星に手が届く

霧先令月

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後編

私の願い

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 その後「さよなら」も告げずに和歌山の土地を、去った。荷物も衣類だけ。その他は、家に置いていく事にした。それからは、名門私立中学に転入した。友達はできず、学年トップの座に一年数ヶ月君臨し続けた。
 それからは、大学は東京大学に入り首席卒業。大手企業にも入れた。しかし、私には人付き合いは無理だった。会社内で虐めにあった。毎日毎日残業の日々。私は、こんな会社なんてと辞職した。それからは、小さい子会社で残業の日々。前のよりも楽だ。話をするだけの友達も出来た。
 そんなある日だった。あれから数年後のクリスマス当日、会社からの帰り道。駅前で買い物を済ませ、家で一人呑みを考えながら歩いていた。目の前のクリスマスツリーがキラキラと周りを照らしていた。その時懐かしく、苦しくなる声が聞こえた。その下に、私は有り得ない光景を目にした。そう、海人と紫音が子供と一緒にツリーを眺めていたのだ。私は、全身に恐怖を抱えて家まで走った。殺人犯に追いかけられるような恐怖が私を支配していた。
 家に着き、玄関で倒れ込んだ。手や足は震えが止まらずにいた。
「どうしたの。私は。」
私は、一筋の悲しみを流した。
「どうして、あの家族を殺したいなんて思ってしまったの。」
私は、震える体を抱いて部屋に入った。部屋は月光とクリスマスの光に照らされて、青白かった。そっと窓に目を向けると、一つ星が綺麗に輝いて見えた。
「あの星のように、海人の中の存在になりたかった。」
「愛されたかった。」
私は窓を開け、ベランダに出た。そして、星に向かって手を伸ばした。次の瞬間には、私は星に手が届いていた。

(終)
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