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<C13> 日本人がいっぱい
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††
「日本人らしいドワーフ?」
「いや、本人じゃなく、父親がそうみたいだ。もう死んでるんだけどな。」
俺がランスの事を離すと、アリスは奇異な眼をした。
「それどういうこと?」
まあ当然の質問だな。俺にもよくわからないんだから、アリスにも意見を聞きたかったんだ。
「話からして、100年以上前にこの世界にきて、50年前に死んでる。盗賊に殺されたらしい。俺が会ったのはその息子だが、もう白髪の爺さんだな。」
「老人?」
「ああ、だがドワーフの年齢はよく判らん。なにせ初めて見たんだからな。」
俺が言うとアリスは少し考える。そしてうん、と頷いた。
「もしかしたらこの世界って、あたし達が思っている以上に可笑しな世界なのかもしれない。」
「ん、どういう意味だ?」
おかしな世界って、意味がよくわからない。ていうか現代日本と比較したら、そりゃおかしいだろうさ。おかしいことだらけだ。
「現代日本と比較すると、まず文明が進化していない。」
「文明?」
「馬車があったり中世風の佇まいや、生活風景。これって地球なら1200年代から1500年代の風景よね。」
「ああ、まあそうだな。」
そんな歴史のことを細かく覚えているかよ。なんでこいつは、と思ったけどそういやアリスは元女子高生か。現役で歴史を習ってたんだったな。
「でも地球より文明や科学力が遅れている。そもそもこの世界には科学がないの。」
「まぁ、その代わりに魔法文明があるだろ?」
「そうね、この世界の人々は魔法に頼っているの。だから科学が発展しない。」
「ああ、そうか。」
「普通なら火を起こすことが発明され、それが生活にも科学にも貢献するわ。だけど魔法があるから、進化が止まっているの。」
なるほど。考える必要がないから、身近に魔法という便利なものが存在するから、そこで停まってしまったということか。
「もっと突き詰めればもっと判るかも知れないけど、多分この世界は数百年とか千年単位で進化を止めているとおもう。」
「はぁ?」
「イグリース学園の図書館とか、王室にあった古い古文書を読んだの。それによると、魔族との戦いは200年以上に渡っているわ。」
「そりゃまた凄い歴史だな。」
「それ以前は人同士が戦っていた。」
「地球と同じだな。」
人は戦いの歴史を繰り返す、どこの世界でも同じだな。
「それじゃ魔族はどこから来たと思う?」
えっと、そんなこといきなり聞かれても困るぞ。俺は村人なんだから、そんな難しい書物とか読む機会はなかったからな。
「どの古文書にも書かれていないの。」
「どういうことだよ。」
「さぁ?ただ魔族は300年位昔に突然に北の大陸、ノスフェラトゥに出現したそうよ。そして人間を襲い、あの大陸を支配したの。」
「突然って、どこから来たとかそういうのはないのか?」
「ない。」
「よくある古代に封印されていて、封印の効果がなくなって蘇ったとか?」
「そんな封印に関する古文書は無い。」
アリスはきっぱりと言い切った。
いったいそれってどういうことだ?俺はもっと昔から居たのかと思ったけど、まるで空から降ってきた……
まさか?なんかまた嫌な予感がした。
「でしょ。」
アリスがじろりと見て、俺が思いついた事に同意した。
「それはとりあえず置いといて、他にもこの世界は色々おかしいと思えるの。なんで地球で死んだ人が此処に転生するのか。」
「あ、それは……」
ああもう、いちいちあいつの顔が思い浮かんでくる。
ふむ、やはりそうなるか。アリスの言葉に俺は首肯した。俺もそうなのではないかと思っていたんだ。
「ジュンヤは──たしか最初は、チートな称号なんて持ってなかったんでしょ。」
「あれはチートなんかじゃないよ、死にたくなっても自由に死ねないんだぞ。呪いとしか言えない。まあ今は助かってるけどな。」
