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第弐章:ムロトー/ナイトフィーバー/レリGO

#082:相当な(あるいは、マルオッペルゲンガー)

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「6組予選決勝は!! ナンバー19バーサスっ!! ナンバー42だ、このやろうっ!!」

 相変わらずのテンションで、電飾実況少女、ダイバルちゃんが客を煽る。そのキンキンのアニメ声を誘われるようにして、僕らチームはよたよたとダイヤモンド中央に設置された決勝のリングへと向かうのであった。

 一方、リングのその向こうからも相手チームがのそのそとした動きでこちらに近づいてきている。その様子から見て相手もかなり疲労は来ているみたいだ。よし、コンディションは五分と五分だ (と思いたい)。

「決勝のルールは、『ニュートラル×セントラル』っ!! DEPを撃ち合うのは今まで通りだけど、平常心を著しく逸したら即負けのルールだっ!! すなわち……今回は審査者は関係なしの、真っ向タイマン勝負っ!! 『ボルティック』も今回は無し!! 電流に耐えれる耐えれないの駆け引きとかはなくて、純粋なDEPでの殴り合いだっ!! ……どうだ~? 決勝に~……ふさわしいルールだろ、てめえらぁぁぁぁっ!!」

 ダイバルちゃんが告げたルールは、あれ? 何かまともだ。しかしことダメの世界においては、フェアだったり普通だったりすることの方が逆に恐ろしいわけで。いったい裏に何がある? いや、裏には本当に何も無いのか?

「室戸ちゃんよぉ、準決は総力戦になっちまったが、お前さんを休ませるっつー、さっきの約束は果たすぜぇ。今度こそ俺っちが初っ端を張る」

 結構サマになっている四股を踏みながら、丸男が謎のやる気を見せている。うん、でもそれはひどくありがたい。

「対局形式は一対一の勝ち抜き戦だぁっ!! それじゃあ~? 早速ぅ~? 先鋒出てこいやあぁぁぁっ!!」

 ダイバルちゃんの威勢良い掛け声に合わせ、双方のチームの先鋒がリングへと上がる。

「ナンバー19の先鋒はぁぁぁっ!! ダメと共に我はあり!! 紀元前からダメを知る男!! 茨城県出身、溜ケ崎部屋っ!! 藤堂っ、佳秀五段んんんんっ!!」

 またしても雲龍型をリング上で披露しているが、丸男は不気味に落ち着いているようだ。前戦では鬼の防御力と赤子の攻撃力を露呈していたけど、本対局ではどう出るか。

「対するナンバー42っ!! 他とは明らかに異なるその真性なるダメ力っ!! ニューカマー、エン、ニュースターっ!! ミスターダークホースっ!! 豆巻まめまきぃぃぃぃ、丸夫だぁぁぁっ!!」

 マルオがかぶったぁぁぁぁぁっ(僕の中で)!! 豆巻マルオという名前のインパクトもさることながら、それを体現するかのようなまんまるのでかい腹。そしてその上におむすびのような三角形に近いこれまた巨大な顔が乗っかっている。そしていがぐり頭にビン底メガネ。白いランニングに白い短パンと。

 コスプレと言っていいかは分からないけど、完全にしっくりはまっていて違和感ない。昔の漫画から抜け出てきたようなたたずまいだ。周りの歓声に、おどおどとしつつ、もうかなりの汗がその顔に吹き出してきている。

 お世辞にも凄そうには見えないけど、これは溜王戦だ。この手の輩がいちばん油断ならないわけで。頑張ってくれ、こっちのマルオ!! 盛り上がる空気の中、両者が対局シートに着き、いよいよ決勝の幕が上がる。思うことはただ一つ、お願い、僕まで回ってこないで!!

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