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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

323【予定は未定編23】アルスター大佐隊、強制撤収

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【パラディン大佐隊・第十二班第一号ブリッジ】

ヴァッサゴ
「予想どおり、アルスター大佐隊、強制撤収されたな」

十二班長・ザボエス
「そりゃ、突然あんな動きされたら強制撤収もされるわな。やっぱり玉砕狙いか?」

ヴァッサゴ
「俺はこっちに突っこもうとしてるんじゃないかって思ってヒヤッとしたよ」

ザボエス
「……〝砲撃隊〟は今、何を思ってるんだろうな」

ヴァッサゴ
「さあ……とりあえず、俺は自分たちが強制撤収されたときのことを思い出したよ。ああ、これでやっとマクスウェルから解放されると思ってほっとしたなって。その先に起こることはまったく想像もしていなかった……」

ザボエス
「あれを想像できてたら、それこそ予言者だ。……そうだな。あいつらもあのときの俺らみたいに、今ほっとしてるかもな」

ヴァッサゴ
「あいつら?」

ザボエス
「アルスター大佐隊員」

 ***

【パラディン大佐隊・第一班第一号ブリッジ】

オペレータ
「班長! アルスター大佐隊、強制撤収されました!」

 一瞬、ブリッジがざわつく。
 しかし、戦闘中なのですぐに静まる。

ハワード
「……そうか。とうとうされたか」

オペレータ
「代わりに、無人護衛艦群一〇〇隻が〝十一班組〟の援護に向かっています!」

ハワード
「そうか。今度こそ本当に援護してもらえそうだな」

フィリップス
「……不思議なほど何の感情も湧かないな」

ハワード
「ああ。達成感も爽快感もない」

フィリップス
「やっぱり、一騎討ちで戦ってないからか?」

ハワード
「そうかもな。でも、もうアルスター大佐隊とは戦えない」

フィリップス
「……元四班長には絶対言えないけど、〝砲撃隊〟と〝護衛隊〟になってからは、正直、アルスター大佐隊のことはどうでもよくなってたな。あいつらがいなくても戦えるように訓練も重ねたし」

ハワード
「そうだな。〝アルスター大佐隊に『連合』を押し戻す〟っていうのも、思考ゲームみたいになってたな。ああでもないこうでもないって話してるのが楽しかった」

フィリップス
「ごめんね、元四班長。せっかくドレイク大佐に頼んでくれたのに」

ハワード
「でも、元四班長がそこまで俺たちのことを考えてくれてたってわかって、俺は本当に嬉しかった。それに共感してくれたドレイク大佐に対しても」

フィリップス
「……〝元アルスター大佐隊〟になったら、その指揮官はパラディン大佐になるんだよな?」

ハワード
「おそらくな」

フィリップス
「……元四班長、今度は〝元アルスター大佐隊〟の底上げに行くんじゃないのかな。俺たちのときみたいに」

ハワード
「な……!」

フィリップス
「で、もしそうなったら、パラディン大佐は〝元アルスター大佐隊〟の執務室に移住する」

ハワード
「〝護衛隊〟は!? 一緒に連れていくのか!?」

フィリップス
「〝先生〟が必要だからたぶん。でも、十一班はこっちに残していきそうな気がする。ここにレラージュ副長は、あらゆる意味で必要不可欠だろ?」

ハワード
「ああ、必要不可欠だな。あの変態どもの最大のモチベーションだ」

フィリップス
「でも、元四班長に出ていかれたら、うちはまた〝惜しい!〟に逆戻りしてしまう!」

ハワード
「うちは元四班長に依存しまくってるからな」

フィリップス
「……うちも元四班長についてくか?」

ハワード
「いくら何でもそれは無理だろ。あっちに、あの七班長みたいな存在がいれば、元四班長はまた戻ってきてくれるかもしれないが」

フィリップス
「……いたか?」

ハワード
「わからん。アルスター大佐隊員たちとはほとんど交流はなかったからな。でも、アルスター大佐に排除されないようにうまく隠れてたのかもしれない。本当にいたら、まさに七班長だな」

フィリップス
「ああ……何か、先のことを考えてたら、逆に気が滅入ってきた……元四班長、行かないで! 俺たちを捨てないで!」

ハワード
「……もしかしたら、元四班長が〝元アルスター大佐隊〟と一騎討ちで戦わせてくれるかもしれないぞ」

フィリップス
「え?」

ハワード
「底上げした後、訓練で」

フィリップス
「うああ、絶対勝てねえ! 俺たちはまたあの挫折感を味わうことになるのか!」

ハワード
「……〝飴ちゃん〟、もらえなくなるな」

フィリップス
「え、それが嫌なの、おとっつぁん」

 ***

【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

パラディン
「ところで、エリゴール中佐。君、今度は〝元アルスター大佐隊〟に異動したりしないだろうね?」

エリゴール
「……〝元アルスター大佐隊〟を〝第二分隊〟にはなさらないんですか?」

パラディン
「それじゃ、アルスター大佐と同じになってしまうじゃないか。〝部下に罪はない〟んだろう?」

エリゴール
「そういうところは〝まとも〟ですね」

パラディン
「え? 他は〝まとも〟じゃないの?」

エリゴール
「異動ですか。……その必要があれば、許可をお願いいたします」

パラディン
「君が〝異動〟するなら、私も〝移動〟するよ」

エリゴール
「は?」

パラディン
「君が行くところに私も行く!」

エリゴール
「……本来なら、大佐殿がまず移動されるべきではないですか?」

パラディン
「じゃあ、移動するからついてきてよ。君がいないとどうにもならないよ」

副長
「まだ戦闘中なんですけどね……」

モルトヴァン
「アルスター大佐隊が、無人護衛艦群と入れ替えられたことにも気づいていないみたいですね」

副長
「結局、うちはもうアルスター大佐隊のことはどうでもよくなっていたんでしょうか」

モルトヴァン
「そうみたいですね。……申し訳ありません。ドレイク大佐……」
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