そうだ今は助かってる。だがそれはあくまで復讐を果たし、アマンダを取り戻すまでだ。
もし何かで絶望に打ちひしがれても、自死を選ぶこともできないんだ。人間には死ぬ自由がある。それを奪われたんだ、呪いとしか言えないよ。
「最初に転生したとき、女神になんか云われなかった?」
「確か『前世の記憶を持って転生するだけでも大サービスだ』とか言ってたな。」
「それって……え?まさか?」
アリスは少し考えてから驚きの表情を浮かべた。俺もそれに頷き、本来なら異常なはずの転生に対して疑問を掲げた。
アニメやらマンガやら小説で語られている、死者転生、記憶を持った転生、チートを持った転生、本来そんな都合の良い転生など有るわけもない。
女神の存在だってそうだ。神は居ない。常識的に考えれば、神も悪魔も人間の考えた想像上の産物だ。
それが存在して、転生させる、なんでそんなシステムが有るんだ。おかしすぎる。
俺やアリス、またザックやドワーフの爺さんのオヤジ、トールのようなものが、何故存在するのか。
神の存在は、一応あったんだからあの女神を神として、だがいくら女神とはいえ、死んだもの全員と面談するなんてナンセンスな事はしていないはずだ。
俺の記憶が確かなら、ネットで何気なく調べた時に日本人の死者数は年間130万人ぐらいだったはず。これって1日に3,000人前後の死者が出てるってことだ。
時間で言えば30秒に1人以上が何処かで死んでいる。ちょっとあまり考えたくないような数字だけど、まあそんなもんだ。
なんせ人口が1億5千万人もいるんだから、その1%未満ならば、仕方ないことなのかもしれない。
老衰だったり病死だったり、事故だったり殺人だったり色々だろうが、とにかくそれだけの数の人が死んでるのに、それをいちいち面談なんてしてられんだろう。
女神が居た場所が、時間間隔の違う次元であるならまた別だろう。だがそんなもの俺には解らないし、仮にそうだったとしても、何故女神は面談するのか。
会社の面談だって応募者全員と面談するわけじゃない。有る一定の基準を満たした場合に、最終面接をする。
多分女神も1日に3,000人もの人間と面談などせず、何かの方法か基準でチョイスした者にだけ、面談してると考えた方が理屈に合うはずだ。
それ以外は面談もせず過去世の記憶も持たせないまま、この世界に放り込んでいるのではないだろうか。
逆に言えば、俺達のように過去世の記憶を持つもの、チートな称号を持つものは、女神の基準をパスした者で、そうした人間がこの世界には幾ばくかは居る、と思って良いかもしれない。
「ドワーフのおっさんのオヤジ、詰まり鍛冶の神《トール》は、過去世だけを持っていたか、または……」
「鍛冶に関するチートな称号を持っていた。」
俺とアリスは首肯する。
ランスの親のトールは、鍛冶の神《トール》と呼ばれ、数々の神の武具《アーティファクト》を造り出したという。つまり、そのような称号を持っていたのかもしれない。
その息子であって、古き日本の風物の記憶を持つランスもまた日本人の生まれ変わりで、なにか称号を持っているのかも。
そしてもう一つの推測。
この世界の人口はどの位居るのだろう。こんな文明が中途半端な世界では、人口統計など無いだろう。仮にこの世界の人口が1億とか2億ていどなら、日本とほぼ変わらない。
出生率は産めよ増やせよの時代だし、もちろん避妊も無いだろう。アリスにしてもクリフにしても、兄弟姉妹がいる。割りと裕福な家庭は多産だ。
村人のような貧乏農家でも、割りと数人の兄弟が居た。俺は一人っ子だったがな。
それに子供を作る年齢も日本と違って低い。15歳程度になれば、結婚したり一緒に住んだりして子作りに励むのが普通だ。
出生率はこちらのほうが遥かに多いだろう。だが死ぬものも多い。戦争が有り、さらに魔獣が居る。自然災害もあるだろう。
出生率の倍近い死者がいると思っていいのかもしれない。
つまりこの世界の人間の総数は減衰傾向にある。
うーん、よくわからなくなってきたが、結局このままいくとこの世界の人間って、滅ぶんじゃね?
