17 / 32
chrono-17:胆力は、ハード!現実も、それはそれでハードッ!の巻
しおりを挟む
さて。
ナニゴトも無かったかのように水洗いを終えて浴室から出てきた僕は、家族が起きてくる前に華麗に家を抜け出すのであった……
「……」
朝食も取れなかったけどしょうがない。何というかいたたまれなさの波濤に飲み込まれそうであったし、とろろごはんでは済まないのっぴきならなさがあったから。よれよれのTシャツにがびがびのジーンズ、てろてろの元は薄い緑色だった今は灰色に近いほどにすっかり洗いざらされたパーカーを何とか身に着け、三和土にあったサンダルに裸足を突っかけてすっころびそうになりながら玄関を出た。
とは言え時刻七時ちょっと過ぎ。休日の朝は照らす太陽の光もいつもとは違った眩しさがあるとでもいうのか、火照りが引いてすっきりとした身体に非常に心地よいのだけれど、かといって向かうところも定まんないよね……カネも無いことだし。うぅん……足の赴くまま大通りによろぼい出る僕だけれど、今日本当に「トレース」だかをやらんといかんのでしょうか……メンタルは最悪四天王を凌駕せんばかりの低水域なのですがッ。
<……まあ、【分析力06】を使って、トレース出来そうな人物の居場所を探すほかは無いな。先ほどのわやくちゃで既に貴重な能力の内の『七発』がとこを撃ち放ってしまっているが>
アイスはやっぱり冷たいね。【13】もこれでも頑張っているというのに……もう明日奈を部屋に入れるのは控えよう……とか信号待ちでぼんやりと佇んでいたら。
「おにいちゃんっ、ど、どこいくのっ?」
背後からかかるのは息せき切って走ってきたと思われるその妹の弾んだ声であったわけで。追っかけてきたのかよもう……
「なんていうか、すまなかった」
であったので、僕はスムースに地べたに両膝を突きざま、両掌もつけてその間に額を擦り付けてみるのだけれど。ふ、と、ばあちゃんの奥二重に見えたアスファルトのひび割れのひとつと目が合った気がした。ほんのりアンモニア臭も漂ってくるけど構わず僕は畏まりの姿勢を取り続ける。ちょ、ちょっとやめてよぅ……との力無い明日奈の声にも動ぜず、僕は頑なに土下座姿勢を崩さずに、厳然たる謝意を示し続けるのであった……割と、いやがらせ的に。
立ってってばぁ、と泡食う妹に腕を引っ張られようやく立ち上がる。いや、もっとこう……口汚く罵ってくれて構わんのだよ? とか腐った言葉しか発せられなくなっている僕に、いいからもぉぉ、めんどくさくなっちゃったなぁぁ……とか困り気な声を絞り出しながらぐいぐい押されて横断歩道を何とか渡り切らされる。
「……」
そのまま押しに押されて昨日も訪れた家近公園へといざなわれたのだけれど。今日も天気は最高だね。まだ朝露が残っていて適度な湿りけもあって空気も澄んでいる。けど。
「べ、別に思春期男子には不可抗力的にあることだって知ってるんだからっ。不必要に卑屈にならなくていいのっ」
あれ、能力使うて無いのにそんな面罵……というより何より、いくら思春期男子とて、今朝の如くの所業にはなかなかに至らんと思うけどェ……昨日と同じく、例の噴水の縁枠に隣同士で腰かけながらそうまくしたてるように言われたところで何も言えんのだが。真顔の無言で力無く座り込むばかりなのだけれど何となく視界の右に入っているのは俯いた姿勢の妹。今日のいでたちはあれ、ジーンズ&パーカー図らずもお揃いだよ、経年劣化の前後みたいな色合いの落差はあるものの。と、
「私もつい横で寝ちゃってごめんなさい……だっておにいちゃんのにおいって何だか安心してよく寝られるから……」
いやキミは本当いろいろな属性を有しているね? そして兄を落とそうとしてきてるのは何でかな? いろいろとあかんからその辺にして、うぅん、何とか話題を逸らしていこう……
と、そこまで来て思い至った。明日奈に協力してもらえば、「トレース」が捗る可能性高し……ッ!!
