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砲撃のパラディン大佐隊編(【05】の裏)

322【予定は未定編22】いい性格でよかったね

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【パラディン大佐隊・旗艦〈オートクレール〉ブリッジ】

 パラディンは、艦長席のモニタを眺めながらにやにやしている。
 エリゴールは、パラディンの左横に無表情で立っている。

パラディン
「よかったね。アルスター大佐に〝敵前逃亡〟されなくて」

エリゴール
「そうですね。我々にとっては〝よかったね〟ですが……」

パラディン
「ドレイク大佐にとってはよくなかったかな?」

エリゴール
「おそらく。今日の出撃前に〝よかったね〟で退場してもらいたかったそうですから」

パラディン
「〝よかったね〟か。ドレイク大佐は本当にそうしたいと思っていたのかな」

エリゴール
「ご本人はそうおっしゃっていましたが、本音と建前をうまく使い分けられる方のようですから、本心かどうかはわかりません。ただ、殿下のためにこの艦隊を敗北させたくないという思いだけは本物だと感じました」

パラディン
「殿下のために?」

エリゴール
「殿下のために」

パラディン
「さすが、殿下に〝告白言い逃げ〟した人は違う」

エリゴール
「ご本人は〝殿下に仕えている〟と表現されていましたが」

パラディン
「うん。ドレイク大佐はそのつもりだろうね。周囲からは全然そんなふうに見えないけど」

エリゴール
「いずれにしろ、我々がしなければならないことは、〝この艦隊が敗北しないために〟あらゆる意味で尽力することです」

パラディン
「本当は、やっぱりアルスター大佐隊に『連合』を押し戻してやりたかったけどね」

エリゴール
「元ウェーバー大佐隊と同じことをおっしゃいますね」

パラディン
「それが我々の〝夢〟だったからね。でもまあ、仕方がない。これからは『連合』に『連合』を押し戻すことを〝目標〟としよう」

エリゴール
「〝『連合』の撤退命令〟なしで?」

パラディン
「もちろんなしで」

エリゴール
「それも〝夢〟のようですが、〝アルスター大佐隊に押し戻す〟よりは前向きですね」

パラディン
「〝この艦隊が敗北しないために〟だよ。どなたかは味方に『連合』を押しやっていたがね。その先に〈フラガラック〉がいることをお忘れになっていたのかな?」

パラディン以外
(本当に、〝いい性格〟……)
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