「魔族との戦争がなくなれば、どうなんだろ。」
「そりゃあの戦争で数万とかの人間が死んでるんだし、戦争がなくなれば、産めよ増やせよに拍車がかかるから……」
「それじゃ魔族を滅ぼせば、上手く生き残れる?」
「可能性はあるよね。」
魔族を滅ぼす、それは1つの解決さくなのかと思うけど、だけどなんかおかしくないか。
そもそも魔族ってなんだよ。200年だか数百年だか知らないけど、いきなり湧いてきて人間の天敵になったとか、なにそれってかんじなんだが。
地球は人間の天敵が居なかったから、どんどん人が増えてきたわけで、この世界は天敵が現れて戦争が起こって、それが数十年続いて、人間が減衰しているとして……
なんかおかしい。よくよく考えると、この世界おかしすぎる。
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「日本人らしいドワーフ?」
「いや、本人じゃなく、父親がそうみたいだ。もう死んでるんだけどな。」
俺がランスの事を離すと、アリスは奇異な眼をした。
「それどういうこと?」
まあ当然の質問だな。俺にもよくわからないんだから、アリスにも意見を聞きたかったんだ。
「話からして、100年以上前にこの世界にきて、50年前に死んでる。盗賊に殺されたらしい。俺が会ったのはその息子だが、もう白髪の爺さんだな。」
「老人?」
「ああ、だがドワーフの年齢はよく判らん。なにせ初めて見たんだからな。」
俺が言うとアリスは少し考える。そしてうん、と頷いた。
「もしかしたらこの世界って、あたし達が思っている以上に可笑しな世界なのかもしれない。」
「ん、どういう意味だ?」
おかしな世界って、意味がよくわからない。ていうか現代日本と比較したら、そりゃおかしいだろうさ。おかしいことだらけだ。
「現代日本と比較すると、まず文明が進化していない。」
「文明?」
「馬車があったり中世風の佇まいや、生活風景。これって地球なら1200年代から1500年代の風景よね。」
「ああ、まあそうだな。」
そんな歴史のことを細かく覚えているかよ。なんでこいつは、と思ったけどそういやアリスは元女子高生か。現役で歴史を習ってたんだったな。
「でも地球より文明や科学力が遅れている。そもそもこの世界には科学がないの。」
「まぁ、その代わりに魔法文明があるだろ?」
「そうね、この世界の人々は魔法に頼っているの。だから科学が発展しない。」
「ああ、そうか。」
「普通なら火を起こすことが発明され、それが生活にも科学にも貢献するわ。だけど魔法があるから、進化が止まっているの。」
なるほど。考える必要がないから、身近に魔法という便利なものが存在するから、そこで停まってしまったということか。
「もっと突き詰めればもっと判るかも知れないけど、多分この世界は数百年とか千年単位で進化を止めているとおもう。」
「はぁ?」
「イグリース学園の図書館とか、王室にあった古い古文書を読んだの。それによると、魔族との戦いは200年以上に渡っているわ。」
「そりゃまた凄い歴史だな。」
「それ以前は人同士が戦っていた。」
「地球と同じだな。」
人は戦いの歴史を繰り返す、どこの世界でも同じだな。
「それじゃ魔族はどこから来たと思う?」
えっと、そんなこといきなり聞かれても困るぞ。俺は村人なんだから、そんな難しい書物とか読む機会はなかったからな。
「どの古文書にも書かれていないの。」
「どういうことだよ。」
「さぁ?ただ魔族は300年位昔に突然に北の大陸、ノスフェラトゥに出現したそうよ。そして人間を襲い、あの大陸を支配したの。」
「突然って、どこから来たとかそういうのはないのか?」
「ない。」
「よくある古代に封印されていて、封印の効果がなくなって蘇ったとか?」
「そんな封印に関する古文書は無い。」
アリスはきっぱりと言い切った。
いったいそれってどういうことだ?俺はもっと昔から居たのかと思ったけど、まるで空から降ってきた……
まさか?なんかまた嫌な予感がした。
「でしょ。」
アリスがじろりと見て、俺が思いついた事に同意した。
「それはとりあえず置いといて、他にもこの世界は色々おかしいと思えるの。なんで地球で死んだ人が此処に転生するのか。」
「あ、それは……」
ああもう、いちいちあいつの顔が思い浮かんでくる。
ふむ、やはりそうなるか。アリスの言葉に俺は首肯した。俺もそうなのではないかと思っていたんだ。
「ジュンヤは──たしか最初は、チートな称号なんて持ってなかったんでしょ。」
「あれはチートなんかじゃないよ、死にたくなっても自由に死ねないんだぞ。呪いとしか言えない。まあ今は助かってるけどな。」
そうだ今は助かってる。だがそれはあくまで復讐を果たし、アマンダを取り戻すまでだ。