「お、今日部活無いんだったらどっか行くか? いやまあカネ無いからどこ、ってこともないんだけどさ」
極めて不自然なそんな誘いの言葉が口をついて出てしまった。普段は一緒の行動を避けておいてのこの物言い……あやしさしか感じないよね……うぅん僕やっぱり能力使わないとすんごい野暮&凡夫……とか自分で自分に、まるで内なる十四人の総意かのように呆れられていたら。
いくいくぅ、えぇーどこ行こっかな、お金なら少し出せるよぅ、とかぱっと顔を輝かさせてしまったよ、いつもの感じの明日奈に戻ってきてくれたのはありがたいのだけれど、くるくると動く黒目勝ちな瞳を横目で見てると、本当何かを踏み越えてしまいそうだからツィと目を逸らしつつ立ち上がる。さて、自然に「トレース候補」たちと合流するにはどうしたらいいんだろうねえ……とりあえず公園内をぶらぶらしようと妹を促しつつ、のんびりと歩を進め出した僕。
<アスナは、トレースしなくていいのかい? サーティーン……>
と、頭の中で、いつも僕をナビってくれるファイブの声が響く。でも心なしかその声は疑問、のような不審さを宿しているように感じられた。ん? どうしたの?
――あ、なんか身内はアレなのかな、とか思ってた。いけるんだ。
流石にすぐ脇をうきうきとした足さばきで闊歩する本人がいるので、僕は頭の中に思考を響かせるようにして「話す」。
<イメージ次第で、誰でも何でもいけるさ。それほどの能力なんだよ、もっと自信を持って堂々と立ち回ればいいよサーティーン>
うんうん。「自信」とか「堂々」っていうのに縁の無かった生活だったけれど、まあ「気の持ちよう」ってやつで如何様にも物事は運ばせることができるって、ここ最近で感じること多いもんね。よし、前向きに前向きに、だ。
「……」
ほら、といった自然な感じで隣を振り返りながら左手を差し出してみる。ふぇぇえ? みたいに、自分にぐいぐい来られると慌ててしまう明日奈を何か可愛いな、と余裕で思えるくらいにメンタルは凪いできているよ、これが「取り戻した僕」とでも……言うのか……
浸っている場合じゃないけど、おずおずと、それはおずおずとそっぽを向きながら伸ばされてきた右手を軽く握る。柔らかく、さらさらとした質感。手先が熱を持つ僕からすると、本当にひんやりなその感触を確かめるようにしながら、こうやって手をつなぐのっていつぶりかな、みたいに極めて軽い気持ちで昔のことを振り返ろうと思考を走らせたのだけれど。
「……!?」
思わず顔が少し歪んでしまう。記憶にアクセスしようとした、その瞬間に走る痛み。右脳辺りをざくと包丁を入れられたような感覚……なんだこれ。こんなこと今まであったっけ……一瞬止まってしまった呼吸を静かに戻していく。昔のことを思い出そうとしたら痛んだ。何で? ここ最近の能力関係のことに関連があったりすんだろうか……でも落ち着いてもう一度おそるおそる、小ちゃい頃に明日奈と手を繋いで幼稚園に通ってた頃のことを思い浮かべると、今度は普通に思い描くことが出来た。うんうん、昔の記憶っていうのは多分「共通七割の人格」に紐づいているみたいで、容易にアクセス可能みたいだね。さっきのはたまたまかも。ん? いや明日奈の像がぼやける。ぶれて二重に見えてきた。やばいやばい、ちょっと落ち着いて思考を戻していこう。
とか頭に空いてる右掌を当てて思っていたら。
「お、おにいちゃんさ……えとさ……ルイちゃんにも相談しちゃってあれだったんだけどさ……」
語尾に「さ」が多くなる時は、大抵鋭いことを言ってくる時だ、と【注意力】を使わずしても、ずっと接してきたから分かる。僕と繋いだ手を軽く前後に揺らしながら、視線を前に落としつつ明日奈はそうぽつりぽつり言葉を紡ぎ出してくるけど。
「……最近、変わってきたよね」
うん、多分それについて指摘されるだろうことは【分析力】を使わなくとも分かっていたよ。ここ最近の自分自身の変化、それは本当どういうことなんだろう、と考えれば考えるほど真の答えから遠ざかっていってしまうような気がして、僕はなるべく考えないようにはしているのだけれど。
全部、全員が「集約」したのなら。
真の、真の「僕」になる、いや「戻る」ということなんだろうか……それを、今は目指すほかは無いんだろうか……
