうらしい。

 本人は意識していないのか、自分を魔族と認識しているのか、なんかよく解らない。

 コッペルも反応がないし、ルミがまた敵に戻った、ということはなさそうだ。

 てか「ましょ~ぐん」なんて言う幼児が、ぜくすふぇす、じゃないゼクスフェス相手にあんた立ち回りするんだから、ほんとコイツは魔将軍だったんだな。

 確かにあんときは強かった。

 それに、ゼクスフェスと戦った時の事をみれば、俺たちとは本気で戦ってなかったのかもしれない。
 
 壊さないように、エサにするために、そっと優しくしてくれていたのかも。
 
 もしコイツが完全に記憶を戻して、俺の前に立ちふさがったら、やはり今のうちに殺すか。

 だがレヴィに云わせれば真祖は殺せないとか。

 いや、そもそも俺には無理だ。アマンダの面影をもつルミを、例え違うとわかっていても、手を出せない。

 膝の上で眠るルミを見つめ、俺はじっとりと汗をかいていた。

「考えるのはやめなさい。」

 アリスの言葉が突き刺さる。

「その子が魔族でも、今は味方、少なくともジュンヤを守ろうとしている。いまはそれでいいわ。」
「しかし……」

 俺の反応にアリスは首を左右に振る。

「敵になったらなったで、あんたに出来ないなら、私が殺す。殺せないなら封印する。」

 封印……その方法があったか。

「ジュンヤ、あんたもそうよ。この子が敵になっても庇うのなら、あんたも封印してやるからね。」

 はぁぁぁぁ、まてぇぇぇ!
 
 死なないなら封印って、俺はやっぱアンデッド扱いか?
 実際似たようなもんだがなぁ……はぁ。

「て、てか、おま──」

 クリフとマリアがジロって……怖い。

「アリスは、封印とかできるの……ですか?」
「出来るよ。私は天才だから♪」

 あそですか、天才じゃなくて天災と違うんかぁ。つまりは【天臨王】のせいだな。

 ほんと俺なんぞ寄り、全然チートじゃねぇか。


◇◇


 ガタゴトと揺られながら、やがて隊列の進む先に荘厳な城塞都市が見えてくる。

 白き城塞、そんなイメージの背の高い城壁が一直線に左右に何処までも並んでいる。

 城壁の一部が開き、巨大な門が開いており騎士の隊列が吸い込まれる様に入っていく。

「あれがファルコン。」

 俺は呆気に取られていた。何しろでかい。ロレッツオ辺境伯の城塞都市も大きかったが、そんなもんじゃない。

「流石に大きいな。」

 クリフも窓からのぞき見て、少々驚いているようだ。

「王都ほどじゃないわね。」

 いやいやいや、アリス、それ言っちゃダメだろ。ここは魔大陸《ノスフェラトゥ》だ。そんな敵の布陣の只中に、何ちゅうものを造ってやがる。

 もっとシンプルで小さなもんだと思ってたのに。

「長年積み重ねて作り上げてきた、人の叡智の結晶って事だな。」

 ふ~ん、それがこれか。ちょっとした都市以上の城塞都市。風の噂では魔族との戦乱の中で、数十年かかって作り上げたとか。

 そんな事が可能なのか。

 まあ数万とか数十万が動くわけだからな。まあいいや、そんなことよりもようやく俺たちの馬車も門をくぐる番となった。



 都市のような町中、異なるのは所々に物見台があり一つ一つに小型の魔弾砲台が設置されている。さらに要所要所に騎士、いや兵士が居る。見慣れぬ鎧の兵士、恐らく隣国の兵士だろうか。よく見れば街中兵士だらけだな。

 まさに敵地の中の街だな。
 
 一般人は商人や職人くらいだろうか。いやその家族もいたりするのか。商店もあれば、酒場もあるし娼館もある。兵士相手の職業があれこれと見受けられた。
 
 なるほどね。軍人相手の商売か。こうしてちゃんと成り立つものなんだな。軍人達もただ此処に居て戦うだけじゃ、息が詰まるだろうし、明日は死ぬかも知れないんだからな。

 俺たちは要人専用の宿とかいう場所に案内された。単純に高級宿というわけでもないようだ。広い敷地の前には門番が数名、さらに敷地のあちらこちらに警備兵がいる。

 それに建物だって、どう見ても豪華な貴族風の屋敷だ。これが宿って……確かに高級将校とか要人用だな。
 
「明日の朝、将軍に会いに行くから。」

 アリスはそういって部屋に向かった。

「俺たちはどうすっか。」

 クリフがツェザーリと一緒に俺を見る。

「ルミを寝かさないと……」
「そっか、良かったら宿の別館に酒場がある。」
「男同士、少し話さないか。」

 クリフとツェザーリは手を軽く振って、宿を出て行った。
 
 あいつら同い年だよな。未成年だよな。あ~でもその前にこの世界って成人とかあるのか?

 7歳で洗礼して狩人《ハンター》になったけど、でもその後に成人式があるとか、そんな話し聞いた事無いな。つまりそういうことか。

「さぁルミ、風呂にでも入って寝るか?」
「はーい。」

 かわいいな。でもなんでいつも返事する時手を上げるんだろ。なんでアマンダと同じなんだろ。

 可愛いから、良いや。

 想像通り、やたらと広くて豪華な部屋に、広くて豪華なベッド。これなら2人と1匹で寝ても余裕だな。それにお風呂も凄まじく豪華だ。

 いつも通りルミを洗ってやって、血を飲ませて腹が膨らむと、直ぐにぐっすりと眠ってしまった。コッペルもいつも通り眠りについたルミの傍で丸くなって眠っている。

 さて、どうするか。酒……か。









 宿の別館……はい豪華っす。

 扉もなんかやたらと豪華だし中は、どっかのクラブみたいな気がする。経験て言うか入ったこと無いけど、ネットで見たこと有るなぁ。うん、高級クラブだな。
 
 ちらりと見ると、はははは、女が接待してるぞ。ほんとにクラブじゃないか。客層だってみんな高級な服装だな。
 
 俺……革鎧なんだが。

「いらっしゃいませ。」

 黒服を着た店員がささっと前に来て一礼するんだが、なんか顔が訝しげだ。明らかに服装見てるよな、うん。

「あの……」
「失礼ですが、こちらは……」

 うん、明らかに場違いな服装だよね。はいはい、解ってますって。帰りますよ。
 
「ジュンヤっ!」

 帰ろうとした所で、背後から声がかかった。

「きたな、こっちだ。」

 女数人に囲まれたクリフとツェザーリだ。なんか酒池肉林だな、おい。

「これは、クリフ様のお知り合いの方でしたか。失礼しました。ささどうぞこちらへ。」

 黒服がいきなり手のひら返した。そりゃそうか、相手は太公子息と次期辺境伯だからな。その知り合いとなればこんな形でももしや、というのがあるのだろう。

 やたらと低姿勢となった黒服は、華麗で妖艶な女達に囲まれた二人の方へと、俺を案内してくれた。

 権力って素晴らしいな。

††
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