もし何かで絶望に打ちひしがれても、自死を選ぶこともできないんだ。人間には死ぬ自由がある。それを奪われたんだ、呪いとしか言えないよ。
「最初に転生したとき、女神になんか云われなかった?」
「確か『前世の記憶を持って転生するだけでも大サービスだ』とか言ってたな。」
「それって……え?まさか?」
アリスは少し考えてから驚きの表情を浮かべた。俺もそれに頷き、本来なら異常なはずの転生に対して疑問を掲げた。
アニメやらマンガやら小説で語られている、死者転生、記憶を持った転生、チートを持った転生、本来そんな都合の良い転生など有るわけもない。
女神の存在だってそうだ。神は居ない。常識的に考えれば、神も悪魔も人間の考えた想像上の産物だ。
それが存在して、転生させる、なんでそんなシステムが有るんだ。おかしすぎる。
俺やアリス、またザックやドワーフの爺さんのオヤジ、トールのようなものが、何故存在するのか。
神の存在は、一応あったんだからあの女神を神として、だがいくら女神とはいえ、死んだもの全員と面談するなんてナンセンスな事はしていないはずだ。
俺の記憶が確かなら、ネットで何気なく調べた時に日本人の死者数は年間130万人ぐらいだったはず。これって1日に3,000人前後の死者が出てるってことだ。
時間で言えば30秒に1人以上が何処かで死んでいる。ちょっとあまり考えたくないような数字だけど、まあそんなもんだ。
なんせ人口が1億5千万人もいるんだから、その1%未満ならば、仕方ないことなのかもしれない。
老衰だったり病死だったり、事故だったり殺人だったり色々だろうが、とにかくそれだけの数の人が死んでるのに、それをいちいち面談なんてしてられんだろう。
女神が居た場所が、時間間隔の違う次元であるならまた別だろう。だがそんなもの俺には解らないし、仮にそうだったとしても、何故女神は面談するのか。
会社の面談だって応募者全員と面談するわけじゃない。有る一定の基準を満たした場合に、最終面接をする。
多分女神も1日に3,000人もの人間と面談などせず、何かの方法か基準でチョイスした者にだけ、面談してると考えた方が理屈に合うはずだ。
それ以外は面談もせず過去世の記憶も持たせないまま、この世界に放り込んでいるのではないだろうか。
逆に言えば、俺達のように過去世の記憶を持つもの、チートな称号を持つものは、女神の基準をパスした者で、そうした人間がこの世界には幾ばくかは居る、と思って良いかもしれない。
「ドワーフのおっさんのオヤジ、詰まり鍛冶の神《トール》は、過去世だけを持っていたか、または……」
「鍛冶に関するチートな称号を持っていた。」
俺とアリスは首肯する。
ランスの親のトールは、鍛冶の神《トール》と呼ばれ、数々の神の武具《アーティファクト》を造り出したという。つまり、そのような称号を持っていたのかもしれない。
その息子であって、古き日本の風物の記憶を持つランスもまた日本人の生まれ変わりで、なにか称号を持っているのかも。
そしてもう一つの推測。
この世界の人口はどの位居るのだろう。こんな文明が中途半端な世界では、人口統計など無いだろう。仮にこの世界の人口が1億とか2億ていどなら、日本とほぼ変わらない。
出生率は産めよ増やせよの時代だし、もちろん避妊も無いだろう。アリスにしてもクリフにしても、兄弟姉妹がいる。割りと裕福な家庭は多産だ。
村人のような貧乏農家でも、割りと数人の兄弟が居た。俺は一人っ子だったがな。
それに子供を作る年齢も日本と違って低い。15歳程度になれば、結婚したり一緒に住んだりして子作りに励むのが普通だ。
出生率はこちらのほうが遥かに多いだろう。だが死ぬものも多い。戦争が有り、さらに魔獣が居る。自然災害もあるだろう。
出生率の倍近い死者がいると思っていいのかもしれない。
つまりこの世界の人間の総数は減衰傾向にある。
うーん、よくわからなくなってきたが、結局このままいくとこの世界の人間って、滅ぶんじゃね?
「魔族との戦争がなくなれば、どうなんだろ。」
「そりゃあの戦争で数万とかの人間が死んでるんだし、戦争がなくなれば、産めよ増やせよに拍車がかかるから……」
「それじゃ魔族を滅ぼせば、上手く生き残れる?」
「可能性はあるよね。」
魔族を滅ぼす、それは1つの解決さくなのかと思うけど、だけどなんかおかしくないか。
そもそも魔族ってなんだよ。200年だか数百年だか知らないけど、いきなり湧いてきて人間の天敵になったとか、なにそれってかんじなんだが。
地球は人間の天敵が居なかったから、どんどん人が増えてきたわけで、この世界は天敵が現れて戦争が起こって、それが数十年続いて、人間が減衰しているとして……
なんかおかしい。よくよく考えると、この世界おかしすぎる。
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