「変わろうとしている、んだ。もっと、まともでマシな奴になろうと思い立ったって言ったら変か?」
でも脳の表面を上滑るような言葉しか発せられなかった。【発言力】とか【説得力】とかを使えばもっとまともでマシな答えが返せたのだろうか……
べつに変とかってわけじゃないんだけどぅ……みたいに呟いてからは言葉を探しているのか無言のままで、緑が頭上を覆いだした小径を黙々と歩き続ける明日奈だけど。
「……」
それよりトレースは出来たの? 自分の「内」であまり絡んだことが無くてちょっと緊張するけど、【分析力06】に向けて脳内で言葉を発する。
問題ない、と手短な言葉が返ってきた。ニヒルっぽい自分の声聞くのって何か恥ずかしいよね……と思いつつも、身内でも直接触れることが出来ればそれって出来るんだね、とそれに応える。まあ身内に能力が効かないってことは僕の錯覚かもね。規格外の父親母親たちにしか試しようがなかったから。
よし、じゃあこんな感じで嫁候補……じゃない「トレース候補」をGETする旅へと出かけるぜぇいっ、という、大枠で見ればぎりぎり合ってる程度の妙なテンションが自分の中で突き上げるように込み上げてきた僕は、
「明日奈……ちょっとお願いしたいことがあるんだけどいいかな……?」
軽く左手を引きつつ、こちらに注目させた上で本日七発目の能力、【魅力18】スマイルをカマしていく。はたして。
「……お金なら貸せるよ? じゃなくて?」
あれ? なんか自然な感じで流されたな……それとも効いてるのかな……何とも判別しづらかったけど、まあ協力が得られるっていうならよしってことで……
いかんせん定まらない感じが非常に心もとない気もするけど、やらないよりはやる、それが今の僕の心情だ。んんんん……やったるでぇぇぇいッ!!
ナニゴトも無かったかのように水洗いを終えて浴室から出てきた僕は、家族が起きてくる前に華麗に家を抜け出すのであった……
「……」
朝食も取れなかったけどしょうがない。何というかいたたまれなさの波濤に飲み込まれそうであったし、とろろごはんでは済まないのっぴきならなさがあったから。よれよれのTシャツにがびがびのジーンズ、てろてろの元は薄い緑色だった今は灰色に近いほどにすっかり洗いざらされたパーカーを何とか身に着け、三和土にあったサンダルに裸足を突っかけてすっころびそうになりながら玄関を出た。
とは言え時刻七時ちょっと過ぎ。休日の朝は照らす太陽の光もいつもとは違った眩しさがあるとでもいうのか、火照りが引いてすっきりとした身体に非常に心地よいのだけれど、かといって向かうところも定まんないよね……カネも無いことだし。うぅん……足の赴くまま大通りによろぼい出る僕だけれど、今日本当に「トレース」だかをやらんといかんのでしょうか……メンタルは最悪四天王を凌駕せんばかりの低水域なのですがッ。
<……まあ、【分析力06】を使って、トレース出来そうな人物の居場所を探すほかは無いな。先ほどのわやくちゃで既に貴重な能力の内の『七発』がとこを撃ち放ってしまっているが>
アイスはやっぱり冷たいね。【13】もこれでも頑張っているというのに……もう明日奈を部屋に入れるのは控えよう……とか信号待ちでぼんやりと佇んでいたら。
「おにいちゃんっ、ど、どこいくのっ?」
背後からかかるのは息せき切って走ってきたと思われるその妹の弾んだ声であったわけで。追っかけてきたのかよもう……
「なんていうか、すまなかった」
であったので、僕はスムースに地べたに両膝を突きざま、両掌もつけてその間に額を擦り付けてみるのだけれど。ふ、と、ばあちゃんの奥二重に見えたアスファルトのひび割れのひとつと目が合った気がした。ほんのりアンモニア臭も漂ってくるけど構わず僕は畏まりの姿勢を取り続ける。ちょ、ちょっとやめてよぅ……との力無い明日奈の声にも動ぜず、僕は頑なに土下座姿勢を崩さずに、厳然たる謝意を示し続けるのであった……割と、いやがらせ的に。
立ってってばぁ、と泡食う妹に腕を引っ張られようやく立ち上がる。いや、もっとこう……口汚く罵ってくれて構わんのだよ? とか腐った言葉しか発せられなくなっている僕に、いいからもぉぉ、めんどくさくなっちゃったなぁぁ……とか困り気な声を絞り出しながらぐいぐい押されて横断歩道を何とか渡り切らされる。
「……」
そのまま押しに押されて昨日も訪れた家近公園へといざなわれたのだけれど。今日も天気は最高だね。まだ朝露が残っていて適度な湿りけもあって空気も澄んでいる。けど。
「べ、別に思春期男子には不可抗力的にあることだって知ってるんだからっ。不必要に卑屈にならなくていいのっ」
あれ、能力使うて無いのにそんな面罵……というより何より、いくら思春期男子とて、今朝の如くの所業にはなかなかに至らんと思うけどェ……昨日と同じく、例の噴水の縁枠に隣同士で腰かけながらそうまくしたてるように言われたところで何も言えんのだが。真顔の無言で力無く座り込むばかりなのだけれど何となく視界の右に入っているのは俯いた姿勢の妹。今日のいでたちはあれ、ジーンズ&パーカー図らずもお揃いだよ、経年劣化の前後みたいな色合いの落差はあるものの。と、
「私もつい横で寝ちゃってごめんなさい……だっておにいちゃんのにおいって何だか安心してよく寝られるから……」
いやキミは本当いろいろな属性を有しているね? そして兄を落とそうとしてきてるのは何でかな? いろいろとあかんからその辺にして、うぅん、何とか話題を逸らしていこう……
と、そこまで来て思い至った。明日奈に協力してもらえば、「トレース」が捗る可能性高し……ッ!!
「お、今日部活無いんだったらどっか行くか? いやまあカネ無いからどこ、ってこともないんだけどさ」
極めて不自然なそんな誘いの言葉が口をついて出てしまった。普段は一緒の行動を避けておいてのこの物言い……あやしさしか感じないよね……うぅん僕やっぱり能力使わないとすんごい野暮&凡夫……とか自分で自分に、まるで内なる十四人の総意かのように呆れられていたら。
いくいくぅ、えぇーどこ行こっかな、お金なら少し出せるよぅ、とかぱっと顔を輝かさせてしまったよ、いつもの感じの明日奈に戻ってきてくれたのはありがたいのだけれど、くるくると動く黒目勝ちな瞳を横目で見てると、本当何かを踏み越えてしまいそうだからツィと目を逸らしつつ立ち上がる。さて、自然に「トレース候補」たちと合流するにはどうしたらいいんだろうねえ……とりあえず公園内をぶらぶらしようと妹を促しつつ、のんびりと歩を進め出した僕。
<アスナは、トレースしなくていいのかい? サーティーン……>
と、頭の中で、いつも僕をナビってくれるファイブの声が響く。でも心なしかその声は疑問、のような不審さを宿しているように感じられた。ん? どうしたの?
――あ、なんか身内はアレなのかな、とか思ってた。いけるんだ。
流石にすぐ脇をうきうきとした足さばきで闊歩する本人がいるので、僕は頭の中に思考を響かせるようにして「話す」。
<イメージ次第で、誰でも何でもいけるさ。それほどの能力なんだよ、もっと自信を持って堂々と立ち回ればいいよサーティーン>
うんうん。「自信」とか「堂々」っていうのに縁の無かった生活だったけれど、まあ「気の持ちよう」ってやつで如何様にも物事は運ばせることができるって、ここ最近で感じること多いもんね。よし、前向きに前向きに、だ。
「……」
ほら、といった自然な感じで隣を振り返りながら左手を差し出してみる。ふぇぇえ? みたいに、自分にぐいぐい来られると慌ててしまう明日奈を何か可愛いな、と余裕で思えるくらいにメンタルは凪いできているよ、これが「取り戻した僕」とでも……言うのか……
浸っている場合じゃないけど、おずおずと、それはおずおずとそっぽを向きながら伸ばされてきた右手を軽く握る。柔らかく、さらさらとした質感。手先が熱を持つ僕からすると、本当にひんやりなその感触を確かめるようにしながら、こうやって手をつなぐのっていつぶりかな、みたいに極めて軽い気持ちで昔のことを振り返ろうと思考を走らせたのだけれど。
「……!?」
思わず顔が少し歪んでしまう。記憶にアクセスしようとした、その瞬間に走る痛み。右脳辺りをざくと包丁を入れられたような感覚……なんだこれ。こんなこと今まであったっけ……一瞬止まってしまった呼吸を静かに戻していく。昔のことを思い出そうとしたら痛んだ。何で? ここ最近の能力関係のことに関連があったりすんだろうか……でも落ち着いてもう一度おそるおそる、小ちゃい頃に明日奈と手を繋いで幼稚園に通ってた頃のことを思い浮かべると、今度は普通に思い描くことが出来た。うんうん、昔の記憶っていうのは多分「共通七割の人格」に紐づいているみたいで、容易にアクセス可能みたいだね。さっきのはたまたまかも。ん? いや明日奈の像がぼやける。ぶれて二重に見えてきた。やばいやばい、ちょっと落ち着いて思考を戻していこう。
とか頭に空いてる右掌を当てて思っていたら。
「お、おにいちゃんさ……えとさ……ルイちゃんにも相談しちゃってあれだったんだけどさ……」
語尾に「さ」が多くなる時は、大抵鋭いことを言ってくる時だ、と【注意力】を使わずしても、ずっと接してきたから分かる。僕と繋いだ手を軽く前後に揺らしながら、視線を前に落としつつ明日奈はそうぽつりぽつり言葉を紡ぎ出してくるけど。
「……最近、変わってきたよね」
うん、多分それについて指摘されるだろうことは【分析力】を使わなくとも分かっていたよ。ここ最近の自分自身の変化、それは本当どういうことなんだろう、と考えれば考えるほど真の答えから遠ざかっていってしまうような気がして、僕はなるべく考えないようにはしているのだけれど。
全部、全員が「集約」したのなら。
真の、真の「僕」になる、いや「戻る」ということなんだろうか……それを、今は目指すほかは無いんだろうか……
「変わろうとしている、んだ。もっと、まともでマシな奴になろうと思い立ったって言ったら変か?」
でも脳の表面を上滑るような言葉しか発せられなかった。【発言力】とか【説得力】とかを使えばもっとまともでマシな答えが返せたのだろうか……
べつに変とかってわけじゃないんだけどぅ……みたいに呟いてからは言葉を探しているのか無言のままで、緑が頭上を覆いだした小径を黙々と歩き続ける明日奈だけど。
「……」
それよりトレースは出来たの? 自分の「内」であまり絡んだことが無くてちょっと緊張するけど、【分析力06】に向けて脳内で言葉を発する。
問題ない、と手短な言葉が返ってきた。ニヒルっぽい自分の声聞くのって何か恥ずかしいよね……と思いつつも、身内でも直接触れることが出来ればそれって出来るんだね、とそれに応える。まあ身内に能力が効かないってことは僕の錯覚かもね。規格外の父親母親たちにしか試しようがなかったから。
よし、じゃあこんな感じで嫁候補……じゃない「トレース候補」をGETする旅へと出かけるぜぇいっ、という、大枠で見ればぎりぎり合ってる程度の妙なテンションが自分の中で突き上げるように込み上げてきた僕は、
「明日奈……ちょっとお願いしたいことがあるんだけどいいかな……?」
軽く左手を引きつつ、こちらに注目させた上で本日七発目の能力、【魅力18】スマイルをカマしていく。はたして。
「……お金なら貸せるよ? じゃなくて?」
あれ? なんか自然な感じで流されたな……それとも効いてるのかな……何とも判別しづらかったけど、まあ協力が得られるっていうならよしってことで……
いかんせん定まらない感じが非常に心もとない気もするけど、やらないよりはやる、それが今の僕の心情だ。んんんん……やったるでぇぇぇいッ!!
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
最終死発電車
真霜ナオ
ホラー
バイト帰りの大学生・清瀬蒼真は、いつものように終電へと乗り込む。
直後、車体に大きな衝撃が走り、車内の様子は一変していた。
外に出ようとした乗客の一人は身体が溶け出し、おぞましい化け物まで現れる。
生き残るためには、先頭車両を目指すしかないと知る。
「第6回ホラー・ミステリー小説大賞」奨励賞をいただきました!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
Black Day Black Days
かの翔吾
ライト文芸
日々積み重ねられる日常。他の誰かから見れば何でもない日常。
何でもない日常の中にも小さな山や谷はある。
濱崎凛から始まる、何でもない一日を少しずつ切り取っただけの、六つの連作短編。
五人の高校生と一人の教師の細やかな苦悩を、青春と言う言葉だけでは片付けたくない。
ミステリー好きの作者が何気なく綴り始めたこの物語の行方は、未だ作者にも見えていません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる